ニデック(6594)は2026年9月29日18時30分、岸田光哉代表取締役社長執行役員が同日付で辞任したと発表した。後任の社長執行役員には、専務執行役員で最高技術責任者の戒田理夫氏(70)が同日付で就いた。同じ時刻に、延期していた2026年3月期第3四半期と通期の決算短信を9月30日に開示すると発表した。
発表は東証の取引終了後だった。29日の株価は前日比90円(3.85%)安の2,250円で終えた。前日28日は500円安のストップ安で、2営業日の下落率は20.8%になる。
9月29日の発表の要点
| 項目 | 内容 | 効力・日付 |
|---|---|---|
| 辞任 | 岸田光哉 代表取締役社長執行役員(最高経営責任者) | 2026年9月29日付 |
| 新社長 | 戒田理夫 社長執行役員(最高経営責任者 兼 最高技術責任者)。前職は専務執行役員(最高技術責任者) | 2026年9月29日付 |
| 新代表取締役 | 南井正之 代表取締役 常務執行役員(最高コンプライアンス責任者 兼 最高人事責任者)。前職は取締役 常務執行役員 | 2026年9月29日付 |
| 取締役候補 | 戒田氏を代表取締役社長執行役員の候補に選定 | 臨時株主総会で決議予定(日程は未公表) |
| 決算開示日 | 2026年3月期第3四半期決算短信と2026年3月期決算短信 | 2026年9月30日(水) |
| 選定手続き | 独立社外取締役で構成する指名委員会の審議を経て取締役会で決議。第三者機関によるアセスメントを実施 | 9月29日の臨時取締役会 |
辞任の理由として会社が示した内容
開示文書は辞任の経緯を次のように記している。2026年3月期決算と過年度の訂正決算の過程で、旧執行体制下の役職員の行為を再評価した。その中で岸田氏について「財務報告に関し必ずしも適切とは言いかねる言動もあったことが確認されました」とした。
そのうえで、新しいガバナンス体制の下では経営者に従来より高い倫理観が期待されている点などを踏まえ、取締役会が今後の経営体制を議論したと説明した。その後、岸田氏から辞意が示され、取締役会が受理した。「言動」の具体的な内容は開示されていない。
28日の報道から29日の発表までの経過
9月28日、ダイヤモンド・オンラインが社長の解任決定と1兆円規模の減損を報じた。ニデックは同日11時10分、「役員変更及び大規模な減損処理について検討をしているのは事実」としたうえで、現時点で会社として決定した事実はないとする声明を出した。
同日15時30分には、10月1日付の機構改革と人事異動を発表した。この文書の代表者名は岸田氏だった。29日の発表では代表者名が南井氏に替わった。形式は報道の「解任」ではなく「辞任」である。
| 日時(日本時間) | 出来事 | 出所 |
|---|---|---|
| 9月25日(金) | 終値2,840円 | 株価データ |
| 9月28日(月)朝 | 社長解任決定と1兆円規模の減損を報道 | ダイヤモンド・オンライン(報道) |
| 9月28日 11:10 | 「検討は事実、決定した事実はない」と声明 | ニデック適時開示 |
| 9月28日 15:30 | 10月1日付の機構改革・人事異動を発表(代表者名は岸田氏) | ニデック適時開示 |
| 9月28日 大引け | 2,340円、500円安のストップ安 | 株価データ |
| 9月29日 大引け | 2,250円、90円安 | 株価データ |
| 9月29日 18:30 | 岸田氏の辞任、戒田氏の社長就任、決算開示日を発表 | ニデック適時開示 |
| 9月30日(水) | 2026年3月期第3四半期・通期の決算短信を開示予定 | ニデック適時開示 |
背景
ニデックは2025年10月28日付で東証から特別注意銘柄に指定された。2025年3月期の有価証券報告書について、監査法人が「意見不表明」としたことが理由である。日本経済新聞社は同年11月5日付で、ニデックを日経平均株価の構成銘柄から除外した。このため同社株の値動きは、日経平均には直接反映されない。TOPIXには引き続き反映される。
決算の開示は大幅に遅れている。同社は2026年1月28日に第3四半期決算短信の開示が四半期末から45日を超えると公表した。4月27日には2026年3月期決算発表の延期を公表した。9月30日の開示は、第3四半期末(2025年12月末)から約9カ月後、期末(2026年3月末)から6カ月後にあたる。
前日までの報道と会社声明の食い違いは、9月28日の記事で整理した。報道のうち人事については、29日の開示で会社の決定になった。減損の金額は29日の開示には含まれていない。
新経営陣の経歴
| 氏名 | 新役職 | 主な経歴 | 保有株式数 |
|---|---|---|---|
| 戒田理夫(70) | 社長執行役員(最高経営責任者 兼 最高技術責任者) | 1979年リードエレクトロニクス(現ニデックアドバンステクノロジー)入社。2003年同社代表取締役社長、2018年会長。2024年4月ニデック専務執行役員・最高技術責任者。「ニデック再生委員会」副委員長 | 102,718株 |
| 南井正之(57) | 代表取締役 常務執行役員(最高コンプライアンス責任者 兼 最高人事責任者) | 1991年トヨタ自動車入社、2022年人事部長。2024年東芝ライフスタイル。2025年1月ニデック入社、同年4月執行役員。2026年6月取締役 | 528株 |
会社は戒田氏の選定理由として、ニデック再生委員会の副委員長としての実績、厳しい経営環境を把握したうえで改革を推進する指導力、利害関係者に誠実に向き合う姿勢を挙げた。戒田氏は取締役ではない。代表取締役社長への就任には、臨時株主総会での取締役選任が必要になる。総会の日程は公表されていない。
関係者の発言
- ニデック(9月28日の声明):「役員変更及び大規模な減損処理について検討をしているのは事実」。現時点で決定した事実はないとした
- ニデック(9月29日の開示、岸田氏について):「財務報告に関し必ずしも適切とは言いかねる言動もあったことが確認されました」
- ニデック(9月29日の開示、決算開示について):「株主、投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様にはご迷惑とご心配をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます」
市場の反応
| 日付 | 終値 | 前営業日比 |
|---|---|---|
| 9月25日 | 2,840円 | — |
| 9月28日 | 2,340円 | −500円(−17.61%) |
| 9月29日 | 2,250円 | −90円(−3.85%) |
| 2日間の累計 | — | −590円(−20.77%) |
29日の日経平均株価は前日比396円安の6万5,481円27銭で、2日続落だった。ニデックは構成銘柄ではない。人事と決算日程に対する株価の反応は、30日の取引で初めて表れる。30日の決算短信が取引時間中に出るか、終了後に出るかは開示されていない。
今後の日程
- 9月30日(水):2026年3月期第3四半期決算短信と2026年3月期決算短信の開示。報道された1兆円規模の減損が数字として確認できる最初の機会
- 日程未定:戒田氏を取締役に選任する臨時株主総会の招集
- 2026年10月28日:特別注意銘柄の指定から1年
米国の金利上昇と、それに伴う日本株のバリュエーションへの影響は米10年債5%超えの記事にまとめている。
主な参照
- 代表取締役社長執行役員の辞任および新社長執行役員等の選定に関するお知らせ(2026年9月29日)/ニデック(TDnet)
- 2026年3月期第3四半期決算短信及び2026年3月期決算短信の開示予定日の決定に関するお知らせ(2026年9月29日)/ニデック(TDnet)
- 一部報道に関するニデックの声明(2026年9月28日)/ニデック(TDnet)
- 機構改革および役員等の異動に関するお知らせ(2026年9月28日)/ニデック(TDnet)
- 東京証券取引所による特別注意銘柄の指定についてのお知らせ(2025年10月28日)/ニデック
- ニデックが指定された「特別注意銘柄」とは/日本経済新聞
- 特別注意銘柄指定と日経平均からの除外/株探
- ニデック株と日経平均の終値/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年9月29日の東京市場の終値と、同日18時30分(日本時間)までの適時開示。株価は終値で、取引時間中の値は使っていない。9月28日の報道内容はダイヤモンド・オンラインの報道として同社声明が引用した範囲で記載した。1兆円規模とされる減損の金額は、本稿の執筆時点で会社から発表されておらず、報じられている段階である。岸田氏の「言動」の具体的な内容は開示されていない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












