9月の金利番付を発表する。東の横綱は日本の2年国債だ。財務省が公表した9月28日の利回りは1.981%で、1995年3月30日の2.065%以来、31年半ぶりの高さである。月間の上昇幅は23.8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)で、日本の年限の中で最も大きかった。西の序の口に落ちたのは日本の30年債と40年債で、9月の上昇幅はどちらも3.0bpにとどまった。
この番付が示すのは、9月の日本の金利上昇が「短い年限ほど大きい」形だったことだ。夏まで市場を騒がせた超長期債は、今月はほとんど動いていない。動いたのは日銀の政策金利の見通しに最も敏感な2年債である。30日には、その2年債の入札がある。
日本国債利回りの9月の変化(年限別、bp)
読み方:9月の上昇は短い年限ほど大きく、2年債の23.8bpが最大だった。30年債と40年債はどちらも3.0bpしか上がっていない。8月31日と9月28日の終値の差。出所:財務省「国債金利情報」、本誌計算。
番付表——9月に最も上がった利回り
番付は、8月31日から9月28日までの利回りの上昇幅で編成した。東方は日本国債、西方は米国債である。利回りの上昇は債券価格の下落を意味するので、上位ほど「売られた」年限ということになる。
| 番付 | 年限 | 8月31日 | 9月28日 | 9月の変化 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | 日本2年債 | 1.743% | 1.981% | +23.8bp | ◎ |
| 西の横綱 | 米2年債 | 4.34% | 4.92% | +58bp | ◎ |
| 東の大関 | 日本3年債 | 1.894% | 2.125% | +23.1bp | ○ |
| 西の大関 | 米5年債 | 4.49% | 5.06% | +57bp | ○ |
| 東の関脇 | 日本10年債 | 2.943% | 3.082% | +13.9bp | △ |
| — | (以下、上がらなかった側) | ||||
| 西の幕下 | 米30年債 | 5.25% | 5.56% | +31bp | △ |
| 東の序の口 | 日本30年債 | 4.092% | 4.122% | +3.0bp | × |
| 東の序の口 | 日本40年債 | 4.094% | 4.124% | +3.0bp | × |
日米を並べると、上昇幅そのものは米国が大きい。米2年債は1カ月で58bp上がった。ただし水準の意味は日本のほうが重い。米2年債の4.92%は、日本の2年債の1.981%のような「数十年ぶり」の水準ではない。日本の短期ゾーンは、1990年代半ば以来の領域に入った。
東の横綱・日本2年債——◎
1.981%。財務省のデータで2年債がこれを上回っていたのは、1995年3月30日(2.065%)が最後である。年初からの上昇幅は、2025年12月30日の1.167%から81.4bpに達した。
2年債は、今後2年間の政策金利の予想をほぼそのまま映す年限だ。日銀の政策金利は9月24日から1.25%程度になった。2年債はそれより73bp上にある。市場が、この先2年のうちに追加の利上げを複数回見込んでいる計算になる。
注目すべきは時期である。9月の上昇23.8bpのうち13.2bpは、利上げを決めた9月18日より後に起きた。利上げで材料が出尽くしたのではなく、利上げの後に次の利上げを織り込み始めたことになる。日銀は声明で「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と明記した。市場はこの一文を額面どおりに受け取った。判定は◎。
西の横綱・米2年債——◎(ただし中身は別の取組)
4.34%から4.92%へ。58bpの上昇は、日米の全年限の中で最大だった。米国でも利上げ観測が短期ゾーンを押し上げている。本誌が9月の米利上げの際に書いたとおり、米国の金融政策も引き締め方向に動いている。
判定は◎だが、日本とは取組の中身が違う。米国では短い年限と一緒に長い年限も売られた。米10年債は49bp、30年債も31bp上がっている。日本は短い年限だけが売られ、長い年限はほとんど動いていない。
東の関脇・日本10年債——△
3.082%。水準で見れば1996年8月以来の高さで、決して小さな動きではない。9月の上昇幅は13.9bpで、2年債の6割程度にとどまった。日本経済新聞によると、29日の取引時間中(12時50分時点)には3.090%まで上がっている。
判定を△としたのは、10年債の上昇が「短期金利の見通し」でほぼ説明できるためだ。2年債との利回り差は、8月末の120bpから9月28日には110bpに縮んだ。長期金利に固有の売り材料が加わったわけではない。
東の序の口・日本30年債と40年債——×
9月の上昇幅は、30年債も40年債も3.0bpだった。本誌は9月上旬に、30年債が発行開始以来の最高水準を付けたことを取り上げた。その超長期債が、今月は番付の最下位にいる。
29日の40年債入札も落ち着いていた。財務省によると、最高落札利回りは4.125%、応募額は9,280億円で、発行額2,997億円に対する応募倍率は3.10倍(本誌計算)である。日本経済新聞は入札結果を「強め」と伝えた。超長期債には買い手が戻っている。×は負けを意味するが、この負け越しは、超長期債の需給がひとまず落ち着いたことを示している。
技能賞・ドル円——金利差が広がったのに円高
9月で最も説明が難しい一番である。日米の2年債利回り差は、8月31日の2.60%から9月28日には2.94%へ、34bp広がった。教科書どおりなら、ドル高・円安が進む場面だ。
ところが円は強くなった。日本銀行が公表した東京市場17時時点のドル円は、8月31日が159円56〜58銭、9月29日が157円37〜39銭だった。約2円20銭の円高である。
金利差より強く相場を動かしたのは、当局の姿勢とみられる。この間、トランプ米大統領が円安への懸念を示し、日本の当局はレートチェックを実施したと報じられている。経緯はこの記事にまとめた。金利差の拡大がこれ以上の円安につながっていない理由を、介入への警戒だけで説明できるかどうかは、まだ分からない。技能賞としたのは、教科書と逆の動きをしたからである。
殊勲賞・日銀の声明——一文で2年債を動かした
9月18日の決定は賛成7、反対2の僅差だった。浅田委員と佐藤委員は、利上げは時期尚早として反対している。それでも声明は、今後も政策金利を引き上げていく方針をはっきり書いた。さらに、物価の基調が2%を「超えて上振れていくリスク」にも言及している。
2人の反対があったにもかかわらず、市場は反対票よりも声明の方針を重く見た。その結果が、利上げ後の2年債の13.2bpの上昇である。殊勲賞とした。
個人投資家にとっての意味
短期金利の上昇は、変動型住宅ローンや預金の金利に直接つながる。メガバンクの普通預金0.5%と短期プライムレート2.625%は11月2日から適用される。2年債が示しているのは、その先にもう一段の引き上げがあり得るという市場の見方だ。
株式では、短期金利の上昇は銀行の利ざや改善につながる一方、借入の多い企業や不動産にとっては重荷になる。個人向け国債の変動10年の利率も、10年債利回りに連動して決まる仕組みである。どの金利が動いているのかを年限ごとに見分けることが、9月の相場を読むうえでの要点になる。
来場所の注目取組
| 日時(日本時間) | 取組 | 見るところ |
|---|---|---|
| 9月30日 | 2年国債入札 | 2%目前の水準で投資家が買うか |
| 10月1日 8時50分 | 日銀短観(9月調査)、9月会合の「主な意見」 | 企業の景況感と、7対2に割れた会合の議論 |
| 10月2日 21時30分 | 米9月雇用統計 | 米2年債がさらに上がるかどうか |
| 10月29日 | 2年国債入札 | 日銀会合の初日と重なる |
| 10月29〜30日 | 日銀の金融政策決定会合(展望レポート) | 2年債が織り込む追加利上げの時期 |
番付の読み方として一つ付け加える。2年債が2%を超えるかどうかは、それ自体が相場の転換点になるわけではない。見るべきは、政策金利1.25%との差が広がり続けるかどうかである。差が広がれば市場は利上げ観測を強めていることになり、縮めば観測が後退していることになる。短観の見方はこちらで整理した。
主な参照
- 日本国債の利回り(9月28日までの日次、1974年以降の過去データ)/財務省「国債金利情報」
- 40年利付国債(第19回)の入札結果(2026年9月29日)/財務省
- 国債の入札日程(9月・10月)/財務省
- 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)/日本銀行
- 決定会合の日程と公表予定/日本銀行、日本銀行
- 東京外国為替市場の相場(8月31日、9月29日)/日本銀行
- 米国債利回り/米財務省
- 米雇用統計の公表日程/米労働統計局
- 9月29日の長期金利と40年債入札の評価/日本経済新聞
データ基準日:国債利回りは2026年9月28日の終値(財務省公表値、米国債は米財務省公表値)。9月29日の国債利回りは財務省の公表前のため終値を反映しておらず、本文中の10年債3.090%は日本経済新聞が伝えた同日12時50分時点の取引時間中の値である。ドル円は日本銀行が公表した東京市場17時時点の相場。応募倍率と利回り差、年初からの変化幅は公表値からの本誌計算。レートチェックの実施は報道にもとづく。番付と判定は本誌の整理であり、将来の金利や相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













