米メタ・プラットフォームズは2026年10月26日、総額約950億ドルの株式による資金調達計画を発表した。今回すぐに売り出すのは約350億ドルで、残る約600億ドルは2027年1〜3月期以降の随時売り出し(ATM)に回す。全額を発行した場合の新株は約1億4,780万株で、既存の発行済み株式の5.8%にあたる(本誌計算)。
株価は26日、前週末比1.88%安の630.56ドルで引けた。10月21日の7〜9月期決算の発表前と比べると9.6%安い。950億ドルは26日の欧州中央銀行(ECB)参照レートの1ドル=157.45円で換算すると約15兆円になる。
950億ドルの内訳
| 手段 | 規模 | 現金が入る時期 | 希薄化(本誌計算) | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| 普通株(クラスA)の先渡し売却 | 225億ドル+追加売り出し枠33.75億ドル | 2027年11月19日までにメタが選ぶ日 | 1.37% | 仮目論見書。価格は未決定 |
| 強制転換型優先株(預託株式2億5,000万口) | 約125億ドル+追加枠3,750万口 | 払い込み時 | 約0.76% | 仮目論見書。配当率は未決定 |
| クラスC株のATM | 約600億ドル | 2027年1〜3月期以降 | 約3.65% | 契約は未締結。実施しない可能性あり |
| 合計 | 約950億ドル | — | 5.8% | — |
普通株は先渡し売却契約の形を取る。相手方はモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスの関連会社で、メタは当初は現金を受け取らない。受け渡しの日はメタが2027年11月19日までの間で選ぶ。仮目論見書によると、先渡し契約をすべて決済した場合、クラスA株は22億1,446万株から22億4,947万株に増える。
優先株は1株の20分の1を表す預託株式を2億5,000万口売り出す。清算価値は1株1,000ドル。2029年8月15日前後に自動で普通株に転換する。転換比率は転換前20営業日の売買高加重平均価格で決まる。上場予定の銘柄コードは「METAM」。配当率と転換比率は仮目論見書の段階では空欄だった。
ATMは、議決権のないクラスC株を市場で随時売り出す枠である。メタは発表資料で、契約はまだ結んでおらず、条件も決まっておらず、実施しない可能性もあると明記した。クラスC株は2027年1月19日に定款変更が発効したあとに取引が始まる。
背景:7〜9月期は増収、フリーキャッシュフローは赤字
メタは10月21日の米国市場の取引終了後に7〜9月期決算を発表した。売上高は646億100万ドルで前年同期比26%増だった。会社が7月に示した見通し610億〜640億ドルの上限を上回った。一方、営業利益は129億8,800万ドルで37%減だった。全米の州司法長官との和解に伴う98億9,000万ドルの費用を計上したためである。この費用を除くと1株利益は7.40ドルで、計上後は3.83ドルだった。
| 項目 | 7〜9月期の実績・見通し | 前回の見通し(7月29日) |
|---|---|---|
| 売上高 | 646.0億ドル(前年同期比+26%) | 610億〜640億ドル |
| 設備投資 | 349.1億ドル | — |
| 営業キャッシュフロー | 327.9億ドル | — |
| フリーキャッシュフロー | −21.2億ドル | — |
| 現金・有価証券(9月末) | 824.5億ドル | — |
| 10〜12月期の売上高見通し | 730億〜760億ドル | — |
| 2026年の設備投資見通し | 1,350億〜1,450億ドル | 1,300億〜1,450億ドル |
| 2026年の総費用見通し | 1,750億〜1,790億ドル | 1,650億〜1,690億ドル |
設備投資349億1,000万ドルが営業キャッシュフロー327億9,000万ドルを上回り、フリーキャッシュフローは21億2,000万ドルの赤字だった。資金調達の発表資料は、2026年1〜9月の営業キャッシュフローを970億ドル、9月末の現金と有価証券を約820億ドルとしている。資金の手段として、営業キャッシュフロー、投資適格の社債、提携、株式の4つを挙げた。調達資金の使途は「一般的な事業目的」とし、AIインフラへの投資を支えると説明した。
事業の指標は伸びた。決算資料によると、同社のアプリを毎日使う人数(DAP)は9月平均で36億4,000万人、前年同期比3%増だった。広告表示回数は10%増、広告1件あたりの価格は14%増。従業員数は9月末で6万6,775人と15%減った。仮想現実などを扱う部門「リアリティ・ラボ」の営業赤字は、2026年に180億〜190億ドル、2027年に約150億ドルの見通しとした。2027年の売上高見通しは示さず、「2027年を通じて全体として力強い増収を維持する」と説明した。
今回の調達額を決算の数字と並べると次のとおり。即時分の約350億ドルは、7〜9月期の設備投資349億1,000万ドルとほぼ同じ額である。950億ドル全体は、2026年の設備投資見通しの中央値1,400億ドルの68%にあたる(本誌計算)。
同じ21日、メタは議決権のないクラスC株の新設も発表した。既存のクラスA・B株1株につきクラスC株1株を配る。クラスA株の株価は実質的に2対1の株式分割と同じ動きになる見込みだ。ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はクラスC株の売却を制限する「創業者協調契約」を結んだ。
関係者の発言と格付け
発表資料によると、米エヌビディア、米AMD、米ブロードコムの3社が、普通株の売り出しで合計最大50億ドルを購入する意向を示した。拘束力はない。メタは自社の信用格付けをAa3/AA−と記載している。本誌は格付け会社の公表文は確認していない。
証券会社の評価は投資判断を据え置く内容が中心だった。投資情報サイトのインベスティング・ドットコムによると、カナコード・ジェニュイティは「買い」と目標株価950ドルを維持し、希薄化は「管理可能」とした。米決済業界メディアのPYMNTSによると、ウェルズ・ファーゴは「オーバーウエート」と目標株価995ドル、RBCキャピタル・マーケッツは「アウトパフォーム」と目標株価800ドルを維持した。RBCは今回の計画を、AI投資を支える一方で支出の増加を示す「まちまちのシグナル」と評した。
ロイターは見出しで、今回の計画を過去最大規模の株式調達と報じた。本誌はロイターの記事本文と、過去の調達額との比較は確認していない。
市場の反応
メタ株の決算発表翌営業日の騰落率(直近12回)
読み方:決算発表日の終値から翌営業日の終値までの騰落率。上げ6回、下げ6回。変動幅5%超は8回。直近3回は連続で下落。出所:stockanalysis.comの日足終値から本誌計算。決算発表日は米証券取引委員会への8-Kの提出時刻で確認。
メタ株の終値は次のとおり。10月21日は697.52ドル。決算発表翌日の22日は6.98%安の648.85ドル。23日は642.62ドル。資金調達を発表した26日は1.88%安の630.56ドルで、日中の安値は627.80ドル、出来高は3,210万株だった。26日の終値は9月15日以降の30営業日で最も安い。9月24日の終値777.59ドルからは18.9%安い。
決算発表の翌営業日の株価は、直近3回の決算でいずれも下げた。2026年4月が−8.55%、7月が−7.95%、10月が−6.98%である。直近12回の決算では、上げと下げが6回ずつで、変動幅が5%を超えたのは8回、変動幅の平均は8.50%だった。デンマークのサクソバンクのオプション分析によると、10月の決算前のオプション価格は約7.1%の変動を織り込んでいた。実際の変動は6.98%だった。
一方、26日の米国市場ではAI関連株が買われた。フィラデルフィア半導体株指数は2.82%高、S&P500は0.70%高だった。メタ株は指数とは逆の方向に動いた。同日の米国市場の全体の動きは26日の寄り付き1時間の記事にまとめている。メタが決算発表と同時に公表したクラスC株については10月22日の記事で扱った。
今後の日程
- 未定(数日内の見込み):普通株と優先株の売り出し価格の決定。日本時間27日11時50分時点で、米証券取引委員会への価格決定の提出書類はない。
- 10月29日未明(日本時間):米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表。
- 2027年1月19日:クラスC株を新設する定款変更の発効予定日。
- 2027年1〜3月期以降:約600億ドルのATMの開始が可能になる時期。
- 2027年11月19日:普通株の先渡し契約の決済期限。
- 2029年8月15日前後:優先株の強制転換日。
同業の大型ハイテク株の決算日程と過去の値動きは、10月24日の決算プレビューに整理した。
主な参照
- 資金調達計画の発表資料(FWP、2026年10月26日)/米証券取引委員会(SEC)
- 普通株の先渡し売却の仮目論見書(424B5)/SEC
- 強制転換型優先株の仮目論見書(424B5)/SEC
- 7〜9月期決算資料(2026年10月21日)/SEC、クラスC株の新設(8-K)/SEC
- 7〜9月期の四半期報告書(10-Q、発行済み株式数)/SEC
- 4〜6月期決算資料(7〜9月期の見通し)/SEC
- 株価の日足終値/stockanalysis.com
- カナコードの評価/Investing.com、ウェルズ・ファーゴとRBCの評価/PYMNTS
- 決算前のオプションが織り込んだ変動幅/サクソバンク
- ドル円の参照レート(10月26日)/欧州中央銀行
データ基準日:2026年10月26日の米国市場の終値。株価はデータベンダーの日足終値。売り出し価格、優先株の配当率と転換比率は日本時間27日11時50分時点で未決定で、希薄化率は参照株価642.62ドルを用いた本誌の試算である。実際の希薄化は売り出し価格、追加売り出し枠の行使、ATMの実施の有無で変わる。証券会社の評価は二次情報にもとづく。「過去最大」との評価はロイターの見出しによるもので、本誌は独自に確認していない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















