まず下の1枚を見てほしい。アルファベット(GOOGL)が過去12回の決算発表の翌日に付けた値動きである。上昇6回、下落6回。その半分の6回で、株価は5%を超えて動いた。米国時間28日の取引終了後(日本時間29日早朝)に、同社は7〜9月期決算を発表する。オプション市場が織り込む決算後の変動幅は、上下5.1%である。
本記事では、過去の値動きの偏り、市場予想の中身、株価の位置の3つを図で整理し、決算翌日の値動きについて本誌の確率を示す。答えを先に言えば、大きく動く確率は高く、その場合は下に振れやすいと見ている。
過去12回:大きく動くときは下が多い
アルファベット:決算発表翌日の株価の変化(過去12回)
読み方:上昇6回・下落6回だが、5.1%を超えた6回のうち4回が下落だった。値動きの絶対値の平均は5.44%。発表日の終値から翌営業日の終値までの変化で、時間外取引は含まない。出所:米証券取引委員会(発表日)、stockanalysis.com(終値)、本誌計算。
上昇と下落の回数は6対6で並ぶ。だが、動きの大きさで分けると偏りが見える。5.1%を超えて動いた6回のうち、上昇は2回(2024年4月の10.22%高、2026年4月の9.96%高)、下落は4回である。2023年10月の9.51%安、2024年1月の7.50%安、2025年2月の7.29%安、そして直近2026年7月の7.13%安だ。直近6回に限ると、5.1%を超えたのは2026年4月の上昇と7月の下落の2回だけである。
12回の値動きの絶対値の平均は5.44%で、今回の織り込み幅5.1%とほぼ同じである。つまりオプション市場の想定は過去の実績と比べて過大でも過小でもない。なお、ここで使った値は発表日の終値から翌営業日の終値までの変化で、時間外取引や取引時間中の高値・安値ではない。
市場予想:クラウドは9割増、検索は減速
クラウド売上高と設備投資(億ドル)
読み方:クラウドの売上は1年で倍近くに伸びる見込みだが、設備投資はそれを上回る規模で膨らんでいる。出所:アルファベットの4〜6月期決算資料(米証券取引委員会への提出資料)、ロイター(LSEG予想)、ザックス(前年同期のクラウド売上高)。
ロイターによると、7〜9月期の売上高の市場予想は1,281億8,000万ドルで、前年同期比25.2%の増加である。LSEGのデータでは、グーグルクラウドの売上高は295億7,000万ドルと95.1%の増加が見込まれている。4〜6月期の実績は247億7,000万ドル(82%増)だった。一方、主力の検索事業の伸びは16.8%から14.7%へ鈍ると予想されている。1株利益の予想は、ザックスの集計で2.94ドルである。
1株利益の前期比較には注意が要る。4〜6月期の1株利益は9.11ドルだったが、これは保有株式の評価益を中心とする980億ドルの利益で大きく膨らんだ数字である。今回の2.94ドルと比べて「急減」と読むのは誤りだ。市場が見るのは、営業利益とクラウドの利益率、そして現金の出入りである。
最大の論点:設備投資と現金の流れ
4〜6月期の設備投資は449億2,000万ドルで、前年同期の224億5,000万ドルのちょうど2倍になった。7月の決算説明会で会社は2026年の設備投資見通しを、1,800億〜1,900億ドルから1,950億〜2,050億ドルへ引き上げ、2027年にはさらに大きく増やす考えを示したと報じられている。ロイターは、今回も2四半期連続で現金の流出になるとの見方を伝えている。
この投資は空振りではない。クラウドの製品売上は主にTPU(自社開発のAI向け半導体)のシステム販売によるもので、4月にはアンソロピックがグーグルとブロードコムとの間で、2027年から計3.5ギガワット規模のTPUを使う契約を結んだ。対話型AI「Gemini」のアプリの月間利用者は4〜6月期に9億5,000万人に達している。焦点は、投資の規模がクラウドの伸びを上回るペースで膨らむかどうかだ。7月の決算では設備投資見通しを引き上げた翌日に株価が7.13%下げており、同じ構図が繰り返されるかが試される。
株価の位置:最高値から2割下
アルファベット株の位置(ドル)
読み方:オプションの織り込み幅をそのまま当てはめた上下の目安。最高値まではなお2割の距離がある。出所:stockanalysis.com、ブルームバーグ集計(Investing.com経由)、本誌計算。
アルファベット株の27日の終値は320.58ドルで、5月13日に付けた終値の最高値402.62ドルから20.4%下にある。年初来ではわずか2.42%高だ。オプションの織り込み幅5.1%をそのまま当てはめると、上は336.9ドル前後、下は304.2ドル前後になる。最高値からかなり離れていることは、期待が高すぎないことを意味する。この点は上振れの際に株価が反応しやすい材料になる。
決算翌日の値動き:本誌の確率
| シナリオ | 確率 | 翌日の値動き | 想定する条件 |
|---|---|---|---|
| 大幅高 | 25% | +5%超(337ドル超) | クラウドが予想を上回り、利益率も改善。設備投資の追加引き上げが小幅にとどまる |
| 想定内 | 45% | −5%〜+5% | クラウドは予想並み。設備投資見通しは据え置きか小幅の引き上げ |
| 大幅安 | 30% | −5%超(304ドル未満) | 設備投資の大幅な引き上げや現金流出の拡大。検索の伸びが予想以上に鈍る |
確率の根拠は次のとおりである。過去12回で5.1%を超えて動いたのは半分で、本誌はこれを55%(25%+30%)とやや高めに置いた。今回は同じ夜にマイクロソフトも決算を発表し、FOMCの結果も日本時間29日3時に出る。材料が重なる夜は値動きが大きくなりやすい。大きく動く場合に下を厚くしたのは、過去6回の大きな動きのうち4回が下落だったためである。ただし、株価が最高値から2割下にある点を考慮し、下落の確率を過去の比率(3分の2)より抑えた。
発表後に確かめる5項目
- グーグルクラウドの売上高:295億7,000万ドル(LSEG予想)を上回るか。
- クラウドの営業利益:4〜6月期は88億1,400万ドル。売上の伸びに利益が付いてきているか。
- 2026年の設備投資見通し:1,950億〜2,050億ドルから再び引き上げるか、2027年の数字に触れるか。
- 検索と広告の伸び:予想の14.7%増を守れるか。AI検索が広告収入を食っていないか。
- 時間外の初動と翌日終値の違い:時間外や取引時間中の値動きは、翌日の終値より大きく出ることがある。初動だけで判断しない。
日本の投資家にとっての意味も付け加えておく。新NISAで人気のS&P500などの米国株指数に連動する投資信託は、アルファベットを組み入れている。同社の設備投資の見通しは、AI向け半導体や製造装置の需要の目安としても読まれる。同じ夜に決算を発表するマイクロソフトについては希望退職と決算の記事、AI投資の資金繰りという同じ論点を抱えるメタについては株式調達の記事で扱った。アルファベットの事業全体の評価はこちらの分析にまとめている。
主な参照
- 決算発表の日程(10月6日公表)/アルファベット投資家情報
- 4〜6月期決算(売上高、クラウド、設備投資、Gemini利用者、1株利益)/米証券取引委員会への提出資料
- 売上高・クラウド・検索の市場予想(ロイター配信、10月27日)/Investing.com
- オプションの織り込み幅5.1%(ブルームバーグ集計、10月21日)/Investing.com
- 1株利益の予想・前年のクラウド売上高/ザックス(TradingView掲載)
- 2026年の設備投資見通しの引き上げ(7月)/The Next Web
- アンソロピックのTPU契約/データセンター・ダイナミクス
- 日々の終値(決算翌日の値動きの計算)/stockanalysis.com
- 過去の決算発表日(8-K提出日)/米証券取引委員会
データ基準日:2026年10月27日の米国市場の終値(日本時間28日5時)、市場予想は10月27日時点。決算翌日の値動きは発表日の終値から翌営業日の終値までの変化で、本誌が計算した。時間外取引の値動きは含まない。オプションの織り込み幅はブルームバーグの集計(10月21日時点の報道)で、発表直前には変わりうる。7〜9月期の設備投資の市場予想は確認できなかったため記載していない。2026年の設備投資見通しの引き上げは決算説明会での発言として報じられたもので、決算資料には記載されていない。シナリオの確率は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














