ドル円は週明け26日の東京時間、朝方の157円22銭から156円73銭まで約50銭反落した。同じ朝、米ゴールドマン・サックスが「円はAIショックへのヘッジとして機能を高めている」とする顧客向けリポートを出したとブルームバーグが報じた。株が崩れたときに円が買われる――この古い関係が戻りつつあるのなら、日米の中銀会合が重なる今週の値動きの読み方も変わる。本記事は、ドル円の短期と中期の見通しを図で示す。
24日に公開したドル円来週の見通し以降に新しく加わったのは、ゴールドマンのリポート、投機筋の円買い越しの拡大、そして週明けの値動きである。まず下の1枚を見てほしい。
結論の図:7月の163円台から、10月は158円の天井
ドル円のECB参照レート(2026年7月1日〜10月23日)
読み方:7月の163円台から9月に153円台まで下げ、10月は156円80銭〜158円60銭で推移した。点線は200日移動平均の目安(158円55銭、みんかぶ)。出所:欧州中央銀行の参照レート(Frankfurter経由)。終値ではない。
欧州中央銀行(ECB)の参照レートで見ると、ドル円は7月28日の163円91銭を高値に下げ、9月9日に153円27銭を付けた。10月は156円80銭〜158円60銭の範囲で推移し、23日の参照レート156円80銭は月内の最安値だった。25日移動平均(157円83銭)、50日移動平均(157円57銭)、75日移動平均(158円70銭)をすべて下回っている。
23日(金)のニューヨーク市場の終値は156円75〜85銭(日本経済新聞)で、同日のアジア時間には156円08銭と5週間ぶりの安値を付けていた。外為どっとコムの分析では、26日昼の時点で価格は一目均衡表の雲(156円07銭〜158円44銭)の下寄りにあり、転換線(157円52銭)と基準線(157円56銭)の下で推移する。戻りの鈍い形である。
ゴールドマンの見立て:円は再び「逃避先」になるか
ブルームバーグによると、ゴールドマンのリポートは23日付で、日本の政策環境の変化によって円がリスク回避局面のヘッジとして機能しやすくなったと指摘した。AI関連株の急落に備える手段としては、ドル円の下落に賭ける取引が最も効果的だという。過去6〜7年と比べ、金利上昇局面での円安の度合いが小さくなったことも根拠に挙げた。一方で同社は、世界的な環境はなお円安方向を示しており、円買いの持ち高は金利差の分だけコストがかかるとも認めている。
日米の金利(%)
読み方:金利差は2%を超え、円買いの持ち高にはコストがかかる。ゴールドマンもこの点を認めたうえで、株安への備えとしてドル円の売りが最も効果的だとした。出所:米連邦準備制度理事会、日本銀行、米財務省、財務省。
投機筋の動きも同じ方向を向く。米商品先物取引委員会(CFTC)の20日時点の集計では、非商業部門の円の買い越しは6万9,878枚で、前週から1万9,671枚増えた。円買いの持ち高はすでに積み上がっている。そのため、リスク回避の場面が来れば円高は加速しやすい。逆に何も起きなければ、持ち高の巻き戻しで円安に振れやすい。どちらに転んでも振れ幅が大きくなる配置だ。みんかぶによると、26日のドル円の1週間物の予想変動率は9.05%と、1カ月物(8.02%)を上回る。市場も今週の値動きの大きさを意識している。
今週の日程:29日未明のFOMCと30日の日銀
今週のドル円関連日程(日本時間)
読み方:29日未明のFOMCから30日の日銀まで、約36時間に材料が集中する。米国は11月1日に冬時間へ移る。出所:米連邦準備制度理事会、日本銀行、みんかぶ。米GDPと東京CPIの時刻は本誌未確認。
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に利上げし、政策金利は3.75〜4.00%にある。今週のFOMCは据え置きが大勢の予想で、焦点は12月の利上げをどこまで示唆するかだ。日銀は6月と9月に利上げして政策金利を1.25%としており、今回は据え置きが大勢である。みんかぶは10月の据え置きの織り込みを約97%と伝えた。市場の関心は30日の展望リポートと植田総裁の会見にある。12月の利上げをどこまで示すかが問われる。
為替介入について、片山財務相や三村財務官による為替水準への発言は、本誌が確認した範囲では19日以降出ていない。政府・日銀は4〜5月に11兆7,300億円、7〜8月に15兆4,000億円の円買い介入を実施した(ジャパンタイムズ)。7〜8月の介入はおおむね160〜164円台で行われたとされる。いまの156〜157円台は、当局が動く水準からは遠い。
注目の水準:156円80銭からの距離
注目水準と156円80銭からの距離(銭)
読み方:基準は26日11時ごろの水準(156円80銭前後)。上下の節目はほぼ等距離に並ぶ。出所:外為どっとコム、みんかぶ、ECB参照レートから本誌計算。
下値の一つ目は156円07〜08銭だ。一目均衡表の雲の下限と、23日のアジア時間の安値がほぼ重なる。ここを日足の終値で割り込むと、9月17日の安値155円34銭、さらに155円が視野に入る。みんかぶは、155円を下回れば150円方向が意識されると指摘した。上値は今朝の高値157円22銭、次に転換線・基準線の157円50銭台、25日移動平均の157円83銭が控える。200日移動平均の158円55銭(みんかぶ)が中期の分岐点になる。
シナリオ:短期(2週間)と中期(年末)
| シナリオ | 確率(本誌) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 基本:雲の中で上値の重い推移 | 45% | 155円80銭〜157円80銭 | FOMCも日銀も据え置き、12月の判断は先送り |
| 円高:155円割れ | 35% | 154円〜155円30銭 | 植田総裁が12月利上げに前向き、またはAI株の急落 |
| 円安:158円台回復 | 20% | 158円〜159円 | FOMCが利上げ前倒しを示唆、日銀は慎重 |
本誌は短期でやや円高に傾く。根拠は三つある。10月は参照レートで158円60銭(12日)が天井となり、159円に届かなかったこと、ゴールドマンの指摘どおり株安局面で円が買われ始めていること、そして日銀が12月の利上げに道を残していることだ。ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)は、OIS(翌日物金利スワップ)市場が12月の日銀利上げを約80%織り込んでいるとしている。日足の終値で158円55銭(200日移動平均)を上回れば、円高の見方は撤回する。
中期(年末)は152〜159円のレンジで、中心は155円前後とみる。米10年債利回りは23日に5.00%、日本の10年国債利回りは2.837%で、差は2.16%ある。金利差だけを見れば円安の地合いは残る。それでも本誌が円高寄りとみるのは、日銀の利上げ余地がFRBより大きいとみるからだ。米国が12月に利上げすれば、この見方は修正が必要になる。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認するもの | 日時(日本時間) | 円高に傾く結果 | 円安に傾く結果 |
|---|---|---|---|
| FOMC声明・議長会見 | 29日(木)3時/3時30分 | 12月利上げに慎重 | 12月利上げを強く示唆 |
| 米7〜9月期GDP速報・9月PCE | 29日(木)夜 | 予想を下回る | 予想を上回る |
| 東京都区部CPI(10月) | 30日(金)朝 | 上振れ | 下振れ |
| 日銀の決定・展望リポート、植田総裁会見 | 30日(金)昼ごろ/15時30分 | 物価見通しを上方修正し、12月利上げを示唆 | 利上げに慎重な姿勢 |
| 日経平均と米ハイテク株 | 連日 | AI関連株の急落 | 株価の反発 |
今朝の東京株式市場の動きは寄り付き1時間の速報にまとめた。ドル円を取引できる業者やスワップの基礎は、本誌のFX解説ページを参照してほしい。
主な参照
- ゴールドマン・サックスのリポート/ブルームバーグ
- 23日のニューヨーク市場の終値/日本経済新聞
- 26日朝のドル円の値動き/財経新聞(フィスコ配信)
- 一目均衡表の水準/外為どっとコム、CFTC建玉/外為どっとコム
- 予想変動率/みんかぶ、200日移動平均と155円の節目/みんかぶ、日銀の織り込み/みんかぶ
- FOMC日程/米連邦準備制度理事会、決定会合日程/日本銀行
- 米国債利回り/米財務省、国債金利/財務省
- 2026年の為替介入額/ジャパンタイムズ
- ECB参照レートの日次データ/Frankfurter(欧州中央銀行の公表値)
データ基準日:2026年10月26日正午(日本時間)。ドル円の26日の値は東京時間の取引中の値(フィスコ、外為どっとコム)で、終値ではない。移動平均と7〜10月の高値・安値は、ECBが中欧時間14時15分ごろに公表する参照レート(10月23日まで)で本誌が計算したもので、市場の終値とは異なる。米国債利回りは23日の財務省公表値、日本の10年国債利回りは23日の財務省公表値。ゴールドマンのリポートの内容はブルームバーグの報道によるもので、本誌は原文を確認していない。日銀12月利上げの織り込み約80%はBBHの見方として報じられたもので、本誌は確認していない。介入水準は報道による目安である。シナリオの確率と撤退線は本誌の判断で、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















