2022年6月15日、米連邦準備制度理事会は政策金利を0.75%引き上げた。0.75%という幅は1994年以来、およそ28年ぶりである。その日、ビットコインは2万2,584ドルで引けた。わずか3カ月前、最初の利上げの日には4万1,114ドルあった。利上げのたびに、暗号資産は階段を下りるように値を切り下げていった。
2026年9月11日、米国の8月消費者物価指数でコアが予想を上回り、来週の利上げ確率は前日の約69%から8割台後半へ跳ね上がったと伝えられた。4年前の記憶に従えば、ビットコインは売られるはずだった。実際には、発表の5分足で一時7万6,047ドルまで1.4%下げたあと、同じ5分のうちに7万7,148ドルへ戻し、米国時間午前10時には7万9,359ドルまで上昇した。歴史は同じ曲を繰り返したのではなく、韻を踏んだだけだった。
対照表——2022年と2026年
| 項目 | 2021〜2022年 | 2025〜2026年 |
|---|---|---|
| 天井 | 6万9,000ドル(2021年11月10日) | 12万6,200ドル(2025年10月6日) |
| 底 | 1万5,476ドル(2022年11月21日) | 5万7,800ドル(2026年7月1日) |
| 天井からの下落率 | −77.6% | −54.2% |
| 天井から底までの期間 | 約1年 | 約9カ月 |
| 政策金利の出発点 | 0.00〜0.25% | 3.50〜3.75% |
| 利上げの規模 | 2022年の9カ月で計4.25ポイント | 来週の0.25ポイントが焦点 |
| 暗号資産業界内の破綻 | テラ・ルナ、大手貸付業者、交換業者FTX | 同規模の破綻は確認されていない |
| 現物ビットコインETF | 米国では未承認 | 上場済み |
並べると、似ている点と違う点がはっきりする。どちらの局面も、天井から半値以下まで下げたうえで、利上げの議論のなかに置かれている。だが下落の深さも、金利の出発点も、業界の足元も、まるで違う。
当時その後に起きたこと
2022年、FRBが利上げを決めた日のビットコイン終値
読み方:2022年の最初の利上げの日と最後の利上げの日を比べると、ビットコインは56.7%下落した。ただし下げが最も大きかった5月から6月は、テラ・ルナの崩壊や大手貸付業者の破綻が重なった時期でもある。
2022年、FRBは3月16日の初回0.25%から12月14日の0.50%まで、7回の会合で利上げを重ねた。最初の利上げの日のビットコインは4万1,114ドル、最後の利上げの日は1万7,803ドル。この間の下落率は56.7%である。
ここで一つ、見落とされやすい事実がある。天井の6万9,000ドルは2021年11月10日で、最初の利上げより4カ月も前だった。最初の利上げの日の4万1,114ドルは、すでに天井から40.4%下の水準である。対照表の77.6%という下落のうち、4割は利上げが始まる前に起きていた。利上げが始まってから2022年の最安値までの下落は62.4%である。「利上げがビットコインを77.6%下げた」という言い方は、正確ではない。
ただし、この階段をすべて金利のせいにするのは正確ではない。最も大きく下げた5月4日から6月15日のあいだには、アルゴリズム型ステーブルコインのテラ・ルナが崩壊し、暗号資産の大手貸付業者が相次いで出金を止めた。そして2022年の最安値1万5,476ドルを付けた11月21日は、交換業者FTXが破綻した直後の週だった。当時の下落は、金利の引き締めと業界内部の信用崩壊が同時に起きた結果である。
なぜ金利がビットコインに効くのか。ビットコインは利息も配当も生まない。金利が上がれば、預金や短期国債で得られる利回りとの差が広がり、利息を生まない資産を持つ機会費用が上がる。金が実質金利に弱いのと同じ理屈である。加えて、借り入れで持ち高を膨らませていた投資家が、金利上昇で資金の手当てに追われ、売りを迫られる。2022年はこの2つが同時に働いた。
「今回は違う」論を検証する
違う点1:金利の「変化の幅」がまったく違う
2022年は、ほぼゼロ金利から9カ月で4.25ポイントを引き上げた。利上げの速さとしては1980年代以来の急激さである。今回焦点になっているのは、3.50〜3.75%から0.25ポイントの1回だ。資産価格を揺さぶるのは金利の水準そのものより、その変化の速さである。0から4.25ポイントと、3.75から4.00%とでは、衝撃の大きさが桁で違う。
違う点2:業界内部の破綻が重なっていない
2022年の最安値は、利上げではなくFTXの破綻と同じ週に付いた。今回の2025年10月から2026年7月までの54.2%の下落局面では、同規模の業界内部の破綻は確認されていない。下落の深さが77.6%と54.2%で23ポイント違うことの一部は、この差で説明できる可能性がある。
同じ点:金利に敏感な資産であることは変わらない
公平のために、今回も同じだと言える材料を挙げておく。前日の9月10日、原油が1バレル108ドル台に上昇して米10年国債利回りが2023年10月以来の高水準を付けた日、ビットコインは7万6,569ドルまで下げて引けた。今日も、CPIが発表された5分足では1.4%下げている。金利が上がる局面で最初に売られる資産であることは、4年前と変わっていない。違うのは、売られたあとに戻るまでの時間である。9月4日の雇用統計の日には、発表をきっかけに下げたまま戻らなかった。今日は5分で戻した。
歴史が示す3つの教訓
第1に、利上げの回数より、利上げの速さを見るべきである。2022年のビットコインを壊したのは4.25ポイントという累積の幅であって、1回ごとの決定ではない。来週の0.25ポイントがそれだけで同じ結果を招くと考える根拠は、歴史の側にはない。
第2に、最安値は金利ではなく信用の崩壊で付く。2022年の底はFTX破綻の週だった。暗号資産の下落局面で最も警戒すべきは、中央銀行の会合日程ではなく、業界内部で出金停止や破綻の報道が出始めたときである。
第3に、反応の速さが相場の地合いを映す。同じ利上げ観測の上昇でも、下げたまま戻らない日と、5分で戻す日がある。前者は売りたい投資家が多い地合い、後者は押し目を待つ買い手が控えている地合いである。9月11日のビットコインは後者の姿を見せた。
今回固有の監視点
見るべきは3つある。まず9月16日のFOMC、日本時間17日午前3時の結果発表。利上げが0.25ポイントで終わるのか、その後の継続が示されるのかで、2022年型の「速い利上げ」に近づくかどうかが決まる。次に、ビットコインが2026年7月1日の安値5万7,800ドルからの戻りを保てるか。現在値は安値から37.3%上、2025年10月の高値から37.1%下の、ちょうど中間にある。
最後に、暗号資産の法制度をめぐる動きである。当サイトが8月に取り上げた米国の市場構造法案は、FOMCと同じ週に審議の山場を迎えるとされていた。金利とは別の、業界固有の材料が同じ週に重なる。2022年に最安値を作ったのが業界内部の出来事だったことを思えば、この週の監視対象は金利だけでは足りない。
2022年6月15日に2万2,584ドルで引けたビットコインは、その年の11月に1万5,476ドルまで下げた。4年後の今日、同じ利上げの議論のなかで、ビットコインは発表の5分後には元の値に戻っていた。歴史は韻を踏む。だがどこまで同じ韻を踏むかは、金利の変化の速さと、業界の足元の固さで決まる。
主な参照
- ビットコインの日足・5分足(2021年11月〜2026年9月11日)/バイナンス公開データ
- ビットコインの取引時間中の値と52週高値・安値/CNBC Markets
- 2022年のFOMCの決定と政策金利の推移/米連邦準備制度理事会
- 米8月消費者物価指数(2026年9月11日公表)/米労働統計局
- 9月10日の原油と長期金利の動き/Seoul Economic Daily
データ基準日:2026年9月11日10時(米東部時間)、日本時間23時。暗号資産は価格変動が極めて大きく、短期間で大幅な損失が生じる可能性がある。過去の値動きは将来の結果を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。











