月曜に「ECB週の分岐点は1.118ドル」と書いた。その線は、火曜のロンドンであっさり割れた。日本時間27日18時台、ユーロドルは1.1135ドルまで売られ、10月14〜15日以来の安値を付けた。米東部時間27日10時23分(日本時間23時23分)時点でも1.1146ドル前後と、戻りは鈍い。割れた線の下で、買い方が手を出しあぐねているテープである。
筆者の見立てを先に書いておく。短期(FOMCとECBを通過する今週〜来週)は弱気、目先の下値メドは1.1113ドル、その下は1.110ドル。1.1188ドルを終値で取り戻したら、この見立ては撤回する。中期(1〜3カ月)は1.10〜1.13ドルのレンジを想定する。以下、その根拠を順に書く。
ユーロドルの水準の地図(2026年10月27日)
読み方:割れた分岐点1.118ドルのすぐ上、26日の参照レート1.1188ドルを撤退線に置く。下は10月14日安値1.1113ドルが第一のメド。現在値は米東部時間27日10時23分時点の気配値(取引時間中)。出所:ECB、ザイFX!、みんかぶ、外為どっとコム、ING。
火曜のテープ——売ったのはパリの債券市場だった
この日、ユーロを売らせた単独の大ニュースはない。為替の解説サイトActionForexは27日12時51分(グリニッジ標準時)の記事で、新しい材料は特定できないとしたうえで、フランス国債の売りを主因に挙げている。仏独の10年債利回り差は月曜の153ベーシスポイント(bp)から火曜は約162bpへ広がった。フランスの10年債利回りは5.2bp上がって4.955%、ドイツは3.1bp下がって3.339%だった。みんかぶも日本時間19時時点で仏独差を161bpと伝えている。
値動きを時間で追うと、売りの形がよく分かる。ザイFX!によると、日本時間17時のユーロドルは1.1160ドル。そこから10月15日の安値1.1151ドルを割り込み、1.1135ドルまで下げた。その後は米10年債利回りが4.99%から4.96%台へ下がったのに合わせて1.1150ドル前後へ戻している。米金利が下がってもユーロが戻り切らない。これが火曜のテープのいちばん大事なところだと筆者はみている。
オランダの金融大手INGは27日朝のリポートで、今回の動きは主にドルの話だとした。FOMCを前にドル買いが戻っている、という見方だ。そのうえで、ユーロドルは短期的に1.0〜1.5%割安で、その大半はフランス要因だとしている。INGが挙げる重要な下値は1.110ドル(10月14日の安値圏)で、当面は割れないとみている。
需給の解剖——戻り売りが待っている理由
欧州中央銀行(ECB)が毎日公表する参照レートを並べると、上値の重さが数字で見える。10月16日の1.1253ドルを最後に、参照レートは一度も1.1234ドルを超えていない。21日1.1234、22日1.1205、23日1.1193、26日1.1188と、高値を切り下げてきた。過去90日(7月29日〜10月26日の64営業日)で見ると、最高は8月21日の1.1699ドル、最安は10月7日の1.1177ドルである。26日の1.1188ドルは、その最安値まであと11ピップスの位置だった。
つまり、10月に入ってからの戻りはすべて「戻り売り」で潰されている。高値を切り下げながら安値を試す形は、売り方にとって居心地がいい。逆に買い方は、1.12ドル台で拾ったポジションの多くが含み損になっている。少し戻れば、やれやれの売りが出やすい。上値が重いのは、この需給のせいでもある。
フランスの火種も消えていない。ムーディーズは10月23日、フランスの格付けをAa3、見通しネガティブに据え置いた。格下げは避けたが、2027年予算は議会で過半数のめどが立たず、各地では10月17日から抗議行動が続いている。AP通信によると、10月31日に新たな抗議、11月5日には全国ストライキが呼びかけられている。この流れは10月24日の記事で追った。火曜の仏独差162bpは、先週22日ごろの175bp前後よりは狭いが、10月上旬の135bp前後よりはずっと広い。
水準の地図
冒頭の図に並べた水準を、上から順に整理する。どれも筆者が売買の判断に使う線で、根拠も書いておく。
| 水準 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1.1296ドル | 中期の戻りの天井 | 日足の一目均衡表の基準線(外為どっとコム、27日) |
| 1.126ドル | 短期の戻りの上限 | 10月16日の参照レート1.1253ドルの少し上。24日の記事で示した上限 |
| 1.1188ドル | 撤退線(終値で上抜けたら弱気を撤回) | 26日の参照レート。割れた分岐点1.118ドルのすぐ上 |
| 1.1178ドル | 27日の戻り高値 | ザイFX!が伝えた日本時間20時までの高値 |
| 1.1146ドル前後 | 現在値 | 米東部時間27日10時23分時点(取引時間中) |
| 1.1135ドル | 27日の安値 | ロンドン時間の安値(みんかぶ、ザイFX!) |
| 1.1113ドル | 第一の下値メド | 10月14日の安値 |
| 1.110ドル | 第二の下値メド | INGが挙げる重要な下値 |
この地図で筆者がいちばん重く見ているのは、1.1188ドルと1.1113ドルの間がわずか75ピップスしかないことだ。今週はFOMCとECBが一晩おきに来る。1日で75ピップス動くのは、この週なら珍しくない。どちらに抜けるかで、来週の景色ははっきり分かれる。
筆者の見立て——短期は弱気、根拠は3つ
1つ目は、米国の数字が強いことだ。27日10時(米東部時間)に出た10月の消費者信頼感指数は91.7。市場予想の80.5を大きく上回り、9月の84.2(改定値)から7.5ポイント上がった。同日の9月耐久財受注も前月比1.8%増と、前月の0.1%増から伸びが加速した。FOMCの前に、利上げを急がない理由を探すのは難しい数字である。
2つ目は、利上げの距離の差だ。FRBの政策金利は3.75〜4.00%で、9月17日に0.25%引き上げた。米SEE Newsが27日に伝えたCMEのFedWatchでは、10月の据え置き確率は約89%、12月の利上げ確率は約82%だった。会合の論点はこちらの記事にまとめた。対するECBは預金金利2.50%で、29日の会合は据え置きが大方の予想だ。AFP通信は、多くのエコノミストが12月に最後の利上げを見込むと伝えている。12月の利上げがどちらも視野にあるなら、市場が先に織り込むのは、雇用と消費が強い米国のほうだろう。
3つ目は、ECBがフランスを助けないと言っていることだ。ラガルド総裁は、フランス問題の「第一の解決策は国内にある。財政政策の問題だ」と述べている。フランス銀行のムーラン総裁も、ECBが介入する条件は「満たされていない」とした。国債の利回り差が広がっても、すぐに防波堤は出てこない。ユーロの売り手にとっては、安心して売り持ちを続けられる材料である。
逆になったら——撤退線は1.1188ドル
相場に絶対はない。ニューヨーク終値で1.1188ドルを上回ったら、筆者は弱気の見立てを撤回する。割れた分岐点を取り戻すことは、火曜の下げが一時的な振れだったことを意味するからだ。その場合の次の目標は1.126ドル。そこを超えるには、FOMCが12月の利上げに慎重な姿勢を見せる、仏独差が140bp台へ縮む、といった材料が要る。
反対側の注意点もある。INGが言うように1.110ドルは厚い下値で、そこを割るには新しい売り材料が必要になる。1.1113ドル近辺まで下げたら、短期の売りは一度利益を確定するのが筆者の流儀だ。中期の見通しとしては、三菱UFJ銀行(MUFG)の公式予想が10〜12月期末1.12ドル、2027年1〜3月期末1.14ドルである。筆者はそれより弱めに見ており、年内は1.10〜1.13ドルのレンジで考えている。
明日からの監視リスト
| 日時(日本時間) | イベント | 見るところ |
|---|---|---|
| 29日 3時/3時30分 | FOMCの結果発表/ウォーシュ議長の会見 | 12月利上げへの距離感。ドル高なら1.1113ドルを試す |
| 29日 夜 | ECB理事会の結果発表と会見 | 12月利上げの示唆、フランスへの言及 |
| 30日 | ドイツ10月消費者物価(速報) | ユーロ圏物価の先行指標 |
| 31日 | フランスで新たな抗議行動 | 仏独の利回り差 |
| 11月4日 | ユーロ圏10月消費者物価(速報) | 9月は3.8% |
| 11月5日 | フランスの全国ストライキ | 仏独差が170bp台に戻るか |
ドル円の側から同じ週を見た記事はこちら、ユーロ円の水準はこちらで扱った。FX全般の基礎はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- ユーロの参照レート(過去90日)/欧州中央銀行、ECBの政策金利/欧州中央銀行
- 27日のユーロドルの値動き/ザイFX!、みんかぶ、外為どっとコム
- 仏独の利回り差/ActionForex
- ドル買いとユーロの割安感、1.110ドルの下値/ING
- 米消費者信頼感指数(10月)/コンファレンス・ボード、耐久財受注(9月速報)/米国勢調査局
- FOMCの日程と政策金利/米連邦準備制度理事会、FedWatchの確率/SEE News
- ECB幹部の発言とエコノミストの予想/AFP(France 24)、フランスの抗議行動の日程/AP通信
- ユーロドル予想/MUFG
データ基準日:2026年10月27日。ユーロドルの現在値は米東部時間27日10時23分時点の取引時間中の気配値で、終値ではない。ECB参照レートは各営業日の中欧時間14時10分ごろの値(16時ごろ公表)で、27日分は本稿執筆時点で未公表。仏独の利回り差は報道ベースで、情報源により数bpの差がある。FedWatchの確率は報道時点の値で、刻々と変わる。見立てと水準は筆者の判断であり、将来の相場を保証するものではない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













