10月28日の米国株は、寄り付きから1時間たっても指数がほとんど動かなかった。米東部時間10時28分のナスダック総合指数は前日比0.02%高、S&P500に連動するETF(SPY)は10時30分時点で0.16%高にとどまる。今夜は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表と、マイクロソフト、アルファベットの決算が控えている。指数が息をひそめる一方で、決算を出した個別株は2桁で動いた。まず下の1枚を見てほしい。
指数は横ばい、個別株は2桁
寄り付き1時間の主な騰落率(%、米東部時間10時31分)
読み方:指数がほぼ横ばいの中、決算や買収提案の出た銘柄だけが2桁で動いた。前日終値比、取引中の値。出所:ナスダック。
上げと下げの両端に並んだ銘柄には共通点がある。どれも前日の引け後か当日の朝に決算や買収提案が出た銘柄で、市場全体の方向とは関係なく動いている。上位はAIデータセンター向けの電源・冷却装置のバーティブ(14.4%高)、買収提案を受けたウェンディーズ(14.1%高)、韓国のSKハイニックスの米国預託証券(10.5%高)。下位はネットワーク機器のF5(18.0%安)、太陽光発電向け機器のエンフェーズ・エナジー(14.9%安)とソーラーエッジ(9.9%安)である。
決算の良しあしと株価の方向は一致していない。F5の7〜9月期は売上高、利益とも会社の見通しの上限を上回ったが、株価は最も大きく下げた。逆にバーティブは、株価が5月の高値から半値近くまで下げていた銘柄だった。市場が見ているのは「今期の数字」より「来期の見通しが期待に対してどうか」である。
上げの主役:AIインフラとメモリー
AIインフラ・メモリー関連の騰落率(%、10時31分)
読み方:メモリーは上げたが、同じAIインフラでも前日に決算で上げた銘柄や、期待が先に入っていた銘柄は売られた。出所:ナスダック(指数は10時29分)。
バーティブ(VRT)は朝に発表した7〜9月期で、売上高が前年同期比61%増の43億1,280万ドル、既存事業ベースの受注が2倍超となり、通期見通しを今年3回目に引き上げた。調整後1株利益(EPS)は2.21ドルで、市場予想の1.82ドルを上回った。数字の詳しい検証はバーティブの記事で行った。同じ電源機器のイートン(ETN)も2.2%高だが、前日に決算で上げたGEベルノバ(GEV)は3.7%安と、AIインフラ株がそろって買われたわけではない。
メモリーでは、ソウル市場で28日に決算を発表したSKハイニックスの米国預託証券(SKHY)が10.5%高。過去最高の四半期売上高と営業利益を記録し、AIデータセンター向けの需要とメモリー価格の上昇が寄与した。つられてマイクロン・テクノロジー(MU)が4.6%高、サンディスク(SNDK)が4.5%高、ウエスタンデジタル(WDC)が2.0%高。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も0.85%高と、主要指数の中では強い。日本の投資家にとっては、29日の東京市場でキオクシアやメモリー関連にこの流れがどこまで続くかが焦点になる。SKハイニックスの決算の読み方はこちらの記事にある。
ただし、ハードディスク大手のシーゲイト・テクノロジー(STX)は1.4%安だった。27日引け後の7〜9月期決算は売上高が前年同期比61%増の約42億ドル、10〜12月期の売上高見通しも48億ドル(前後1億ドル)と強かったが、決算後の時間外取引では5%超下げていた。好決算でも、期待が先に株価に入っていれば利益確定が出る。メモリー株の上げも同じ理屈で、どこかで反転しうる。
下げの主役:来期の見通しで売られた
F5(FFIV)は7〜9月期(同社の第4四半期)の売上高が前年同期比13%増の9億1,700万ドル、非GAAPベースのEPSが4.42ドルで、どちらも会社の見通しの上限を上回った。問題は2027年度の見通しだ。売上高の伸びを8〜9%とし、非GAAPベースの粗利益率も80.5〜82.5%と、2026年度の約84%から下がる見通しを示した。パイパー・サンドラーは、ハードウェアの更新需要が一巡しつつあるとして投資判断を「オーバーウエート」から「ニュートラル」に下げている。売上高の伸びの鈍化と利益率の低下が同時に示された「上振れと下方修正」の組み合わせが、18%安につながった。
エンフェーズ・エナジー(ENPH)は7〜9月期の売上高が2億9,333万ドルで、市場予想の3億515万ドルに届かなかった。10〜12月期の売上高見通しは2億2,500万〜2億5,500万ドルと大きく下がる。経営陣は金利の高さと、住宅用太陽光の連邦税額控除(25D)の失効を理由に挙げた。同業のソーラーエッジ(SEDG)は自社の材料がないまま9.9%安と、連れ安した。前日に決算を出したロビンフッド(HOOD)は3.5%安。寄り付き前には8%近く下げていたが、下げ幅を縮めている。
買収提案:ウェンディーズは提案価格の手前
ハンバーガーチェーンのウェンディーズ(WEN)は14.1%高の7.005ドル。ネルソン・ペルツ氏率いるトライアン・ファンド・マネジメントを中心とする投資家グループが、1株7.35ドルの現金、総額約14億ドルで非公開化を提案したと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じ、同日の提出書類で確認された。提案価格は前日終値に対して20%の上乗せである。トライアンと関係者はすでに約16.3%を保有している。株価は提案価格を約4.9%下回っており、市場は提案がこのまま成立するとは見切っていない。会社側は寄り付き時点で提案に応じるかどうかを示していない。
大型株と他の資産:今夜を待つ配置
大型株と他の資産の騰落率(%、10時30〜32分)
読み方:今夜決算のアルファベットとマイクロソフトは方向が割れた。原油は2%高と、この時間帯で最も強い資産だった。出所:ナスダック。
今夜決算を発表するアルファベット(GOOGL)は1.3%高、マイクロソフト(MSFT)は0.3%安と方向が割れた。エヌビディア(NVDA)は0.2%高でほぼ動かない。テスラ(TSLA)は2.0%安。アルファベットの決算で株価がどれほど動きうるかはこちらの記事で、オプション市場が織り込む変動幅を整理した。
他の資産では、原油が強い。原油先物に連動するETF(USO)は10時31分時点で2.1%高で、WTI原油先物12月物は9時38分ごろに1バレル101.89ドル(1.99%高)と、100ドル台を回復した。金に連動するETF(GLD)は0.5%安、米10年債利回りは9時38分ごろに4.997%と5%の手前にある。ビットコインはコインゲッコー集計で10時31分時点に8万441ドル、24時間で0.3%高と、8万ドルの節目の上にとどまる。
今夜の3つのシナリオ
| シナリオ | 何が起きるか | 本誌の確率 | 日本時間29日朝の目安 |
|---|---|---|---|
| 据え置き、利上げ示唆は弱め | FOMCは政策金利3.75〜4.00%で据え置き、ウォーシュ議長が12月の利上げを確約しない。10年債利回りは5%の手前で止まる | 50% | ハイテク株は決算次第。メモリー・AIインフラの強さが東京に波及しやすい |
| 据え置き、利上げ示唆が強め | 声明や会見で12月の利上げに前向きな姿勢。利回りが5%を上抜ける | 40% | PERの高い銘柄に売り。ドル高・円安方向の圧力 |
| 想定外の動き | 今回の会合で利上げ、または利下げ方向の示唆 | 10% | 指数が大きく動く。個別材料は後回しになる |
個人投資家のためのチェックリスト
- 寄り付きの値は終値ではない。本記事の数字はすべて米東部時間10時30分前後の取引中の値である。決算銘柄は引けまでに大きく変わりうる。
- 「好決算なのに下落」は見通しを見る。F5もシーゲイトも今期は上振れだった。株価を決めたのは来期の数字と期待との差である。
- メモリー株の連れ高は東京に来るか。SKハイニックスと米メモリー株の上げが、29日の東京市場の関連株にどこまで波及するかを確かめたい。
- 今夜は2段構え。FOMC(日本時間3時)と大型ハイテク株の決算が数時間差で続く。どちらか一方だけで判断しない。
- 10年債利回り5%を監視する。上抜ければ、高い倍率で買われている銘柄から売られやすい。
今夜のFOMCの論点はFOMC予想の記事で、前日の寄り付き1時間の動きはこちらで振り返っている。
主な参照
- 株価・指数・ETFの取引中の値(米東部時間10時28〜32分)/ナスダック
- 市場全体の状況、WTI原油・米10年債利回り(9時38分ごろ)、SKハイニックスとロビンフッドの材料/ヤフー・ファイナンス
- バーティブの決算/バーティブ(米証券取引委員会への提出資料)
- F5の決算と2027年度見通し/F5(米証券取引委員会への提出資料)、株価下落の背景と格下げ/インベスティング・ドットコム
- エンフェーズ・エナジーの決算と市場予想、寄り付き前の値動き/24/7ウォール・ストリート
- シーゲイトの決算と見通し/シーゲイト・テクノロジー
- ウェンディーズへの買収提案/CNBC、グローブ・アンド・メール
- ビットコイン価格/コインゲッコー
データ基準日:2026年10月28日、米東部時間10時28〜32分(日本時間23時28〜32分)の取引中の値。終値ではない。S&P500とダウ平均は指数の値を取得できなかったため、連動ETF(SPY、DIA)の騰落率で代用した。WTI原油と米10年債利回りは米東部時間9時38分ごろの値である。騰落率は前日終値比。下落・上昇の理由は会社の開示と報道に基づき、エンフェーズの市場予想は集計会社によって異なりうる。ウェンディーズへの提案は予備的なもので、合意には至っていない。シナリオの確率は本誌の判断であり、将来の値動きを保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















