9月28日の米国株番付を発表する。東の横綱はエヌビディア(NVDA)、1.68%高の228.86ドル。同日に発表した1,500億ドル(約23.6兆円)の自社株買い枠の追加が、そのまま白星になった。西の序ノ口に落ちたのはモンゴDB(MDB)、最高経営責任者(CEO)がメタに移ると発表して18.46%安である。
土俵そのものは荒れていた。米30年国債利回りは5.56%と、2004年6月以来の高さに達した。S&P500は0.77%安、ナスダック総合指数は0.92%安、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1.61%安。半導体指数が下げる中で、指数の最大銘柄だけが上げた一日だった。
番付表:9月28日の勝敗
| 番付 | 銘柄・資産 | 9月28日終値 | 前営業日比 | 材料 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | エヌビディア(NVDA) | 228.86ドル | +1.68% | 自社株買い枠1,500億ドル追加 | ◎ |
| 西の横綱 | エクソンモービル(XOM) | 162.52ドル | +1.20% | 特定できず(WTIは+0.21%) | ○ |
| 東の大関 | TSMC(TSM、米預託証券) | 452.88ドル | +0.50% | 特定できず | ○ |
| — | (以下、負け側) | ||||
| 西の幕下 | メタ・プラットフォームズ(META) | 715.62ドル | −4.79% | オープンAIの新エージェントの報道 | × |
| 東の三段目 | インテル(INTC) | 116.03ドル | −5.67% | 特定できず | × |
| 西の三段目 | ボーイング(BA) | 184.39ドル | −6.91% | 737MAX10の認証延期 | × |
| 東の序二段 | アーム(ARM) | 283.33ドル | −8.70% | 9月の急騰後の利益確定と報道 | × |
| 西の序ノ口 | モンゴDB(MDB) | 334.68ドル | −18.46% | CEOがメタへ転出 | × |
9月28日の騰落率(前営業日比、%)
出所:Yahoo!ファイナンスの日足終値(2026年9月25日、28日、米東部時間)から本誌計算。SOXはフィラデルフィア半導体株指数。本誌が確認した20銘柄のうち上昇は3銘柄だけだった。
本誌が値動きを確認した大型株と話題株20銘柄のうち、上げたのは3銘柄だけだった。上げ幅もエヌビディアの1.68%が最大である。この番付は「誰が一番強かったか」より「誰が崩れなかったか」の表に近い。
東の横綱・エヌビディア:◎
エヌビディアは9月28日付の発表で、取締役会が既存の自社株買いプログラムに1,500億ドルの追加を承認したと明らかにした。これにより残りの買い付け枠は合計2,350億ドルになる。追加前の残り枠は差し引きで850億ドルだった計算だ。同社は残る枠の全額を2028年度(同社の会計年度)までに実行する見込みだとしている。
同社は発表文で、今回の追加を「史上最大の自社株買い枠の追加」と位置づけた。比較の目安になるのは、アップルが2024年5月2日に発表した1,100億ドルの追加枠である。エヌビディアの1,500億ドルはこれを400億ドル上回る。1ドル=157円42銭(9月29日19時42分、日本時間)で換算すると約23.6兆円になる。
株価の取組内容も確認しておく。28日の始値は229.75ドルで、前営業日の終値225.07ドルを2.1%上回って始まった。高値は233.21ドル、終値は228.86ドル。寄り付きの勢いは日中にやや削られたが、SOXが1.61%下げた日に1.68%の上昇で、指数との差は3.3ポイントに開いた。発表文に発表の時刻は記されていない。始値の段階で株価が高かったことだけが、データで確認できる。
判定は◎。ただし但し書きが付く。自社株買いの「枠」は上限であり、実際に買う義務を負うものではない。また、S&P500の中でエヌビディアとアップルの比重がすでに大きいことはS&P500の集中度を扱った記事で見たとおりだ。自社株買いで発行済み株式数が減れば、指数の中での比重はさらに高まり得る。
取組を荒らした行司役:米30年債5.56%
米財務省の公表値で、28日の30年債利回りは5.56%、10年債は5.24%、2年債は4.92%だった。前営業日比では30年債が0.07ポイント、10年債が0.07ポイント、2年債が0.11ポイントの上昇である。30年債が5.56%以上だったのは2004年6月14日(5.58%)が最後で、10年債が5.24%以上だったのは2007年6月12日(5.26%)が最後になる。
| 年限 | 9月25日 | 9月28日 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 2年 | 4.81% | 4.92% | +0.11pt |
| 10年 | 5.17% | 5.24% | +0.07pt |
| 30年 | 5.49% | 5.56% | +0.07pt |
先週は長期債が主導する上昇だった。この点は米10年債利回りが5%を超えた日の記事で扱った。28日は違う。2年債の上げ幅が最も大きかった。2年債は政策金利の見通しに最も敏感な年限である。利回り上昇の主役が、財政や需給から米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測に移り始めた可能性がある、と本誌はみる。判定は、株式側から見て×である。
西の序ノ口・モンゴDB:×
モンゴDBは28日午前8時30分(米東部時間)、チランタン(CJ)・デサイCEOが社長兼CEOを退任すると発表した。前CEOのデブ・イティチェリア氏が暫定の社長兼CEOとして復帰する。複数の米メディアは、デサイ氏がメタに移ると報じている。同社は同時に業績見通しを据え置いた。
株価の安値は300.00ドルで、前営業日比の下落率は一時26.9%に達した。終値は334.68ドルで18.46%安。見通しを据え置いても、報道によれば就任から1年足らずのトップの退任を、市場は重く見た。判定は×。この日の番付で最も大きく負け越した。
東の序二段・アームと、半導体の負け越し組:×
アームは8.70%安の283.33ドル。9月21日には13.9%上げた銘柄で、その日の動きはCPU関連4銘柄だけが買われた日の記事で書いた。米メディアは28日の下げを9月の急騰後の利益確定と報じている。会社からの発表は確認できていない。
同じ半導体でも、AMDは3.61%安、インテルは5.67%安、マイクロン・テクノロジーは2.61%安だった。21日にはエヌビディアがCPU関連株に置いていかれた。28日は逆に、エヌビディアだけが土俵に残った。1週間で主役が入れ替わったことになる。判定は×。
西の三段目・ボーイング:×
ボーイングは6.91%安の184.39ドル。同社は、一部の737MAXに、特定の着陸条件で自動の飛行誘導を使えなくなる恐れのあるソフトウエアの不具合があると明らかにした。米連邦航空局(FAA)はこれを受けて737MAX10の認証を延期した。FAAは是正措置審査委員会を開く計画だが、開催は早くても来週以降になると報じられている。10月と見込まれていた認証の時期は不透明になった。判定は×。
西の幕下・メタ:×
メタは4.79%安の715.62ドル。9月にAIエージェント「Muse」で急騰した銘柄で、その収益性はMuseを4枚の図で分解した記事で検証した。米メディアは28日の下げについて、オープンAIが競合する常時稼働型のエージェント「o」を発表するとの報道が重しになったと伝えている。オープンAIは9月29日(米国時間)に開発者会議を予定していると報じられている。会社側の説明はない。判定は×。
殊勲賞・敢闘賞・技能賞
- 殊勲賞:エヌビディア。SOXが1.61%下げた日に1.68%上げた。材料は自社の発表で、日付と金額が一次資料で確認できる。
- 敢闘賞:米VIX指数。16.07と前営業日比8.07%上昇した。株安が静かに進んだのではなく、警戒が強まった中での下げだったことを示す。
- 技能賞:東京のアドバンテスト(6857)。米半導体安の翌日、29日の東京市場で0.53%高の3万3,910円。日経平均が396円安の6万5,481円27銭となる中で上げた。
アドバンテストはAI向けを含む半導体の試験装置を手がける会社で、日経平均への影響が大きい値がさ株である。東京ではソフトバンクグループが下げた一方で、半導体の試験装置株は崩れなかった。米国の自社株買いの材料が、東京の関連株の下支えになった可能性はある。ただし29日の値動きの理由を特定できる一次情報は確認できていない。
来場所の注目取組
| 日時(日本時間) | 取組 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 9月29日(米国時間) | オープンAIの開発者会議(報道) | メタなどエージェント関連株の反応 |
| 9月30日21:30 | 米8月の個人所得・個人消費支出(PCE) | 2年債が4.92%からさらに上がるか |
| 10月1日8:50 | 日銀短観 | 企業の想定為替レートと実勢の差 |
| 来週以降(報道) | FAAの是正措置審査委員会 | 737MAX10の認証時期 |
短観で何を見るかは10月1日の短観の予習記事にまとめた。本誌が最も注目するのはPCEの取組である。28日の利回り上昇は2年債が主導した。物価指標が強ければ利上げ観測がさらに強まり、30年債5.56%は通過点になり得る。その場合、自社株買いという自前の支えを持つ銘柄と、持たない銘柄の差はさらに開くとみる。逆に、PCEが落ち着いて2年債が4.8%台に戻れば、28日に負け越した半導体株が巻き返す展開もあり得る。
主な参照
- NVIDIA Announces a $150 Billion Share Repurchase Authorization Increase(2026年9月28日)/NVIDIA
- Apple reports second quarter results(2024年5月2日、1,100億ドルの自社株買い枠)/Apple
- MongoDB Announces CEO Transition(2026年9月28日8時30分、米東部時間)/MongoDB(PR Newswire)
- Boeing 737 Max 10 certification delayed by software issue/CNBC
- Meta stock falls as OpenAI ‘o’ agent threatens historic rally/Yahoo Finance
- Arm Holdings falls 9% amid profit-taking after recent surge/Seeking Alpha
- Daily Treasury Par Yield Curve Rates(2026年9月)/米財務省
- 30年債利回りの過去の推移(DGS30、DGS10)/FRED(セントルイス連銀)
- 公表予定(Personal Income and Outlays, August 2026)/米商務省経済分析局
- 株価・指数の日足データ/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:米国株と指数は2026年9月28日(米東部時間)の終値、米国債利回りは米財務省の同日公表値、東京株は9月29日の終値。ドル円の換算レートは9月29日19時42分(日本時間)の気配値で、取引時間中の値である。「史上最大の自社株買い枠の追加」はエヌビディア自身の説明で、本誌は他社の全事例を網羅的には確認していない。エクソンモービル、TSMC、インテルの値動きの理由は特定できていない。メタ、アームの下落理由とデサイ氏のメタへの転出、FAAの委員会の日程は報じられている内容で、会社や当局からの確認は取れていない。本誌が確認した20銘柄はNVDA、AAPL、MSFT、AMZN、GOOGL、META、AVGO、TSLA、AMD、MU、BA、MDB、ORCL、INTC、TSM、ARM、SMCI、PLTR、JPM、XOM。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














