なぜ、好決算を出した銘柄の株価が翌日に下げるのか。答えは、株価が見ているのが点数ではなく「平均点との差」だからである。決算は、期末試験の答案返却に似ている。80点を取っても、クラスの誰もが90点を予想していれば、教室に漂うのは落胆だ。来週、11月9日から13日にかけて、東京では決算発表が集中する。本稿では、ソフトバンクグループ(9984)、フジクラ(5803)、リクルートホールディングス(6098)など6社の答案返却を、この比喩で順に見ていく。
先に結論を書いておく。6社のうち、決算翌日に株価が上がる確率が五分に届くと本誌がみるのはリクルートだけで、50%と置いた。残る5社は35〜45%で、下げる側にやや傾く。6日の前場に日経平均が一時4,300円を超えて下げた直後の答案返却であり、教室の空気はすでに冷えている。
原理1:点数より平均点との差
試験の答案を考えてみてほしい。親が気にするのは点数そのものより、平均点との差である。株式市場でも同じで、決算発表の前に、アナリストの予想や投資家の期待が「平均点」として株価に織り込まれている。発表された利益がその平均点を上回れば株価は上がり、下回れば下がる。ここが肝心だ。前年より大きく増益でも、平均点に届かなければ評価は下がる。
原理2:過去の答案は性格を映す
次に、過去の答案返却の様子を見る。毎回のように平均点を超えてくる生徒もいれば、点数はよいのに親の期待が高すぎて毎回叱られる生徒もいる。本誌は、各社の直近8回の決算について、発表をまたいだ1日の株価の変化を数えた。取引時間中の発表なら前日終値から当日終値まで、引け後の発表なら当日終値から翌営業日の終値までで比べる。上げた回数が「勝ち」、変化率の絶対値の平均が「振れ幅」である。
原理3:席の位置が期待の高さを示す
最後は、教室のどこに座っているかだ。株価が年初来の高値圏にあれば、期待という平均点はすでに高い。逆に高値から6割も下げていれば、平均点はかなり低くなっている。低い平均点は越えやすいが、それでも越えられない生徒は、さらに後ろの席へ下がる。株価の位置は、平均点の高さを推し量るための手がかりになる。
用語メモ 市場予想(コンセンサス):アナリストの業績予想の平均。答案返却の「平均点」にあたる。会社予想:会社自身が公表している通期の業績見通し。決算と同時に修正されることがある。振れ幅:本稿では、決算をまたいだ1日の株価の変化率を、上げ下げを問わず平均した値。
現実の数字に当てはめる:来週の6社
決算翌日に株価が上がる確率(本誌の見立て、%)
読み方:50%が五分。リクルートを除く5社は下げる側に傾くと本誌はみる。確率は過去8回の決算をまたいだ値動きに、株価の位置と6日の地合いを加味した見立てで、計算式から出したものではない。出所:IR BANK、Yahoo Financeの日足から本誌計算。
| 銘柄 | 発表日 | 過去8回の勝敗 | 振れ幅の平均 | 6日前引け | 1年の高値からの位置 | 上昇確率(本誌) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| リクルートHD(6098) | 11月11日 | 5勝3敗 | 9.29% | 17,160円 | −10.6% | 50% |
| フジクラ(5803) | 11月10日 | 3勝5敗 | 7.63% | 2,987円 | −62.0% | 45% |
| 本田技研工業(7267) | 11月10日 | 2勝6敗 | 3.18% | 1,835円 | −5.5% | 45% |
| ソフトバンクG(9984) | 11月10日 | 2勝6敗 | 4.95% | 3,611円 | −58.2% | 40% |
| SUMCO(3436) | 11月11日 | 2勝6敗 | 6.51% | 1,822.5円 | −65.7% | 40% |
| 楽天グループ(4755) | 11月13日 | 2勝6敗 | 6.86% | 631円 | −40.2% | 35% |
リクルート:平均点を越え続けてきた生徒(50%)
過去8回は5勝3敗。直近4回のうち3回は16%を超える大勝ちで、2026年8月は22.79%高、5月は16.58%高だった。答案返却で毎回驚かせてきた生徒である。ただ、そのぶん席は前のほうにある。株価は10月30日に付けた1年の高値1万9,200円から10.6%下にとどまり、年初からは90%高い。平均点はすでに高く、上昇確率は五分の50%と置く。振れ幅の平均は9.29%と6社で最も大きく、どちらに転んでも値動きは大きい。
フジクラ:平均点が大きく下がった教室(45%)
AIデータセンター向けの光ファイバーで買われてきたフジクラは、5月13日の高値7,855円から62.0%下げた。6日の前引けは8.37%安の2,987円で、前場には一時2,622円50銭(19.56%安)まで売られた。過去8回は3勝5敗、振れ幅の平均は7.63%。5月14日には19.10%安と大負けし、8月7日には12.82%高と大勝ちしている。同社は過去、取引時間中の14時に決算を開示してきた。前回どおりなら、反応はその日の大引けまでの1時間半に出る。平均点はかなり下がっており、確率は45%とした。
ホンダ:前日に隣の席が満点を取った(45%)
本田技研工業は過去8回で2勝6敗、振れ幅の平均は3.18%と小さい。注意したいのは席の位置だ。株価は5日に終値で1年の高値1,941円50銭を付けた。同じ日、トヨタ自動車が決算を受けて16.68%高と急伸している。隣の席の生徒が満点を取ると、自分にも同じ点数が期待される。その期待が平均点を押し上げているぶん、確率は45%にとどめた。
ソフトバンクG・SUMCO・楽天:叱られ続けた3人(35〜40%)
ソフトバンクグループは過去8回で2勝6敗。四半期の利益は保有株の値札の付け替えで大きく動き、今回は保有するインテル株の値下がりが重荷になる。仕組みはSBG決算の読み方で解説した。株価は6日前場に年初来安値を更新しており、その経緯はきょうの注目株で追っている。平均点は大きく下がったが、答案の中身が保有株の時価に左右される以上、平均点を越えるかどうかは決算日までのアームやインテルの株価次第の面が強い。確率は40%。
半導体用シリコンウエハーのSUMCOも2勝6敗で、2025年11月には20.16%安と大負けした。株価は7月14日の高値5,307円から65.7%下にある。それでも年初比ではまだ25.8%高く、平均点が底まで下がったとは言い切れない。確率は40%。楽天グループは2勝6敗で、直近4回のうち3回は9%を超える下げだった。株価は1年の高値から40.2%下げ、年初比でも37.2%安い。叱られることに慣れた生徒だが、過去の答案がそのまま性格を映しているとみて、確率は6社で最も低い35%とした。
よくある誤解 「株価が6割下げたのだから、決算で悪材料は出尽くした」という読みは早い。平均点は下がっているが、それは過去の失点を反映しただけで、次の答案の点数を保証しない。2025年11月のSUMCOは、高値から大きく下げた後の決算でもさらに20%下げた。下げた株ほど決算で戻る、という規則はない。
教室全体の空気:6日の急落の後で
答案返却の評価は、教室全体の空気にも左右される。6日の東京は、日経平均が前場に一時4,332円安まで売られ、前引けは3,219円安の5万7,858円61銭だった。前場の数字は寄り付き1時間のまとめにある。来週の6社のうち4社はAI・半導体やハイテクに連なる銘柄で、決算の数字と同じくらい、米国の半導体株の値動きが反応を左右するだろう。今夜22時30分の米10月雇用統計と、その後の米国市場が、来週の教室の空気を決める。
まとめ:答案返却で覚えて帰る3点
決算は答案返却であり、株価が採点するのは点数ではなく平均点との差だ。覚えて帰ってほしいのは3点である。第一に、過去8回の勝敗は各社の「性格」を映す。6社のうち4社は2勝6敗で、決算で叱られやすい。第二に、株価の位置は平均点の高さを示す。高値圏のリクルートとホンダは平均点が高く、6割安のフジクラとSUMCOは低い。第三に、振れ幅の平均を見れば、確率が五分でも損益の大きさが分かる。リクルートの9.29%はホンダの3倍近い。決算をまたいで株を持つなら、この振れ幅を自分の持ち高に当てはめておきたい。
主な参照
- 11月9〜13日の決算発表予定、過去の決算短信の開示日時/IR BANK
- ソフトバンクグループの決算発表日/ソフトバンクグループ IRカレンダー
- 株価の日足・前引け/Yahoo Finance
- 6日前場の日経平均/共同通信(琉球新報)
データ基準日:2026年11月6日の東京市場の前引け(11時30分)。発表日は情報サイトの予定にもとづき、会社の都合で変わることがある。過去8回の勝敗と振れ幅は、決算短信の開示日時と日足終値から本誌が機械的に計算したもので、同日に出た他の材料の影響を含む。取引時間中に開示した回は前日終値から当日終値、引け後に開示した回は当日終値から翌営業日の終値で比べた。株価は株式分割を調整済み。上昇確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















