原油が1日で4%近く跳ね、ダウ工業株30種平均が652ドル下げた金曜のニューヨークで、ドル円はほとんど動かなかった。23日の終値は156円87銭で、前日比10銭のドル高である(みんかぶ集計)。株安なら円高という木曜までの流れは、金曜にいったん止まった。来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が29日午前3時に、日銀の決定が30日に出る。本稿は23日朝のドル円見通しの続きで、新しいのは金曜の米国時間の値動きと週末の終値、そしてFOMCから日銀へと続く2つの会合をどう読むかの判断の地図である。まず下の1枚を見てほしい。
筆者の見立て:来週から再来週にかけての想定レンジは155円00銭〜157円70銭で、下寄りとみる。確率は45%。いちばん値が動くのはFOMCではなく、30日の日銀だ。日銀が12月の利上げに含みを残せば155円を試し、30日の日足終値で155円を割れば、次の目安は154円台前半になる。撤退線は23日朝の記事と同じく、日足終値で157円66銭を上回ったときとする。
来週の分岐点はどこか:水準の地図
ドル円・来週の水準の地図(円)
読み方:青が23日の終値、橙が筆者の判断の線(下は155円、上は撤退線157.66円)、灰色が直近の安値と200日線。終値から下の分岐までは1円87銭、撤退線までは79銭で、上のほうが近い。出所:みんかぶ、ヤフー・ファイナンス(日足・1時間足)、本誌計算。
上下の節目は1円ずつ離れて並んでいる。下は23日の安値156円08銭、その下が155円ちょうどだ。みんかぶは23日の解説で、155円を割り込めば短期の目線が160円方向から150円方向へ変わりうると指摘している。上は23日朝の記事で撤退線に置いた50日移動平均の157円66銭(22日時点)と、200日移動平均の158円55銭である。今週の高値158円60銭(20日午前10時台、ヤフー・ファイナンスの1時間足)は200日線をわずかに上回ったが、そこで止まった。
週間で見ると、欧州中央銀行(ECB)の参照レートは16日の158円02銭から23日の156円80銭へ、1円22銭の円高だった。木曜に1カ月続いたレンジを下に抜け、金曜は値を固めた形である。来週の2つの会合は、この「抜けたレンジに戻るのか、もう一段下へ行くのか」を決める材料になる。
金曜に何が起きたか:原油高とダウ652ドル安
10月23日(金)の主要市場の騰落率
読み方:原油が上げ、株と金が下げた日に、ドル円はほぼ横ばいだった。株安でも円高が進まなかったのは、米10年債利回りが3.7bp上がり4.99%になったためだ。出所:ロイター・ストックツイッツ(ヤフー・ファイナンス掲載)、みんかぶ(ドル円、22日終値156.77円→23日156.87円)、ヤフー・ファイナンス(金先物)。いずれも終値。
23日の主役は原油だった。米国産標準油種(WTI)の期近物は前日比3.80ドル(3.8%)高の1バレル103.27ドル、北海ブレントは3.55ドル高の116.72ドルで取引を終えた。ブレントの終値は4月29日以来の高値で、週間では6%上げている(ロイター、ヤフー・ファイナンス掲載)。ロイターはサウジアラビアでのフーシ派の攻撃を、米投資情報サイトのストックツイッツは米国とイスラエルがイランへの新たな攻撃を準備しているとの報道を、それぞれ材料に挙げた。原油の上げの背景はWTI100ドル回復の記事で詳しく扱った。
原油高は物価高と利上げの連想を呼ぶ。ダウは652.82ドル(1.23%)安の5万2,215.16ドル、S&P500種株価指数は0.52%安。米10年債利回りは3.7bp上がって4.99%になった。前日にほぼ4年ぶりの大きな低下を記録した後の反発である(ロイター)。ドル円は東京の朝9時台に156円08銭まで下げた後、15時台に157円16銭まで戻した。日本時間21時台に156円30銭まで押したが、その後は156円台後半に戻して週を終えた。10月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値は48と、前回の46.3から上がっている(ストックツイッツ)。株安でも円が買われなかったのは、金利が上がり、有事のドル買いが入ったからだ。
FOMCと日銀、どちらが重いか
来週の予定(日本時間)
読み方:FOMCが先、日銀が後。29日早朝の値動きは、30日の日銀で上書きされる可能性がある。日銀の公表時刻は事前に決まっていない。出所:FRB、日本銀行、米商務省経済分析局の公表日程、ロイター。
先に出るのはFOMCだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を0.25%引き上げ、誘導目標を3.75〜4.00%とした(12対0)。ロイターが10月16〜20日に実施した調査では、エコノミスト100人中94人が10月の据え置きを、100人全員が12月の利上げを予想したと報じられている。金利先物が23日時点で織り込む据え置きの確率は91%だった(ストックツイッツ)。据え置き自体はほぼ織り込み済みで、ドル円を動かすのは声明と議長会見が12月の利上げをどこまで示すかである。原油高が続けば、タカ派の言葉が出やすい。
重いのは日銀のほうだと筆者はみる。日銀は9月18日に政策金利を1.25%程度へ上げた(7対2)。共同通信によると、10月は据え置く公算が大きく、物価上昇率が目標の2%に到達したとの判断を展望リポートで示す方向だ。BBHが伝えた金利スワップの織り込みは、10月30日の利上げが5%未満、12月18日の利上げが80%だった(10月19日時点)。23日の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除くコアが2.1%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアが2.4%上昇と、その判断を後押しする内容だった(総務省)。2%到達の判断に12月の示唆が重なれば、80%は90%台へ上がり、円買いの材料になる。逆に慎重な言い回しにとどまれば、織り込みがはげて円が売られる。
4つのシナリオと確率
来週〜再来週のシナリオ別確率(筆者の見立て)
読み方:AとCを合わせた65%が、155円方向を試す筋書きである。Bだけが撤退線157.66円の上抜けにつながる。確率は筆者の判断で、市場の織り込みではない。
| シナリオ | 確率 | 何が起きるか | ドル円の想定(1〜2週間) |
|---|---|---|---|
| A:両方とも据え置き、12月へ地ならし | 45% | FOMCは12月の利上げに含み、日銀は2%到達を判断して12月を示唆 | 155円00銭〜157円70銭、下寄り。155円を試す |
| B:日銀が慎重、ドル高に戻る | 25% | 日銀が2%到達を示しつつ利上げの時期はぼかす。原油高で米金利が上がる | 157円66銭を終値で上抜け、200日線158円55銭を試す |
| C:リスク回避の円買いが再燃 | 20% | 米大手ハイテクの決算を機に株安が再開。日銀もタカ派寄り | 155円を終値で割り、154円台前半へ |
| D:どちらかが10月に動く | 10% | FRBが2会合連続で利上げ、または日銀が10月に利上げ | FRBなら158円台、日銀なら154円割れ。方向は逆 |
本線をAに置くのは、両中銀とも「今回は動かず、12月に動く」形が市場の予想と最もよく合っているからだ。その場合、相場を動かすのは日銀の言葉の強さになる。Bを25%と高めに置くのは、金曜に見たとおり、原油高がドルの下支えになっているからである。みんかぶが伝えた市場の声にも、今回の円高は新しい円買いではなく円売りの巻き戻しが中心だ、との見方がある。巻き戻しが終われば、円高の勢いは鈍る。
Cの引き金は日銀の外にある。ロイターによれば、来週はS&P500採用企業の約3分の1が決算を発表し、アルファベット、マイクロソフト、アマゾンの設備投資計画に注目が集まる。木曜の円高は、AI関連株の急落が起点だった。決算で同じ不安が再燃すれば、日銀を待たずに155円を割る展開もありうる。オプション市場では1週間物のリスクリバーサルが10月6日以来の円強気の水準にあり、円高への備えはすでに厚い(みんかぶ)。
個人投資家のためのチェックリスト
- 判定は日足の終値で。FOMC直後の29日早朝は値が飛びやすい。157円66銭や155円の一時的な抜けではなく、その日の終値で判断する。
- 29日早朝の動きを追いかけない。FOMCの反応は、30日の日銀で打ち消されることがある。2つの会合が終わるまで、建玉は普段より小さくしておく。
- 日銀は「2%到達」と「12月」の2語を見る。到達の判断だけなら予想どおりで、円高は限られる。12月を示す言葉が加わるかどうかが分かれ目になる。
- 原油は円安の材料にもなる。原油高は日本の輸入代金を膨らませ、米金利も押し上げる。WTIが100ドルを保つ間は、円高の一方通行を前提にしない。
- レバレッジと損切りの位置を先に決める。来週は1日で1円以上動く日が複数ありうる。損切りの幅を広げるなら、その分だけ数量を減らす。
来週の4つの中央銀行の織り込みは来週の中銀番付で、9月の日銀の利上げとその後の円相場はこの記事で整理している。海外FX業者の比較や口座の選び方はFX解説ページにまとめた。
主な参照
- 23日のドル円の四本値/みんかぶ、23日のNY為替概況と155円の指摘・リスクリバーサル/みんかぶ、同(NY序盤)
- ドル円の1時間足と移動平均、ダウ平均・WTI・金先物の終値/ヤフー・ファイナンス
- ECBの参照レート(ドル円換算)/Frankfurter(ECB参照レート)
- 原油・株式・米国債の23日の終値と材料/ロイター(ヤフー・ファイナンス掲載)、ストックツイッツ(同)
- 9月のFOMC声明/FRB、FOMCの日程/FRB
- ロイターのエコノミスト調査(10月16〜20日)/CoinAlertNews
- 9月の日銀の公表文/日本銀行、決定会合の日程/日本銀行
- 日銀10月会合の観測報道/共同通信(熊本日日新聞掲載)、金利スワップの織り込み(10月19日)/BBH(TMGM掲載)
- 9月の全国消費者物価指数/総務省統計局
- 米GDP・個人所得支出の公表日程/米商務省経済分析局
データ基準日:2026年10月23日のニューヨーク市場終値(日本時間24日早朝)。ドル円の終値はみんかぶの集計(156円87銭)を用い、ヤフー・ファイナンスの最終値(156円81銭)とは数銭異なる。週間の変化はECB参照レート(欧州時間の昼の値)で比べた。50日・200日移動平均は日足終値ベースの概算で、算出元によって数銭ずれる。FRBの据え置き確率は報道による数字で、筆者はCMEの算出元を直接確認できていない。ロイターのエコノミスト調査は他媒体の報道を通じて確認した。日銀の10月会合の方針は会合前の観測報道であり、日銀の公表ではない。シナリオの確率は筆者の見立てで、将来の為替水準を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















