2026年8月4日(現地時間)の米国株式市場は、トランプ大統領が対イラン攻撃計画を中止しホルムズ海峡を巡る合意期待が広がったことを受けて全面高となり、S&P500は+1.79%の7,736.52で史上最高値を更新、ナスダック総合は+2.59%の26,584.99、ダウは+907ドル高で引けた。WTI原油は供給リスク後退で6%超の急落。決算ではパランティアが+30%と爆騰する一方、引け後のAMDは予想超えの好決算でも時間外で急落しており、楽観一色ではない。VIXが最高値更新の日に+4%上昇した点も含め、「疑念を抱えたままの最高値」という複雑な構図だ。ドル円は157.71円と介入後の水準で膠着している。
米国株式市場
8月4日(現地時間)の米国株式市場は、テクノロジー株が相場を牽引しナスダックが2.59%高と最も大きく上昇した。S&P500とダウも1.7%超の上げとなり、全面高に近い展開だった。もっとも恐怖指数VIXは前日比+4.04%の16.50と、指数の上昇に逆行して上がっている。これは指数水準だけを見てリスクが消えたと判断するには慎重さが必要な局面であることを示唆している。
材料は大きく2つ重なった。第一に地政学。トランプ大統領が計画していた対イラン攻撃を中止し、ホルムズ海峡の安全通航を巡る合意への期待が広がったことで、原油が急落しインフレ・リスクプレミアムが同時に剥落した。第二に決算。パランティアが「別次元」と評された四半期決算を受けて30%近く暴騰し、キャタピラーも四半期売上高が初めて200億ドルを超える過去最高決算で買われた。AIソフトウェアと実体経済の両輪で「業績は強い」という証拠が揃い、S&P500を史上最高値へ押し上げた形だ。6月25日のまとめで指摘したAI相場の「主役交代」論の文脈では、半導体からソフトウェア・実需側へ主役が広がった一日ともいえる。
| 指数 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| S&P500 | 7,736.52 | +1.79% |
| ナスダック総合 | 26,584.99 | +2.59% |
| ダウ工業株30種 | 54,085.88 | +1.71% |
| VIX(恐怖指数) | 16.50 | +4.04% |
※上記データは2026年8月4日(現地時間)終値。
本日の主役銘柄
この日の主役は3銘柄に集約できる。パランティアは決算が売上・利益・ガイダンスの全てで市場予想を大きく上回り約30%高——AIソフトウェア需要の実在を示す象徴となった。キャタピラーは四半期売上高200億ドル超えの過去最高決算で、データセンター建設や電力インフラ投資が重機の実需にまで波及していることを裏付けた。一方でアマゾンは約2%安。前日に時価総額3兆ドルを史上初めて突破した直後、ベゾス会長による約40億ドル分の株式売却届け出が伝わり、利益確定の口実にされた。
そして引け後のAMDが、この相場の急所を改めて突いた。4〜6月期は売上高115.4億ドル(前年比+50%)・データセンター部門+107%と予想を上回り、7〜9月期ガイダンス(130億ドル前後)もコンセンサス超え——「ビート&レイズ」の教科書的な決算にもかかわらず、株価は時間外で5〜9%下落した。日中に5%超上げて決算に臨んだ分の期待剥落であり、先週のSKハイニックス「過去最高益でも予想未達で急落」と同じ「期待値の税金」の構図だ。半導体・AIハードには「良い決算」ではなく「途方もない決算」だけが買われる基準が定着しつつある。
一方でVIXが4%超上昇したことは、オプション市場が近い将来のボラティリティを警戒していることを意味する。史上最高値の更新日にVIXが上がるのは、上値を追いながら下値のヘッジも同時に買われている証拠だ。週後半の雇用統計を前に、個別銘柄のポジションを積み増す際はVIXの動向を平行して確認したい。
日本・アジア市場
| 市場・指標 | 終値/レート | 前日比 | データ時点 |
|---|---|---|---|
| 日経平均株価 | 63,957.53円 | +0.32% | 8月4日終値 |
| TOPIX | 3,961.78 | +0.04% | 8月4日終値 |
| 香港ハンセン | 25,852.92 | -0.60% | 8月4日終値 |
| 韓国KOSPI | 6,358.95 | — | 8月4日終値 |
| 上海総合 | 3,822.28 | +0.33% | 8月4日終値 |
| ドル円(USD/JPY) | 157.71円 | -0.01% | 8月5日 6:02 JST |
日経平均は63,957円と、6万4,000円の大台をわずかに下回った水準で小幅続伸した。TOPIXは+0.04%とほぼ横ばいであり、日経平均を構成する値がさ株に主導された上昇だったことがうかがえる。
ドル円は157.71円と前日比ほぼ変わらず。先週7月30日夜の為替介入(162円台→一時157円台)で押し込まれた水準に、そのまま張り付いた形だ。米国株の上昇でリスクオンの円売りが入るとの見方もあったが、原油6%安が日本の交易条件・輸入インフレの改善を連想させたことも円の下支えになったとみられ、方向感は出なかった。162円目前の局面で論じた金利差・日銀政策の構図は円安方向の圧力として残っており、介入効果と金利差のどちらが勝つか、157〜160円のレンジをどちらに抜けるかが次の焦点になる。
香港ハンセンが-0.60%と小幅下落した一方で、上海総合は+0.33%と小幅上昇。中国本土と香港で方向感が割れており、本土の政策期待と香港のリスク認識の差が反映されている可能性がある。韓国KOSPIは前日比データが取得できていないため、数値に基づく評価は差し控える。
金利・商品・暗号資産
商品市場と暗号資産の動きを以下にまとめる。
- WTI原油(@CL.1):75.42ドル / 前日比 -6.12%。今年最大級の急落だが、原因は明確だ。トランプ大統領が対イラン攻撃計画を中止し、ホルムズ海峡の通航を巡る合意期待が広がったことで、原油に上乗せされていた供給リスクプレミアムが一気に剥落した。需要減による下落ではない(同じ日に株が史上最高値を付けたことがその傍証)点は、エネルギー株保有者にとって重要な区別だ。
- 金(ゴールド / @GC.1):4,134.30ドル / 前日比 +1.07%。米国株が上昇する日に金も上昇した点は特徴的だ。通常はリスクオンで安全資産の金は売られるが、それが起きなかったことは、投資家が完全にリスクオフを解除したわけではないことを示唆しうる。4,100ドル台の維持を続けるかが焦点だ。
- ドル円(USD/JPY):157.71円 / 前日比 -0.01%。方向感なし。
- ビットコイン(BTC/USD):64,297.00ドル / 前日比 +0.90%。米国株の上昇に連動した小幅な反発。6万5,000ドルの節目を回復できるかどうかが次の注目点だ。
原油の急落は、エネルギーセクターへのダウンサイドリスクをあらためて意識させる動きだ。同時に金が強含んでいる事実は、インフレ動向への警戒が完全には払拭されていないことを物語っている。円キャリーと日銀政策を軸に日経平均の見通しを分析した記事でも触れたように、円とコモディティの連動性は一筋縄ではいかない。
マクロとFRB
利下げ期待と実体経済の乖離
次の関門は8月7日(金)の米雇用統計だ。先週のFOMCが示した「利下げは遠く、委員会内には利上げ論すらある」という構図を崩せるのは、実体経済のデータしかない。雇用の減速が確認されれば利下げ観測の復活として株の追い風に、強すぎる数字ならタカ派3票の論拠補強として逆風になる——最高値圏での雇用統計は振れ幅が出やすい。
VIXが株高の中でも上昇した点を踏まえると、市場参加者がリスクをヘッジしながら株を買っている「疑念を持ちながらの上昇」の側面がある。これはFRBの次の一手が見えない状況で、利下げ期待が相場を支えつつも、それが裏切られるリスクへの備えも同時に進んでいることを示す。
原油急落とインフレへの影響
今回の原油急落は地政学プレミアムの剥落(イラン攻撃中止・ホルムズ合意期待)が原因であり、需要減の兆候ではない——この区別はFRBの読み筋に直結する。供給要因による原油安はガソリン価格を通じて消費者物価を押し下げるため、先週のFOMCで「利上げ」を主張したタカ派3人の論拠を弱め、利下げ余地を広げる純粋な追い風になりうる。ただし合意期待が崩れれば同じ速度で巻き戻る類いの下落であることも忘れてはならない。中東情勢のヘッドラインが再び最大の変数だ。
ケビン・ウォルシュ新FRB議長の政策スタンスをめぐっては、インフレ再燃への警戒と成長支援のバランスが焦点となっている。原油急落が「インフレ低下=早期利下げ」というシナリオに直結するか、あるいは「景気悪化=業績下押し」として株のリスクに転化するかは、個人投資家が常に両面から検討すべき論点だ。
今週の注目点
- 5日の半導体セクター:AMD時間外急落の波及:「ビート&レイズでも売られる」構図がエヌビディアなど他のAIハード銘柄の期待値にどう波及するか。時間外の下げ(5〜9%)が現物でどこまで埋まるかを確認する。
- 8月7日(金)の米雇用統計:最高値圏で迎える今週最大のイベント。弱ければ利下げ観測の復活、強すぎればFOMCタカ派3票の論拠補強。どちらに出ても値幅が出やすい。
- ホルムズ合意ヘッドラインと原油75ドル:合意期待が進展すれば原油続落=インフレ追い風、破談なら急反発。エネルギー株・インフレ連動資産の分岐点。
- VIXの方向感:最高値更新の日に+4%上昇した16.50が、20へ向かうか落ち着くか。株高が本物か試される。
- ドル円157〜160円レンジの攻防:介入効果(円高)と日米金利差(円安)の綱引き。雇用統計が弱ければ金利差縮小で円高方向に抜けるシナリオも。
- 金4,100ドル台の維持:株と金がともに上昇するヘッジ需要が続くかに注目。
- 日経平均6万4,000円の壁:米最高値の追い風で64,000円台を回復・定着できるかがセンチメントの鍵。
まとめ
8月4日(現地時間)はイラン攻撃中止・ホルムズ合意期待という地政学の追い風と、パランティア+30%・キャタピラー過去最高というAI実需の証拠が重なり、S&P500が史上最高値を更新した。原油は供給プレミアム剥落で6%超安、インフレ面でも追い風だ。ただし手放しの楽観ではない——VIXは最高値更新の日に+4%上昇し、金も買われ、引け後のAMDは好決算でも「期待値の税金」で急落した。上値を追う資金と下値に備える資金が同時に動いている。8月7日の雇用統計が「利下げ観測の復活」か「タカ派の論拠補強」かを決める今週最大の分岐であり、それまでは指数の高値ではなく自分のポジションの許容変動幅を基準に判断する局面だ。
主な参照(データ基準日:米国・アジアとも2026年8月4日終値、ドル円は8月5日6:02 JST時点)
株価・指数・コモディティデータ:CNBC Markets/8月4日の米国市場(イラン関連・パランティア):Yahoo Finance・TheStreet/AMD決算と時間外の反応:TipRanks/暗号資産価格:CoinGecko/FRB政策動向:Federal Reserve
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を推奨・勧誘するものではない。記載された数値は2026年8月4〜5日時点のものであり、実際の投資判断は最新情報をご自身で確認のうえ、自己責任で行うこと。
















