米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年3.75〜4.00%とした。利上げは2023年7月以来で、決定は12対0の全会一致だった。同日の米国市場では2年債利回りが4.74%に上昇し、ダウ工業株30種平均は631ドル安、S&P500種株価指数は0.45%安で引けた。
決定内容と経済見通し
| 項目 | 9月会合(今回) | 6月会合 |
|---|---|---|
| 政策金利の誘導目標 | 3.75〜4.00% | 3.50〜3.75% |
| 票決 | 12対0 | 12対0 |
| 政策金利見通し・2026年末(中央値) | 4.1% | 3.8% |
| 同・2027年末 | 4.1% | 3.6% |
| 同・2028年末 | 3.9% | 3.4% |
| 同・長期 | 3.2% | 3.1% |
| 年内の利上げを見込む参加者※ | 18人中16人 | 18人中9人 |
| PCE物価上昇率・2026年(中央値) | 3.7% | 3.6% |
| コアPCE物価上昇率・2026年 | 3.4% | 3.3% |
| 失業率・2026年 | 4.1% | 4.3% |
| 実質GDP成長率・2026年 | 2.3% | 2.2% |
| 超過準備への付利(IORB) | 3.90% | 3.65% |
| 公定歩合(プライマリー・クレジット金利) | 4.00% | 3.75% |
2026年末の中央値4.1%は、年内にあと1回、0.25%の利上げを見込む参加者が中心であることを意味する。内訳は、追加1回が12人、追加2回が4人、追加なしが2人。今回を下回る水準を示した参加者はいなかった。参加者の見通しであり、FRBが追加利上げを約束したものではない。PCE物価上昇率の中央値が2%に戻るのは2029年とされた。物価見通しのリスクが上振れ方向に偏っていると答えた参加者は18人中17人。ケビン・ウォーシュ議長は自身の見通しを提出していない。
決定に至る経緯
FRBは2024〜25年に計1.75%の利下げを実施し、2025年12月に誘導目標を3.50〜3.75%とした。2026年は1月から7月までの5会合で据え置いた。7月会合の票決は9対3だった。ハマック(クリーブランド連銀)、カシュカリ(ミネアポリス連銀)、ローガン(ダラス連銀)の3総裁が0.25%の利上げを主張した。3人は今回、多数派に加わった。今回の利上げで、誘導目標は2025年12月の利下げ前の水準に戻った。
8月の米消費者物価指数(CPI)は、コア指数が前月比0.3%上昇し、市場予想の0.2%を上回った(8月CPIの内訳)。決定当日の朝に発表された8月の小売売上高は前月比1.2%増で、市場予想の0.8%増を上回った。声明は、7月にあった「エネルギーを含む供給ショック」への言及を削った。代わりに「本日の政策行動は、2%目標へのより早期の回帰を後押しする」と記した。「中東の紛争」は「地政学的な動向」に改めた。保有国債の償還分の再投資と、準備預金を潤沢に保つための短期国債の買い入れは続ける。
議長と関係者の発言
ウォーシュ議長は会見の冒頭で「インフレは高すぎ、その状態が長く続きすぎている」と述べた。「今夏の物価指標は、基調的な傾向が大きく改善したことを示していない」とも述べた。
利上げの理由については「金融環境全体を引き締め的だと言うのは難しい。この見方は委員会で広く共有された。そこで緩和の一部を解除した」と説明した。この発言は「ジャクソンホールの政策シンポジウムで述べたように」という前置きで始まった。追加利上げの有無を問われると「私はフォワードガイダンス(先行きの政策の予告)はしない」と答えた。
原油高については「原油価格であれ食料品であれ、個別の価格に影響を与えることはできない」と述べた。そのうえで「我々にできること、そして実際に行うのは、相対価格の変化が広がらないようにすることだ」と述べた。長期金利の上昇要因には、経済の強さ、資金の獲得競争、地政学の3つを挙げた。資金の獲得競争については「いわゆるハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)が市場で資金を調達している」と述べた。労働市場については「目標の達成のために労働市場を傷つける必要があるとは考えていない」と述べた。
トランプ大統領は決定後、SNSに「米国の金利は1%以下であるべきだ」と投稿した。ロイター通信によると、ゴールドマン・サックスは10月に追加利上げがあるとの予想に切り替えた。同通信によると、バンク・オブ・アメリカは10月と12月、モルガン・スタンレーは12月と2027年3月の利上げを予想する。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(資産運用部門)のケイ・ヘイグ氏は、中間選挙に近い10月は見送られる可能性が高いとして、12月の追加利上げを基本線とした。ナティクシスのクリストファー・ホッジ氏は「1回で終わる可能性もある」と述べた。
米国市場の反応(9月16日)
S&P500種株価指数の9月16日の値動き(5分足)
読み方:14時の声明発表の時点では前日終値(7,585.73)を0.36%上回っていた。14時30分からの会見中に下げに転じ、15時20分の5分足が当日の最安値圏となった。終値は前日比0.45%安。
主要株価指数は声明発表の前から上昇していた。S&P500は、米東部時間14時(日本時間17日3時)の声明発表時点で前日比0.36%高だった。14時30分からのウォーシュ議長の会見中に下げに転じた。15時25分ごろ(米東部時間)には7,507.77まで下落した。終値は0.45%安の7,551.81。ダウ平均は一時906ドル安となり、631ドル安で引けた。
| 指標 | 9月15日 | 9月16日 | 変化 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 7,585.73 | 7,551.81 | −0.45% |
| ダウ工業株30種平均 | 52,093.11 | 51,461.90 | −631.21ドル(−1.21%) |
| ナスダック総合指数 | 25,981.57 | 25,978.42 | −0.01% |
| ラッセル2000 | 2,870.28 | 2,858.81 | −0.40% |
| フィラデルフィア半導体株指数 | 11,175.55 | 11,246.11 | +0.63% |
| 米2年債利回り | 4.67% | 4.74% | +0.07ポイント |
| 米10年債利回り | 5.00% | 5.01% | +0.01ポイント |
| 米30年債利回り | 5.36% | 5.35% | −0.01ポイント |
| 米10年物インフレ連動債利回り | 2.62% | 2.68% | +0.06ポイント |
| ドル指数 | 99.62 | 100.25 | +0.64% |
| ドル円(NY終値) | 155円05〜15銭 | 156円27〜37銭 | 1円22銭の円安 |
| ユーロドル | 1.1543 | 1.1464 | −0.68% |
| WTI原油(10月限) | 105.83ドル | 102.43ドル | −3.21% |
| 金スポット(米東部17時ごろ) | 4,293.90ドル | 4,263.63ドル | −0.70% |
| VIX指数 | 17.20 | 17.71 | +0.51 |
債券市場では短期ゾーンの利回りが上昇し、長期ゾーンは横ばいだった。2年債と10年債の利回り差は0.33ポイントから0.27ポイントに縮小した。10年債の終値5.01%は、2007年7月以来の高水準。10年債利回りは15日の取引時間中に5.04%前後まで上昇していた。ドル円はNY時間に154円91銭まで円高が進んだ後、NY引けにかけて156円42銭まで円安に振れた。ドル指数は7月下旬以来の高値を付けた。
金先物12月限の清算値は4,387.50ドル(1.26%高)だった。清算は決定前の13時30分で、スポット金は決定後に一時4,234.89ドルまで下げた。原油は決定前から下落していた。サウジアラビアがオマーンのソハール港沖で、船から船への積み替えによる出荷を提案したとの報道が材料だった。期近の10月限は満期が近く、11月限の清算値は97.51ドルだった。
業種別では銀行株が下げた。SPDR S&P銀行株ETF(KBE)の終値は1.72%安で、取引時間中の下落率は一時3.24%に達した。AP通信によると、ハンティントン・バンクシェアーズは5.6%安、シチズンズ・ファイナンシャルは4.8%安だった。
フレディマックは17日、30年固定住宅ローン金利が6.95%になったと発表した。前週は6.76%だった。この週次調査は16日(水曜)までの申込データにもとづくため、利上げ決定後の動きはわずかしか含まない。
Yahoo Financeが伝えたCMEグループのFedWatchによると、10月会合での利上げ確率は16日午後(米東部時間)時点で約50%だった。前日は43.5%。決定当日の朝、9月の利上げ確率は92.5%だった。
東京市場とドル円(9月17日)
17日の日経平均株価は、前日比213円25銭高の6万4136円25銭で引けた。寄り付きの6万4643円58銭がその日の高値で、取引終盤には一時、前日終値を下回った。TOPIXは0.80%高の4094.19。東証プライム市場の値上がり銘柄数は1289、値下がりは235だった。
フィスコの集計では、日経平均への寄与度はアドバンテストがマイナス111円。東京エレクトロンはマイナス72円だった。ファーストリテイリングはプラス54円、ソフトバンクグループはプラス51円。半導体株2銘柄で日経平均を183円押し下げた。一方、TOPIXの上昇率は0.80%で、日経平均の0.33%を上回った。
日銀が公表した17時時点のドル円は155円68〜70銭。前日17時と比べて71銭の円安で、6営業日連続の円安となった。財務省の公表値では、2年国債利回りが15日に1.861%を付け、1995年4月以来の水準となった。16日は1.852%だった。
日米の政策金利差(FRBの誘導目標の上限と日銀の政策金利の差)は、FRBの利上げで3.00ポイントに広がった。日銀が18日に1.25%へ利上げすれば2.75ポイントとなり、FRBの利上げ前と同じ幅に戻る。日銀の利上げは9月上旬の時点でほぼ織り込まれていた。日銀が1.00%へ利上げした6月16日には、ドル円は円安方向に動いた。銀行各社のドル円予想は155円から160円に分かれている。2022年3月の利上げ開始局面との比較も参照。
17日の米国市場は反発した。米東部時間正午時点で、S&P500は前日比1.1%高、ナスダック総合指数は1.6%高。フィラデルフィア半導体株指数は2.9%高で推移した。10年債利回りは4.94%台に低下し、ドル円は155円80銭台で取引された。
今後の日程(日本時間)
- 9月18日8時30分 8月の全国消費者物価指数。市場予想は、生鮮食品を除く総合で前年比1.8%上昇。
- 9月18日昼ごろ 日銀金融政策決定会合の結果公表。政策金利を1.25%に引き上げるとの観測報道がある。午後に植田和男総裁の記者会見。
- 9月30日19時 財務省が8月27日〜9月28日の為替介入実績を公表。
- 9月30日21時30分 米8月の個人消費支出(PCE)物価指数。
- 10月2日21時30分 米9月の雇用統計。
- 10月8日3時 米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(9月15〜16日開催分)。
- 10月14日21時30分 米9月のCPI。
- 10月29日3時 FOMCの結果公表(10月27〜28日開催、経済見通しの公表なし)。
- 10月29〜30日 日銀金融政策決定会合(経済・物価情勢の展望を公表)。
- 12月10日4時 FOMCの結果公表(12月8〜9日開催、経済見通しを公表)。
海外FX業者の比較はFX解説ページに掲載している。
主な参照
- 政策決定の声明(2026年9月16日)/FRB
- 実施要領(IORB・公定歩合ほか)/FRB
- 経済見通し(SEP)/FRB、6月分はFRB
- ウォーシュ議長の記者会見記録(速報版)/FRB
- 7月会合の声明と反対票/FRB
- 米国債利回り(終値ベース)/米財務省
- 米国株の終値と取引時間中の動き/CNBC
- トランプ大統領の投稿/CNBC
- 金融機関の予想/ロイター(Investing.com掲載)、ロイター(Yahoo Finance掲載)
- 10月会合の利上げ確率/Yahoo Finance
- NY原油と金の清算値/時事通信
- 30年固定住宅ローン金利/フレディマック
- NY外為市場の終値と値幅/共同通信、時事通信、日本経済新聞
- 東京市場の終値と騰落数/日本経済新聞
- 日経平均の寄与度(9月17日大引け)/財経新聞(フィスコ)
- ドル円の17時時点の相場/日本銀行、6月の日銀利上げ時の相場/日本経済新聞
- 国債金利/財務省
- 8月全国CPIの市場予想/ロイター(Investing.com掲載)
- 会合日程/FRB、日本銀行、米労働統計局
- アイキャッチ画像:Tony Webster「The Federal Reserve – Washington DC」/Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
データ基準日:2026年9月17日。9月16日の米国市場は終値、9月17日の米国市場は米東部時間正午時点の取引時間中の値。日銀の決定前の情報にもとづく。記者会見の発言はFRBの速報版記録によるもので、正式版で修正される可能性がある。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資に関する最終判断は、各自の責任で行うものとする。










