豪ドル円は22日朝、9時25分(日本時間)に111円31銭まで上げ、9月25日以来およそ1カ月ぶりの高値を付けた。みんかぶは、原油高による貿易収支の悪化懸念と、日銀が今月の会合で金利を据え置くとの見方を円売りの理由に挙げている。だが、その上げは2時間あまりで消えた。11時49分の気配は110円82銭前後で、日経平均が前日比703円安で午前の取引を終えた時間帯と重なる。まず下の4つの数字を見てほしい。
本誌の結論を先に書く。今後1週間の想定レンジは109円70銭〜111円90銭(確率60%)、1カ月では109円00銭〜112円30銭(同50%)とみる。上値の天井は111円55銭〜112円08銭に重なる3本の移動平均で、ここを抜けるには28日の豪消費者物価指数(CPI)と11月3日のオーストラリア準備銀行(RBA)の利上げがそろう必要がある。見方を撤回する線は、ニューヨーク17時の終値で112円10銭を上回ったときだ。
豪ドル円はどこで止まるのか
豪ドル円の節目(10月22日11時49分時点)
読み方:現在値の上、111円55銭〜112円08銭に50日・200日・100日の3本の移動平均が約50銭の幅で重なる。22日朝の高値111円31銭はその手前で止まった。橙は本誌が判断に使う2本の線。移動平均はYahoo Financeの1時間足からニューヨーク17時の終値を再集計して本誌が計算した概算。
図は日々の終値から計算した移動平均と、直近の高値・安値を縦に並べたものである。10月21日までの終値で計算すると、50日線は111円55銭、200日線は111円71銭、100日線は112円08銭。3本が約50銭の幅に収まっている。22日朝の高値111円31銭は、その帯の手前で止まった。9月の下げで高値づかみした買い手の戻り売りが出やすい場所で、ここを一度で抜けるのは難しいと本誌はみる。
下は20日線の110円20銭が最初の支えになる。その下は9月30日の終値109円30銭、そして豪雇用統計が出た10月15日の安値108円63銭だ。16日の豪ドル円の記事では10月28日までのレンジを108円60銭〜111円10銭と置いたが、22日朝に上限を一時抜けた。その間に新しく加わった材料が、次に見るRBA副総裁の発言である。
上げているのは豪ドルか、円安か
豪ドル円の変化率を2つに分ける(ニューヨーク17時の終値ベース)
読み方:豪ドル円=豪ドル米ドル×ドル円である。10月15日の雇用統計後の1.64%高は、ほぼすべてが豪ドル米ドルの上昇(1.55%)で、ドル円は0.10%しか動いていない。上げの主役は「円売り」ではなく「豪ドル買い」だ。2つの寄与の和は掛け算の関係のため合計とわずかにずれる。出所:Yahoo Financeの1時間足から本誌計算。
「円売り優勢」という見出しとは裏腹に、この1週間の上げの主役は豪ドルである。豪ドル円は豪ドル米ドルとドル円の掛け算でできている。10月15日から21日までのニューヨーク終値で比べると、豪ドル円の1.64%高のうち、豪ドル米ドルが1.55%、ドル円は0.10%にすぎない。ドル円は158円前後から動いておらず、円の側に新しい売り材料は乏しい。ドル円の膠着はけさのドル円見通しで扱った。
豪ドルを押し上げたのは利上げ観測だ。RBAは9月29日に政策金利を0.25%引き上げて4.60%とした(全員一致)。21日にはハウザー副総裁がシドニーの投資家会議で、物価の見通しは当行の予想より「大幅に悪い」と述べた。ABCによると、ブルームバーグのデータで見た11月の利上げ確率は51%で、雇用統計の直後に20%を割っていたところから跳ね上がった。みんかぶは、副総裁が7〜9月期のCPIは8月の数値(前年同月比4.0%)を上回るとみていると伝えている。豪ドル米ドル側の値動きは21日の豪ドル米ドルの記事に書いた。
終値は3本の移動平均の下にいる
豪ドル円の終値と移動平均(2026年8月3日〜10月22日)
読み方:青が日々の終値、点線が移動平均。9月の下げで終値は移動平均の下に沈み、10月は3本すべての下で109〜111円のもみ合いが続いた。3本の線は111円台半ば〜112円にまとまりつつあり、ここが戻りの天井になっている。最後の点は22日11時49分の取引時間中の値。出所:Yahoo Financeの1時間足からニューヨーク17時の終値を本誌が再集計。
過去3カ月の流れを確かめておく。豪ドル円は8月28日に取引時間中で114円96銭まで上げ、過去1年の高値を付けた。同じ日の欧州中央銀行(ECB)の参照レートでも114円89銭である。そこから9月に崩れ、終値が50日線を上回った日は9月3日以降一度もない。10月は109〜111円のもみ合いで、21日の終値111円13銭まで、すべての日が3本の移動平均の下で引けている。8月28日から10月21日までの3.04%安は、豪ドル米ドルの下げ(1.87%)と円高(1.19%)の両方による。
過去1カ月の日々の値動きから計算した変動率は年率7.0%で、1日の平均的な振れ幅は約50銭(0.44%)になる。1週間なら±1円10銭前後、1カ月なら±2円20銭前後が統計上の目安だ。本誌のレンジはこの幅を、移動平均の帯と直近安値の位置で上下に調整したものである。値が飛ぶ相場ではないが、材料が重なる来週は振れ幅が広がりやすい。
円の材料は23日のCPIと30日の日銀
円の側を見る。日銀は9月18日に政策金利を1.25%程度へ引き上げた(賛成7、反対2)。次の会合は10月29〜30日で、共同通信は物価目標2%の「到達」を判断する一方、金利は据え置く公算が大きいと報じた。みんかぶの18日時点の整理では、短期金利市場が織り込む10月の追加利上げは4%程度にとどまり、12月までの利上げは約80%織り込まれている。10月の据え置きは、すでに価格に入っているということだ。
だから円の分かれ目は、据え置きそのものより「12月」をどこまで示すかになる。その前哨戦が23日8時30分に総務省が公表する9月の全国CPIで、生鮮食品を除くコアの予想中央値は前年同月比2.1%(8月は1.7%)。2.3%以上なら12月の利上げ観測が強まって円高に、2.0%以下なら円安に振れやすい。豪日の金利差3.35%は、RBAが11月に上げ日銀が据え置けば3.60%に広がり、日銀が12月に上げれば元に戻る計算である。
| 日時(日本時間) | 材料 | 豪ドル円で見るところ |
|---|---|---|
| 10月23日 8:30 | 日本9月の全国CPI | コア2.1%の予想に対する上振れ・下振れ |
| 10月28日 9:30 | 豪9月CPI(7〜9月期を含む) | 副総裁の「8月超え」が数字で確かめられるか |
| 10月29日 3:00 | 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果 | ドル円と豪ドル米ドルの両方に波及 |
| 10月30日 8:30 | 東京都区部10月のCPI | 日銀の発表直前の物価の確認 |
| 10月30日 昼ごろ | 日銀の結果発表と展望リポート、総裁会見 | 12月の利上げに含みを残すか |
| 11月3日 12:30 | RBAの政策金利発表と金融政策報告 | 4.60%から引き上げるか |
| 11月20日 8:30 | 日本10月の全国CPI | 日銀12月会合への地ならし |
1週間と1カ月のシナリオ
| 期間 | シナリオ | 確率(本誌) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|---|
| 1週間(30日まで) | 基本:帯の下でもみ合い | 60% | 109円70銭〜111円90銭 | 豪CPIは予想並み、日銀は据え置きで12月はぼかす |
| 1週間 | 上抜け | 20% | 111円90銭〜112円60銭 | 豪CPIの上振れで11月利上げ確率が6割超に |
| 1週間 | 下抜け | 20% | 108円60銭〜109円70銭 | 株安・中東情勢の悪化で円買い、日本のCPI上振れ |
| 1カ月(11月20日まで) | 基本:レンジ継続 | 50% | 109円00銭〜112円30銭 | RBAは利上げか利上げ寄りの据え置き、日銀は12月に含み |
| 1カ月 | 豪ドル高:114円台へ | 25% | 112円30銭〜114円00銭 | RBAが11月に利上げし、日銀は12月を示さない |
| 1カ月 | 円高:108円台以下へ | 25% | 107円00銭〜109円00銭 | RBAが据え置きで慎重、日銀が12月利上げを示唆、株安 |
反対側の筋書きにも重みを置いておく。豪ドル円は株価と一緒に動きやすい通貨ペアだ。22日の午前のように日経平均が大きく下げる日は、豪州の金利が上がる見通しでも円が買い戻される。逆に、28日の豪CPIで基調の物価(刈り込み平均)が上振れれば、11月3日の利上げはほぼ確実視され、移動平均の帯は一気に抜ける可能性がある。本誌がレンジを本線にしつつ、上抜けの確率を1週間で20%残しているのはそのためだ。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認すること | 豪ドル円の上昇を支持 | 豪ドル円の下落を支持 |
|---|---|---|
| 日足の終値(NY17時) | 112円10銭(100日線の少し上)を上回って終える | 109円30銭(9月30日の終値)を割って終える |
| 豪9月CPI(28日) | 刈り込み平均が上振れ、11月利上げ確率が6割超に | 予想並み以下で、確率が3割台に戻る |
| 日本の全国コアCPI(23日) | 2.0%以下 | 2.3%以上 |
| 日銀(30日) | 据え置きで、12月の利上げに触れない | 12月の利上げに含みを残す |
| RBA(11月3日) | 利上げ、または追加利上げを示す据え置き | 据え置きで追加利上げに慎重 |
| 株式市場 | 日米の株価が落ち着く | 中東情勢の悪化などで世界的な株安が続く |
- 判断は日足の終値で行う。指標の発表直後は値が飛び、一時的に節目を抜けてもすぐ戻る「だまし」が多い。22日朝の111円31銭も、2時間で50銭あまり押し戻された。
- 28日朝と30日昼は取引を急がない。発表の前後はスプレッド(売値と買値の差)が広がりやすい。新しく持つなら発表を通過してからでも遅くない。
- 金利差の受け取りを過大評価しない。3.35%の金利差は、110円の豪ドル1単位につき1日およそ1銭にとどまる。1日の振れ幅約50銭の前では小さい。
- レバレッジは抑え、撤退の水準を先に決める。本誌の撤退線は終値で112円10銭超え、下抜けの入口は109円30銭割れである。
FX取引で豪ドル円を買い持ちすると、この金利差はスワップポイントとして日々受け取れるが、逆に売り持ちでは支払いになる。口座の仕組みや業者ごとの違いはFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 22日朝の豪ドル円と円売りの背景、副総裁の7〜9月期CPIの見方/みんかぶFX(10月22日9時45分)、21日の四本値/みんかぶFX
- ハウザー副総裁の発言と11月の利上げ確率(10月21日)/ABCニュース
- RBAの9月29日の利上げ(4.60%)/オーストラリア準備銀行、会合日程/同
- 豪CPIの公表予定(10月28日)/オーストラリア統計局
- 日銀の9月18日の利上げ(1.25%程度)/日本銀行、会合日程/同
- 日銀の10月会合で据え置きの公算(10月21日)/共同通信(ヤフーニュース)
- 全国CPIの市場予想と短期金利市場の織り込み(10月18日)/みんかぶFX
- 全国CPIの8月分と公表予定/総務省統計局
- FOMCの会合日程/米連邦準備制度理事会
- 豪ドル円・豪ドル米ドル・ドル円の1時間足と気配値、日経平均/Yahoo Finance、ECBの参照レート/Frankfurter
データ基準日:2026年10月22日 日本時間11時49分。22日の豪ドル円(110円82銭、高値111円31銭)と日経平均は取引時間中の値で、終値ではない。21日以前の値はYahoo Financeの1時間足からニューヨーク17時の終値を本誌が再集計したもので、業者によって数銭の差が出る。移動平均(20日110円20銭・50日111円55銭・200日111円71銭・100日112円08銭)と変動率は10月21日の終値までで本誌が計算した概算である。11月の利上げ確率51%はABCが伝えたブルームバーグのデータで、時点によって変わる。日銀の10月会合の内容は報道ベースで、日銀は公表していない。短期金利市場の織り込みは10月18日時点のみんかぶの整理による。シナリオの確率と撤退線は本誌の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















