9月21日の米国市場で、アーム・ホールディングスが前週末比13.9%高の314.00ドル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が9.4%高の612.28ドルで取引された(いずれも米東部時間11時11分時点、取引時間中の値)。同じ時刻、エヌビディアは1.4%高、ブロードコムは0.6%高にとどまった。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3.4%高だが、上昇はCPUを手がける4銘柄に集中している。
同じ指数のなかで、10ポイント超の差
| 銘柄 | 9月21日(ドル) | 前週末比 | 9月18日終値 | 2026年高値からの距離 |
|---|---|---|---|---|
| アーム(ARM) | 314.00 | +13.9% | 275.61 | −30.6% |
| インテル(INTC) | 122.85 | +13.1% | 108.60 | −13.7% |
| AMD | 612.28 | +9.4% | 559.82 | +4.7% |
| クアルコム(QCOM) | 189.55 | +6.7% | 177.72 | −27.1% |
| マーベル(MRVL) | 253.56 | +3.8% | 244.25 | −23.1% |
| TSMC(TSM) | 441.21 | +1.5% | 434.67 | −7.9% |
| エヌビディア(NVDA) | 225.34 | +1.4% | 222.27 | −4.7% |
| ブロードコム(AVGO) | 358.93 | +0.6% | 356.96 | −27.5% |
同じ時刻のS&P500種株価指数は0.98%高、ナスダック総合指数は1.59%高である。地合いで説明できるのは1.6ポイント程度になる。エヌビディアの1.4%高とブロードコムの0.6%高は、この水準を下回っている。アームの13.9%のうち12ポイント超は、地合いでは説明できない。
表の右端も見ておきたい。上昇率上位のアームとインテル、そしてクアルコムは、いずれも5〜6月につけた2026年の高値をなお14〜31%下回る。一方、上昇率が3番目のAMDだけが、高値を4.7%上回った。この日の日中高値615.99ドルは、少なくとも過去5年でつけた最高値584.73ドル(6月30日)を上回る水準である。発行済み株式数はおよそ16億3,100万株で、この日中高値では時価総額が1兆ドルを超える計算になる。ロイター、CNBCなどが米企業で14社目の1兆ドル到達と報じた。ただし11時11分時点の612.28ドルでは約9,980億ドルで、1兆ドルをわずかに下回る。
2026年の高値からの距離(9月21日11時11分=米東部時間)
出所:stockanalysis.comの日足(2026年3月18日以降)の日中高値と、CNBCの9月21日の気配値をもとに本誌が算出。高値の日付はアーム6月18日、インテル6月30日、AMD6月30日、クアルコム5月29日、エヌビディア5月14日、ブロードコム6月3日。取引時間中の数値。
説明として流通しているのは、1本のアプリ
米メディアが共通して挙げた材料は、メタ・プラットフォームズのAIエージェント「Muse」である。9月8日に公開され、米アップルのiPhone無料アプリ番付で首位に立った。調査会社センサータワーの集計として、公開10日間の米iOSダウンロードは73万件超と報じられている。同じ番付の2位はChatGPTだった。バロンズは「インテルとアームの株価が上昇。メタのMuseのおかげだ」との見出しを付けた。
CPUに結びつく理屈はこうだ。Museは利用者1人ごとに専用のクラウド仮想マシンを割り当て、そこにブラウザとCPU、メモリー、ストレージを持たせる。アプリを閉じたあとも処理は続く。この仮想マシンのCPUが担うのは、ブラウザの操作、外部ツールの呼び出し、コードの実行、そして一連の処理の進行管理である。モデルの推論そのものは引き続きGPUが担う。つまりGPUの代わりにCPUが使われるのではなく、利用者1人につき1台分のサーバーCPUが上乗せで必要になる、という理屈になる。
アームは3月24日、創業35年で初めてとなる自社ブランドのシリコン「Arm AGI CPU」を発表した。136コアのデータセンター向けCPUで、最初の顧客がメタである。2ノード構成のブレードで272コア、36キロワットのラックで8,160コアという仕様を公表している。いずれも21日の半年近く前に出た話である。
値幅を説明する発表は、4社のいずれからも出ていない
4社の適時開示とニュースルームを9月19日から21日午前まで確認したが、二桁の値動きを説明する内容は見当たらない。アームのニュースルームには9月8日付で5本が並び、そのうち1本がデータセンター向けのAGI CPUとNeoverse CSS N4に関するものである。以降は9月10日のパートナー企業の製品発表と、11日、16日、21日のブログ3本にとどまり、いずれも株価の水準に関わる内容ではない。会社自身の開示も、9月18日付の定型のフォーム6-Kが最後である。なお21日には内部者の売却予定を示すフォーム144の提出があるが、これは会社の発表ではない。
インテルが9月21日に出した発表は、同社のCore Ultra Series 3が端末に採用されたというものだった。同社をめぐってはAUOとの先端実装での協業が台湾の業界紙に報じられたが、両社とも認めていない。AMDのプレスリリースは8月31日付が最新で、19日から21日にかけての新規発表はない。クアルコムの次の情報開示は、9月22日に開幕する「Snapdragon Summit」となる。
4銘柄に、4つの別々の事情がある。アームは企業発表がなく、上昇はテーマの読み替えによる。インテルは供給不足の文脈にある。AMDは時価総額1兆ドルの節目を通過した。クアルコムは9月18日に5.82%下げており、この日の上昇でその下げ分を取り戻し、17日の終値188.71ドルを上回った。同社の年次イベント「Snapdragon Summit」は9月22日にハワイ・マウイ島で開幕する。4銘柄が同じ方向に動いたことと、4銘柄が同じ理由で動いたことは、同じではない。
発言
インテルのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は9月中旬、米デンバーで開かれた会議で、顧客の求める量の半分程度しか供給できていないと述べたと報じられた。AI推論向けのCPU需要が背景にあるとしている。
米中は9月20日、ベッセント財務長官と何立峰副首相が約8時間会談した。ベッセント氏は協議を「非常にうまくいった」と評した。グリア米通商代表部(USTR)代表は、先端AI半導体と半導体製造装置の輸出規制は、協議されている通知の枠組みには含まれないと説明している。輸出規制そのものに変更はない。
市場反応
FRBは9月16日、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%とした。2023年以来の利上げで、採決は12対0。参加者18人のうち16人が年内のもう1回の利上げを見込む。北海ブレント原油先物は21日、2%超下落して1バレル101ドル台と9月10日以来の安値をつけた。4営業日続落である。国連総会にあわせた米国とイランの外交をめぐる観測が、上乗せされていたリスクプレミアムを剥がした。
S&P500種株価指数は0.98%高の7,725.69、ナスダック総合指数は1.59%高の26,945.15、SOXは3.35%高の12,320.56(いずれも11時11分時点)。米10年債利回りは4.963%と前週末の4.996%から低下した。9月16日のFOMC後には5.016%と5%台に乗せていたが、18日までに5%を下回り、21日はその水準からさらに低下している。メモリー株の参加は限定的で、マイクロン・テクノロジーは2.3%高の1,039.08ドルにとどまった。9月18日に10.99%高の1,791.82ドルで引けたサンディスクは、21日は下落に転じている。18日を主導したメモリーから、21日はCPUへ物色が移った形である。
原油安と金利低下は市場全体に及ぶ材料であり、CPUを手がける4銘柄とGPU側3銘柄の差そのものは説明しない。
東京は9月24日まで動けない
東京市場は9月21日から23日まで休場で、次の立ち合いは24日となる。日経平均先物(期近)は9月21日の米国時間に1,275円高の6万6,300円で推移した。18日の日経平均終値6万5,018円95銭に対し、およそ1,280円(2.0%)高い水準である。ドル円は同日11時9分時点で1ドル=157円48銭。日銀が公表した9月18日の東京市場の値幅は155円88銭から157円60銭だった。
東京の現物は9月18日の15時に引けている。その後に始まった18日の米国市場から、21日、22日、23日まで、24日の寄り付きが織り込む海外市場は4営業日分になる。同日は日銀が9月18日に決めた政策金利1.25%の適用開始日にもあたる。日銀の1.25%に対し、米国の政策金利は9月16日の利上げで3.75〜4.00%となっている。
| 銘柄(コード) | 9月18日終値(円) | 前日比 | 52週高値(円) |
|---|---|---|---|
| キオクシアホールディングス(285A) | 54,570 | +9.40% | 112,700 |
| レーザーテック(6920) | 39,090 | +8.70% | 58,580 |
| アドバンテスト(6857) | 32,050 | +5.99% | 38,730 |
| 東京エレクトロン(8035) | 53,110 | +4.20% | 81,260 |
| ディスコ(6146) | 52,420 | +3.62% | 91,680 |
| ソシオネクスト(6526) | 2,000 | +1.78% | 3,491 |
| ソフトバンクグループ(9984) | 6,315 | +1.09% | 9,074 |
アームの親会社であるソフトバンクグループは、アームの発行済み株式の8割超を保有する。アームの時価総額は9月21日の314.00ドル時点でおよそ3,354億ドル、1ドル157円48銭換算で約52兆8,000億円になる。その8割でも約42兆円で、9月18日終値6,315円にもとづくソフトバンクグループ自身の時価総額およそ36兆円を上回る。保有するアーム株だけで、親会社の値段を超えている状態である。ただしアームの評価は21日の取引時間中、ソフトバンクグループの評価は18日の東京終値と、基準時点が3営業日ずれている。同社の米預託証券(ADR)が9月18日の米国時間に3.69%下落した点も付け加えておく。東京の現物とは逆の動きだった。
ソシオネクストは3月27日、アームとの協業を発表している。「Arm Total Design」の枠組みで、アームのコンピュートサブシステム(CSS)およびArm AGI CPUにまたがる連携を進めるとした。ただし発表の内容は設計面での協業であり、アームへの製品供給や売上高の計上を伴うものではない。株価がアームに連動する根拠にはならない。
AMDの1兆ドルと、600ドルという数字
AMDが2025年10月6日に提出した臨時報告書(フォーム8-K)によると、同社はオープンAIに対し、1株0.01ドルで最大1億6,000万株を取得できる新株予約権を発行している。権利はInstinct系GPUの導入量に応じて段階的に確定する仕組みで、最終段階には1株600ドルという株価条件が付く。権利の期限は2030年10月5日である。9月21日の株価612.28ドルは、この最終段階の条件を上回る水準にある。
今後の日程
- 9月22日 クアルコムの「Snapdragon Summit」がマウイ島で開幕(24日まで)。ニューヨークで日米首脳会談。
- 9月24日 ワシントンで米中首脳会談。東京市場が3連休明けで再開し、日銀の新政策金利1.25%の適用が始まる。
- 9月28日8時50分 日銀が7月30〜31日会合の議事要旨を公表。
- 9月30日 マイクロン・テクノロジーが2026会計年度第4四半期決算を発表。米8月のPCE物価指数も同日。
- 10月1日8時50分 日銀が9月会合の「主な意見」と9月短観を同時公表。
- 10月2日 米9月雇用統計。
アームの事業構造と投資判断はARM株の分析記事に、AMDの株価水準の考え方は506ドル時点の記事にまとめている。インテルの再資本化は別記事、ソフトバンクグループの評価はこちらで扱った。米国の金利の前提はFRB利上げの記事にある。
主な参照
- 株価・指数・利回りの気配値(9月21日11時11分=米東部時間)/CNBC
- 日足の高値・終値および2026年高値の算出/stockanalysis.com
- Arm AGI CPUの発表とメタとの連携(2026年3月24日)/アーム
- Museの発表(2026年9月8日)/メタ、仕組みはTechCrunch
- アプリ番付とダウンロード数、株価上昇との関連付け/TipRanks(センサータワー、バロンズの報道を引用)
- オープンAI向け新株予約権の条件/AMDフォーム8-K(2025年10月6日)
- 米中高官協議と首脳会談の日程/CNBC
- FRBの利上げ(2026年9月16日、3.75〜4.00%)/CNBC
- 原油価格と米イラン情勢(2026年9月21日)/CNBC
- AMDの時価総額1兆ドル到達の報道/ロイター、CNBC
- ソシオネクストとアームの協業(2026年3月27日)/ソシオネクスト
- マイクロンの決算発表日(2026年9月30日)/マイクロン・テクノロジー
- 日銀の公表予定(議事要旨・主な意見・短観)/日本銀行
データ基準日:2026年9月21日(米東部時間11時11分)。米国株の数値は取引時間中のものであり、終値ではない。同日の米国市場の取引終了は日本時間22日午前5時で、その後の変動は反映していない。2026年高値は3月18日以降の日足の日中高値にもとづく。アームの日中高値は情報源により312.98ドルと316.18ドルに分かれるため、本文では高値そのものを断定していない。AMDの時価総額1兆ドル超えは日中高値615.99ドルでの水準であり、終値ベースでの達成を意味しない。ソフトバンクグループのアーム保有比率は集計により86〜91%と幅があるため、本文では8割超とのみ記した。インテルとAUOの協業は業界紙の報道であり、両社は認めていない。株価上昇とMuseの結びつけは報道および市場参加者の解釈であって、4社のいずれもこれを認める発表をしていない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。
















