2023年10月26日、カプコンは4〜9月期(上期)の決算を発表した。翌日の株価は9.14%下げた。1年後の2024年10月29日にも上期決算を出し、翌日は5.45%安。さらに1年後の2025年10月29日の発表の翌日も7.51%安だった。3年続けて、上期決算の翌日に5%を超えて下げている。そして今年、カプコンは27日(火)に上期決算を発表する。
今週は、日本の主力株の決算が相次ぐ。カプコンに続き、28日(水)に日立製作所、29日(木)にキーエンスが発表する。本記事は3社の過去12回ずつ、計36回の決算発表を鏡にして、今回の値動きの幅と方向を確率で示す。歴史は韻を踏むが、同じ詩を繰り返すとは限らない。その違いも併せて検証する。
36回の記録:翌日に5%超動いたのは22回
決算翌日に5%超動いた回数(過去12回)
読み方:日立は12回中10回で5%を超えて動いた。3社合計では36回中22回(61%)。10%超はキーエンスとカプコンの各1回のみ。出所:stockanalysis.comの東京市場の日足終値から本誌計算。
決算発表日の終値と翌営業日の終値を比べた。過去12回のうち翌日に5%超動いた回数は、日立が10回、カプコンが7回、キーエンスが5回だった。10%を超えたのは、キーエンスとカプコンの各1回にとどまる。キーエンスの1回は2026年4月の15.83%高(ストップ高)で、自社株買いを可能にする定款変更が材料視されたと伝えられた。決算の数字だけに対する反応とは言い切れない。
当時と今を比べるため、対照表を置く。株価は26日前場の値(11時30分ごろ)で、終値ではない。
| 銘柄 | 発表日(予定) | 過去12回で5%超 | うち上昇 | 過去3回の上期決算の翌日 | 26日前場の株価 |
|---|---|---|---|---|---|
| カプコン(9697) | 27日(火) | 7回 | 2回 | −9.14%、−5.45%、−7.51% | 4,333円 |
| 日立製作所(6501) | 28日(水) | 10回 | 6回 | +5.75%、−5.38%、+7.15% | 5,611円 |
| キーエンス(6861) | 29日(木) | 5回 | 4回 | +8.03%、+3.21%、−3.29% | 7万8,490円 |
カプコン:3年続いた「秋の失望」は繰り返すか
カプコンの株価(2023年9月〜2026年10月、週次)
読み方:赤い点は上期決算(10月)の翌日。3年続けて5%超下げた。緑は2026年7月の第1四半期決算の翌日で、過去12回で最大の上げ。最終点は10月26日前場の値(4,333円、取引中)。出所:stockanalysis.comの東京市場の日足終値(分割調整済み)、本誌が週1回に間引いて作図。
当時と同じ点から見る。3回の下げの理由を、本誌は年ごとに確認できていない。確かなのは、3回とも上期決算の翌日に5%を超えて下げたという事実だけである。過去12回で見ても、5%超の変動7回のうち5回が下げだった。カプコンは決算で売られやすい銘柄だったと言ってよい。
違う点もある。今年の4〜6月期は売上高704億円(前年同期比54.7%増)、営業利益411億円(同66.9%増)だった。通期の営業利益計画830億円に対し、第1四半期だけで49.5%に達している。株価は7月の決算翌日に19.84%高と、過去12回で最大の上げを記録した。アイフィスの集計による通期の経常利益の市場予想は914億円で、会社計画の830億円を約10%上回る。市場はすでに上方修正を織り込みにかかっている。
もう一つの違いは、決算の直前に出た悪材料である。カプコンは22日と23日、「CAPCOM ID」に登録された1,177万件のメールアドレスが流出したと発表した。業績への影響は現時点で示されていない。だが、会社側の説明が決算発表の場でどこまでなされるかは、株価の反応を左右しうる。
日立:12回中10回、最も「よく動く」大型株
日立は時価総額の大きい銘柄でありながら、過去12回中10回で翌日に5%超動いた。上昇6回、下落4回で、方向は一定しない。ただし10%を超えたことは一度もない。2025年7月の8.81%安が最大の下げ、2024年4月の8.50%高が最大の上げである。
今回の土台を確認しておく。日立は7月29日、2027年3月期の通期計画を引き上げた。売上収益は11兆1,000億円から11兆7,000億円へ、税引前利益は1兆2,570億円から1兆3,350億円へ、純利益は8,500億円から9,000億円へと上方修正した。4〜6月期の税引前利益2,951億円は、アイフィスの市場予想(2,359億円)を大きく上回った。市場予想(通期の経常利益に相当する税引前利益)は1兆4,076億円で、会社計画を5.4%上回る。株価は23日に4.37%下げ、5,562円で引けた。下げの具体的な理由は見つかっていない。日経平均が一時1,400円超下げた、AI関連株の全面安の日だった。
キーエンス:計画を出さない会社の「数字一本勝負」
キーエンスは通期の業績計画を公表しない。投資家は四半期ごとの実績を、市場予想と直接比べるしかない。4〜6月期は売上高3,466億円(前年同期比32.8%増)、営業利益1,871億円(同44.7%増)、経常利益1,968億円(同49.6%増)だった。経常利益はアイフィスの予想1,604億円を22.7%上回り、株価は翌日に9.36%上げた。通期の経常利益の市場予想は8,045億円(前期比26.5%増)である。
キーエンスの過去12回は、5%超の変動が5回と3社で最も少ない。上期決算に限ると、2023年は8.03%高、2024年は3.21%高、2025年は3.29%安だった。工場の自動化(FA)関連の需要を映す銘柄で、23日にはファナックが通期計画の引き上げと500億円の自社株買いを発表している。同じFA関連として、市場の期待はすでに一段高い。
「今回は違う」論の検証
3社に共通する構造的な違いが一つある。今週は決算と同時に、日本時間29日未明にFOMC、30日に日銀の決定会合が控える。過去36回の多くは、こうした中銀イベントと重なっていない。決算の数字が良くても、金利と為替の変化が株価の反応を打ち消す可能性がある。円高に振れれば、輸出企業を中心に翌日の反応は割り引かれやすい。ドル円の見通しは本日のドル円見通しで示した。
もう一つは、市場全体の地合いだ。26日前場の日経平均は半導体株の売りで478円下げたが、TOPIXは上昇した(寄り付き1時間の速報)。資金は半導体から、その他の主力株へと向かっている。日立・キーエンス・カプコンはその受け皿になりうる。期待が高い分、決算が市場予想に届かなければ下げも大きくなる。半導体株の決算の記録は半導体株決算プレビューで扱った。
歴史が示す3つの教訓と、本誌の確率
- 日立は「動く」前提で構える。12回中10回が5%超で、10%超はゼロ。振れ幅の目安は上下5〜9%である。
- カプコンの秋は3年続けて下げたが、今年は前提が違う。第1四半期の進捗が49.5%と高く、上方修正がなければ失望に、あれば上昇に振れやすい。
- キーエンスは数字一本で決まる。計画がないぶん、経常利益が市場予想を上回るかどうかが反応のほぼすべてを決める。
| 銘柄 | 翌日に5%超動く確率 | 方向(本誌) | 判断を変える材料 |
|---|---|---|---|
| カプコン | 55% | 上昇45%:下落55% | 通期計画の上方修正の有無、情報流出の影響の説明 |
| 日立製作所 | 70% | 上昇55%:下落45% | 通期計画の再引き上げ、デジタル事業の受注 |
| キーエンス | 40% | 上昇50%:下落50% | 経常利益が市場予想の水準を上回るか |
今回固有の監視点
- カプコン(27日):通期営業利益830億円の計画を引き上げるか。市場予想の経常利益914億円が一つの目安になる。
- 日立(28日):税引前利益の通期計画1兆3,350億円を、市場予想の1兆4,076億円に近づけるか。17時からの説明動画も材料になる。
- キーエンス(29日):上期の経常利益の伸びが、4〜6月期の49.6%増からどこまで鈍るか。
- 中銀イベント:キーエンスの決算発表日の未明にFOMC、翌日に日銀が控える。決算の反応と為替の反応を分けて見る必要がある。
主な参照
- 決算発表日と過去の発表/日立製作所、キーエンス、カプコン
- キーエンスの4〜6月期決算/キーエンス決算短信
- 日立の通期計画の引き上げ/ニュースイッチ
- カプコンの4〜6月期決算/gamebiz
- 市場予想(アイフィス)と決算の速報/マネックス証券 銘柄スカウター、株予報
- 東京市場の日足終値/stockanalysis.com
- 26日前場の株価/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月26日11時30分(日本時間、前場の引け)。翌日の騰落率は、決算発表日の終値と翌営業日の終値の比較で、株式分割を調整した東京市場の日足(stockanalysis.com)から本誌が計算した。発表日は各社のIR資料による。いずれも取引終了後の発表とみなしたが、2024年11月以前は取引終了が15時で、一部の発表時刻は確認できていない。今週の発表時刻は3社とも未公表で、前回の例から推定した。カプコンの2025年10月30日の値は、始値と終値がともに4,000円で、データの誤りの可能性がある。市場予想はアイフィスの集計で、集計日は明示されていない。26日の株価は取引中の値。確率は本誌の判断で、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















