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AMD、売上+50%でも株価8.8%安|Q3ガイダンス130億ドルが「不十分」とされた5つの数字

Takashi Suzuki Takashi Suzuki
2026年8月5日
株式
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AI関連株
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米AMDは8月4日引け後、2026年4-6月期の売上高が前年比50%増の115.36億ドルと過去最高になったと発表し、非GAAPベースの1株利益1.66ドルとともに市場予想を上回った。7-9月期の売上高見通しも130億ドル±3億ドルと公表コンセンサスの約125.2億ドルを超えたが、株価は時間外取引で一時約10%下落し8.8%安の472.94ドルで確定、5日の通常取引も米東部時間10時32分時点で483.51ドル(前日比6.76%安)と続落している。記録的な決算でも売られる展開は、SKハイニックス、インテルに続き半導体大手で3例目だ。

決算の主要数値

項目実績市場予想前年比・比較
売上高115.36億ドル(過去最高)約112.8〜113億ドル+50%
非GAAP 1株利益1.66ドル1.60〜1.62ドル(集計元で差)+246%
GAAP 1株利益1.38ドル―+156%
非GAAP粗利率56%予想並み+13pt
GAAP粗利率54%―+14pt
データセンター部門67.18億ドル(売上の58%)約65億ドル+107%
クライアント部門30.62億ドル―+23%
ゲーミング部門7.79億ドル―−31%
組み込み部門9.77億ドル―+19%
非GAAP営業利益30.94億ドル―+245%
フリーキャッシュフロー15.58億ドル―前四半期25.7億ドルからほぼ半減
設備投資8.08億ドル約2.99億ドル約2.9倍
7-9月期売上高ガイダンス130億ドル±3億ドル約125.2億ドル(LSEG)+41%

前年同期は輸出規制に伴うMI308関連費用約8億ドルを含み、前年比の伸び率は比較対象が低い点に留意が必要だ。粗利率はGAAP54%と非GAAP56%で水準が異なり、非GAAPは予想並みだった。粗利率の未達は生じていない。

市場が反応した5つの数字

下落の要因は業績の未達ではない。市場が反応したのは次の5つの数字だ。

要因公表値比較対象日付
7-9月期売上高ガイダンス130億ドル±3億ドル非公式の強気予想は最大約140億ドル8月4日
設備投資とFCF設備投資8.08億ドル、FCF15.58億ドル設備投資はアナリスト想定約2.99億ドルの約2.7倍、FCFは前四半期25.7億ドルからほぼ半減8月4日
7-9月期粗利率ガイダンス非GAAP56%で横ばい4-6月期実績56%から拡大なし8月4日
GPU収益の顧客構成ギガワット級コミット合計約14GWOpenAI最大6GW・Meta6GW・Anthropic最大2GWの3社に集中7月22日ほか
SpaceXのGPU調達方針Nvidia独占採用を表明SpaceXにAMDへの公表済みコミットはない8月4日引け後

第1にガイダンスだ。130億ドルはLSEG集計の約125.2億ドルを上回った。一方、複数の報道によると非公式には最大約140億ドルの数字が語られていた。第2に設備投資だ。8.08億ドルは前年同期の2.82億ドル、前四半期の3.89億ドルから急増した。この結果、フリーキャッシュフローは25.7億ドルから15.58億ドルへ縮小した。AIデータセンター設備投資の持続性は業界横断の論点となっている。第3に粗利率だ。7-9月期の非GAAP粗利率ガイダンスは56%で、Heliosの立ち上げ期に拡大を示さなかった。第4に顧客集中だ。ギガワット級のGPUコミットはOpenAI、Meta、Anthropicの3社で合計約14GWとなる。第5にSpaceXだ。8月4日引け後にはSpaceXが上場企業として初の決算説明会でNvidia製チップの独占採用方針を表明し、翌日のAMD株の重しとなった(Investing.comの報道による関連付け)。なお中国向けMI308の新規売上は、4-6月期実績にもガイダンスにも計上されていない。

発表前に積み上がっていた期待

発表前の時点で株価は年初来140%超上昇していた。6月には上場来高値584.73ドルを付けた。8月4日の通常取引も前日比7.0%高の518.58ドルで終えた。決算発表の直前まで買われていた形だ。

目標株価も7月にかけて切り上がっていた。ゴールドマン・サックスは7月6日に450ドルから640ドルへ引き上げた。UBSは670ドルから700ドル、ロゼンブラットは490ドルから665ドルへ引き上げた。ジェフリーズ640ドル、BofA620ドル、ウェルズ・ファーゴ615ドル(6月30日)が続いた。公表コンセンサスの約125.2億ドルに対し、強気筋は最大約140億ドルを想定していた。ガイダンスが超えるべき水準は、公表値より高い位置にあった。

関係者の発言

リサ・スーCEO(決算説明会、8月4日):「Heliosは量産に入った。初出荷は今四半期後半に始まり、第4四半期から2027年にかけて拡大する」「Q3はランプのごく初期だ。Q4が一段の増加、Q1がさらに一段の増加になる」

スーCEO(同): ギガワット級以外の需要について「いわばギガワット級よりもっと通常のスケールでHeliosに関心を持つ顧客が他に多数いる」。またデータセンター部門の売上は2027年に前年比2倍超になるとの見通しを示した。

スーCEO(Yahoo Finance、8月5日):「下期については、メモリと部品のコスト上昇が需要の重しとなるため、PC市場の軟化を想定している」

ストラテジストのシェイ・ボロール氏(Yahoo Finance、8月5日):「並外れた結果を織り込んだ株価だったが、これは並外れた結果ではなかった(It was priced for an exceptional result, and this was not an exceptional result.)」。設備投資については「衝撃的な上方修正だ」と述べた。

Futurumのダニエル・ニューマンCEO(Benzinga、8月5日): 結果は「良かった」が、市場は「Helios主導のブローアウト・ガイダンス」を求めていたと述べた。

バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏(Benzinga、8月5日):「堅実な四半期だったが、高まった投資家の期待には届かなかった可能性がある」

ドイツ銀行(CNBC、8月5日): 結果はコンセンサスを「わずかに上回った」が、「より楽観的な予想」には届かなかったと指摘した。

イーロン・マスク氏(SpaceX決算説明会、8月4日):「われわれはNvidia独占だ(We’re exclusive to Nvidia)」。Vera Rubinアーキテクチャを「最良のAIコンピュータ」と位置付けた。

市場の反応

株価の経路は次の通りだ。8月4日の通常取引は7.0%高の518.58ドルで終了した。時間外で一時約10%下落し、8.8%安の472.94ドルで確定した。5日は10時32分(米東部時間)時点で483.51ドル(前日比6.76%安)、当日の安値は480.44ドル、高値は502.00ドルだった。6月高値584.73ドルを約16%下回る水準で、52週レンジは149.22〜584.73ドルとなる。一方、NVIDIAは同時刻に219.58ドル(3.6%高)、フィラデルフィア半導体株指数は1.04%高だった。売りはAMD個別に集中している。

以下は株価のライブチャート(TradingView、NASDAQ:AMD)。

バリュエーションは集計基準で差が大きい。予想PERはstockanalysis基準で44.8倍、Zacks基準で54.08倍となる。Zacks基準ではNVIDIAが18.9倍、ブロードコムが21.57倍だ。ボロール氏は「60倍近い」と表現した。決算後のアナリスト平均目標株価は592.11ドル(51人、8月5日朝時点、更新中)で、評価はストロング・バイを維持している。ただしモルガン・スタンレーの465ドルは現在の株価を下回る。

証券会社目標株価投資判断
モルガン・スタンレー465ドル(410ドルから)イコールウエート
JPモルガン550ドルニュートラル
Truist594ドル(478ドルから)買い
バーンスタイン600ドルアウトパフォーム
Benchmark685ドル買い
ウェルズ・ファーゴ700ドル(615ドルから、CNBC集計)オーバーウエート
平均(51人)592.11ドルストロングバイ

決算シーズン横断で見た「ビートでも売り」

FactSetによると、今期にEPSが予想を上回った企業の平均株価反応はプラス0.1%にとどまる。5年平均のプラス1.0%の10分の1だ。一方、EPSビート率は86%と5年平均の78%を上回り、ブレンド増益率は47.4%に達する。予想超えが標準化し、株価の押し上げ効果が消えた計算になる。今期決算シーズンの期待水準の高さは事前から指摘されていた。

同様の反応は7月から続く。SKハイニックスは7月29日、最高益でもコンセンサス未達で9.6%下落した。インテルは売上17億ドルの上振れでも翌日7.9%下落した(7月24日)。アップルは時間外で6.65%安(7月30日)となった。TSMCとASMLの過去最高決算が売られた展開も先行例となる。一方、マイクロソフトはAzureの再加速(前年比43%増)を示し7月30日に15.63%上昇した。パランティアは通期ガイダンス引き上げで8月4日に29.5%上昇し、キャタピラーは約9%高、マイクロンはガイダンス引き上げで6%前後上昇した。明暗を分けたのは予想超えの有無ではなく、ガイダンスが再加速を示したかどうかだった。AMDとSKハイニックスのガイダンスは市場の想定線上にとどまった。

2026年4-6月期決算:8社すべて予想超え、株価反応は二極化 決算発表を受けた騰落率(%)。緑=買われた、赤=売られた、濃赤=AMD -10% +0% +10% +20% +30% パランティア 8/4 終値 +29.50% マイクロソフト 7/30 終値 +15.63% キャタピラー 8/4 終値 +9.00% ミクロン 8/4 時間外 +5.95% アップル 7/30 時間外 -6.65% インテル 7/24 終値 -7.89% AMD 8/4 時間外 -8.80% SKハイニックス 7/29 終値 -9.60% 注:8社はいずれもEPS・売上とも市場予想を上回った。時間外/終値の別はラベルに記載。 FactSet調べ:Q2にEPSが予想を上回った企業の平均株価反応は+0.1%(5年平均は+1.0%)。

前提が崩れる条件

会社側の説明は時間軸で構成されている。Helios初出荷が今四半期後半、第4四半期に段階増、2027年にデータセンター部門売上2倍超という順序だ。保有・検討時の確認事項は予想超えの有無ではなく、この時間軸が維持されているかどうかにある。前提が崩れたと判断できる条件は次の通りだ。

会社側の説明確認できる時期崩れたと判断する条件
Helios初出荷は今四半期後半(8月4日説明会)7-9月期決算(11月上旬想定)出荷開始への言及がない
第4四半期に出荷を段階増7-9月期決算の10-12月期ガイダンスデータセンター部門の伸びが横ばいにとどまる
7-9月期売上高130億ドル±3億ドル7-9月期決算実績が下限の127億ドルを下回る
7-9月期の非GAAP粗利率56%7-9月期決算実績が56%を下回る
2027年にデータセンター部門売上2倍超今後の顧客発表・各四半期決算ギガワット級顧客が3社のまま追加されない

今後の日程

  • 2026年7-9月期後半: Helios初出荷(会社計画、8月4日決算説明会)
  • 2026年8月下旬: NVIDIA決算発表(AI設備投資サイクルの次の判定材料、日付は同社の公表待ち)
  • 2026年下期: Meta向け第1ギガワット出荷開始(2026年2月24日発表)
  • 2026年10-12月期: OpenAI向けHelios展開開始(2026年7月23日のAdvancing AI 2026発表)
  • 2026年11月上旬(想定): AMDの7-9月期決算発表
  • 2027年上期: Anthropic向け第1ギガワット稼働開始(2026年7月22日発表)

主な参照: AMD IRプレスリリース(2026年8月4日)/決算説明会トランスクリプト(Investing.com)(8月4日)/Benzinga(8月4〜5日)/Yahoo Finance(8月5日)/stockanalysis.com(8月5日)/FactSet Insight(7月31日)/CNBC(8月5日)/SiliconANGLE(8月4日)

データ基準日は2026年8月5日。株価は米東部時間10時32分時点のライブ値であり、その後変動している可能性がある。アナリスト目標株価も更新が続いている。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨する投資助言ではない。投資判断は自身の責任で行う必要がある。

Tags: AI関連株エヌビディア
Takashi Suzuki

Takashi Suzuki

大手マーケットメイカーのFXトレーディングデスクで8年以上にわたりキャリアを積み、うち3年は為替フォワードデスク、その後2年は金利(レート)デスクを担当した。さらにシンガポールではアジア・トレーディングデスクのヘッドとして4年間チームを率い、地域全体のフローとリスク管理を統括してきた。 現在もFX・金利・株式など幅広い市場で実際にトレードを行っており、機関投資家の最前線で培った実取引経験は豊富。FX・株式・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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