本日の要点(2026年6月25日・木曜):米株は主要指数がそろって小幅高。S&P500は+0.52%、ダウは+0.65%、ナスダックは+0.24%だ。ただし内実は「分裂相場」で、マイクロンのAI半導体決算を起点にメモリ・半導体が急伸する一方、デル(−6.7%)やアップル(−4.7%)など一部大型株は大きく下げた。注目はAI相場の「主役交代」――グーグルは高値から約16%安、エヌビディアも月間で約9%安と、これまで相場を引っ張ってきた銘柄が調整している。背景には、タカ派に転じたFRBとインフレ高止まり、そして原油・イラン情勢の変化がある。
2026年6月25日木曜の米国市場は、表面の「小幅高」と、その下で進む激しい「物色の入れ替え」という二層構造になっている。本記事では、本日の株式市場と主要ムーバー、いま最も問われている「なぜグーグルとエヌビディアが軟調なのか」、テック・AI株の主役交代、タカ派FRBとインフレ、そして原油とイラン情勢まで、今日の相場を動かす力を数字で整理する。
株式市場:指数は小幅高、しかし内実は「分裂」
本日の米主要株価指数は、そろって小幅高で推移している。けん引役はマイクロン・テクノロジー(MU)の好決算だ。AIデータセンター向けメモリの需要と価格が市場予想を大きく上回り、半導体・AIハードウェア全体に買いが波及した。同時に、市場はFRBが重視する物価指標であるPCE(個人消費支出)デフレーターの発表も見極めている。
| 指数 | 本日の動き |
|---|---|
| S&P500 | +0.52% |
| ダウ工業株30種 | +0.65% |
| ナスダック総合 | +0.24% |
| ラッセル2000(中小型株) | +0.37% |
もっとも、指数の小幅高は相場の実態を覆い隠している。前日(24日)はアップルがナスダックを押し下げる一方、ダウは最高値を更新するなど、すでに「割れる相場」の兆候が出ていた。本日もその構図は変わらず、勝ち組と負け組の差は鮮明だ。
本日大きく動いた銘柄
| 銘柄 | 本日の動き | 背景 |
|---|---|---|
| マイクロン(MU) | 急伸(一時+17%、+10%超で推移) | 第3四半期決算が市場予想を大幅超過。AIメモリ需要 |
| クアルコム(QCOM) | +14% | 2029年度の一部目標を引き上げ |
| サンディスク(SNDK) | +11% | メモリ・半導体物色の波及 |
| ウェンディーズ(WEN) | +13%(週間+約32%) | 個人投資家の物色が継続(ミーム的な動き) |
| デル(DELL) | −6.7% | 大型ハイテクからの資金流出 |
| アップル(AAPL) | −4.7% | ナスダックの重し |
| アルベマール(ALB) | −4.4% | 素材・リチウム関連の軟調 |
上昇の主役はメモリと半導体、そして個人投資家が集まる「ミーム的」な銘柄。下落の主役は、これまで買われてきた大型ハイテクだ。つまり本日の相場は「銘柄を選別する地合い」であり、指数だけを見ても本質は見えてこない。
なぜグーグルとエヌビディアが軟調なのか
ここ数週間、相場を最もよく象徴しているのが、AI相場の二枚看板であるアルファベット(グーグル)とエヌビディアの調整だ。両社はAIブームの「上げ」を主導してきたがゆえに、いまは「下げ」も主導している。市場がAIを「いくらでも投資する」局面から「投資の見返りを示せ」という局面へと、評価軸を切り替え始めたためだ。
| 銘柄 | 高値からの調整 | 主因 |
|---|---|---|
| アルファベット(GOOGL) | 5月18日高値408.61ドル→6月23日約341ドル(5週弱で約−16%) | AI人材の流出、巨額の設備投資と希薄化、規制・訴訟 |
| エヌビディア(NVDA) | 5月14日終値高値235.47ドル→月間約−9%(週間約−7%、年間ではなお+39%) | ブロードコムの弱いガイダンス、競争激化、過熱した期待 |
グーグル:人材流出・巨額投資・規制の三重苦
- AI人材の流出(ブレインドレイン):Google DeepMindのノーベル賞受賞研究者がAnthropicへ、Geminiを率いてきたノアム・シャジーア氏(「Attention Is All You Need」論文の共著者)がOpenAIへ移籍。6月22日は1年超ぶりの大幅安となった
- 巨額の設備投資と希薄化:AI投資のため約800億ドルの株式発行を計画(需要が殺到し約847.5億ドルに増額)。2026年通期の設備投資は1,800〜1,900億ドルに達する見込みで、フリーキャッシュフローは前年比約−47%に落ち込む
- 規制・訴訟リスク:6月22日、カリフォルニア州の裁判所がYouTube等の「未成年者への依存性」を巡る訴訟で再審理を認めず、株価は−6.7%。英国の16歳未満SNS禁止案も、広告需要を支える層に逆風となる
エヌビディア:AI半導体の「主役」が試される
エヌビディアの調整は、個社の問題というより「AI半導体セクター全体の再評価」の一部だ。引き金は同業ブロードコムだった。同社の第3四半期のAI関連売上ガイダンスが160億ドルと、市場予想の約172億ドルを下回り、AI半導体株全体を引きずり下げた。6月5日にはフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が10%下落し、2020年3月以来の大幅安を記録、セクターの時価総額は約1.3兆ドルが吹き飛んだ。
「完璧を織り込んだ株価」の宿命:エヌビディアは好決算を出し続けても売られる局面がある。期待が業績の先を行きすぎているため、「市場予想を上回り、さらに上方修正する」ほどの結果でなければ、利益確定売りが出やすい。加えて、クアルコムやブロードコムの台頭による競争激化、韓国SKハイニックスがHBM(広帯域メモリ)の増産ペースを緩めるとの報道など、供給・競争の両面で逆風が重なった。それでも年間では+39%とトレンド自体は崩れていない点は押さえておきたい。
テック・AI株:「カネをかける側」から「儲かる側」へ
本日の物色は、この「主役交代」を象徴している。資金は、巨額の設備投資を続ける高バリュエーションのメガキャップ(グーグル、アップルなど)から、いま現に「AIの果実」を収益として示している銘柄へと回転している。マイクロンやサンディスクといったメモリ、クアルコムがその受け皿だ。AIの恩恵が「期待」から「実績」へと評価軸を移すなかで、足元の利益を伴う企業に資金が向かいやすくなっている。
最大のマクロ要因:タカ派FRBとインフレ
相場全体の「潮位」を決めているのは、依然として金融政策とインフレだ。FRBは政策金利を3.50〜3.75%に据え置いたが、ケビン・ウォーシュ議長の会見はタカ派と受け止められた。最新の経済見通し(ドットチャート)では、18人の政策担当者のうち9人が2026年内に少なくとも1回の「利上げ」を見込んでいる。利下げではなく利上げが意識される異例の局面だ。
背景にはインフレの高止まりがある。FRBは物価見通しを引き上げ、2026年のヘッドラインPCEを3.6%、コアPCEを3.3%と予想している。本日のPCE指標が注目されたのもこのためだ。インフレが想定どおり高止まりすれば、タカ派姿勢は続き、短期金利の上昇を通じて株式の上値を抑える要因になる。これが、好材料が出ても相場が一本調子で上がりにくい根本的な理由だ。
原油とイラン:戦争プレミアムの巻き戻し
もう一つの大きな力が、原油とイラン情勢だ。原油はイラン対立の開始以降に約60%、2026年の年初来では約80%も急騰し、典型的な「戦争によるインフレ圧力」となってきた。しかし、トランプ大統領がイランとホルムズ海峡の再開に道を開く合意に署名したことで、原油価格は反落。供給途絶への懸念とエネルギー由来のインフレ圧力が和らぎ、足元の市場センチメントを下支えしている。
綱引きの構図:地政学リスクの後退(原油安)は株式にプラス、インフレ鈍化期待もプラスだ。一方で、タカ派FRBと高止まりする金利はマイナス。この「リスクオン」と「金利上昇」の綱引きの中で、相場は方向感を探っている。原油の落ち着きはインフレ警戒をいくぶん和らげるが、FRBのタカ派姿勢を覆すほどではない、というのが現状のバランスだ。
今日の相場を動かす4つの力
| 要因 | 内容 | 相場への影響 |
|---|---|---|
| タカ派FRB | 金利据え置き(3.50〜3.75%)も、年内利上げ観測(9/18人) | 株式にマイナス(上値を抑制) |
| インフレ高止まり | 2026年PCE見通し3.6%、コア3.3% | タカ派姿勢を正当化、金利上昇圧力 |
| 原油・イラン | ホルムズ海峡再開合意で原油反落 | 株式にプラス(インフレ懸念後退) |
| AI相場の主役交代 | 高バリュエーション株→実績重視へ資金回転 | 選別物色、指数より個別の差が拡大 |
今後の注目点
- インフレ指標とFRB高官発言:PCEなどの物価データと当局者の発言で、年内利上げ観測がさらに強まるか
- AI投資の「見返り」:グーグルなどの巨額設備投資が、いつ・どれだけ収益に結びつくか。決算ごとに厳しく問われる
- 原油とイランの履行状況:合意が実際に守られ、原油安が定着するか。逆行すればインフレ警戒が再燃する
- 物色の偏り:メモリ・半導体への集中物色が続くのか、それとも循環物色が広がるのか
まとめ
本日の構図:マクロは「潮位」、個別は「波」だ。潮位を決めるのはタカ派FRBと、戦争で上がった後に落ち着き始めた原油。その中で資金は、割高で設備投資の重い大型AI株(グーグル、アップル)から、足元で利益を示すメモリ・半導体(マイクロン、サンディスク、クアルコム)へと回転している。グーグルとエヌビディアの調整は、AIブームの終わりではなく、「期待先行」から「実績重視」への評価軸の転換を映す動きだ。指数の小幅高に安心せず、銘柄ごとの中身を見極める局面である。
よくある質問(FAQ)
いま米国株式市場では何が起きているのか?
主要指数はそろって小幅高。S&P500は+0.52%、ダウは+0.65%、ナスダックは+0.24%、ラッセル2000は+0.37%だった。マイクロンのAIメモリ決算が半導体物色を促した一方、デル(−6.7%)やアップル(−4.7%)など一部大型ハイテクは大きく下落。指数は小幅高でも、内実は勝ち負けが鮮明な『分裂相場』だった。数値は2026年6月25日時点。
なぜグーグル(GOOGL)株は下落しているのか?
5月18日の高値408.61ドルから6月23日には約341ドルへと、5週弱で約16%下げた。主因は三つ。①AI人材の流出(DeepMindのノーベル賞研究者がAnthropicへ、Gemini責任者のシャジーア氏がOpenAIへ)、②約800億ドル(増額後約847.5億ドル)の株式発行と1,800〜1,900億ドルの巨額設備投資による希薄化・フリーキャッシュフロー約47%減、③カリフォルニア州の訴訟敗訴や英国のSNS規制など規制・訴訟リスクだ。
なぜエヌビディア(NVDA)株は軟調なのか?
月間で約9%、週間で約7%下げた(年間ではなお+39%)。これはAI半導体セクター全体の再評価の一部だ。引き金はブロードコムの弱いAI売上ガイダンス(160億ドル対予想約172億ドル)で、6月5日には半導体株指数(SOX)が10%下落し2020年3月以来の大幅安、セクター時価総額が約1.3兆ドル吹き飛んだ。競争激化、SKハイニックスのHBM増産減速報道、そして『完璧を織り込んだ株価』ゆえの利益確定売りが重なった。
相場で上昇・下落の主役となっている銘柄は?
上昇はメモリ・半導体と個人物色銘柄。マイクロンが決算を受け一時+17%、クアルコムが+14%、サンディスクが+11%、ウェンディーズが+13%(週間約+32%)。下落は大型ハイテクで、デルが−6.7%、アップルが−4.7%、アルベマールが−4.4%。AIの恩恵を『実績』として示す企業に資金が向かい、設備投資の重い高バリュエーション株が売られる『主役交代』が鮮明だった。
FRBは利下げするのか、それとも利上げか?
FRBは政策金利を3.50〜3.75%に据え置いたが、ウォーシュ議長の会見はタカ派と受け止められた。最新のドットチャートでは18人中9人が2026年内に少なくとも1回の利上げを見込む。インフレ見通しも引き上げられ(2026年ヘッドラインPCE3.6%、コア3.3%)、当面は利下げより利上げが意識されやすい。これが株式の上値を抑える最大のマクロ要因だ。
原油とイラン情勢は相場にどう影響しているか?
原油はイラン対立開始以降に約60%、年初来で約80%急騰し、戦争由来のインフレ圧力となってきた。しかしトランプ大統領がホルムズ海峡の再開に道を開く合意に署名し、原油は反落。エネルギー由来のインフレ懸念が和らぎ、足元の株式センチメントを下支えしている。ただしタカ派FRBを覆すほどの力はなく、『リスクオン』と『金利上昇』の綱引きが続いている。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではない。市場データ・株価・指標は本稿執筆時点(2026年6月25日)に確認した公開情報に基づくもので、相場は刻々と変動し、将来を保証しない。投資判断は自身の責任で行ってほしい。














