豪ドル米ドルは20日のニューヨークを0.6983ドルで終え、21日の東京では寄りから0.70ドル台に乗せた。日本時間11時41分の気配は0.7022ドルで、朝方には0.7031ドルまで付けている。売り場を探していた向きは、0.70ドルを割り込む場面を待ちきれなかったはずだ。
同じ朝、シドニーではオーストラリア準備銀行(RBA)のハウザー副総裁が、シティ主催の投資家会議で物価の見通しは「当行の予想より大幅に悪い」と語った。オーストラリア放送協会(ABC)によると、LSEGのデータで見た11月の利上げ確率は42%で、雇用統計の直後に20%を切っていたところから倍以上に跳ねている。筆者は19日の0.70ドル攻防の記事で28日の物価指標を分岐点に置いたが、その手前で中銀が口を開いた。これが今回の新しい材料である。
テープを読む——下ヒゲのあとの3日続伸
まず値動きの順番を確認しておく。15日、9月の雇用統計で失業率が4.7%に上がり、就業者数が約3万9,300人減った日に、豪ドルは0.6895ドルまで売られた。10月の安値であり、直近3カ月の最安値でもある。ところが終値は0.6978ドルで、安値から80ポイント以上戻して引けた。下ヒゲの長い陰線で、投げはこの日に出尽くしたと筆者は見ている。
翌16日に0.6919ドルまで押したが、15日の安値には届かなかった。19日は中国の7〜9月期の国内総生産(GDP)が前年同期比4.5%増と4〜6月期の4.3%から加速し、0.6972ドル。20日は0.6983ドル。そして21日の0.70ドル台である。安値を切り上げながらの3日続伸だ。
ただ、勢いを過大評価してはいけない。過去1カ月の日々の値動きから計算した変動率は年率7.4%にすぎない。1日の値幅に直すと平均でおよそ30ポイント前後である。今は値が飛ぶ相場ではなく、水準を一つずつ確かめながら進む相場だ。
需給の中身——買っているのは金利の思惑だ
今回の上げを支えているのは、豪州の金利がまだ上がるかもしれないという思惑である。RBAは9月29日に政策金利を25ベーシスポイント引き上げて4.60%にした。全員一致の決定で、声明には「インフレ率を持続的に目標へ戻すために必要なことを続ける」とある。
そこへ21日のハウザー発言だ。ABCによると、副総裁は「期待インフレが目標から離れることは許されない」と述べ、期待がずれていく事態を「中央銀行にとっての悪夢」と表現した。一方で、利上げを予告したわけではない。investingLiveは、7〜9月期の刈り込み平均(トリム平均、極端な品目を除いた物価の基調)が予想を上回りそうだという趣旨の発言も伝えているが、これは要約であり、本人の言葉そのものではない。
正直に書いておくと、0.70ドル乗せの理由を副総裁の発言だけに求めるのは無理がある。豪ドルは発言の前から0.70ドル台にいて、investingLiveも発言後の動きは小さかったと書いている。ドルの側の要因も大きい。ドル指数は21日昼に101.8前後で、19日の102.0から小幅に下げている。豪ドル独自の買いとドル売りが重なった、というのが正確なところだろう。
米国の側は少し事情が違う。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に利上げしており、政策金利の誘導目標は3.75〜4.00%だ。次の会合は10月27〜28日で、市場では今回は据え置き、12月に追加利上げという見方が優勢と伝えられている。米国も豪州も「次は利上げか」が論点になっている。どちらの利上げが先に確かめられるかが、この通貨ペアの綱引きになる。
水準の地図——上は移動平均線の壁
豪ドル米ドルの水準の地図(2026年10月21日 日本時間11時42分)
読み方:現値のすぐ上に100日線(0.7036)、200日線(0.7046)、50日線(0.7078)が重なる。下は20日線、9月30日安値、10月15日安値の3段。オレンジは筆者が置いた目標と撤退線。出所:Yahoo Financeの日足(ロンドン時間区切り)から本誌計算。
地図で一番大事なのは、現値のすぐ上に移動平均線が3本重なっていることだ。21日昼時点の計算で、100日線が0.7036ドル、200日線が0.7046ドル、50日線が0.7078ドル。現値0.7022ドルは20日線(0.6978ドル)の上にいるが、残る3本の下にいる。0.7036〜0.7078ドルの40ポイントほどの帯は、9月の下げで捕まった買い手の戻り売りが出やすい場所になる。
下は分かりやすい。20日線の0.6978ドル、9月30日の安値0.6950ドル、そして15日の0.6895ドル。この3段の床がある限り、押し目は買い場として扱える。
筆者の見立て——押し目買い、まずは0.7080ドル
結論を言う。筆者は豪ドル米ドルを押し目買いで見る。今後1〜2週間の値幅は0.6950〜0.7150ドルを想定し、まず50日線の0.7080ドル近辺、28日の物価指標が強ければ0.7150ドルまで伸びると見る。根拠は3つだ。
一つ目は値動きの形である。15日の長い下ヒゲで投げが出て、そこから安値を切り上げてきた。売り方が一度攻めて押し切れなかった形だ。二つ目は利上げ確率の水準である。42%という数字は「どちらとも言えない」水準で、物価指標が強ければまだ上に動く余地がある。三つ目は中国だ。7〜9月期の4.5%成長は、鉄鉱石などを通じて豪州の輸出を支える材料になる。
中期、つまり年末までの景色についても触れておく。ウエストパックが12月末の予想を0.72ドルに置いていると報じられている。ただし原文の確認は取れていない。筆者の感覚でも、9月高値の0.7239ドルを年内に試すには、RBAの利上げとFRBの据え置きが両方そろう必要がある。今の時点では、そこまでは見立てに入れていない。
逆になったら——0.6950ドル割れの終値で撤退
見立てが外れる道筋もはっきりしている。28日の物価指標が弱く、利上げ確率が再び2割台に戻る場合だ。もう一つは、FRBが28日の会合で早めの利上げを示し、ドルが買い戻される場合である。どちらでも、豪ドルは移動平均線の帯を抜けられずに押し戻される。
撤退線は0.6950ドル割れの終値に置く。9月30日の安値であり、ここを終値で割るなら15日の下ヒゲが示した買いは本物ではなかったことになる。その先は0.6895ドルの安値試しで、そこも割れれば戻り売りの相場に戻ったと認める。値幅で見れば、0.7020ドルで買って0.6950ドルで切ると70ポイントの損、0.7150ドルまで取れれば130ポイントの利益になる。損と利益の比は1対1.9で、悪くない勝負だと考える。
円で持つ人のために豪ドル円にも触れておく。21日11時42分時点で111円05銭前後。20日線の110円25銭の上にいるが、50日線の111円59銭と200日線の111円71銭の下にいる。豪ドル米ドルと同じく、上に移動平均線が並ぶ形である。円は日銀やドル円の材料にも振られるので、豪ドルの見立てだけで円建てで勝負するのは筆者は勧めない。経緯は豪ドル円の記事にまとめてある。
明日からの監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 随時 | 0.7036〜0.7078ドル | 移動平均線の帯を終値で抜けるか |
| 10月28日 9時30分ごろ | 豪9月CPI(7〜9月期の表と刈り込み平均を含む) | 副総裁の「上振れ」示唆が数字で確かめられるか |
| 10月29日 3時 | 米FOMCの結果発表 | 12月の利上げを示唆するか。ドルの買い戻し |
| 11月3日 12時30分 | RBAの政策金利発表と金融政策報告 | 利上げの有無。確率42%の答え合わせ |
| 11月19日 | 豪10月雇用統計 | 失業率4.7%からさらに上がるか |
同じ28日にはニュージーランドの金融政策も控えており、NZドルの記事で扱った。オセアニア通貨は2週間で材料が密集する。業者選びや口座の基本はFX解説ページを参照してほしい。
主な参照
- ハウザー副総裁の発言(2026年10月21日、シティの投資家会議)/ABCニュース、investingLive、RBA講演一覧
- RBAの9月29日の利上げと声明/オーストラリア準備銀行
- 9月の労働力調査(10月15日公表)/オーストラリア統計局
- 中国の7〜9月期GDP(10月19日公表)/新華社
- FRBの9月16日の利上げと会合日程/米連邦準備制度理事会、会合日程
- 豪ドル米ドル、豪ドル円、ドル指数の日足と気配値/Yahoo Finance(移動平均と変動率は本誌計算)
データ基準日:2026年10月21日 日本時間11時42分。21日の豪ドル米ドルと豪ドル円は取引時間中の気配値で、終値ではない。15日〜20日の値はロンドン時間で区切った日足の終値で、業者によって差が出る。移動平均線と変動率は日足終値から本誌が計算した。11月の利上げ確率42%はABCが伝えたLSEGのデータで、時点によって大きく変わる。ウエストパックの0.72ドル予想は報道によるもので、本誌は原文を確認できていない。米国の利上げ見通しは報道ベースの市場観測である。見立てと撤退線は筆者個人の見方であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたもので、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















