ニューヨーク原油先物市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)12月限は10月28日、1バレル102.78ドルで取引を終えた。前日比2.88ドル高、上昇率は2.9%で、3営業日ぶりの反発だった。米国が湾岸諸国に対し、11月3日の中間選挙後のイランへの軍事作戦に備えるよう伝えたとの報道が、買いの材料になった。
前日27日の終値は99.90ドルで、100ドルを割り込んでいた。1日で100ドル台を回復した計算になる。同じ28日に米エネルギー情報局(EIA)が公表した週間統計では、原油の商業在庫が190万バレル減った。市場予想はほぼ横ばいだった。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は27日、サウジアラビア最大のラスタヌラ製油所をミサイルで攻撃したと主張した。サウジ政府と国営石油会社サウジアラムコは、製油所の被害を認めていない。供給への実害は確認されていないが、攻撃の主張と軍事作戦の報道が同じ48時間に重なった。
10月28日の主要数値
| 項目 | 10月28日 | 前日比 | 種別 |
|---|---|---|---|
| WTI 12月限 | 102.78ドル | +2.88ドル(+2.9%) | 清算値(終値) |
| WTI 12月限(27日) | 99.90ドル | — | 清算値(終値) |
| ブレント先物(期近) | 115ドル台と報じられている | +1.3%と報じられている | 清算値(1社の報道のみ) |
| 米原油商業在庫(10月23日終了週) | 4億1,060万バレル | −190万バレル | 週次統計 |
| 米ガソリン在庫 | 2億920万バレル | +390万バレル | 週次統計 |
| 米留出油在庫(軽油など) | 1億280万バレル | −150万バレル | 週次統計 |
| 米原油輸出 | 日量485.4万バレル | +141.2万バレル | 週次統計 |
| ドル円 | 157.80円 | — | ニューヨーク市場の終値 |
円建てで見ると、WTI 102.78ドルにドル円157.80円を掛けて1バレル約1万6,219円になる。27日の終値99.90ドルを同じ157.80円で換算すると約1万5,764円で、差は約455円である。
背景:2つの材料が同じ48時間に重なった
第1の材料は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道である。米国は複数の湾岸アラブ諸国に対し、中間選挙後のイランへの「短く、激しい」軍事作戦に備えるよう伝えたという。同紙は協議の説明を受けた関係者の話として報じた。トランプ大統領は最終判断をしていないとされる。地域へのパトリオット防空システムの移動、空母打撃群と海兵遠征部隊の追加派遣も伝えられた。ホワイトハウスはコメントを控え、否定はしていない。
第2の材料はラスタヌラである。フーシ派のサリー報道官は27日、弾道ミサイルが製油所に命中し「大規模な火災」が起きたとSNSで主張した。同製油所の処理能力は日量55万バレルで、サウジ最大と報じられている。サウジ主導の連合軍は東部州に向けた弾道ミサイル3発と無人機4機を迎撃したと発表した。製油所への命中には触れていない。同じ日、ラスタヌラの輸出ターミナルでは別の火災が起き、アラムコは作業員8人が負傷したものの「操業に影響はない」と説明した。
前日までの流れは逆だった。27日はテヘランでの協議が材料視され、WTIは100ドルを割った。その経緯はブレント原油115ドル、テヘラン会談でも下げ1%未満とWTI原油100ドル割れ、軽油は原油の1.9倍に詳しい。28日の反発で、この下げはほぼ帳消しになった。
米石油在庫の前週比(10月23日終了週、万バレル)
原油は減少、ガソリンは増加。原油の減少は輸出が日量141万2,000バレル増えたことによる。出所:米エネルギー情報局(EIA)週間石油統計(10月28日公表)。
在庫統計:原油は減少、ガソリンは増加
EIAの週間統計で、原油の商業在庫は前週比189万2,000バレル減の4億1,060万バレルだった。市場予想は横ばいからわずかな増加だった。減少の主因は輸出である。原油輸出は日量141万2,000バレル増えて485万4,000バレルに達した。米国内の原油生産は日量1,399万2,000バレルだった。
一方、ガソリン在庫は390万バレル増えた。留出油在庫は150万バレル減の1億280万バレルである。戦略石油備蓄(SPR)は2億8,260万バレルだった。原油の減少は輸出による流出で、米国内の燃料需要の強さを示す数字ではない。ガソリンの積み増しはむしろ需要の弱さを示す。
関係者の発言
- トランプ大統領 「何でもあり得る」(イランへの軍事行動の可能性を問われて)
- ホワイトハウス コメントを控えたうえで、大統領はイランの核兵器保有を阻むためのあらゆる選択肢を残していると説明。
- サウジアラムコ ラスタヌラの輸出ターミナルの火災について「操業に影響はない」。
- フーシ派のサリー報道官 ラスタヌラ製油所に弾道ミサイルが命中し「大規模な火災」が起きた(サウジ側は確認していない)。
日本への波及
経済産業省資源エネルギー庁の燃料油価格定額引下げ措置では、10月29日以降のガソリンの支給単価は1リットル当たり52.4円である。原油高の店頭価格への転嫁は、この補助金でかなりの部分が吸収される構造になっている。補助金の縮小案の中身はガソリン補助金、12月から月5円縮小案で整理した。
円建ての原油価格は、ドル建ての上昇と円安が同時に効く。ドル円は28日のニューヨーク市場で157.80円で終えた。日銀は29日に金融政策決定会合の結果を公表する。円相場が動けば、円建ての原油コストも同じ方向に動く。
見立て:11月3日までは100〜106ドルが中心
WTIは11月3日の中間選挙まで、100ドルを下値、106ドル前後を上値とする値幅が中心になる公算が大きい。根拠は3つある。第1に、28日の上げはWSJの報道1本で生まれたもので、実際の供給減を伴っていない。第2に、ラスタヌラ製油所の被害はサウジ側が認めておらず、輸出ターミナルは操業を続けている。第3に、原油在庫の減少は輸出の増加によるもので、ガソリン在庫は増えている。
上値の106ドルは、28日の上げ幅2.88ドルをもう1回分積んだ水準として置いた。これを終値で上回るには、サウジの供給被害の確認か、米国の作戦決定の公式表明が要る。逆に、終値で100ドルを割れば、28日に乗ったリスクプレミアムが剥がれたと判断できる。その場合は27日の終値99.90ドルを下回り、外交の材料が再び優勢になったことを意味する。
今後の日程
- 10月29日 日銀が金融政策決定会合の結果を公表。欧州中央銀行(ECB)は日本時間22時15分に政策金利を発表。米7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値。
- 10月末 北海ブレントの期近限月が交代する。期近と次の限月の価格差に注意が要る。
- 11月3日 米中間選挙。WSJの報道はこの日以降の作戦を想定している。
- 11月4日 EIAの次回の週間石油統計(通常の水曜公表の場合)。
為替を含む市場全体の動きはFOMC予想:据え置き93%、12月利上げ75%も参照。FOMCは28日、予想通り政策金利を据え置いた。
主な参照
- WTI 12月限の清算値(102.78ドル、2.88ドル高)/共同通信(Yahoo!ニュース)
- ブレントの清算値と上昇率/CNBC
- 週間石油統計(在庫・輸出・生産・SPR)/米エネルギー情報局(EIA)
- 米国が湾岸諸国に中間選挙後の作戦を伝えたとのWSJ報道と関係者の反応/The New Arab
- フーシ派のラスタヌラ製油所攻撃の主張/Al-Monitor
- ガソリンの支給単価(10月29日以降52.4円)/資源エネルギー庁 燃料油価格定額引下げ措置
- FOMCの声明(10月28日)/米連邦準備制度理事会(FRB)
- ドル円のニューヨーク終値/株探
データ基準日:2026年10月28日のニューヨーク市場の清算値(終値)。在庫統計は10月23日終了週。ブレントの清算値は1社の報道にもとづくもので、本稿執筆時点で2社目の確認が取れていない。円建て価格は本誌の計算で、取引所の公表値ではない。WSJの報道は関係者の話にもとづくもので、米政府は確認していない。フーシ派の攻撃の主張について、サウジ側は製油所の被害を認めていない。値幅の見立ては本誌の分析であり、将来の価格を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















