来週の米国決算で、株価が上がる確率はどれくらいあるのか。答えを先に書くと、本誌の試算でネビウス・グループが65%、シスコシステムズが45%、コアウィーブが38%、アプライド・マテリアルズが36%になる。4社はいずれも11月10日から12日にかけて決算を出し、いずれも5日の米国市場で7〜15%売られたAIインフラ株だ。数字の出し方には、天気予報と同じ考え方を使う。
この記事では、天気予報を中心の比喩として最後まで使う。決算の上昇確率は「降水確率」にあたり、オプション市場が示す想定変動幅は「予想される雨量」にあたる。降水確率が低くても、大雨の予報なら傘は要る。順に見ていく。
来週の4社、決算翌日に株価が上がる確率(本誌試算)
読み方:過去の決算翌日の上昇回数に、上昇5回・下落5回の架空の記録を足して割った値。記録が少ない会社ほど50%に近づく。出所:Yahoo Financeの日足終値とSECへの提出日から本誌計算。
来週の予報が出る4つの地点
まず、どこで、いつ予報が出るかを確かめておく。日付と時刻は各社が自ら公表したものだ。米国の取引終了後(引け後)の発表は、日本では翌朝6時以降になる。
| 会社 | 決算の期 | 発表(米東部時間) | 説明会(日本時間) | 5日終値と前日比 |
|---|---|---|---|---|
| コアウィーブ(CRWV) | 7〜9月期 | 11月10日(火)引け後 | 11日(水)7時 | 43.66ドル(−9.83%) |
| ネビウス・グループ(NBIS) | 7〜9月期 | 11月12日(木)取引開始前 | 12日(木)22時 | 120.37ドル(−14.94%) |
| シスコシステムズ(CSCO) | 2027年度第1四半期(10月24日まで) | 11月12日(木)引け後 | 13日(金)6時30分 | 95.72ドル(−7.62%) |
| アプライド・マテリアルズ(AMAT) | 2026年度第4四半期 | 11月12日(木)引け後 | 13日(金)6時30分 | 319.25ドル(−13.58%) |
4社とも、すでに強い雨に打たれた後だ。過去1年の終値の高値と比べると、シスコは26.4%安、アプライドは55.8%安、ネビウスは58.0%安、コアウィーブは68.4%安の位置にいる。決算は、この下げが行き過ぎだったのか、まだ足りないのかを判定する場になる。下げの発端となった中間選挙後のAI株売りはこちらの記事で検証した。
降水確率は「過去の記録」から作る
天気予報の降水確率は、似た気圧配置の日に過去何回雨が降ったかを数えたものだ。決算の上昇確率も同じように作れる。過去の決算発表の翌日に、株価が上がった回数を数えればよい。
本誌は、米証券取引委員会(SEC)への提出日から各社の過去の発表日を特定し、Yahoo Financeの終値で翌日の値動きを計算した。引け後に発表する会社は発表日の終値から翌日の終値まで、取引前に発表するネビウスは前日の終値から当日の終値までを測っている。
| 会社 | 集計した回数 | 上がった回数 | 平均の振れ幅 | 直近の反応 |
|---|---|---|---|---|
| シスコ | 12回 | 5回(42%) | 5.9% | 2月−12.32%、5月+13.41%、8月−8.40% |
| アプライド | 12回 | 3回(25%) | 5.4% | 2月+8.08%、5月−0.89%、8月−5.12% |
| コアウィーブ | 6回(上場以来すべて) | 1回(17%) | 14.8% | 2月−18.51%、5月−11.40%、8月+19.28% |
| ネビウス | 7回 | 6回(86%) | 12.0% | 2月+1.26%、5月+15.72%、8月+34.14% |
用語を3つだけ。①上昇確率:過去の決算翌日に株価が上がった割合。降水確率にあたる。②想定変動幅:オプションの価格から逆算した、市場が見込む値動きの大きさ。上げ下げの方向は示さない。予想雨量にあたる。③ストラドル:同じ権利行使価格のコールとプットを両方買う取引。その代金を株価で割ると、想定変動幅の目安になる。
回数が少ないときは、50%に寄せる
ここが肝心だ。コアウィーブの「6回中1回」は17%だが、6回しかない記録をそのまま信じるのは危うい。7回中6回上がったネビウスの86%も同じである。観測地点ができて半年の気象台が「この季節の降水確率は17%」と言い切っても、誰も鵜呑みにはしないだろう。
そこで本誌は、過去の記録に「上がった回数5回、下がった回数5回」という架空の10回分を足してから割合を出した。記録が少ない会社ほど50%に引き寄せられ、記録が多い会社ほど自分の数字が残る、という単純な補正である。式で書けば(上がった回数+5)÷(集計回数+10)。シスコは(5+5)÷(12+10)で45%、アプライドは36%、コアウィーブは38%、ネビウスは65%になる。冒頭の数字はこれだ。
予想雨量はオプション市場が教えてくれる
降水確率と同じくらい大事なのが雨量だ。本誌は、5日の取引終了後にシカゴ・オプション取引所(Cboe)が配信した遅延気配から、11月13日満期のストラドルの代金を株価で割って計算した。結果はシスコが±10.5%、アプライドが±12.5%、ネビウスが±22.3%、コアウィーブが±23.5%だった。
ただし、この数字には決算以外の雨も混ざっている。満期までには、5日の急落の後の通常の取引日がまだ5日残っているからだ。普段の日の変動を差し引くと、決算そのものの想定変動幅はシスコで±8%前後、ネビウスで±12%前後、コアウィーブで±13〜14%前後というのが本誌の粗い推計になる。アプライドは切り分けられなかった。
過去の平均の振れ幅と比べてみてほしい。シスコは平均5.9%に対して想定が±8%前後と、市場はいつもより大きな雨を見込んでいる。コアウィーブは平均14.8%に対して±13〜14%で、ほぼいつもどおりの大雨予報だ。
4地点の予報を読む
シスコ:上昇確率45%、想定±8%前後
会社は8月12日の決算で、今回の四半期の売上高を180億〜182億ドル、調整後の1株利益を1.32〜1.34ドルと見通した。2026年度通期では、大手クラウド事業者からのAIインフラ向け受注が93億ドルに達している。市場予想の1株利益は1.32ドル前後と、会社見通しの下限に近い。直近3回の反応は−12.32%、+13.41%、−8.40%と荒れており、晴れでも雨でも大きく振れる地点である。日本では光ファイバーや電線の銘柄が、同社のAI向け受注の数字に反応しやすい。
アプライド・マテリアルズ:上昇確率36%
会社の見通しは売上高102億5,000万ドル(上下5億ドル)、調整後の1株利益4.02ドル(上下0.20ドル)。過去12回で上がったのは3回だけで、4地点のうち最も「雨の多い」記録を持つ。8月には見通しを上回っても翌日5.12%下げた。10月26日には、オランダの半導体装置メーカーBEセミコンダクターの株を買い増し、持ち分を約20%に高めるとSECに届け出ている。半導体製造装置の需要を測る地点として、東京エレクトロンやスクリーンなど日本の装置株を持つ人には最も関係が深い、というのが本誌の見方だ。
コアウィーブ:上昇確率38%、想定±13〜14%前後
上場以来6回の決算で、上がったのは8月の+19.28%の1回だけだ。4〜6月期の売上高は25億7,500万ドル、受注残は約1,040億ドルと会社は発表している。7〜9月期の見通しについては、売上高34億5,000万〜36億ドルと説明会で示されたと報じられているが、本誌は会社の資料で確認できていない。同社の社債が額面を大きく割り込んだ経緯はこちらの記事で扱った。
ネビウス:上昇確率65%、想定±12%前後
4地点で唯一、晴れの記録が多い。過去7回で6回上がり、8月は34.14%高だった。会社は四半期ごとの見通しを出していないが、2026年の通期目標として売上高30億〜34億ドル、年間経常収益(ARR)70億〜90億ドルを掲げ、4〜6月期の株主向け書簡でこれを維持した。4〜6月期末のARRは30億ドルである。年末までに倍以上へ伸ばす計画で、達成への道筋が示されるかが今回の焦点になる。取引開始前の発表なので、日本時間では12日夜の米国市場の寄り付きで答えが出る。
よくある誤解。「上昇確率65%なら買い」ではない。降水確率35%の日に大雨が降ることもある。ネビウスの想定変動幅±12%前後は、上がるときも下がるときも、その程度は動きうるという意味だ。確率は方向の手がかり、変動幅は損失の大きさの目安であり、両方を見て初めて持ち高の大きさを決められる。過去の記録は将来を約束しない。とくに今回は、5日の急落という「異常気象」の直後に発表を迎える。
まとめ:傘の大きさを決めるのは雨量
天気予報の比喩に戻ろう。降水確率だけを見て傘を持つかどうか決める人はいても、傘の大きさを決めるのは予想雨量である。決算も同じだ。覚えて帰ってほしいのは3点である。
- 上昇確率は過去の決算翌日の勝率で、回数が少ないほど50%に寄せて読む。本誌の試算はネビウス65%、シスコ45%、コアウィーブ38%、アプライド36%。
- 想定変動幅はオプション価格から逆算でき、決算以外の日の分を差し引いて使う。シスコ±8%前後、ネビウス±12%前後、コアウィーブ±13〜14%前後。
- 4社の結果は、日本の半導体製造装置株、電線・光ファイバー株、AIデータセンター関連株の翌朝の寄り付きに伝わりやすい。日本株側の今週の決算は来週の決算の記事で扱っている。
主な参照
- シスコの決算発表日の告知(11月3日)/シスコ
- シスコの2026年度第4四半期決算と次の四半期の見通し(8月12日)/米証券取引委員会
- コアウィーブの決算発表日の告知/コアウィーブ、4〜6月期決算/コアウィーブ
- コアウィーブの7〜9月期見通し(説明会の内容の報道)/MarketBeat
- ネビウスの決算発表日の告知/ネビウス、株主向け書簡(通期目標)/米証券取引委員会
- アプライド・マテリアルズの決算発表日/アプライド・マテリアルズ、BEセミコンダクター株の取得の届け出/米証券取引委員会
- アプライド・マテリアルズの第3四半期決算と見通し(8月13日)/Stock Titan(会社発表の転載)
- 株価の日足終値(過去の決算翌日の値動きの計算元)/Yahoo Finance
- オプションの遅延気配(想定変動幅の計算元)/Cboe
データ基準日:2026年11月5日の米国市場の終値(日本時間6日朝)。株価とオプションの気配は11月5日の取引終了後の値で、6日の米国市場の値動きは反映していない。上昇確率と想定変動幅はいずれも本誌の計算で、市場予想の1株利益は情報提供元によって差がある概算である。決算そのものの想定変動幅は、満期までの通常の取引日の変動を差し引いた粗い推計で、誤差が大きい。コアウィーブの7〜9月期の見通しは説明会の内容を伝えた報道にもとづき、本誌は会社の資料で確認していない。アプライド・マテリアルズの発表日は同社の投資家向けページの検索結果の抜粋で確認した。日本株への波及は本誌の見方である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















