自民党は10月26日、ガソリン補助金を段階的に縮小する提言をまとめた。1リットル当たり170円程度に抑えている基準価格を、12月以降、来年の春先に向けて毎月5円程度ずつ引き上げるよう政府に求める内容である。原油相場が横ばいなら、店頭の全国平均価格は2月に185円前後まで上がる計算になる。
同じ26日、北海ブレント原油の12月限は前週末比0.91ドル安の115.81ドルで清算値を付けた。サウジアラビアなど3カ国の代表団がテヘランを訪れ、緊張緩和への期待が出た。ただ下げ幅は1%に満たない。補助の縮小は、原油が大きく下がらないまま始まる可能性がある。
主要数値
| 項目 | 数値 | 前回比 | 時点・種別 |
|---|---|---|---|
| ブレント原油(ICE、12月限) | 115.81ドル | −0.91ドル(−0.8%) | 10月26日の清算値 |
| ブレント原油(同) | 116.72ドル | +3.55ドル(+3.1%) | 10月23日の清算値。4月29日以来の高値 |
| WTI原油(NYMEX、12月限) | 101.76ドル | −1.51ドル(−1.5%) | 10月26日の清算値 |
| レギュラーガソリン全国平均 | 170.2円/L | +0.1円 | 10月19日調査(21日公表) |
| ガソリン補助金の支給額 | 51円/L | 過去最高 | 9月(経済産業省) |
| 補助の国費 | 日額100億円超 | — | 小林政調会長の発言(26日) |
| 米戦略石油備蓄(SPR) | 2億8,268万バレル | — | 10月16日の週 |
| 米商業用原油在庫 | 4億1,252万バレル | −306万バレル | 10月16日の週。9月25日の週から1,480万バレル減 |
| INPEX(1605) | 4,049円 | +4.90% | 10月26日の終値 |
| ENEOSホールディングス(5020) | 1,466.5円 | +3.42% | 10月26日の終値 |
提言の中身
共同通信によると、自民党は26日、党本部でイラン情勢に関する会合を開き、中東情勢を踏まえた物価高対策の提言をまとめた。柱は補助金の段階的な縮小である。基準価格を12月以降、毎月5円程度ずつ引き上げる。終了の時期は示していない。
テレビ朝日によると、27日に党内手続きを行い、近く高市首相に申し入れる。現時点では党の提言であり、政府の決定ではない。高市首相はすでに赤沢経済産業相に見直しの検討を指示している。
提言には、冬の電気・ガス料金の補助について「家計や事業者の負担軽減に万全を期す観点」から支援を求める項目も入った。灯油については安定供給の徹底を求めた。灯油の需給はこの記事で扱っている。
店頭価格の試算
補助金は、店頭価格を基準価格に近づけるように支給額を決める仕組みである。基準価格が5円上がれば、原油と円相場が変わらない限り、店頭価格も5円程度上がる。10月19日調査の全国平均170.2円を起点に、提言どおり毎月5円ずつ引き上げた場合の試算は次のとおりである。
提言どおりなら:レギュラーガソリン全国平均の試算(円/L)
読み方:原油と円相場が変わらず、基準価格が毎月5円ずつ上がる場合の機械的な試算である。原油が下がれば上昇幅は小さくなる。3月分は提言の「春先に向け」から置いた本誌の仮定。出所:資源エネルギー庁、共同通信、本誌計算。
3月の190円は、提言が「春先に向け」としていることから置いた仮定である。引き上げが何カ月続くかは決まっていない。逆に、原油が下がれば補助の支給額が先に縮み、店頭価格の上昇は試算より小さくなる。9月の支給額51円は、補助がなければ店頭価格が220円前後になりうる水準を示す。
関係者の発言
小林鷹之政調会長(26日、党の会合で)「日額100億円を超える国費を支出し、諸外国より低い価格に抑えているが、見直す段階に入っている」
萩生田光一幹事長代行(26日、テレビ朝日の報道)冬の電気・ガス料金の補助や来年4月からの消費減税など「総合的な物価対策のなかで、必要な見直しを進めていく必要がある」
テレビ朝日は、党内に補助の縮小に慎重な意見もあると伝えた。
原油市場の反応
ブレントは23日に116.72ドルで引け、4月29日以来の高値を付けた。週間では約6%高だった。取引時間中には117ドルを上回った。26日は115.81ドルで、下げ幅は0.91ドルにとどまった。
アルジャジーラによると、26日にはサウジアラビアのハリド国防相、パキスタンのムニール陸軍参謀長、トルコのカルン国家情報機構長官がテヘランでペゼシュキアン大統領と会談した。3カ国は8月に相互防衛協定を結んでいる。イラン国営メディアは、各国が対話を続けることで一致したと伝えた。一方、イエメンの親イラン武装組織フーシ派によるサウジアラビアへの攻撃が続き、下げを限った。
米国の在庫は細っている。EIAによると、10月16日の週の戦略石油備蓄は2億8,268万バレルで、月次統計と比べると1982年秋以来の低水準である。商業用原油在庫は3週間で1,480万バレル減った。
東京市場では26日、INPEXが4.90%高の4,049円、ENEOSホールディングスが3.42%高の1,466.5円だった。WTI原油に連動するNEXT FUNDSのETF(1671)は0.06%高の6,783円。ドル円は27日7時52分時点で157円46銭と円安水準にあり、円建ての原油価格を押し上げている。
補足:10月の備蓄放出
26日には国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長の「備蓄放出の決定後、原油価格は下がり始めた」との発言が一部で配信されたが、ロイターの原文は10月2日付である。主要7カ国(G7)がIEAの調整で原油と軽油を最大1億バレル、4カ月かけて放出することを決めた際の発言で、新しい決定ではない。日本の放出量の内訳は公表されていない。
本誌は26日の記事で補助金に出口論が出ていると伝えた。その時点で縮小の幅と時期は決まっていなかった。今回の提言で、月5円程度、12月開始という数字が初めて示された。
見方と注意点
本誌の見方では、12月以降の店頭価格は、原油の値動きより補助の縮小で決まる部分が大きい。1バレルは約159リットルで、原油5ドルはドル円157.5円で換算すると1リットル当たり約5円に当たる。ブレントが毎月5ドル程度ずつ下がらない限り、補助の縮小による値上がりが原油安による値下がりを上回る。円建てで見ると、ドル円の1円の変化は原油1バレル当たり115円前後の変化に当たる。逆に、ブレントが100ドルを割り込めば、補助の支給額が自然に縮み、店頭価格は170円台にとどまる可能性がある。
原油関連株は26日に上げた。ただ、緊張緩和が進めば原油と株価の両方が下がる。補助の縮小で家計のガソリン代が増える局面でも、原油関連株が家計負担の穴埋めになるとは限らない。
今後の日程(日本時間)
- 10月27日:自民党の党内手続き。その後、高市首相に申し入れ
- 10月28日 14:00:資源エネルギー庁の石油製品価格調査(26日調査分)
- 10月28日 23:30:EIAの週間石油在庫統計
- 10月29日 3:00:米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表
- 11月1日:OPECプラスの有志7カ国による会合
- 11月3日:米中間選挙
主な参照
- 自民党の提言(基準価格を毎月5円程度引き上げ、小林政調会長の発言)/共同通信(Yahoo!ニュース、10月26日17時41分)
- 党内手続き、萩生田幹事長代行の発言、9月の支給額51円/テレビ朝日(Yahoo!ニュース、10月26日20時5分)
- レギュラーガソリンの全国平均価格/資源エネルギー庁
- ブレント・WTIの清算値(10月26日)/ロイター配信、(10月23日)/ロイター(Yahoo Finance)
- テヘランでの会談/アルジャジーラ
- 米国の戦略石油備蓄/EIA、商業用原油在庫/EIA、在庫統計の日程/EIA
- ビロル事務局長の発言とG7の備蓄放出(10月2日)/ロイター(Devdiscourse)
- INPEX・ENEOSの株価/Googleファイナンス
- FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:原油は2026年10月26日の清算値、東京の株価は同日の終値、ドル円は27日7時52分(日本時間)の気配で取引時間中の値。ガソリン価格は10月19日調査分。自民党の提言は党の要請であり、政府の決定ではない。店頭価格の試算は、原油と円相場が10月中旬から変わらず、提言どおり基準価格が毎月5円引き上げられると仮定して本誌が計算したもので、3月分は本誌の仮定である。補助がない場合の店頭価格の目安は、10月の全国平均に9月の支給額を足した概算である。OPECプラスの会合日程は同機構の発表文の抜粋にもとづき、本誌は原文を確認できていない。米国の在庫が1982年秋以来の低水準との比較は、EIAの月次統計との対比による。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















