米半導体製造装置大手のKLA(KLAC)が、米国時間28日の取引終了後に7〜9月期の決算を発表する。日本時間では29日の早朝、東京の寄り付きの数時間前にあたる。株価は6月30日の終値301.71ドルから10月27日の153.66ドルまで、ほぼ半値になった。まず下の1枚を見てほしい。過去12回の決算で、翌日に株価が上がったのは4回しかない。
KLA株、決算発表の翌日の騰落率(過去12回)
読み方:上が直近。12回のうち8回が下落、5%超の変動は3回ですべて下げだった。平均はマイナス3.2%。出所:発表日は米証券取引委員会への提出書類、騰落率はYahoo!ファイナンスの日足終値(発表日終値→翌営業日終値)から編集部計算。
決算翌日は12回中8回下落——「良い決算でも売られる」銘柄
米証券取引委員会(SEC)に提出された決算発表の書類(様式8-K)から過去12回の発表日を確認し、発表日の終値と翌営業日の終値を比べた。下げたのは8回、上げたのは4回。平均はマイナス3.2%で、上下を問わない変動幅の平均は4.5%だった。5%を超えて動いたのは3回で、いずれも下げである。直近の7月28日の発表後は10.8%安、1月29日の発表後は15.2%安だった。
7月の発表を振り返ると、売上高は36億5,800万ドルで会社予想の中央値を上回り、1株利益も予想レンジの上限だった。それでも翌日に1割下げた。この銘柄は、数字が良いかどうかより、次の四半期の見通しが市場の期待にどこまで届くかで値が決まる。12回の記録はその性格をよく表している。
今回のハードル:会社予想とアナリスト予想
1株利益のハードル(調整後、ドル)
読み方:アナリスト予想は会社予想の中央値をわずかに上回るだけで、予想どおりの着地では驚きにならない。出所:KLAの決算発表(7月28日)、ナスダック。
KLAは7月の決算発表で、7〜9月期の見通しを売上高40億ドル(上下2億ドル)、調整後の1株利益1.16ドル(上下0.10ドル)、調整後の売上総利益率62.5%(上下1ポイント)と示した。米ナスダックが集計するアナリスト予想の1株利益は1.18ドル(8人)で、会社予想の中央値をわずかに上回る。前年同期の1株利益は0.88ドル(6月の1対10の株式分割後ベース)だった。
つまり、会社予想どおりの着地では市場の予想をほぼ満たすだけで、驚きにはならない。株価を動かすのは10〜12月期の売上高見通しと、経営陣が7月に語った「2026年後半に向けて勢いが加速する」という見立てを維持できるかどうかである。会社予想の上限42億ドルを超える売上高と、それ以上の10〜12月期見通しがそろえば、ようやく上値を試す材料になる。
オプション市場は約7.8%の変動を織り込む
10月30日満期のオプションで、現在値に最も近い行使価格のコールとプットを合わせた価格(ストラドル)は、27日の最終取引値ベースで約11.9ドルだった。27日終値153.66ドルに対して約7.8%であり、市場は決算をはさんで上下どちらかに7〜8%程度動く可能性を織り込んでいる計算になる(編集部試算)。
過去12回の平均変動幅4.5%と比べると、今回の織り込みは大きい。株価が半値まで下がった後で、上にも下にも振れやすいと市場が見ている表れである。なお、この値は28日の取引開始前の時点で取れた最終取引値から計算したもので、気配値ではない。28日の取引中に大きく変わりうる。
半値になった装置株、日本勢も同じ坂を下った
直近1年の高値からの下落率(終値ベース)
読み方:装置株は日米そろって4割前後下げ、半導体株指数全体(−21.5%)の約2倍の下げになった。出所:Yahoo!ファイナンスの日足終値(米国は10月27日、日本は28日)から編集部計算。
KLAだけが売られたわけではない。直近1年の終値ベースの高値から、ラムリサーチは44.4%安、アプライド・マテリアルズは45.2%安。東京では東京エレクトロンが37.8%安、SCREENホールディングスが38.3%安、ディスコが40.8%安、レーザーテックが27.7%安である。一方でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下げは21.5%にとどまる。半導体の中でも、製造装置の銘柄が特に強く売られてきた。
KLA株は10月7日の196.83ドルから22日の147.83ドルまで、約2週間で25%下げた。22日の1日だけで9.5%安。ラムリサーチが決算を発表した翌日で、同社株も大きく売られた日である。その理由はラムリサーチの記事で検証した。KLAの決算は、この売りが行き過ぎだったかどうかを確かめる2社目の答え合わせになる。
東京への波及:KLA決算の翌日、日本の装置株はどう動いたか
| KLAの決算発表日(米国) | KLA 翌日 | 東京エレクトロン 翌日 | レーザーテック 翌日 | SCREEN 翌日 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年7月28日 | −10.8% | −10.6% | −8.3% | −17.3% |
| 2026年4月29日 | −3.6% | −1.7% | −3.7% | −2.1% |
| 2026年1月29日 | −15.2% | −0.1% | −2.9% | −1.6% |
| 2025年10月29日 | −1.7% | +1.5% | +21.2% | +3.5% |
直近4回で見ると、KLAが下げた翌日に東京の装置株も下げた例が多い。ただし連動の強さはまちまちで、1月はKLAが15%下げても東京エレクトロンはほぼ横ばいだった。日本の装置株は自社の決算や受注の数字に、より強く反応する。KLAの決算は東京にとって「方向を決める材料」というより「その日の地合いを決める材料」と考えるのが妥当だろう。28日の東京市場では装置株が買い戻され、東京エレクトロンは4.4%高、レーザーテックは5.5%高で引けている。KLAの結果は、この戻りが続くかどうかを29日朝に試すことになる。国内の半導体決算の日程と論点はこちらのプレビューにまとめた。
シナリオと確率(編集部試算)
| シナリオ | 確率 | 決算の中身 | 翌日の値動きの目安 |
|---|---|---|---|
| 上振れ・見通し強気 | 30% | 売上高が42億ドル超、10〜12月期の見通しが7〜9月期を上回る | +6〜+10%(160ドル台半ばへ) |
| 予想並み | 40% | 売上高40億ドル前後、1株利益1.16〜1.20ドル、見通しは横ばい | −4〜+4%(148〜160ドル) |
| 見通し失望 | 30% | 10〜12月期の見通しが7〜9月期を下回る、受注の先送りに言及 | −6〜−12%(135〜145ドル) |
過去の記録だけを見れば下落のほうが起こりやすい。だが今回は、株価がすでに半値まで下げてから決算を迎える。7月の発表時には高値圏にあったことを考えると、期待のハードルは当時よりかなり低い。編集部は上下の確率を五分五分とみて、予想並みを最も起こりやすい展開に置いた。
発表前に確認しておく5点
- 10〜12月期の売上高見通し:7〜9月期の会社予想40億ドルを上回るかどうかが最大の分かれ目。
- 売上総利益率:調整後で62.5%(上下1ポイント)の予想に対し、下限の61.5%を割ると利益の質に疑問が出る。
- メモリー向けの比率:7月にCEOが「メモリーの性能要求の高まり」を成長の柱に挙げた。SKハイニックスの好決算との整合性を見たい。
- 先端パッケージングの売上:会社が新たな成長機会と位置づける分野で、数字の開示があるか。
- 時間外取引の初動と東京の寄り付き:発表は日本時間29日朝。東京エレクトロンなど装置株の気配に直結する。
同じ28日の夜にはマイクロソフトとアルファベットも決算を発表する。アルファベットの織り込みと過去の値動きはこちらの記事で扱った。
主な参照
- 2026年6月期第4四半期決算と7〜9月期の見通し(7月28日)/KLA(米証券取引委員会提出書類)
- 過去の決算発表日(様式8-K、項目2.02)/米証券取引委員会(EDGAR)
- 決算発表日程とアナリスト予想の1株利益/ナスダック
- 株価の日足終値とオプションの最終取引値/Yahoo!ファイナンス
- 投資家向け情報/KLA
データ基準日:2026年10月28日(日本時間19時台)。KLAなど米国株の株価は10月27日の終値、日本株は28日の終値である。1株利益と株価は6月11日の1対10の株式分割を反映した数値。オプションの織り込み(約7.8%)は27日の最終取引値から編集部が計算したもので、取引中の気配値ではなく、28日の取引で変わりうる。アナリスト予想はナスダックの集計値で、集計元により異なる。過去12回の翌日騰落は発表日の終値と翌営業日の終値の比較で、配当は調整していない。シナリオの確率は編集部の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















