オーストラリアの家庭の電気代は、この1年で12.8%上がった。給油所のガソリン代は23.6%上がった。28日朝に豪統計局が公表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比4.3%の上昇で、市場予想の4.2%を上回った。この数字が出た直後から豪ドルは買われ、対米ドルで一時0.7054ドルまで上がった。
本記事では、オーストラリアの家計で起きている値上がりをたどり、そこから豪準備銀行(RBA)の利上げ、豪ドル相場へと上っていく。最後に、豪ドルを持つ日本の個人の家計に引き直し、11月3日のRBAの決定までに確認すべき日付と水準をまとめる。
現場:電気代と燃料代が物価を押し上げた
豪統計局の発表によると、9月の物価上昇の中心は交通と住居だった。交通は前年同月比8.7%上昇し、その主因は自動車燃料の23.6%上昇である。燃料は9月だけで前月より9.4%上がった。世界の原油高がそのまま給油所の値札に出た形だ。住居は5.2%上昇した。内訳は電気代が12.8%、新築住宅が4.7%、家賃が3.6%である。電気代の上昇は、連邦政府による電気代補助が終わったことが主な理由だと統計局は説明している。
ここで大事なのは、値上がりが燃料や電気だけにとどまっていない点だ。RBAが最も重視する物価の指標は「トリム平均」である。値動きの大きい品目を上下から一定の割合で除いて計算するため、一時的な値上がりの影響を受けにくい。四半期のトリム平均は7〜9月期に前期比1.0%、前年同期比3.7%上昇した。前期比1.0%は市場予想どおりだったが、RBAが8月に示した見通しの0.8%を上回った。前年同期比の3.7%は予想の3.6%より高い。つまり、燃料や電気を除いても物価の上昇は続いている。
本誌は前日のプレビュー記事で、トリム平均の前期比0.8%を分かれ目に挙げた。結果は1.0%で、利上げを後押しする側に出た。
上流をたどる:物価から豪ドル相場まで
値上がりが豪ドル相場に届くまで
読み方:今回の物価上振れは燃料と電気から始まったが、値動きの大きい品目を除いたトリム平均も見通しを上回った。そのため利上げ観測が強まった。出所:豪統計局、豪準備銀行、オーストラリア放送協会、Yahoo!ファイナンス。
物価の上振れは、まず金利の見通しを動かした。RBAは9月29日に政策金利を0.25%引き上げて4.60%とし、2026年の利上げは合計1.00%に達している。それでも足りないという見方が広がった。オーストラリア放送協会(ABC)がブルームバーグのデータとして伝えたところでは、11月の利上げの確率は発表後に約85%まで上がった。10月21日にハウザー副総裁が「物価の見通しは8月の想定よりかなり悪い」と述べる前は、この確率は25%程度だった。
ブロック総裁も同じ28日、上院での冒頭発言で「物価上昇率は8月の基本シナリオより高くなる可能性が高い」と述べ、高い物価上昇の長期化は許容できないとの考えを示した。11月の決定そのものについての言及は避けている。
金利差で見ると、豪ドルを支える理由ははっきりしている。RBAの政策金利は4.60%、米連邦準備制度理事会(FRB)の誘導目標は3.75〜4.00%である。RBAが11月に上げればその差は広がる。一方、FRBも9月に利上げしており、12月の追加利上げが議論されている。米国の金利見通しについてはFOMCの確率をまとめた記事を参照してほしい。日本時間29日3時のFOMCの結果次第で、豪ドルの上値は抑えられうる。
豪ドル米ドルの水準:0.70ドルの床と0.7054ドルの天井
28日11時45分ごろ(日本時間)の豪ドル米ドルは0.7033ドル前後だった。この日の始値は0.7024ドル、高値は0.7054ドルである。欧州中央銀行(ECB)が毎日公表する参照レートで見ると、10月は15日の0.6911ドルが最も安く、そこから0.70ドル台を回復してきた。9月9日には0.7225ドルを付けている。過去1年の参照レートの最高は5月7日の0.7257ドル、最安は2025年11月21日の0.6446ドルだ。
豪ドル米ドルの目安となる水準
読み方:今日の高値0.7054ドルを終値で上回れるかが目先の焦点。0.70ドルを割り込むと、CPI後の上げを失い10月安値が次の目安になる。水色の帯は本誌の基本シナリオ(0.700〜0.710ドル)。参照レートはECBが毎日1回公表する値で、取引時間中の高値・安値とは異なる。出所:Yahoo!ファイナンス、Frankfurter(ECBデータ)。
相場の目先の焦点は、今日の高値0.7054ドルを終値で上回れるかどうかである。上回れば、9月以来の高値圏が視野に入る。逆に0.70ドルを割り込むと、CPIで積み上げた分を失ったことになり、10月の安値0.6911ドルが次の目安になる。なお、参照レートは毎日1回の値で、取引時間中の高値・安値とは一致しない。
見通し:11月3日までのシナリオと確率
| シナリオ | 本誌の確率 | 想定レンジ | 条件 |
|---|---|---|---|
| 基本:高値圏でもみ合い | 50% | 0.700〜0.710ドル | FOMCが据え置きで12月の判断を持ち越し、RBAは利上げを織り込み済み |
| 上振れ:0.71ドル台へ | 30% | 0.705〜0.715ドル | RBAが利上げし、追加の可能性を示す。FOMCで米金利の上昇が一服 |
| 下振れ:0.70ドル割れ | 20% | 0.691〜0.700ドル | FOMCで12月利上げが強く示唆されドル高。またはRBAが据え置き |
年末までの中期で見ると、本誌は0.69〜0.725ドルのレンジを想定し、上側に傾いていると判断する。根拠は、RBAが物価の見通しを引き上げる公算が大きく、日米より利上げの続く期間が長くなりうることだ。ただし、上昇の幅を抑える要因もある。RBAの利上げはすでに85%程度織り込まれており、実際に上げても「材料出尽くし」で売られる場合がある。また、燃料高が主因の物価上昇は、原油が下がれば一気に鈍る。原油相場の足元はWTI原油の記事で扱った。
撤退線も明示しておく。上振れのシナリオに賭ける場合、日足の終値で0.6990ドルを下回れば見方を改める。これは0.70ドルの節目を明確に割った水準である。
私たちの家計への換算:1万豪ドルを持っている場合
日本の個人にとって豪ドルは、外貨預金やFXでなじみのある通貨だ。円で見た価値は、豪ドル米ドルとドル円の両方で決まる。28日11時45分ごろの豪ドル円は111.13円前後で、この日の高値は111.35円だった。1万豪ドルを持っている場合の円での評価額を、いくつかの水準で計算すると次のようになる。
| 豪ドル円の水準 | 1万豪ドルの円評価 | 現在との差 |
|---|---|---|
| 114.89円(過去1年の最高、8月28日) | 114万8,900円 | +3万7,600円 |
| 111.13円(28日11時45分ごろ) | 111万1,300円 | — |
| 110.13円(1円の円高) | 110万1,300円 | −1万円 |
| 99.22円(過去1年の最安、2025年11月7日) | 99万2,200円 | −11万9,100円 |
この表から分かるのは、上下の振れ幅が対称ではないことだ。過去1年の最高値まで戻っても上乗せは3万円台だが、最安値まで下がると11万円を超えて目減りする。RBAの利上げで豪ドルの金利が上がるのは、外貨預金の利息にとっては追い風である。だが、為替の動き1円分で1万円が動く。利息だけを見て判断しないことが大切だ。選択肢としては、為替が不利なときに円に戻さず豪ドルのまま持ち続ける、買う時期を分ける、FXでは損切りの水準を先に決める、といった方法がある。どれを選ぶかは各自の資金計画次第で、本誌は特定の方法を勧めない。
次に相場へ届く変化の日付
- 29日(木)3時(日本時間):FOMCの結果発表。据え置きが大勢だが、12月の利上げにどこまで踏み込むかで米ドルが動く。
- 29日(木):ECBの理事会。ユーロの動きを通じて米ドル全体の強弱に影響する。
- 11月3日(火):RBAの政策決定と新しい経済見通し。利上げの有無に加え、トリム平均の見通しがどこまで引き上げられるかが焦点になる。
- 原油相場。9月の物価上昇の大きな部分は燃料だった。原油が下がり続ければ、次の物価統計の上振れは小さくなる。
豪ドル円の見通しは豪ドル円の記事でも扱っている。FX取引の基礎や業者の選び方はFX解説ページにまとめた。
主な参照
- 9月の消費者物価指数・7〜9月期のトリム平均・品目別の内訳/豪統計局
- 政策金利の推移/豪準備銀行
- ブロック総裁の上院冒頭発言(10月28日)/豪準備銀行
- ハウザー副総裁の講演(10月21日)/豪準備銀行
- 市場予想/investingLive
- 11月利上げの確率(ブルームバーグのデータ)/オーストラリア放送協会
- 豪ドル米ドル・豪ドル円の気配値(28日11時45分ごろ)/Yahoo!ファイナンス
- ECB参照レート(過去1年の高値・安値の計算)/Frankfurter(ECBデータ)
- FRBの政策金利(9月16日)/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月28日(日本時間11時45分ごろ)。為替レートは取引時間中の気配値で、終値ではない。過去の水準はECBの参照レート(1日1回の値)によるもので、取引時間中の高値・安値とは異なる。過去1年の高値・安値は本誌が参照レートから計算した。9月の物価上昇率4.3%は月次CPI、トリム平均の前期比1.0%・前年同期比3.7%は四半期の系列(2025年10月以前の算出方法による参考系列)である。市場予想はinvestingLiveの集計による。シナリオの確率と想定レンジは本誌の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














