米AMDは8月4日引け後、2026年4-6月期の売上高が前年比50%増の115.36億ドルと過去最高になったと発表し、非GAAPベースの1株利益1.66ドルとともに市場予想を上回った。7-9月期の売上高見通しも130億ドル±3億ドルと公表コンセンサスの約125.2億ドルを超えたが、株価は時間外取引で一時約10%下落し8.8%安の472.94ドルで確定、5日の通常取引も米東部時間10時32分時点で483.51ドル(前日比6.76%安)と続落している。記録的な決算でも売られる展開は、SKハイニックス、インテルに続き半導体大手で3例目だ。
決算の主要数値
| 項目 | 実績 | 市場予想 | 前年比・比較 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 115.36億ドル(過去最高) | 約112.8〜113億ドル | +50% |
| 非GAAP 1株利益 | 1.66ドル | 1.60〜1.62ドル(集計元で差) | +246% |
| GAAP 1株利益 | 1.38ドル | ― | +156% |
| 非GAAP粗利率 | 56% | 予想並み | +13pt |
| GAAP粗利率 | 54% | ― | +14pt |
| データセンター部門 | 67.18億ドル(売上の58%) | 約65億ドル | +107% |
| クライアント部門 | 30.62億ドル | ― | +23% |
| ゲーミング部門 | 7.79億ドル | ― | −31% |
| 組み込み部門 | 9.77億ドル | ― | +19% |
| 非GAAP営業利益 | 30.94億ドル | ― | +245% |
| フリーキャッシュフロー | 15.58億ドル | ― | 前四半期25.7億ドルからほぼ半減 |
| 設備投資 | 8.08億ドル | 約2.99億ドル | 約2.9倍 |
| 7-9月期売上高ガイダンス | 130億ドル±3億ドル | 約125.2億ドル(LSEG) | +41% |
前年同期は輸出規制に伴うMI308関連費用約8億ドルを含み、前年比の伸び率は比較対象が低い点に留意が必要だ。粗利率はGAAP54%と非GAAP56%で水準が異なり、非GAAPは予想並みだった。粗利率の未達は生じていない。
市場が反応した5つの数字
下落の要因は業績の未達ではない。市場が反応したのは次の5つの数字だ。
| 要因 | 公表値 | 比較対象 | 日付 |
|---|---|---|---|
| 7-9月期売上高ガイダンス | 130億ドル±3億ドル | 非公式の強気予想は最大約140億ドル | 8月4日 |
| 設備投資とFCF | 設備投資8.08億ドル、FCF15.58億ドル | 設備投資はアナリスト想定約2.99億ドルの約2.7倍、FCFは前四半期25.7億ドルからほぼ半減 | 8月4日 |
| 7-9月期粗利率ガイダンス | 非GAAP56%で横ばい | 4-6月期実績56%から拡大なし | 8月4日 |
| GPU収益の顧客構成 | ギガワット級コミット合計約14GW | OpenAI最大6GW・Meta6GW・Anthropic最大2GWの3社に集中 | 7月22日ほか |
| SpaceXのGPU調達方針 | Nvidia独占採用を表明 | SpaceXにAMDへの公表済みコミットはない | 8月4日引け後 |
第1にガイダンスだ。130億ドルはLSEG集計の約125.2億ドルを上回った。一方、複数の報道によると非公式には最大約140億ドルの数字が語られていた。第2に設備投資だ。8.08億ドルは前年同期の2.82億ドル、前四半期の3.89億ドルから急増した。この結果、フリーキャッシュフローは25.7億ドルから15.58億ドルへ縮小した。AIデータセンター設備投資の持続性は業界横断の論点となっている。第3に粗利率だ。7-9月期の非GAAP粗利率ガイダンスは56%で、Heliosの立ち上げ期に拡大を示さなかった。第4に顧客集中だ。ギガワット級のGPUコミットはOpenAI、Meta、Anthropicの3社で合計約14GWとなる。第5にSpaceXだ。8月4日引け後にはSpaceXが上場企業として初の決算説明会でNvidia製チップの独占採用方針を表明し、翌日のAMD株の重しとなった(Investing.comの報道による関連付け)。なお中国向けMI308の新規売上は、4-6月期実績にもガイダンスにも計上されていない。
発表前に積み上がっていた期待
発表前の時点で株価は年初来140%超上昇していた。6月には上場来高値584.73ドルを付けた。8月4日の通常取引も前日比7.0%高の518.58ドルで終えた。決算発表の直前まで買われていた形だ。
目標株価も7月にかけて切り上がっていた。ゴールドマン・サックスは7月6日に450ドルから640ドルへ引き上げた。UBSは670ドルから700ドル、ロゼンブラットは490ドルから665ドルへ引き上げた。ジェフリーズ640ドル、BofA620ドル、ウェルズ・ファーゴ615ドル(6月30日)が続いた。公表コンセンサスの約125.2億ドルに対し、強気筋は最大約140億ドルを想定していた。ガイダンスが超えるべき水準は、公表値より高い位置にあった。
関係者の発言
リサ・スーCEO(決算説明会、8月4日):「Heliosは量産に入った。初出荷は今四半期後半に始まり、第4四半期から2027年にかけて拡大する」「Q3はランプのごく初期だ。Q4が一段の増加、Q1がさらに一段の増加になる」
スーCEO(同): ギガワット級以外の需要について「いわばギガワット級よりもっと通常のスケールでHeliosに関心を持つ顧客が他に多数いる」。またデータセンター部門の売上は2027年に前年比2倍超になるとの見通しを示した。
スーCEO(Yahoo Finance、8月5日):「下期については、メモリと部品のコスト上昇が需要の重しとなるため、PC市場の軟化を想定している」
ストラテジストのシェイ・ボロール氏(Yahoo Finance、8月5日):「並外れた結果を織り込んだ株価だったが、これは並外れた結果ではなかった(It was priced for an exceptional result, and this was not an exceptional result.)」。設備投資については「衝撃的な上方修正だ」と述べた。
Futurumのダニエル・ニューマンCEO(Benzinga、8月5日): 結果は「良かった」が、市場は「Helios主導のブローアウト・ガイダンス」を求めていたと述べた。
バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏(Benzinga、8月5日):「堅実な四半期だったが、高まった投資家の期待には届かなかった可能性がある」
ドイツ銀行(CNBC、8月5日): 結果はコンセンサスを「わずかに上回った」が、「より楽観的な予想」には届かなかったと指摘した。
イーロン・マスク氏(SpaceX決算説明会、8月4日):「われわれはNvidia独占だ(We’re exclusive to Nvidia)」。Vera Rubinアーキテクチャを「最良のAIコンピュータ」と位置付けた。
市場の反応
株価の経路は次の通りだ。8月4日の通常取引は7.0%高の518.58ドルで終了した。時間外で一時約10%下落し、8.8%安の472.94ドルで確定した。5日は10時32分(米東部時間)時点で483.51ドル(前日比6.76%安)、当日の安値は480.44ドル、高値は502.00ドルだった。6月高値584.73ドルを約16%下回る水準で、52週レンジは149.22〜584.73ドルとなる。一方、NVIDIAは同時刻に219.58ドル(3.6%高)、フィラデルフィア半導体株指数は1.04%高だった。売りはAMD個別に集中している。
以下は株価のライブチャート(TradingView、NASDAQ:AMD)。
バリュエーションは集計基準で差が大きい。予想PERはstockanalysis基準で44.8倍、Zacks基準で54.08倍となる。Zacks基準ではNVIDIAが18.9倍、ブロードコムが21.57倍だ。ボロール氏は「60倍近い」と表現した。決算後のアナリスト平均目標株価は592.11ドル(51人、8月5日朝時点、更新中)で、評価はストロング・バイを維持している。ただしモルガン・スタンレーの465ドルは現在の株価を下回る。
| 証券会社 | 目標株価 | 投資判断 |
|---|---|---|
| モルガン・スタンレー | 465ドル(410ドルから) | イコールウエート |
| JPモルガン | 550ドル | ニュートラル |
| Truist | 594ドル(478ドルから) | 買い |
| バーンスタイン | 600ドル | アウトパフォーム |
| Benchmark | 685ドル | 買い |
| ウェルズ・ファーゴ | 700ドル(615ドルから、CNBC集計) | オーバーウエート |
| 平均(51人) | 592.11ドル | ストロングバイ |
決算シーズン横断で見た「ビートでも売り」
FactSetによると、今期にEPSが予想を上回った企業の平均株価反応はプラス0.1%にとどまる。5年平均のプラス1.0%の10分の1だ。一方、EPSビート率は86%と5年平均の78%を上回り、ブレンド増益率は47.4%に達する。予想超えが標準化し、株価の押し上げ効果が消えた計算になる。今期決算シーズンの期待水準の高さは事前から指摘されていた。
同様の反応は7月から続く。SKハイニックスは7月29日、最高益でもコンセンサス未達で9.6%下落した。インテルは売上17億ドルの上振れでも翌日7.9%下落した(7月24日)。アップルは時間外で6.65%安(7月30日)となった。TSMCとASMLの過去最高決算が売られた展開も先行例となる。一方、マイクロソフトはAzureの再加速(前年比43%増)を示し7月30日に15.63%上昇した。パランティアは通期ガイダンス引き上げで8月4日に29.5%上昇し、キャタピラーは約9%高、マイクロンはガイダンス引き上げで6%前後上昇した。明暗を分けたのは予想超えの有無ではなく、ガイダンスが再加速を示したかどうかだった。AMDとSKハイニックスのガイダンスは市場の想定線上にとどまった。
前提が崩れる条件
会社側の説明は時間軸で構成されている。Helios初出荷が今四半期後半、第4四半期に段階増、2027年にデータセンター部門売上2倍超という順序だ。保有・検討時の確認事項は予想超えの有無ではなく、この時間軸が維持されているかどうかにある。前提が崩れたと判断できる条件は次の通りだ。
| 会社側の説明 | 確認できる時期 | 崩れたと判断する条件 |
|---|---|---|
| Helios初出荷は今四半期後半(8月4日説明会) | 7-9月期決算(11月上旬想定) | 出荷開始への言及がない |
| 第4四半期に出荷を段階増 | 7-9月期決算の10-12月期ガイダンス | データセンター部門の伸びが横ばいにとどまる |
| 7-9月期売上高130億ドル±3億ドル | 7-9月期決算 | 実績が下限の127億ドルを下回る |
| 7-9月期の非GAAP粗利率56% | 7-9月期決算 | 実績が56%を下回る |
| 2027年にデータセンター部門売上2倍超 | 今後の顧客発表・各四半期決算 | ギガワット級顧客が3社のまま追加されない |
今後の日程
- 2026年7-9月期後半: Helios初出荷(会社計画、8月4日決算説明会)
- 2026年8月下旬: NVIDIA決算発表(AI設備投資サイクルの次の判定材料、日付は同社の公表待ち)
- 2026年下期: Meta向け第1ギガワット出荷開始(2026年2月24日発表)
- 2026年10-12月期: OpenAI向けHelios展開開始(2026年7月23日のAdvancing AI 2026発表)
- 2026年11月上旬(想定): AMDの7-9月期決算発表
- 2027年上期: Anthropic向け第1ギガワット稼働開始(2026年7月22日発表)
主な参照: AMD IRプレスリリース(2026年8月4日)/決算説明会トランスクリプト(Investing.com)(8月4日)/Benzinga(8月4〜5日)/Yahoo Finance(8月5日)/stockanalysis.com(8月5日)/FactSet Insight(7月31日)/CNBC(8月5日)/SiliconANGLE(8月4日)
データ基準日は2026年8月5日。株価は米東部時間10時32分時点のライブ値であり、その後変動している可能性がある。アナリスト目標株価も更新が続いている。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨する投資助言ではない。投資判断は自身の責任で行う必要がある。
















