ユーロ円は23日(金)、欧州中央銀行(ECB)の参照レートで175.51円を付けた。2025年10月6日の175.22円以来、ほぼ1年ぶりの安値である。22日の急落は円高が主因だった。だが9月以降の下げをならして見ると、主役は円高からユーロ安に入れ替わっている。今週は29日(木)にECBが、30日(金)に日本銀行が結果を出す。本記事はユーロ円の下げをユーロの側と円の側に分け、どちらの会合がより効くのかを図で示したうえで、短期(2週間)と年末の見通しを出す。
22日のユーロ円見通し(176円割れ)以降に新しく加わったのは、23日の参照レートが1年ぶりの安値になったこと、同日の取引中に175.09円まで下げたこと、そして週明けに176円台へ戻したことである。まず下の1枚を見てほしい。
結論の図:4月の187円から、1年ぶりの175円へ
ユーロ円のECB参照レート(2026年4月1日〜10月23日)
読み方:4月と7月の高値圏から、9月に入って下げが速まった。10月23日の175.51円は2025年10月6日以来の安値である。出所:欧州中央銀行の参照レート。終値ではない。
参照レートで見ると、ユーロ円は4月17日の187.72円が年初来の高値だった。9月1日にはまだ185.63円にいたが、そこから下げが速まり、10月23日には175.51円まで下げた。高値からの下げ幅は12.21円、率にして6.5%である。本誌がECBの参照レートから計算した移動平均は、25日が177.96円、50日が180.25円、75日が181.69円、200日が183.48円だ。すべて現在値の上にあり、短い平均ほど低い。教科書どおりの下落局面の並びである。
取引中の値も確かめておく。Yahoo!ファイナンスの30分足では、23日の日本時間22時ごろに175.09円まで下げ、175円ちょうどの手前で止まった。週明け26日は9時以降の安値が11時半ごろの175.83円で、18時ごろに176.43円まで戻した。19時47分(日本時間)時点では176.28円である。これらは取引中の値で、終値や参照レートとは別物だ。26日の参照レートは中欧時間14時15分(日本時間22時15分)ごろに公表されるため、本記事には反映していない。
なぜ下げたのか:主役は円高からユーロ安へ交代した
ユーロ円の値動きを2つの側に分ける(円)
読み方:9月上旬の下げは円高(円の側)だったが、9月9日以降は円安が進んだのにユーロ円は下げた。ユーロ安(ユーロの側)が主役に代わった。出所:欧州中央銀行の参照レートから本誌計算(ドル円はユーロ円÷ユーロドル)。
ユーロ円は、ユーロドルとドル円の掛け算で決まる。そこで参照レートを使い、ユーロ円の値動きを「ユーロの側」(ユーロドルの変化)と「円の側」(ドル円の変化)に分けた。9月1日から9日までの7.04円安は、ほぼすべてが円の側だった。ドル円が160.16円から153.27円へ急落し、ユーロドルはむしろ1.1590ドルから1.1652ドルへ上げていた。9月のユーロ円安を「円高で説明できる」とした9月12日の記事の見立ては、この局面に当てはまる。
ところが9月9日から10月23日までは、形が逆になる。ドル円は153.27円から156.80円へ戻り、円の側はユーロ円を3.96円押し上げた。それでもユーロ円は3.08円下げた。ユーロドルが1.1652ドルから1.1193ドルへ下げ、ユーロの側だけで7.04円押し下げたからだ。4月17日の高値から見ても、12.21円の下げのうち9.61円、約8割がユーロの側である。22日の1日だけの急落は円高主導だったが、それは短い局面の話だ。1カ月半の流れで見れば、ユーロ円を下げてきたのはユーロ安である。
ユーロが弱い理由は、同日のユーロドル見通しで分解した。ユーロスタットによると、9月のユーロ圏消費者物価(HICP)は前年比3.8%と高いが、押し上げているのは18.9%上昇したエネルギーで、エネルギーや食品などを除くコア指数は2.5%にとどまる。原油高が物価を押し上げ、同時に景気を冷やしている。景気の強さを理由にしない利上げは、通貨を強くしにくい。
今週はどちらの会合が効くのか:ECBが先、日銀が後
ユーロ円を動かす日程(日本時間)
読み方:ユーロの側に効く材料が先に出て、円の側に効く日銀が後に続く。出所:米連邦準備制度理事会、欧州中央銀行、日本銀行の公表日程。東京都区部CPIの時刻は本誌未確認。
両中銀とも、今週は据え置きが大勢だ。ECBは9月16日から預金金利を2.50%としている。ロイターが10月5〜8日に実施した調査では、エコノミスト73人中70人が今回の据え置きを、64人が12月の利上げを予想した。日銀は9月18日の会合で、7対2の賛成多数により政策金利を1.25%へ引き上げた(9月24日から適用)。みんかぶは、短期金利市場が10月の据え置きを約97%織り込んでいると伝えている。焦点は、両中銀が12月の利上げをどこまで示すかに移っている。次の決定は、ECBが12月17日(木)、日銀が12月17〜18日で、奇しくも同じ週に重なる。
政策金利の差は1.25%で、ユーロ円の買い手はいまも金利差を受け取る側にいる。ただ、両中銀がそろって12月に0.25%ずつ上げれば、この差は変わらない。為替を動かすのは金利の水準ではなく、金利差の変化だ。前の節の分解に照らすと、今週は29日22時15分のECBがユーロの側に、30日の日銀が円の側に効く。最近の下げを主導してきたのはユーロの側なので、本誌はまずECBのラガルド総裁の会見に注目する。本誌が最も警戒するのは、両方の側が同時に下げに回る組み合わせだ。ユーロ安が続くなか、同日のドル円見通しで扱ったように円が株安時の逃避先に戻れば、ユーロ円には二重の下げ圧力がかかる。
注目の水準:175円を割ると、1年前の安値まで支えは薄い
ユーロ円の注目水準(円)
読み方:緑は上値の節目、赤は下値の節目。23日の取引中の安値175.09円は175.51円のすぐ下にある。出所:欧州中央銀行の参照レートから本誌計算、現在値はYahoo!ファイナンス。
下値の一つ目は、23日の参照レート175.51円から取引中の安値175.09円までの帯だ。175円ちょうどの節目がすぐ下にある。日足の終値でここを割り込むと、参照レートの記録で次に目立つのは2025年9月29日の174.38円、さらに2025年10月1日の172.47円である。1年前に一度通過しただけの水準で、売買が厚く積み上がった価格帯ではない。下げが走ると、値が飛びやすい。
上値は、まず26日の取引中の高値176.43円がある。その上は25日移動平均の177.96円で、16日の戻り高値177.82円(参照レート)とほぼ重なる。ここが短期の分岐点になる。さらに上には、10月の参照レートの高値178.49円(1日)と、50日移動平均の180.25円が控える。現在値から見ると、上の分岐点まで約1.7円、下の175.09円まで約1.2円で、下の節目のほうが近い位置で山場の週を迎える。
ユーロ円は174円台まで下がるか:短期(2週間)と年末のシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 基本:安値圏でもみ合い | 45% | 174.4〜177.5円 | ECBも日銀も据え置き、12月の判断は先送り |
| 弱気:175円割れ | 35% | 172.5〜174.4円 | ラガルド総裁が利上げに慎重、またはAI株の急落で円買い |
| 強気:25日平均の回復 | 20% | 178.0〜179.5円 | ECBが連続利上げを示唆し、日銀は12月に慎重 |
本誌は短期でやや弱気に傾く。根拠は三つある。下げを主導してきたユーロの側に、反転の材料がまだ見えないこと。円の側も、日銀の12月利上げ観測と株安への備えという円高の材料を抱えていること。そして相場が下の節目に近い位置にあることだ。逆に、この見方が崩れる条件ははっきりしている。日足の終値で178.0円(25日移動平均の177.96円)を上回れば、弱気の見方は撤回する。16日の戻り高値も同時に超え、10月の下値切り下げが止まるからである。
年末は170〜179円のレンジで、中心は174円前後とみる。本誌は同日の記事で、ユーロドルの年末の中心を1.12ドル前後、ドル円を155円前後と置いた。掛け合わせると約173.6円になる。確率で言えば、170〜179円に収まる見方が60%、170円を割る見方が25%、179円を超える見方が15%である。上振れに必要なのは、米国の利上げ打ち止めでユーロドルが持ち直すことと、日銀が利上げを急がないことの組み合わせだ。12月17日の週に両中銀の判断が出るまでは、上値を追いにくいと考える。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認するもの | 日時(日本時間) | ユーロ円の下げに傾く結果 | 反発に傾く結果 |
|---|---|---|---|
| FOMC声明・議長会見 | 29日(木)3時/3時30分 | 12月利上げを強く示唆(ユーロドル安) | 利上げ休止を示唆 |
| ECB政策金利・ラガルド総裁会見 | 29日(木)22時15分/22時45分 | 12月利上げに慎重 | 12月と来年の連続利上げを示唆 |
| 東京都区部CPI(10月) | 30日(金)朝 | 上振れ(日銀の利上げ観測が強まる) | 下振れ |
| 日銀の決定・展望リポート、植田総裁会見 | 30日(金)昼ごろ/15時30分 | 12月利上げを示唆 | 利上げに慎重 |
| 終値の位置 | 連日 | 175.09円を割って引ける | 178.0円を上回って引ける |
実際の取引では、取引中に節目を一時的に割る動きと、日足の終値で割る動きを区別したい。29日の深夜と30日の昼は値が飛びやすく、取引中だけ節目を割ってすぐ戻る「だまし」も起きやすい。レバレッジをかけた取引では、発表の直前に持ち高を大きくしないことが基本になる。ユーロ円の買い持ちには金利差のぶんスワップポイントが付くが、1日の値動きはその何十日分にもなりうる。金利差の受け取りだけを理由に下げ相場で買い向かうのは、リスクに見合わないことが多い。
今週の各中銀の並びは来週の中銀番付でもまとめている。ユーロ円を取引できる業者やスワップの基礎は、本誌のFX解説ページを参照してほしい。
主な参照
- ユーロ円・ユーロドルの参照レート(日次)/欧州中央銀行
- 政策金利/欧州中央銀行、理事会日程/欧州中央銀行
- 9月18日の決定(政策金利1.25%、7対2)/日本銀行、決定会合日程/日本銀行
- FOMC日程/米連邦準備制度理事会
- 9月のユーロ圏HICP確報/ユーロスタット
- ECBに関するロイター調査/ユーロネクスト(ロイター配信)
- 日銀の据え置きの織り込み/みんかぶ
- ユーロ円の取引中の値(30分足)/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月26日19時47分(日本時間)。ユーロ円の水準、移動平均、高値・安値、下げの分解は、ECBが中欧時間14時15分ごろに公表する参照レート(10月23日まで)で本誌が計算したもので、市場の終値とは異なる。分解は「ユーロドルの変化×起点のドル円」をユーロの側、残りを円の側とした。175.09円、175.83円、176.43円、176.28円はYahoo!ファイナンスの取引中の値である。日銀の織り込みはみんかぶの報道によるもので、本誌は確認していない。年末の見通しは同日のユーロドルとドル円の記事の中心値と整合させた。シナリオの確率と撤退線は本誌の判断で、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














