10月22日木曜、カリフォルニア州サンノゼ。ニューヨーク市場の取引終了から間もなく、ウェスタンデジタル(WDC)は7〜9月期決算を公表した。売上高は43億8,100万ドルで前年同期比55%増。会社が8月に示した見通しの上限を超えた。次の四半期の売上高見通しは51億ドル前後で、伸び率は66〜72%に加速する。数字だけを並べれば、文句のつけようがない決算だった。
それでも株価は下がった。この日の通常取引で6.4%安の354.19ドルに沈んでいた株は、決算後の時間外取引で一時330ドル台まで売られた。翌23日の米東部時間朝6時47分、プレ・マーケット(取引開始前の売買)では346.01ドル。前日終値比で2.3%安まで戻したが、まだ水面下にある(取引時間外の値)。6月18日に付けた52週高値799.87ドルからは、すでに半値以下である。好決算でも売られる。この1日に、いまのAI関連株が置かれた場所が凝縮されていた。
ウェスタンデジタル株、決算をはさんだ15時間(米東部時間)
読み方:好決算の発表直後に売られ、一夜明けて半分ほど戻した。時間外の安値は10月16日の終値332.00ドルとほぼ同じ水準。出所:Yahoo Financeの15分足(16時以降は時間外・プレ・マーケットの値で、取引量は少ない)。
決算の夜——「予想を上回る力強いスタート」
「2027年度は予想を上回る結果で、力強いスタートを切った」。最高経営責任者(CEO)のアーヴィング・タンはそう発表文に書いた。ウェスタンデジタルの会計年度は7月に始まる。7〜9月期は2027年度の最初の四半期にあたる。
中身を見ると、タンの言葉に誇張はない。米証券取引委員会に提出された発表文によれば、調整後の売上総利益率は58.1%、調整後の1株利益は4.64ドルで前年同期比161%増。営業キャッシュフローは16億400万ドル、フリーキャッシュフローは13億7,700万ドルだった。四半期中に10億100万ドルの自社株買いを実施し、四半期配当は17%増の1株0.175ドルに引き上げた。
市場の予想とも比べておく。報道によれば、LSEGがまとめたアナリスト予想は調整後1株利益4.09ドル、売上高41億4,000万ドルだった。実績はいずれも上回った。10〜12月期の見通しも、市場予想の売上高45億7,000万ドル、1株利益4.82ドルを大きく超える水準だと伝えられている。
| 項目 | 7〜9月期の実績 | 市場予想(報道) | 10〜12月期の会社見通し |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 43.81億ドル(前年同期比55%増) | 41.4億ドル | 51億ドル±1億ドル(同66〜72%増) |
| 調整後売上総利益率 | 58.1% | — | 60〜61% |
| 調整後1株利益 | 4.64ドル | 4.09ドル | 5.80ドル±0.20ドル |
| フリーキャッシュフロー | 13.77億ドル | — | — |
巻き戻し——6月の高値から何が起きたか
時計を4カ月戻す。6月18日、ウェスタンデジタル株は799.87ドルを付けた。AIのデータセンターが膨大なデータを保管するためにハードディスクを大量に必要とする、という物語が株価を押し上げていた。1年前の2025年10月28日の安値121.85ドルから見れば、6倍を超える上昇である。
物語の空気が変わったのは秋だった。8月の前回決算でも、同社は予想を上回る実績と強い見通しを示した。それでも株価は下げた。大きく上がった後の利益確定売りと説明された。そして10月に入ると、AI投資そのものへの疑念が市場を覆う。10月16日の終値は332.00ドル。高値から6割近く安い水準だった。
決算の前週から当日にかけて、株価は揺れ続けた。19日に352.21ドル、20日に364.32ドル、21日に378.51ドルと3日続けて上げ、決算への期待が戻りかけた。その翌日、すべてが逆回転する。
同じ頃、ウォール街では——メタとラムリサーチ
決算発表の数時間前から、ウォール街の空気は冷え切っていた。前日の21日にはメタ・プラットフォームズが決算を発表し、売上高は予想を上回ったものの、AI投資に必要な資金の大きさが嫌われて22日の株価は急落した。半導体製造装置のラムリサーチは、供給制約への警告で売られた。株探によれば、22日のフィラデルフィア半導体株指数は6.7%安。ナスダック総合指数も大きく下げた。
ウェスタンデジタルが決算を出したのは、そうした1日の終わりだった。AIのためにデータセンターを建てる会社の支出に、市場が疑いの目を向け始めた日である。その支出の受け手であるウェスタンデジタルが「需要は強い」と言っても、聞き手の耳は「その需要はいつまで続くのか」に向いていた。ラムリサーチが最高益でも売られた経緯はこの記事に書いた。
強気派と慎重派
強気派の根拠は、会社自身の言葉にある。決算説明会でタンは、大口顧客のストレージ需要の見通しが2031年まで続いていると語ったと報じられている。米ゴールドマン・サックスは決算後も株価の上値余地を見込む見方を示したという。見通しの売上総利益率60〜61%は、ハードディスクの価格が強いことを示す数字でもある。
慎重派の側にも数字がある。株価は決算前の1週間で332ドルから378ドルまで14%戻しており、決算への期待はすでに一部織り込まれていた。発表直後の売りには、その分の利益確定も混じっている。そもそも株価が半値になったのは業績が悪化したからではない。AIの設備投資がいつか減速するという「将来の需要の山」への警戒だ。足元の決算がどれほど良くても、その警戒は消えない。
クライマックス——時間外の330ドル台
Yahoo Financeの15分足で、決算後の値動きを追う。22日の通常取引の終値は354.19ドル。発表直後の16時15分(米東部時間)には357.83ドルと、いったん小高く始まった。だが16時45分には330.09ドルへ急落し、その後も夜の取引では331〜340ドルの間を行き来した。19時45分の値は331.01ドルで、終値比6.5%安。決算の数字を読んだ市場が最初に出した答えは、売りだった。
一夜明けると、景色は少し変わる。23日朝4時のプレ・マーケット開始時点で348.50ドル。6時47分には346.01ドルで、時間外の安値から15ドルほど戻している。10月16日の終値332.00ドルが、今回の時間外の安値とほぼ同じ水準にあった点は記憶しておいてよい。売り手と買い手が、同じ場所でぶつかっている。
東京から見る——キオクシアへの連想
同じ頃、東京ではキオクシアホールディングスが取引を終えていた。23日の終値は1万2,755円。日中には1万1,380円まで売られたが、後場に持ち直した。キオクシアが作るのはハードディスクではなくNAND型フラッシュメモリーで、ウェスタンデジタルとは製品が異なる。それでも、AIのデータ保管需要という同じ物語の上に株価が乗っている点は共通している。キオクシアの株価の位置はこの記事で検証した。
エピローグ——残された問いと次の日付
残された問いは一つだ。業績の伸びが加速しているのに、株価が半値になっている。その差を埋めるのは、業績がさらに伸びることか、それとも株価が先回りして描いた需要の山が実際に来ることか。答えは、ウェスタンデジタル自身ではなく、その顧客であるクラウド大手の口から出てくる。
次の日付はすぐに来る。株探が伝える日程では、10月27日に同業のシーゲイト・テクノロジー、28日にマイクロソフトとアルファベット、29日にアマゾンとサンディスク、30日にキオクシアが決算を発表する。クラウド大手が設備投資計画を据え置くか積み増すかで、ストレージ株の物語の続きが決まる。来週の決算日程は半導体株決算プレビューにもまとめている。
主な参照
- 7〜9月期決算、10〜12月期見通し、配当、自社株買い、CEOの発言/ウェスタンデジタル(米証券取引委員会への提出書類)
- 前回決算の見通しと株価の反応/MarketBeat、Finviz
- LSEGの市場予想、10〜12月期の市場予想、時間外の反応/BigGo Finance、CNBC
- 大口顧客の需要見通し(2031年まで)とゴールドマン・サックスの見方/Asianet Newsable
- 株価(日足・15分足・時間外)/Yahoo Finance
- 22日の米半導体株安と来週の決算日程/株探(MINKABU PRESS)
データ基準日:2026年10月23日。22日の株価は米国市場の終値、決算後の値は時間外取引、23日朝の値はプレ・マーケットの値(米東部時間6時47分、日本時間19時47分)で、いずれも23日の通常取引の終値ではない。時間外とプレ・マーケットの値は取引量が少なく、情報ベンダーによって差がある。市場予想、決算説明会での発言、証券会社の見方は報道によるもので、本誌は原資料を直接確認できていない。シーゲイトとサンディスク、キオクシアの決算日は株探の報道による。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














