11月2日、米ベライゾン・コミュニケーションズは1株0.7075ドルの四半期配当を支払う。100株を持つ日本の個人投資家なら、税引き前で70.75ドル。1ドル=157円で換算すると約1万1,100円で、新NISAの口座なら米国での源泉徴収10%を引いた約1万円が手元に入る。その配当株が26日、過去最高を並べた決算を発表したのに売られている。
stockanalysis.comによると、ベライゾン株は米東部時間26日10時3分(日本時間23時3分)時点で43.49ドルと、前週末の終値44.66ドルから2.62%下げている。取引時間中の安値は42.47ドルだった。会社は同日朝、7〜9月期の調整後1株利益が1.31ドルと前年同期の1.21ドルから8.3%増え、2026年の通期見通しを引き上げた。それでも株は下がった。本稿では、配当を受け取る側から見て何が起きているのかを順にたどる。
決算の中身:契約は増え、1契約あたりの収入は減った
まず良い数字から並べる。米証券取引委員会(SEC)に提出された決算資料によると、7〜9月期の後払い(ポストペイド)携帯電話の純増は40万6,000件で、前年同期の4万4,000件から急増した。会社はこれを「第3四半期として5年ぶりの強さ」と説明している。全期間を通じた5年ぶりではなく、7〜9月期どうしの比較である点には注意したい。解約率は0.94%で、前年同期から0.04ポイント改善した。フリーキャッシュフロー(自由に使える現金)は78億ドルで12.1%増えた。
一方で、売上高は343億1,300万ドルと前年同期比1.5%の増加にとどまった。投稿サイトのストックツイッツが伝えたフィスカルAIの集計では、市場予想は348億5,000万ドルで、これを下回った。足を引っ張ったのは端末の販売で、無線機器の売上高は9.0%減の51億ドル。買い替え率が3.3%から2.6%に下がった。1アカウントあたりの月間収入(ARPA)は168.08ドルで、前年同期の171.27ドルから1.9%減っている。加入者は増えたが、1人あたりから得る収入は減った。値引きを抑えて利益率を上げた結果でもあり、調整後のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の利益率は40.2%と、会社が過去最高と説明する水準になった。
上流をたどる:株価を重くしているのは宇宙からの競争相手
決算だけでは、この株の10月の動きは説明できない。インベスティング・ドットコムによると、10月8日の取引終了後、スペースXが米グレイン・マネジメントから全米の800メガヘルツ帯の周波数を買い取ることで合意した。stockanalysis.comの終値で、翌9日のベライゾン株は46.35ドルから41.65ドルへ10.1%下げた。同じ日にAT&Tは9.81%、Tモバイル・USは13.27%下げている。衛星から直接スマートフォンにつながる通信が、地上の携帯電話会社の顧客を奪うという懸念である。
23日には、スペースXが米国の約8万カ所の携帯基地局の利用について交渉しているとブルームバーグが報じた。ヤフー・ファイナンスによると、この日の終値でAT&Tは7.96%、Tモバイルは7.71%下げ、ベライゾンの下げは1.19%にとどまった。ダン・シュルマン最高経営責任者(CEO)は9月の投資家向け会議で、売上高の95〜98%は都市部と郊外から得ており、衛星は中長期的にも有力な競争相手にならないと述べたと報じられている。26日の決算説明会での発言は、本稿の執筆時点では確認できていない。
川上から川下へ:ベライゾン株を動かした材料(2026年10月)
読み方:10月の下げの大部分は決算前の衛星通信をめぐる懸念で起きた。決算は契約数では強かったが、売上高の伸びは鈍く、株価を押し戻すには至っていない。出所:インベスティング・ドットコム、ヤフー・ファイナンス、米証券取引委員会、ベライゾン、stockanalysis.comの終値。
家計に換算する:100株の配当はいくらか
ベライゾンの四半期配当0.7075ドルは、年換算で2.83ドル。26日10時3分の株価43.49ドルで割ると、配当利回りは約6.5%になる。同社は2025年9月の増配を「19年連続」と発表し、2026年1月30日にも1株0.69ドルから0.7075ドルへの増配を決めた。下の表は100株を持つ場合の受け取り額を、1ドル=157円と仮定して試算したものである。
| 100株の場合 | 四半期(1回分) | 年間(4回分) | 計算の前提 |
|---|---|---|---|
| 税引き前 | 70.75ドル(約1万1,108円) | 283.00ドル(約4万4,431円) | 1株0.7075ドル×100株 |
| 新NISA口座 | 63.68ドル(約9,997円) | 254.70ドル(約3万9,988円) | 米国の源泉徴収10%のみ |
| 特定口座など課税口座 | 50.74ドル(約7,966円) | 202.96ドル(約3万1,865円) | 米国10%の後に国内20.315%(外国税額控除は考慮せず) |
| 参考:購入に必要な金額 | 4,349ドル(約68万2,793円) | 26日10時3分の株価43.49ドル×100株 | |
注意点が2つある。11月2日に支払われる配当の権利確定日は10月9日で、すでに過ぎている。いま買っても、この回の配当は受け取れない。もう一つは為替である。配当はドルで決まるため、円高になれば円での手取りは減る。1ドル=157円が150円になれば、同じ配当の円換算は約4.5%減る。
生活防衛と投資の接点:持ち続ける人、これから買う人
ここからは選択肢を並べる。推奨ではない。すでに持っている人にとって、今回の決算は配当の原資が増えたことを示した。フリーキャッシュフローの通期見通しは224億4,000万〜225億4,000万ドルへ引き上げられ、1〜9月の配当支払い88億ドルを十分に上回る。一方で、純負債を調整後EBITDAで割った比率は2.3倍で、2025年末の2.2倍から上がった。財務の余裕はわずかに減っている。
これから買うことを考える人は、株価の位置を確認しておきたい。43.49ドルは52週高値51.68ドルから約16%下だが、2025年末の終値40.73ドルからは6.5%高い。同業ではTモバイルが年初から3割近く下げ、23日には1年間で最も安い終値を付けた。下げているのはベライゾンだけではない。衛星通信をめぐる懸念が通信株全体に広がっている。23日の通信株安の経緯は同日の米国株の記事にまとめた。スペースXの資金調達の動きはネオクラウド株の記事にも関係する。
次に口座へ届く変化の日付
- 10月28日(水):Tモバイルが7〜9月期決算を米東部時間16時5分ごろに発表する。同業の契約の伸びと値引きの状況が比べられる。
- 11月2日(月):1株0.7075ドルの配当の支払日(米国)。日本の証券口座への入金は数日遅れるのが通常である。
- 12月上旬:例年の流れでは、次の四半期配当が発表される時期。日付は会社の発表を待つ必要がある。
- 時期未定:スペースXによる周波数取得の米連邦通信委員会(FCC)の審査。承認の行方が通信株全体の重しになるかを左右する。
主な参照
- 2026年7〜9月期決算と通期見通し(8-K添付資料)/米証券取引委員会
- 四半期配当の発表(2026年9月)/ベライゾン
- 19年連続の増配(2025年9月)/ベライゾン
- 売上高の市場予想と株価の反応(10月26日)/ストックツイッツ
- スペースXの周波数取得(10月8日)/インベスティング・ドットコム
- 10月23日の通信株の終値/ヤフー・ファイナンス
- Tモバイルの決算発表日程/ビジネスワイヤ
- 株価・52週高値と安値・日足終値/stockanalysis.com
データ基準日:2026年10月26日(米東部時間10時3分)。株価は取引時間中の値で、終値ではない。10月9日と23日の騰落率は終値による。売上高の市場予想はフィスカルAIの集計で、集計会社によって異なる。円換算は1ドル=157円の仮定による試算で、実際の為替レートや外国税額控除、証券会社の手数料は反映していない。CEOの衛星に関する発言は報道によるもので、会社の公式資料では確認していない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















