普通預金に100万円を置いている人の利息が、年5,000円になる。税引き前の話で、しかも11月2日からだ。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行は9月18日、普通預金の金利を年0.4%から0.5%へ引き上げると発表した。1992年以来、34年ぶりの水準である。日銀がその日の昼に決めた利上げは、まずこの形で家計に届く。
同じ日に、逆向きの発表もあった
ただし、発表はこれだけではない。同じ18日、三菱UFJ銀行は短期プライムレートを年2.375%から2.625%へ引き上げると発表した。適用は預金と同じ11月2日である。みずほ銀行も同様に引き上げると報じられている(本稿執筆時点で、両行の公式ページには改定後の数字が掲載されていない)。三井住友銀行については、短期プライムレートの改定は報じられていない。
短期プライムレートは、銀行が優良企業に1年以内で貸すときの基準金利だ。そして日本の変動金利型の住宅ローンは、この短プラを基準に金利が決まる仕組みになっている。つまり同じ日の発表で、預ける人は年0.1%ぶん受け取りが増え、借りている人はいずれ0.25%ぶん支払いが増える。
日銀の利上げが家計に届くまで
読み方:預金金利は11月2日に上がるが、住宅ローンの返済額が動くのは早くて2027年1月。決定から返済額までは、基準金利の改定が年2回しかないため10か月前後かかる。
私たちの家計に、いくら届くのか
| 預金額 | 年0.4%(現在) | 年0.5%(11月2日から) | 差額(年・税引き前) |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 2,000円 | 2,500円 | +500円 |
| 100万円 | 4,000円 | 5,000円 | +1,000円 |
| 300万円 | 12,000円 | 15,000円 | +3,000円 |
| 500万円 | 20,000円 | 25,000円 | +5,000円 |
| 1,000万円 | 40,000円 | 50,000円 | +10,000円 |
正直に書けば、大きな金額ではない。100万円を1年預けて、増えるのは税引き後で800円ほど。缶コーヒー6本分といったところだ。それでも、2024年までのゼロ金利の時代には、同じ100万円の利息が年10円だった。桁が3つ変わったことになる。
より大きな差は、置き場所の選択で生まれる。あおぞら銀行のBANK支店は、普通預金に年1.0%を付けている(残高100万円まで。100万円を超える部分は年0.65%)。報道によれば10月1日から年1.20%(100万円超は年0.75%)へ引き上げる予定だが、本稿執筆時点で同行の金利ページに改定後の数字は出ていない。高い金利が付くのは100万円までで、それを超える資金は別の置き場所を考える必要がある。100万円なら、メガバンクの0.5%との差は年5,000円になる。9月に募集された個人向け国債の変動10年は、適用利率が年1.95%だった。2003年の発行開始以来の最高である。
借りている側には、すぐには届かない
では、変動金利で住宅ローンを借りている人の返済額は、11月2日から増えるのか。増えない。ここに時差がある。
多くの銀行は、住宅ローンの基準金利を年2回、4月1日と10月1日にしか改定しない。三菱UFJ銀行の場合、4月の改定は7月の返済分から、10月の改定は翌年1月の返済分から反映される。6月の日銀利上げ(0.75%→1.00%)が10月1日の改定に乗り、2027年1月の返済から効いてくる見込みだ。9月の利上げ(1.00%→1.25%)は、さらにその次、2027年4月の改定を経て、2027年7月の返済から反映されるとみられている。決定から返済額が動くまで、およそ10か月かかる計算になる。
この時差は、銀行によって違う。ネット銀行のなかには、基準金利を毎月見直すところもある。2026年7月から8月にかけては、PayPay銀行が0.35%、ドコモSMTBネット銀行と楽天銀行がそれぞれ0.25%、基準金利を引き上げている。自分の借入先がどの周期で改定するかは、契約書か銀行のサイトで確認しておきたい。
「5年ルール」は、すべての銀行にあるわけではない。変動金利には、返済額を5年間据え置く「5年ルール」と、見直し後の返済額を従前の125%までに抑える「125%ルール」がある。三菱UFJ銀行はどちらも採用している。だが、ソニー銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行などは採用していない。この場合、金利が上がればその都度、返済額が上限なく見直される。また5年ルールがある場合でも、利息が減るわけではない。返済額が据え置かれる間は元金の減りが遅くなり、状況によっては未払利息が生じることもある。
上流をたどる——なぜ11月2日なのか
日付をさかのぼると、仕組みが見える。日銀が政策金利を1.25%へ引き上げたのは9月18日。ただし新しい誘導目標が実際に適用されるのは9月24日からだ。銀行が短期プライムレートや預金金利を動かすのは、そのさらに後になる。前回もそうだった。6月16日の利上げに対し、三菱UFJ銀行とみずほ銀行が短プラを2.125%から2.375%へ引き上げたのは8月3日である。決定から1か月半。今回の11月2日も、ほぼ同じ間隔だ。
預金金利の歩みも記しておく。2026年2月2日に0.2%から0.3%、8月3日に0.3%から0.4%、そして11月2日に0.5%。1年で0.3%ポイント上がった計算になる。日銀の政策金利が0.5%から1.25%まで上がった動きに、遅れてついてきている。
次に店頭へ届く日付
- 9月24日 日銀の新しい政策金利1.25%が適用開始。東京市場も3連休明けで再開する。
- 10月1日 多くの銀行で住宅ローンの基準金利が改定される日。6月の利上げ分がここに乗る見込み。
- 10月1日8時50分 日銀が「主な意見」と9月短観を同時に公表。次の利上げの距離感が分かる。
- 11月2日 メガバンク3行の普通預金が0.5%に。三菱UFJ銀行の短期プライムレートは2.625%へ。
- 2027年1月の返済分から 6月の利上げが変動金利の返済額に届く見込み。9月分は2027年7月からとみられる。
金利が動く局面での預け先の考え方は長期金利3%と「お金の置き場所」の記事に、金利5%時代の資産配分はこちらの記事にまとめている。日銀が利上げした当日に円安が進んだ理由は別記事で扱った。
主な参照
- メガバンク3行の普通預金金利引き上げ(2026年9月18日発表)/時事通信
- 短期プライムレートの引き上げ/日本経済新聞、現行の水準は三菱UFJ銀行
- 基準金利の改定時期と返済額への反映、5年ルール・125%ルール/三菱UFJ銀行(FAQ)、SBI新生銀行
- 変動金利への反映時期の見通しと各行の基準金利引き上げ/モゲチェック
- 日銀の金融政策決定(2026年9月18日)/日本銀行
- 個人向け国債の適用利率/財務省
- 日銀の公表予定(短観・主な意見)/日本銀行
データ基準日:2026年9月20日。預金金利と短期プライムレートは各行の発表および報道にもとづく。三菱UFJ銀行とみずほ銀行の公式ページには、本稿執筆時点で改定後の短期プライムレートが掲載されていない。住宅ローンの反映時期は各行の規定と民間調査による見込みで、契約内容により異なる。利息の計算は税引き前の単純計算であり、実際には約20%が源泉徴収される。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品を推奨するものではない。















