10月29日前場の番付を発表する。東の横綱はアドバンテスト、1銘柄で日経平均を407円76銭押し上げた。ところが指数の上げ幅は177円09銭しかない。アドバンテストを除けば、日経平均は前場だけで約231円の下げだった計算になる。西の序二段に落ちたのはTDK、49円81銭の押し下げで負け役の筆頭である。
前引けの日経平均は3日続伸の6万4,131円28銭(前日比+177円09銭、+0.28%)。数字だけなら勝ち越しだ。だがTOPIXは3,979.89(−11.82、−0.30%)と負け越し、東証プライムの値上がりは478銘柄、値下がりは1,022銘柄と、下げた銘柄が上げた銘柄の2倍を超えた。午前10時52分には6万3,882円45銭まで下げ、一時は前日終値を割り込んでいる。上がった指数の下で、土俵に残っていたのは一握りだった。
日経平均への寄与度(10月29日前引け、円)
読み方:アドバンテスト1銘柄の押し上げ(407.76円)は、日経平均の上げ幅(177.09円)の2.3倍だった。出所:株探の前引け集計(2026年10月29日11時30分)。取引時間中の数値で、終値ではない。
前場の番付表——寄与度で見た勝敗
| 番付 | 銘柄 | 前引け | 前日比 | 日経平均への寄与 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | アドバンテスト(6857) | 36,820円 | +5.41% | +407.76円 | ◎ |
| 東の大関 | キオクシアHD(285A) | 14,850円 | +3.56% | +36.10円 | ○ |
| 西の大関 | イビデン(4062) | 9,922円 | +2.68% | +34.92円 | ○ |
| — | (以下、負け側) | ||||
| 西の序二段 | TDK(6762) | 2,692円 | −3.53% | −49.81円 | × |
| 東の三段目 | 東京エレクトロン(8035) | 9,719円 | −0.88% | −43.49円 | × |
| 西の三段目 | ファナック(6954) | 5,751円 | −2.66% | −26.46円 | × |
| 東の幕下 | ソフトバンクグループ(9984) | 4,655円 | −0.58% | −21.84円 | × |
| 西の幕下 | 日立製作所(6501) | 5,132円 | −8.68% | −16.45円 | × |
この表の要点は一つだ。寄与度の上位3銘柄の合計は約479円で、指数の上げ幅177円の2.7倍にあたる。4位以下は、差し引きで約302円のマイナスだったことになる。指数を勝ち越させたのは実質1銘柄であり、残りの大半は負け越していた。
東の横綱・アドバンテスト——◎
前引けは3万6,820円、1,890円高(+5.41%)。寄り付き直後の9時31分には3万8,120円まで買われた。前場の売買代金は約5,400億円に達し、東証の主役であることを数字で示した。
材料は28日引け後の決算である。フィスコによれば、7〜9月期の営業利益は2,668億円で前年同期の2.5倍。市場予想は2,200億円程度だった。通期の営業利益計画は8,460億円から9,670億円へ引き上げられ、8,800億〜8,900億円程度とされるコンセンサスも上回った。上限1,100万株・2,800億円の自社株買いも同時に発表している。決算の中身はこちらの記事で詳しく扱った。判定は◎。期待が高い銘柄が、その期待をさらに超えた一番である。
大関の2人——キオクシアとイビデン、○
キオクシアHDは1万4,850円、510円高(+3.56%)。前場の売買代金は1兆円を超え、アドバンテストのほぼ2倍だった。ただし高値の1万5,600円からは750円押し戻されている。イビデンは9,922円、259円高(+2.68%)。同社は29日に決算発表を控えており、発表前の買いが続いた形だ。
2人とも○にとどめたのは、どちらも前場の高値から押し戻されて引けたからである。キオクシアは高値から4.8%、イビデンは高値1万280円から3.5%下で前場を終えた。勝ち越しではあるが、取組の後半は相手に押されていた。
負け越し組——「良い決算でも売られる」日立とNEC
この前場でいちばん大きく負けたのは、寄与度の小さな大型株だった。日立製作所は5,132円、488円安(−8.68%)。NECは4,891円、401円安(−7.58%)。どちらも28日に決算を発表し、通期予想を引き上げたにもかかわらず売られた。
フィスコの整理では、日立の7〜9月期の調整後営業利益は3,490億円(前年同期比+17.5%)で、市場予想を100億円強下回った。通期の調整後営業利益予想は1兆4,080億円から1兆4,500億円に上げたが、これもコンセンサスをやや下回る水準だという。NECは7〜9月期のNon-GAAP営業利益が1,136億円(+26.1%)と予想を約100億円上回ったが、通期予想の上方修正(4,300億円→4,600億円)は米国CSGの連結効果が主因とされ、織り込み済みと受け止められた。日立の決算前の見どころはこの記事で整理していた。
同じ構図はルネサスエレクトロニクスにも出た。29日9時に発表した1〜9月期決算で最終損益は5,895億円の黒字に転じたが、株価は2,851円、249円安(−8.03%)で前場を終えた。7〜9月期の売上高営業利益率は129.7%と、本業の稼ぎだけでは説明できない水準で、一時的な利益が大きく含まれているとみられる。その中身は会社の説明資料で確かめる必要がある。判定はいずれも×。決算そのものの良し悪しではなく、期待に届かなかった負けである。
西の序二段・TDK——×
2,692円、98円50銭安(−3.53%)。寄り付きの2,790円がそのまま前場の高値になり、11時17分には2,671円50銭まで下げた。押し下げ49円81銭は前場の負け役で最大である。ここは正直に書く。TDK自身から29日朝に目立った発表は見当たらない。電気機器が33業種で最下位圏に沈み、東京エレクトロンやファナックと並んで、電子部品と設備投資関連がまとめて売られた流れの中の一番とみるのが自然だが、それ以上の理由は特定できていない。電子部品株の決算の見どころはこちらにまとめてある。
殊勲賞・サムスン電子——場所の流れを変えた
この前場の流れを変えたのは、東京の外の力士だった。サムスン電子は29日に7〜9月期決算を発表し、連結営業利益は107.4兆ウォン、半導体部門(DS)の営業利益は106.5兆ウォンだった。過去最高の水準だが、MINKABU PRESSによると市場予想は108.5兆ウォンで、わずかに届かなかった。同社株は5%超下げ、韓国総合株価指数は11時9分時点で2.34%安。米ナスダック100先物も11時15分時点で1.42%安まで売られた。
日経平均が高値6万4,797円33銭を付けたのは10時4分、安値を付けたのは10時52分である。サムスンの決算が伝わった時間帯と重なるこの48分で、指数は915円近く下げた。記録的な利益でもわずかに予想に届かなければ売られる。SKハイニックスの決算のときと同じく、半導体株への期待はそれほど高いところにある。
敢闘賞・ノジマと日清製粉グループ本社
指数の外では、決算と株主還元に素直な買いが入った。ノジマは1,302円、92円高(+7.60%)。29日寄り前に通期予想を引き上げ、売上高を1兆600億円、最終利益を540億円(前期比+38.7%)とした。日清製粉グループ本社は2,138円、126円高(+6.26%)。発行済み株式の5.0%にあたる1,400万株・200億円を上限とする自社株買いが材料視された。積水化成品工業は上方修正と増配でストップ高買い気配のまま前場を終えている。
業種別では、33業種のうち値上がりは14業種にとどまった。上位は鉱業、電気・ガス、医薬品、証券・商品。下位には電気機器、機械、金属製品が並ぶ。銀行株は小じっかりで、三菱UFJフィナンシャル・グループは3,428円、51円高(+1.51%)だった。半導体の一部を除けば、内需とディフェンシブが勝ち越した前場である。
後場と今夜の注目取組
番付編成会議の見立てを書いておく。後場の日経平均は、前場の安値6万3,882円と高値6万4,797円のあいだでの推移を本線とみる。前日終値の6万3,954円を終値で割り込めば、アドバンテスト1銘柄の上げでは支えきれなかったことになり、4日ぶりの反落となる。逆に6万4,797円を上抜けるには、ナスダック100先物の下げが止まることが前提になる。
| 日時(日本時間) | 取組 | 見るところ |
|---|---|---|
| 29日 引け後 | イビデン、東京電力HDなど約130社の決算 | イビデンは前場で先回りの買い。数字が期待に届くか |
| 29日 夜 | 欧州中央銀行(ECB)の政策金利発表 | ユーロ円と欧州金利 |
| 30日 早朝 | アマゾン・ドット・コムの7〜9月期決算(米国29日引け後) | AWSの伸びと設備投資の規模 |
| 30日 昼ごろ | 日銀の金融政策決定会合の結果と展望レポート | 12月利上げへの距離感と円相場 |
米連邦準備制度理事会(FRB)は28日、政策金利を3.75〜4.00%に据え置いた。ただし採決は10対2で、クック理事とハマック・クリーブランド連銀総裁の2人は0.25%の利上げを主張している。ドル円は29日11時41分時点で157円68銭前後と、FOMC後も157円台後半で落ち着いている。ドル円の見通しは今朝の記事に、日銀会合の論点はこちらにまとめた。前日の大引けの番付はこの記事にある。
主な参照
- 日経平均の前引け、寄与度、騰落銘柄数、業種別騰落/株探
- アドバンテスト・日立・NEC・日清製粉グループ本社の決算と株価の受け止め(フィスコ)/株探
- ノジマの上方修正(MINKABU PRESS)/株探
- ルネサスエレクトロニクスの1〜9月期決算/株探
- サムスン電子の7〜9月期決算/Samsung Newsroom、市場予想と韓国株の反応(MINKABU PRESS)/株探
- 米株価指数先物の動き(MINKABU PRESS)/株探
- FOMCの声明と採決/米連邦準備制度理事会
- 金融政策決定会合の日程/日本銀行
データ基準日:2026年10月29日の東京市場の前引け(11時30分)。TOPIXは株探の11時29分の値で、すべて取引時間中の数値であり終値ではない。ドル円は同日11時41分時点の気配値である。寄与度の集計は情報ベンダーにより差がある。決算の市場予想・コンセンサスはフィスコとMINKABU PRESSの報道にもとづく。TDKの下落について、本稿の執筆時点で理由を特定できる一次情報は確認できていない。ルネサスの7〜9月期の利益に含まれる一時的な要因は、会社資料で未確認である。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















