米AI開発企業アンソロピックの新規株式公開(IPO)の目論見書の内容を、ロイターが米中部時間9月28日夜(日本時間29日午前)に報じた。報道によると、2026年4〜6月期の売上高は115億ドル、2025年通期の最終損益は約420億ドルの赤字だった。上場時の企業価値として2兆ドル超を目指しているという。
目論見書は、日本時間9月29日22時45分時点で米証券取引委員会(SEC)の電子開示システムEDGARに公開されていない。同社も目論見書の内容について発表していない。本稿の数値は、会社が過去に公表した数値を除き、すべて報道ベースである。
報じられた主要数値
| 項目 | 報じられた数値 | 報道元 |
|---|---|---|
| 売上高(2025年通期) | 約46億ドル(前年の約12倍) | ロイター、テッククランチ、フォーチュン |
| 営業費用(2025年通期) | 約130億ドル | テッククランチ、フォーチュン |
| 営業損失(2025年通期) | 80億ドル超 | ロイター、テッククランチ、フォーチュン |
| 最終損失(2025年通期) | 約420億ドル | ロイター、フォーチュン |
| うち会計上の損失 | 約340億ドル(株式に転換できる資金調達商品の評価額上昇による) | ロイター |
| 計算資源・インフラ費用(2025年通期) | 73.3億ドル(前年の約3倍) | ロイター |
| 売上高(2026年1〜3月期) | 47.3億ドル | フォーチュン |
| 売上高(2026年4〜6月期) | 115億ドル | テッククランチ、フォーチュン |
| 営業損益(2026年4〜6月期) | 調整後で2四半期連続の黒字の見通し | テッククランチ、フォーチュン |
| 顧客の集中度(2025年) | 売上高の4分の1近くが2社から | ロイター、テッククランチ |
| クラウド・計算資源・インフラの支払い予定 | 総額5,180億ドル | ロイター、テッククランチ |
| 目標とする企業価値 | 2兆ドル超 | ロイター |
| 上場時期 | 11月3日の米中間選挙の後 | ロイター |
アンソロピックの2025年通期の損益(報道値、億ドル)
読み方:最終損失約420億ドルのうち約340億ドルは会計上の損失と報じられた。営業損失は80億ドル超。数値は報道値の概数で、原本の目論見書は未公開。出所:ロイター、テッククランチ、フォーチュン。
会社が公表済みの数値との照合
同社は5月28日、シリーズHと呼ぶ資金調達で650億ドルを調達したと発表した。調達後の企業価値は9,650億ドルだった。目標とされる2兆ドル超は、この2倍強にあたる。
同じ発表で、同社は年換算の売上高(ランレート)が5月に470億ドルを超えたと公表した。報道された4〜6月期の売上高115億ドルを4倍すると460億ドルになる(本誌計算)。会社発表の数値と報道の数値は、おおむね整合する。
| 項目 | 数値 | 確認の状態 |
|---|---|---|
| シリーズHの調達額 | 650億ドル | 会社発表(5月28日) |
| 調達後の企業価値 | 9,650億ドル | 会社発表(5月28日) |
| 年換算売上高(5月時点) | 470億ドル超 | 会社発表(5月28日) |
| アマゾンの出資 | 50億ドル(大手クラウド企業による出資150億ドルの一部) | 会社発表(5月28日) |
| 4〜6月期売上高の4倍 | 460億ドル | 報道値からの本誌計算 |
| 目論見書のEDGAR公開 | 未公開 | 日本時間9月29日22時45分時点、本誌確認 |
背景
2025年の最終赤字約420億ドルのうち、約340億ドルは会計上の評価損と報じられた。株式に転換できる資金調達商品の評価額が、企業価値の上昇に伴って増えたためである。
費用の中心は計算資源である。2025年の計算資源・インフラ費用は73.3億ドルで、営業費用約130億ドルの半分を超えたと報じられた。5月の発表では、アマゾンが最大5ギガワット、グーグルが5ギガワットの計算能力を同社に提供するとしている。テッククランチは、5,180億ドルの支払い予定の背景として、2026年に結んだグーグルなどとの計算資源の契約を挙げた。
関係者の発言・記載
- アンソロピック(5月28日の発表):年換算売上高が「今月、470億ドルを超えた」と記載した
- 目論見書(テッククランチの報道):リスク要因として、AIモデルが「停止に抵抗する」「情報を隠す、または操作する」可能性に言及した。
- 目論見書(フォーチュンの報道):リスク要因に「人類に対する存亡のリスク」を含めた。
- 目論見書の分量(テッククランチ、フォーチュンの報道):全体の約3分の1がリスクの記載にあてられている。
市場の反応
報道は9月28日の米国市場の取引終了後に出た。29日の米国市場の取引時間中(米東部時間9時50分、日本時間22時50分)の株価は次のとおりだった。
- アマゾン・ドット・コム(AMZN):245.78ドル、前日比0.15%安
- アルファベット(GOOGL):340.39ドル、前日比0.69%安
- マイクロソフト(MSFT):503.04ドル、前日比1.21%安
- エヌビディア(NVDA):230.14ドル、前日比0.56%高
同じ29日の東京市場では、ソフトバンクグループが3.35%安で取引を終えた。同社はオープンAIの大株主である。下落の主因として報じられたのはオープンAIの新モデル公開見送りで、アンソロピックの報道との関係は確認されていない。経緯はこの記事にまとめた。
上場が実現した場合、株価指数への組み入れを通じて、日本の個人投資家が持つ米国株の投資信託にも影響が及ぶ可能性がある。大型株への集中の現状はこの記事で整理した。組み入れの時期と条件は、上場する取引所と各指数の規則による。取引所は、本稿執筆時点で会社から発表されていない。
今後の日程
- 9月29日(米国時間):トランプ米大統領がホワイトハウスでAI企業の経営者と会談。アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)も出席すると報じられている。
- 未定:目論見書(S-1)のEDGARでの公開。公開されれば、報道された数値を原本で確認できる。
- 11月3日:米中間選挙。上場はその後と報じられている。
主な参照
- 目論見書の内容(企業価値2兆ドル超、最終損失、計算資源費用、上場時期)/ロイター(USニューズ掲載、米中部時間2026年9月28日)
- 目論見書の内容(売上高、営業費用、顧客の集中度、リスク要因)/テッククランチ(米太平洋時間2026年9月28日22時13分)
- 目論見書の損益計算書(四半期売上高)/フォーチュン(米東部時間2026年9月29日6時3分)
- 目論見書の存亡リスクの記載、リスク記載の分量/フォーチュン(2026年9月29日)
- シリーズHの調達額、企業価値、年換算売上高、アマゾンの出資/アンソロピック(2026年5月28日)
- 目論見書の公開状況/米証券取引委員会(EDGAR全文検索)
- 米国株の株価(取引時間中)/stockanalysis.com
- ホワイトハウスでのAI企業経営者との会談/CNBC
データ基準日:2026年9月29日22時50分(日本時間)。米国株の株価は同日の取引時間中の値で、終値ではない。目論見書に関する数値はすべて報道にもとづくもので、アンソロピックは目論見書の内容を公表しておらず、本誌は原本を確認していない。報道元が1社のみの数値(1〜3月期売上高、会計上の損失の内訳、目標とする企業価値、上場時期)は、特に確度が低い。5,180億ドルの支払い期間は報道により記載が異なるため、本稿では期間を示していない。上場の時期、取引所、条件は変更される可能性がある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。











