市場はこう信じている——SKハイニックスの7〜9月期決算が、メモリーの品不足がまだ何年も続くことを示した。だからメモリー専業のキオクシアも、半導体製造装置の日本勢も買ってよい。28日朝、SKハイニックスは営業利益83兆3,338億ウォン、営業利益率80%を発表した。東京市場ではキオクシアが前場を12.97%高で終え、日経平均も前引けで798円高となった。筋は通っているように見える。
だが、本当か。今日はこの通説を尋問する。論点は3つだ。SKハイニックスの好調はキオクシアの主戦場であるNANDにも当てはまるのか。「2030年まで品不足」という見通しは、価格の上昇余地まで約束しているのか。そして、この決算で最も確実に得をするのは誰なのか。
通説の陳述:決算は予想を大きく上回った
まず通説の側の証拠を、最も強い形で並べておく。SKハイニックスが日本時間28日8時29分に公表した7〜9月期の暫定決算(韓国会計基準)で、売上高は104兆6,155億ウォンだった。四半期として初めて100兆ウォンを超え、前四半期比32%増、前年同期比では328%増である。営業利益は83兆3,338億ウォンで、前年同期の11兆3,834億ウォンの約7.3倍になった。営業利益率は80%で、4〜6月期の76%からさらに上がっている。
市場予想も上回った。ロイターによると、LSEGのスマートエスティメートは76兆7,000億ウォンで、実績はこれを約8.6%上回った。韓国の金融情報会社FnGuideの事前予想76兆9,640億ウォンと比べても約8.3%上である。会社は同時に、2026年の株主還元を約100兆ウォン(ロイター換算で約754億ドル)とする計画を示した。現金配当が30兆ウォン以上、自社株買いと消却が60兆ウォン以上という内訳である。ソウル市場は即座に反応し、SKハイニックス株は韓国時間11時44分時点で8.46%高の145万4,500ウォン、韓国総合株価指数(KOSPI)は5.82%高の5,966.73だった。
数字の強さに疑いはない。問題は、ここから東京の銘柄へ線を引くときに、どの線が本物かである。前場の東京では、半導体関連が軒並み上がった。上げ幅を並べると次の図のようになる。
28日の上昇率:ソウルと東京の半導体関連
読み方:決算との直接のつながりが最も弱いキオクシアが最も上がり、設備投資増の恩恵を受ける装置株は4〜5%高にとどまった。東京は前場終値(日本時間11時30分)、ソウルは取引時間中の値(韓国時間11時44分)で、いずれも終値ではない。出所:Yahoo!ファイナンス、株探、NAVER証券。
尋問1:「品不足」はNANDの話なのか
キオクシアが前場で13%近く上がったのは、SKハイニックスの決算を「メモリー全体の好況の証拠」と読んだからだ。証拠を見よう。決算資料が増収の柱として挙げたのは、サーバー向けDDR5の販売増と、本格出荷が始まった広帯域メモリー(HBM)の新世代品HBM4である。いずれもDRAMの製品だ。会社は10〜12月期にHBM4が出荷量でも売上でも前世代のHBM3Eを上回り、主力製品になるとの見通しを示した。
NANDについての記述はある。321層のTLC製品を使ったデータセンター向けSSD(eSSD)の販売が拡大し、10〜12月期には国内のNAND生産能力の半分以上を321層品が占める見通しだという。ただし、聯合ニュースが伝えた電話会見の発言で「2029年まで3年分が実質的に売り切れた」とされたのは、DRAMとHBMの生産能力である。NANDの2027年の価格についての明示的な発言は、本誌が確認した範囲では見当たらない。
この説明には穴がある。キオクシアはNANDの専業で、DRAMもHBMも作っていない。SKハイニックスの利益率80%を押し上げた主役は、キオクシアが持っていない製品だ。公平のために言えば、データセンター向けSSDの需要が強いという記述はキオクシアにとって追い風であり、まったく無関係とは言えない。だが「SKハイニックスが80%なら、キオクシアも同じように稼ぐ」という連想は、決算資料からは導けない。
もう1つ、見落とされやすい事実がある。SKハイニックスは今回、1株あたり2万ウォンの配当を決めた。半分の1万ウォンは、キオクシアへの投資から得た利益を原資とする特別配当である。SKハイニックスはベインキャピタル主導の企業連合を通じてキオクシアに出資している。つまり、キオクシア株の上昇益が韓国の株主に還元されている。これはキオクシアの事業が強いことの証拠ではなく、キオクシア株がすでに大きく上がった結果である。キオクシアの株価の位置については、高値から65%安を2018年と比べた記事で整理した。
尋問2:「2030年まで品不足」は値上がりを約束するか
決算資料は、需要が供給を上回る状態が「2030年まで」続くと書いている。通説はここを最も重く見ている。品不足が続くなら値段は上がり続け、メモリー各社の利益も伸び続ける、という理屈だ。
証拠を見よう。同じ資料には、主要顧客14社と長期契約を結び、2027〜2028年の生産能力の50%超をすでに押さえたとある。そして価格は「合意した範囲の中で変動する」仕組みだという。範囲には下限があり、上限もある。下限があるから業績の底は固くなる。一方で上限があるから、品不足でも価格が青天井に上がるわけではない。生産能力の半分以上がこの形の契約に入っている以上、スポット価格の急騰がそのまま利益に乗る部分は、以前の好況期より小さくなる。
公平のために言えば、通説の側にも再反論はある。下限付きの契約は、メモリー株を苦しめてきた「好況の後の暴落」の幅を小さくする。業績の振れが小さくなれば、市場が付ける株価収益率は上がりうる。株価にとっては、上振れ余地の縮小より、下振れ余地の縮小のほうが効く可能性がある。だが、それは「利益が伸び続ける」という通説とは別の主張である。品不足の期間と、値上がりの幅は分けて考える必要がある。
尋問3:一番確実に得をするのは誰か
ここが本丸である。決算資料で最も具体的に日本企業の売上に結びつく一文は、品不足の見通しではない。設備投資についての記述だ。会社は来年の投資が「大幅に増える見通し」だとし、龍仁(ヨンイン)の新工場の第1期が本格稼働に入ると説明した。清州のM15Xは年末までに最大能力で稼働させる。規模と時期は柔軟に決めるとしているが、方向ははっきりしている。
工場を増やせば、製造装置と検査装置が要る。前工程の東京エレクトロン(8035)やSCREENホールディングス(7735)、切断・研削のディスコ(6146)、マスク検査のレーザーテック(6920)、そしてHBM向けの試験装置で需要が伸びるアドバンテスト(6857)である。資金の裏付けもある。SKハイニックスの手元資金は114兆5,000億ウォン、借入金を差し引いた純現金は98兆7,000億ウォンある。100兆ウォンの株主還元をしながら、投資を増やす余力が残っている。
ところが前場の値動きは逆になった。装置株は4〜5%高にとどまり、アドバンテストは3.93%高と最も小さかった。最も上がったのは、決算との直接のつながりが一番弱いキオクシアである。アドバンテストは今日15時30分に7〜9月期決算を発表する予定で、発表前に上値を追いにくかったという事情はあるだろう。同社の決算と株価の過去の関係は上方修正8回で7回上昇という記事で検証した。
生き残った主張と、死んだ主張
| 主張 | 証拠 | 判定 |
|---|---|---|
| SKハイニックスの決算は予想を大きく上回った | 営業益83.3兆ウォン、LSEG予想を約8.6%上回る | 生存 |
| メモリーの品不足は長く続く | 会社が「2030年まで」と明記、DRAM・HBMは2029年まで実質売り切れ | 生存(DRAM・HBMについて) |
| キオクシアも同じように稼ぐ | 利益の主役はDRAM・HBM。NAND価格の2027年の見通しは示されていない | 根拠不足 |
| 品不足なら価格は上がり続ける | 生産能力の50%超が上限・下限付きの長期契約 | 修正が必要 |
| 日本の装置株が恩恵を受ける | 来年の投資は「大幅増」、純現金98.7兆ウォン | 生存(最も直接的) |
評決
通説は半分正しい。SKハイニックスの決算は本物で、メモリーの好況が続いていることを示した。だが、その恩恵を最も直接に受けるのはキオクシアではなく、来年の設備投資の増加で受注が見込める製造装置と検査装置の日本勢である。本誌の評決は、装置株の側に6割、キオクシアの側に4割である。前場の値動きはこの順番とは逆で、キオクシアの13%高は決算資料が示す以上の期待を先に織り込んだ動きだと判断する。
個人投資家にとっての実務的な意味はこうだ。キオクシアを今日の上げで追う場合、その根拠は「SKハイニックスが良かったから」では足りない。キオクシア自身のNAND価格と受注の見通しを確かめてからでも遅くない。装置株は、同じ決算から読める材料がより具体的で、今日の上げ幅も小さい。ただし装置株は米国の金利や半導体指数の動きに振られやすく、短期の値動きは決算の中身だけでは決まらない。
再審条件
この評決を覆す材料を、先に挙げておく。
- キオクシアの決算でNANDの価格と数量の見通しが強ければ。Yahoo!ファイナンスの予定表では30日の発表とされている。データセンター向けSSDの値上げが続くと会社が示せば、4割の側は大きく増える。
- アドバンテストの今日15時30分の決算で受注が鈍れば。装置株の側の根拠は「投資が増えれば受注が増える」という連鎖である。最初の環が弱ければ評決は揺らぐ。
- SKハイニックスが来年の設備投資額を具体的に示し、それが市場の想定を下回れば。「大幅増」はまだ方向にすぎない。
- 日本時間29日3時の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利見通しが急変すれば。装置株とメモリー株はどちらも金利に敏感で、個別の材料が一時的に吹き飛ぶことがある。
決算前に本誌がまとめた見通しはSKハイニックス決算プレビューに、今朝時点の注目点はアドバンテストとキオクシアの注目株記事にある。
主な参照
- 7〜9月期決算・株主還元・見通し/SKハイニックス・ニュースルーム
- LSEG予想と株主還元のドル換算(ロイター配信)/ストレーツ・タイムズ
- FnGuideの事前予想/マネートゥデイ
- 株主還元の内訳・電話会見の発言・ソウル市場/聯合ニュース
- SKハイニックス株とKOSPI(韓国時間11時44分)/NAVER証券
- 日経平均の前引け/株探
- 東京の個別株の前場終値/Yahoo!ファイナンス
- アドバンテストの決算発表日時/アドバンテスト投資家情報
データ基準日:2026年10月28日。東京の株価と日経平均は前場終値(日本時間11時30分)、SKハイニックス株とKOSPIは取引時間中の値(韓国時間11時44分)であり、いずれも当日の終値ではない。SKハイニックスの決算は暫定値(韓国会計基準)。ドル換算額はロイターの換算による。予想比の上振れ率は本誌の計算。「2029年まで実質売り切れ」は聯合ニュースが伝えた電話会見の発言で、本誌は会見記録を確認していない。キオクシアの決算日はYahoo!ファイナンスの予定表によるもので、会社の発表では確認していない。評決の比率は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














