先週末に円買いで逃げ込んだ向きは、月曜のニューヨークの引けを見て首をかしげただろう。ドル円は26日、156円93銭で始まり、東京の午前に156円65銭まで円高に振れたあと、157円50銭で引けた。高値は157円64銭。先週、AI関連株の急落とともに入った「逃避の円買い」は、株が買い戻されると一服した。27日朝8時時点のGoogleファイナンスの気配は157円49銭である。
筆者は26日朝の時点で、円が逃避先として買われる流れに目を向け、155円を焦点とみていた。その見方は一日で修正を迫られた。今週は29日未明に米連邦公開市場委員会(FOMC)、30日に日銀の決定会合が控える。どちらも金利据え置きが大勢だが、相場はその先の12月を見ている。本稿では、テープの読み方と水準の地図、そして筆者の見立てと撤退の線を書き留める。
月曜のテープ——押し目は156円台で拾われた
みんかぶの市況を時間順に並べると、月曜の値動きの性格がよくわかる。東京の9時台には、原油高で貿易赤字が膨らむとの懸念から157円22銭前後まで買われた。そこから円買いが入り、昼にかけて156円65銭まで押した。ロンドンではドルが全面高となって157円37銭へ。ニューヨークではAI関連株が買い戻され、先週の安全資産としての円買いが一服し、157円台半ばに落ち着いた。
正直、この日の値動きでいちばん重いのは高値ではなく安値の方だ。東京時間に156円台へ押した場面で、売りが続かずに拾われた。先週23日に付けた10月の安値156円08銭まで、売り方は届かなかった。値幅は99銭。経済指標の発表がほとんどない月曜としては小さくない。米2年債入札は最高落札利回りが4.708%と、入札前の取引水準4.705%をわずかに上回った。応札倍率は2.59倍で前回の2.63倍を下回り、ドルを売る材料にはならなかった。
需給——オプションと、膨らんだ予想変動率
需給の面で目を引くのは通貨オプションである。みんかぶによると、27日のニューヨーク時間10時(日本時間23時)に期日を迎えるオプションは、157円85銭に15億5,000万ドル、158円00銭に12億7,000万ドルある。行使価格の近くでは、売り手のヘッジ取引で相場が引き寄せられたり、押し戻されたりしやすい。今夜は158円の手前で上値が重くなる場面を想定しておきたい。
もう一つは予想変動率だ。1週間物の予想変動率は26日夕方に8.73%と、20〜21日の5〜6%台から跳ね上がった。1カ月物は7.85%。FOMCと日銀会合を1週間のうちに抱えるため、オプションの値段に「イベント料」が乗っている。裏返せば、市場は今週の値幅が普段より大きくなるとみているということだ。
予想変動率(インプライド・ボラティリティ)とは。オプションの価格から逆算した、市場が見込む今後の値動きの大きさ。年率で表す。1週間物8.73%は、単純計算で1週間に約1.2%、ドル円で2円弱の値幅を見込んでいる水準である。
水準の地図——157円85銭と158円54銭が上の壁
みんかぶが26日昼に示したテクニカル指標を並べる。転換線は157円52銭、基準線は157円56銭で、月曜の終値157円50銭はちょうどこの帯に戻ってきた。上には21日移動平均の157円85銭、雲の上限158円44銭、200日移動平均158円54銭、100日移動平均159円31銭が重なる。下には雲の下限156円07銭があり、10月の安値156円08銭とほぼ同じ位置だ。
ドル円の水準の地図(円)
読み方:現在値は転換線・基準線(157円52〜56銭)の帯にあり、上は158円44〜54銭(雲の上限・200日線)、下は156円07〜08銭(雲の下限・10月安値)が節目になる。出所:みんかぶ(テクニカル指標は26日昼時点)、Googleファイナンス、本誌の見立て。
地図の読み方は単純だ。いま値は雲の中にいて、上も下も節目まで1円前後しかない。上は158円44〜54銭に雲の上限と200日線が重なる厚い壁があり、ここを終値で抜ければ10月の高値158円95銭(14日)と9月24日の戻り高値159円04銭が見えてくる。下は156円07〜08銭の雲の下限と10月安値の重なりで、ここを割れば9月18日の日銀利上げ当日に付けた155円87銭が次の目安になる。
今週の本題——据え置き二つ、見るのは12月
FOMCの声明は日本時間29日午前3時、ウォーシュ議長の会見は3時30分である。政策金利の誘導目標は9月17日の利上げで3.75〜4.00%になった。韓国経済紙ソウル経済が伝えたCMEのフェドウオッチでは、今回の据え置きが90.0%、12月の利上げが76.2%だった。同紙が引用したロイター調査では、エコノミスト100人のうち94人が今回の据え置きを、100人全員が12月8〜9日の会合での利上げを予想している。今回は経済見通しの公表がない会合で、材料は声明の文言と会見に絞られる。
日銀は29〜30日に会合を開き、30日に決定と展望レポートの基本的見解を公表する。植田総裁の会見は15時30分だ。政策金利は9月18日の利上げで1.25%になった。みんかぶによれば、翌日物金利スワップ(OIS)は今回の据え置きを約97%織り込んでおり、9月28日に約4割あった利上げの織り込みは消えた。日経QUICKニュース(NQN)が日銀ウオッチャーに聞いた調査でも、全員が据え置きを予想し、次の利上げは12月との回答が8割を超えた。
金利差も確認しておく。財務省と米財務省の公表値で23日の終値を比べると、日米2年債の利回り差は約2.82ポイント、10年債では約2.16ポイントある。米10年債利回りは26日に5.00%だった。この差がすぐに縮む材料は、今週の会合からは出てきにくい。
介入の距離感——当局は9月28日から黙っている
介入警戒の度合いも測っておく。財務省の公表では、4月30日〜5月6日に計11兆7,349億円、7月30日〜8月26日に15兆3,993億円の円買い介入が実施された。7月末の介入は日米が協調した28年ぶりのもので、7月30日にドル円は163円74銭から157円98銭まで下げた。一方、6月29日〜7月29日と8月27日〜9月28日の介入額はゼロである。
口先の牽制も途絶えている。三村財務官は9月28日、首相らの円安牽制について「メッセージは非常にクリア。市場が素直に受け止めてくれればいい」と述べ、ドル円は157円50銭前後から156円62銭まで下げた。10月16日の発言は金融市場全般についてのもので、為替の水準には触れていない。7月に当局が動いたのは163円台だった。158円手前のいまは、当局の出番を意識する位置ではない。30日19時には、9月29日〜10月28日の介入額が公表される。
筆者の見立て——週内は上、ただし158円54銭で一度止まる
筆者は週内、ドル高・円安方向を本線とみる。根拠は三つある。第一に、156円台の押し目が月曜に拾われ、10月の安値に届かなかった。第二に、市場はFOMCで12月の利上げを76%織り込んでおり、ウォーシュ議長がそれを否定しなければ、ドルを売る理由は生まれにくい。第三に、日銀の利上げ観測が9月末の4割から3%まで後退し、30日の会合で円を買う材料は乏しい。
ただし、上値の目安は158円44〜54銭の厚い壁と置く。今夜のオプションの期日158円、雲の上限、200日線が重なる位置で、ここで一度止まるとみる。確率の目安は、金曜までに158円54銭を試す展開40%、156円65銭〜158円のもみ合い40%、156円を割り込む展開20%である。短期(1〜2週間)の想定レンジは156円〜159円、中期(12月の両会合まで)は155円〜160円とみる。
逆になったら——撤退の線
この見立てを捨てるのは、終値で156円08銭(10月の安値)を割り込んだときである。雲の下限も同じ位置にあり、ここを割れば先週の円買いが本物だったことになる。きっかけとして警戒するのは二つ。ウォーシュ議長が12月の利上げに慎重な姿勢を示すこと、そして日銀の展望レポートが物価見通しを大きく引き上げ、12月の利上げを強く示唆することだ。日銀の7月の見通しは、ドバイ原油が80ドル前後から70ドル前後へ下がる前提を置いていた。原油は前提より高く、見通しの上方修正は避けにくい。その幅が、円の側の最大の不確定要素である。
この1週間の経緯は、26日の見通しと週末の来週の見通しにまとめた。前者で取り上げた「円は逃避先に戻るか」という問いには、月曜のテープが一度「まだ戻らない」と答えた形である。FX取引の基本はFX解説ページで整理している。
監視リスト(日本時間)
| 日時 | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 27日 21:30 | 米9月耐久財受注(市場予想+1.3%) | 米景気の強さ |
| 27日 23:00 | 米10月消費者信頼感(市場予想80.4)、オプション期日157円85銭・158円 | 158円手前の上値の重さ |
| 29日 3:00/3:30 | FOMC声明、ウォーシュ議長の会見 | 12月利上げを否定するか |
| 29日 21:30 | 米7〜9月期GDP速報値、9月の個人消費支出(PCE) | 米物価と景気の裏取り |
| 30日 8:30 | 東京都区部10月CPI(中旬速報) | 日銀会合直前の物価 |
| 30日 昼ごろ/15:30 | 日銀の決定・展望レポート、植田総裁の会見 | 物価見通しの上方修正幅と12月への言及 |
| 30日 19:00 | 財務省の介入実績(9月29日〜10月28日) | 覆面介入の有無 |
主な参照
- 26日のドル円の始値・高値・安値・終値、ニューヨーク市況/みんかぶ、みんかぶ
- 東京・ロンドンの市況/みんかぶ、みんかぶ
- オプションの期日/みんかぶ、予想変動率/みんかぶ、テクニカル指標/みんかぶ
- 米2年債入札/みんかぶ
- 外国為替平衡操作の実施状況/財務省(4〜6月期)、財務省(7月30日〜8月26日)、財務省(8月27日〜9月28日)
- 三村財務官の発言(9月28日)/みんかぶ
- 政策金利の誘導目標/米連邦準備制度理事会、FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
- CMEフェドウオッチとロイター調査/ソウル経済
- 日銀の9月18日の決定/日本銀行、会合日程/日本銀行
- OISの織り込みと7月の展望レポートの原油前提/みんかぶ、日銀ウオッチャー調査/日本経済新聞
- 日米の国債利回り/米財務省、財務省
- 米GDP・PCEの公表日程/米経済分析局
データ基準日:ドル円の現在値は2026年10月27日8時(日本時間)の気配で、取引時間中の値であり終値ではない。26日の始値・高値・安値・終値はニューヨーク市場の引け時点の値で、情報ベンダーにより差がある。テクニカル指標は26日昼時点の値。日米の金利差は23日の終値で本誌が計算した。CMEフェドウオッチ、ロイター調査、OISの織り込み、日銀ウオッチャー調査は報道された値であり、本誌は一次データを直接確認していない。7〜8月の介入の日別内訳は11月上旬に公表予定で、本稿では月間の合計額のみを扱った。確率の目安と想定レンジは本誌の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















