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ARM株は今から買うべきか?AI時代の成長余地とカバードコール戦略を深掘り分析

Kentaro Takagi Kentaro Takagi
2026年7月4日
テック, AI, オピニオン, 株式
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ARM株
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ARMは事業の質が極めて高い優良企業だが、株価はすでに「5年後の成功」までかなり織り込んでいる。割安だから買う株ではなく、高い価格で未来を買う株だ。新規なら分割購入か大きな押し目待ち、保有中なら急騰後の一部カバードコールが最も現実的である。

ARM Holdings(Arm Holdings plc/ティッカー:ARM)は、AI関連株の中でもかなり特殊な存在だ。NVIDIAのようにGPUを売る企業でもなく、AMDやIntelのように自社CPUを大量販売してきた企業でもない。ARMの本質は、半導体アーキテクチャをライセンスし、顧客がその設計を使ったチップを出荷するたびにロイヤリティを得るIP企業である。

このビジネスモデルは非常に強い。製造設備を持たず、在庫リスクも小さく、チップが売れるほど高い利益率で収益が積み上がる。実際、ARMの粗利益率は極めて高く、通常の半導体メーカーというより、ソフトウェア企業に近い収益構造を持つ。

ただし、現在のARM株を判断するうえで重要なのは「ARMが良い会社かどうか」ではない。そこはすでに市場も理解している。問題は、現在の株価がどこまで将来の成長を織り込んでいるかだ。

ARMの強みはロイヤリティ収入の質にある

ARMの収益は、ライセンス収入とロイヤリティ収入の2つに大きく分かれる。投資家が本当に重視すべきはロイヤリティ収入の方だ。

ライセンス収入は、顧客がARMの設計技術を使うために支払う契約収入である。大型契約が入ると一気に伸びるが、四半期ごとのブレも大きい。一方ロイヤリティ収入は、ARMベースのチップが出荷されるたびに発生する収入であり、継続性がはるかに高い。

2026年度(FY2026)のARMは、売上高49.2億ドル、前年比23%増を記録した。内訳は以下のとおりだ。

項目FY2026 実績前年比
総売上高49.2億ドル+23%
ロイヤリティ収入26.1億ドル+21%
ライセンス・その他収入23.1億ドル+25%
出典:ARM FY2026通期決算

この数字だけを見ると非常に強い。しかし深く見るべきは売上成長率そのものではなく、ロイヤリティ単価が上がっている点だ。ARMv9やCompute Subsystems(CSS)など、より高付加価値の技術が広がることで、1チップあたりの収益性が上昇している。

ポイントは、ARMの成長が「出荷数量の増加」だけでなく「チップ1個あたりの取り分の増加」にも支えられていることだ。スマートフォン市場そのものが大きく伸びなくても、より高いロイヤリティ率を取れれば売上は伸びる。

スマートフォン企業からAIインフラ企業へ再評価されている

現在のARM株を押し上げているのは、スマートフォンではなくAIデータセンターへの期待だ。

以前のARMは、主にスマートフォン向けCPUアーキテクチャの会社として見られていた。Apple、Qualcomm、MediaTek、Samsungなど、スマートフォン向けSoCの多くがARMベースであり、この市場ではすでに圧倒的な地位を築いている。だが、スマートフォンだけでは現在の株価は説明できない。

AIデータセンターではGPUが主役に見えるが、実際にはCPUも重要だ。GPUはモデルの計算を担うが、CPUはデータ移動、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ、スケジューリング、前処理・後処理を管理する。特にagentic AI(AIが複数タスクを連続実行する仕組み)では、CPU側の負荷が増えやすい。

ここでARMの低消費電力・高効率という強みが効く。AIデータセンターでは電力と冷却が最大の制約になりつつあるため、処理性能だけでなく性能あたりの消費電力が重要になる。AWS Graviton、Google Axion、Microsoft Cobalt、NVIDIA Graceなど主要プレーヤーがARMベースCPUを採用していることが、この流れを示している。つまりARMは「スマホの会社」から「AIインフラの土台を握る会社」へ評価が変わりつつある。

AGI CPUとは何か──大きなチャンスであり、モデル変容リスクでもある

AGI CPUとは、ARMが従来のIPライセンス事業から一歩踏み出し、AIデータセンター向けCPUを自ら設計・展開する戦略であり、ARMにとって35年ぶりの自社製品だ。これがARMの投資ストーリーを大きく変えた。

ARMはこのAGI CPUについて、FY2031までに年間150億ドル規模の売上を目指すとしている。すでにFY2027〜FY2028分として20億ドルの需要が確約されており、CEOはagentic AI向けCPUの潜在市場(TAM)を最終的に1,000億ドル規模と見ている。会社全体としても、FY2031に年間売上250億ドル、非GAAP EPS9ドル超というかなり野心的な目標を掲げる。

ただし、これは利益率を下げ得る。従来のARMはライセンスとロイヤリティ中心の「軽い」事業だった。自社チップを展開すると、設計コスト、サプライチェーン、TSMCの生産枠、メモリ・パッケージング確保、顧客対応、品質管理など重い要素が増える。実際、AGI CPUの供給は現時点でウエハー・メモリ・パッケージング能力に制約されている。市場は売上拡大材料として評価しているが、投資家は「IP企業としての美しい利益率がどこまで維持されるか」も見る必要がある。

現在のARM株はかなり割高である

ARM株の最大の問題はバリュエーションだ。本記事執筆時点の参考株価は約439ドル、時価総額は約4,600億ドル規模に達している。これに対しFY2026の売上高は49.2億ドルで、実績売上高に対する時価総額倍率は90倍超になる。

さらにFY2026の非GAAP EPSは1.77ドルであり、参考株価ベースのPERは約248倍となる。これは普通の半導体株の評価ではない。市場はすでに、ARMがAIデータセンターで大きく伸び、AGI CPUが成功し、IP事業も拡大し、高い利益率も維持するという強いシナリオを織り込んでいる。

市場参加者すら慎重だ。アナリストのコンセンサス目標株価は約241ドルで、参考株価から見ると約40%下の水準にある。レーティングは「買い」優勢でありながら、目標株価は現値を大きく下回る──つまり「良い会社だが、今の株価は高すぎる」という見方が市場のメインシナリオになっている。

重要なのは、会社側の野心的な「5年後EPS9ドル」を使っても、参考株価はその5年後利益に対して約49倍で取引されている点だ。現在のARM株は「今の利益に対して高い」のではなく、「かなり成功した5年後の利益に対してもまだ高い」状態にある。

それでも上昇余地はあるのか

上昇余地はある。ただし条件はかなり厳しい。ここからさらに大きく上がるには、AGI CPU需要が会社想定を超え、既存IP事業が高成長を維持し、利益率も崩れない、という展開が同時に必要になる。

仮にFY2031のEPS9ドルを実現したとして、市場がその時点で何倍のPERを許容するかで株価は大きく変わる。

5年後の想定PER想定株価(EPS9ドル前提)参考株価439ドルとの比較
70倍約630ドル上昇余地あり
60倍約540ドルやや上昇余地あり
35〜45倍(通常の成長株評価)約315〜405ドル成長しても株価は下落

つまり、ARMが計画どおり成長しても、市場が通常の成長株評価しか与えなければ株価が大きく上がらない──あるいは下がる──シナリオも十分にある。これが現在のARMの難しさだ。会社は強いが、株価もすでに強すぎる。

買うなら「良い会社だから」では不十分

現在価格でARMを買うなら、「AI銘柄だから買う」では弱い。次の前提をすべて受け入れる覚悟が要る。

  • ARMは今後5年で売上を大きく伸ばす
  • AGI CPUは実際に大きな事業になる
  • 利益率は大きく崩れない
  • 顧客との関係悪化や規制リスクは限定的に収まる
  • 市場は5年後もARMに高いPERを与え続ける

このすべてに自信があるなら、現在価格でも買う理由はある。しかし、どれか1つでも崩れれば株価は大きく調整し得る。

ARM株の主なリスク5つ

リスク内容
バリュエーション高成長を織り込み済みで、期待が少し下がるだけでPER・売上倍率の縮小により株価が大きく下落し得る
AGI CPUの実行自社チップ事業はIPライセンスより複雑。供給制約、コスト増、顧客獲得、製品性能、競合対応の課題が多い
顧客との利益相反自社CPU展開で、既存顧客が「中立的なIP供給者か、競合か」と疑う可能性。Qualcommとの過去の争いもあり軽視できない
顧客集中売上の大口顧客依存度が高く、契約条件の変化が業績に直結する
中国・地政学中国関連の売上・ライセンス構造が重要。米中対立、輸出規制、規制当局の判断で不確実性が高まり得る

カバードコール戦略はARMと相性が良い

ARMは株価のボラティリティが非常に高く、短期オプションのプレミアムが大きいため、カバードコールとの相性が良い。短期のコールオプションを売ることで、保有株から追加収入を得やすい。

たとえばARM株を100株保有し、現在価格を約439ドルとすると、必要資金は約43,900ドルだ。そのうえで7〜9日程度の短期コールを売る。相場環境や権利行使価格によっては、株価に対して4〜5%程度のプレミアムを受け取れる場面もある。

4%なら約17.6ドル、5%なら約22ドル。100株なら1回あたり約1,760〜2,200ドルの収入になる。通常の大型株ではここまで高い短期プレミアムはなかなか得られない。

ただし、これは「無料の利回り」ではない。プレミアムが高いのは、市場がそれだけ大きな値動きを予想しているという意味でもある。

カバードコールの本当のリスクは「急騰を逃すこと」

ARMでカバードコールを使う最大のリスクは、急騰を取り逃すことだ。たとえば439ドルで100株を保有し、460ドルのコールを売り、プレミアムを20ドル受け取ったとする。株価が460ドルを超えて満期を迎えると、株は460ドルで売却される可能性が高い。

この場合、株価上昇益が約21ドル、プレミアムが20ドルで、合計約41ドルの利益。1週間程度で約9%なら非常に優秀だ。だが、もしARMが好材料で520ドルまで急騰したら、460ドルより上の上昇分はほぼ取り逃す。20ドルのプレミアムは得られても、本来取れたはずの大きな値上がり益は失われる。

これはARMのようなモメンタム株ではかなり大きな問題だ。AI関連ニュース、決算、アナリスト格上げ、AGI CPU関連ニュースで1週間のうちに急騰し得る。したがって、ARMのカバードコールは「株を絶対に手放したくない投資家」には向かない。「この価格なら売ってもいい」と思える水準に権利行使価格を置ける投資家向けである。

ARMでカバードコールを組むときの3原則

  1. 決算直前や重要イベント前に安易に売らない。イベント前はプレミアムが高いが、それは急騰・急落の可能性も高いという意味だ。上昇を本気で狙う局面でコールを売ると、自分の利益を制限してしまう。ARMの520ドル急騰はまさにこのタイミングで起きやすい。
  2. 権利行使価格は「売ってもよい価格」に置く。460ドルで売られたら後悔するなら、460ドルのコールを売るべきではない。プレミアムの高さだけで選ぶと、急騰時にほぼ確実に後悔する。
  3. ポジション全体に対して売りすぎない。200株保有なら100株分だけをカバードコールにする手もある。一部でプレミアム収入を得ながら、残りで上昇余地を残せる。

ARMのような銘柄では、カバードコールは「上昇を捨てて収入を取る戦略」ではなく、「売ってもよい価格を決め、そこまでの間に収入を得る戦略」と考えるべきだ。

ARMは今買うべきか

結論として、ARMは長期的には非常に魅力的な銘柄だ。AIデータセンター、agentic AI、クラウドCPU、ARMv9、CSS、Neoverse、AGI CPUという複数の成長ドライバーを持ち、ビジネスモデルの質も粗利益率も極めて高い。ただし、現在価格ではリスクもかなり大きい。

ARMは「安いから買う株」ではなく「将来の成功に対して、かなり高い価格を今払う株」だ。今から買うなら、短期的な20〜30%の調整を受け入れる覚悟が要る。最も現実的な戦略は次のいずれかである。

投資家タイプ現実的な戦略
強気の長期投資家少額ずつ分割で買う
すでに保有している投資家急騰後に一部だけカバードコールを使う
新規投資家大きな押し目を待つ
短期収入を狙う投資家7〜9日程度の短期カバードコールを検討する

ARMはAI時代の中心銘柄になり得る。しかし現在の株価はすでにその未来をかなり織り込んでいる。投資判断は「ARMは良い会社か」ではなく「この価格でその未来を買う価値があるか」で考える必要がある。買うなら分割、保有するならカバードコール、急騰を狙うならコールを売りすぎない──このバランスが最も現実的な向き合い方だ。

よくある質問(FAQ)

ARM株のPERは何倍か?

本記事執筆時点の参考株価(約439ドル)とFY2026の非GAAP EPS1.77ドルで計算すると、PERは約248倍になる。実績売上高49.2億ドルに対する時価総額倍率も90倍超で、通常の半導体株を大きく上回る水準だ。

ARM株は割高なのか?

割高と言える。アナリストのコンセンサス目標株価は約241ドルで、参考株価から見て約40%下にある。会社の野心的な「5年後EPS9ドル」を使っても現在株価は約49倍で、成功シナリオを織り込んでもなお高い状態だ。

ARMのAGI CPUとは何か?

GI CPUは、ARMがIPライセンスにとどまらず自ら設計・展開するAIデータセンター向けCPUで、35年ぶりの自社製品だ。FY2031までに年間150億ドル規模の売上を目指し、FY2027〜2028分として20億ドルの需要が確約されている。一方で自社チップ化は利益率を下げ得るリスクもある。

ARMはなぜカバードコールと相性が良いのか?

株価のボラティリティが非常に高く、短期オプションのプレミアムが大きいためだ。7〜9日程度の短期コールで株価の4〜5%程度のプレミアムを受け取れる場面もある。ただしプレミアムが高いのは大きな値動きが予想されている裏返しであり、急騰時に上昇益を取り逃すリスクがある。

ARM株は今買うべきか?

長期的には魅力的だが、現在価格は将来の成功をかなり織り込んでいる。新規なら分割購入か大きな押し目待ち、保有中なら急騰後の一部カバードコールが現実的だ。判断は「良い会社か」ではなく「この価格で未来を買う価値があるか」で考えるべきだ。

※本記事は特定銘柄の購入を推奨するものではない。株式・オプション取引には価格変動リスクがあり、投資判断は自身の責任で行ってほしい。記載の数値・株価は本記事執筆時点(FY2026決算後)のものであり、最新の株価とは異なる場合がある。

Tags: AI関連株ARM株半導体株株価予想
Kentaro Takagi

Kentaro Takagi

健太郎高木は投資銀行のFXプライムブローカレッジ部門で15年以上にわたりキャリアを積み、機関投資家向けの為替取引やプライムブローカレッジ業務に携わってきた。その後、暗号資産トレーディングファームで5年以上の実務経験を重ね、デジタルアセット市場の最前線で取引と分析に取り組んできた。 為替(FX)と暗号資産の双方において、市場構造・流動性・リスク管理に関する深い知見を持つ。現在は自身でも暗号資産のポジションを保有するほか、株式については長期保有を前提としたパッシブな運用を続けている。 また、AI(人工知能)に強い関心を持ち、機械学習やデータ分析といったテクノロジーが金融市場・トレーディングにもたらす変化を継続的に追っている。 こうした実務経験とマーケットでの知見をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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