7月30日木曜の朝、ソウル。サムスン電子が発表した4〜6月期決算は、市場が想像していた「好決算」の枠を壊した。営業利益89兆4,900億ウォン、前年比18倍。半導体部門に限れば利益は250倍を超えた。そして同社は、数字よりも重い一言を添えた——半導体の品不足は2027年、場合によっては2028年まで続く、と。AIデータセンターが広帯域メモリー(HBM)を奪い合い、作る端から売れていく。HBM4の売上は7〜9月期に3倍になる見込みだという。
その一言が、直前まで暴落していたメモリー株を、世界で最も熱いセクターに変えた。マイクロン・テクノロジー(MU)は木曜に+18.4%。サンディスク(SNDK)は+26.0%、ウエスタンデジタル(WDC)も+15.4%。そして金曜のプレマーケットでも買いは止まっていない。
巻き戻し——わずか48時間前、同じ株は投げ売られていた
図:暴落から爆騰へ——メモリー株の1週間
読み方:赤い点が売り材料、緑が買い材料。水曜の投げ(MU-9.9%)から木曜のサムスン決算で景色が一変し、金曜のプレマーケットまで買いが続いている。
時計を月曜に戻す。7月27日、上海。中国のDRAMメーカーCXMTが上場初日に急騰し、中国が国産露光装置の開発でも前進していると伝わった。市場が読み取ったのは「将来の供給増」——メモリー価格の天井が近いのではないかという不安だ。折しも好決算でも売られる半導体株の地合いが続いていた。
水曜、ニューヨーク。FRBのタカ派的な据え置きを受けて米30年債利回りが5.2%と2007年以来の水準に達すると、売りは投げに変わった。マイクロンはこの日-9.9%。SK hynixに至っては、営業利益率76%という史上最高の決算を出した翌日に11%売られた。「これ以上良くなりようがない」——ピークアウト論が、セクター全体を覆っていた。当サイトがメモリー・スーパーサイクルを検証した記事で警戒した「第二微分の悪化」、つまり価格上昇ペースの鈍化が、売り方の教科書だった。
転換点——サムスンの決算と、アマゾンの22兆円
だからこそ木曜のサムスンは効いた。ピークアウト論への回答が、当のメーカーから、しかも最大手から出たからだ。「品不足は2028年まで」という時間軸は、市場が織り込んでいた「来年どこかで需給緩和」を正面から否定する。ソウルの発表から数時間後、ニューヨークの寄り付きでメモリー株は全面高となり、業界ETFも2桁の上昇を演じた。
そして同じ日の夜、シアトルからもう一発が飛んだ。アマゾン・ドット・コム(AMZN)の決算だ。クラウド部門AWSの売上は前年比+37%と2021年以来の伸びに加速。会社は2026年の設備投資計画を2,000億ドルから2,200億ドル(約34兆円)へ増額し、その理由のひとつに「メモリー・部品価格の上昇」を挙げた。買い手が「高くても買う、むしろ買い増す」と宣言した形で、売り手の値上げが需要を殺していないことの、これ以上ない証明になった。株価は時間外で2桁高。前夜の観戦メモで「AWSと設備投資の増額幅が反応を決める」と書いた通りの展開だが、増額の理由がメモリー価格だったことは、この物語の主役が誰かを示している。
一方、クパチーノの答案は対照的だった。アップルは売上こそ過去最高の6月期を記録したが、サービス部門と中国の減速が嫌気され、株価はプレマーケットで大幅安。同じ夜に出た2つの決算が、資金をメガテックからメモリーへ押し流す形になった。
この瞬間のプレマーケット
東部時間08:08時点のプレマーケットの気配は次の通りだ(CNBC取得の実勢値。寄り付きまでに変動しうる)。
| 銘柄 | 木曜終値 | 木曜の上昇率 | プレマーケット気配 | 気配の変化率 |
|---|---|---|---|---|
| マイクロン(MU) | 874.66 | +18.36% | 912.40 | +4.31% |
| サンディスク(SNDK) | 1,279.96 | +25.99% | 1,342.00 | +4.85% |
| ウエスタンデジタル(WDC) | 533.04 | +15.37% | 563.42 | +5.70% |
残された問い
物語はまだ終わっていない。強気派の手元には、サムスンの「2028年」、SK hynixの利益率76%、そしてアマゾンの34兆円がある。慎重派の手元にも、まだ捨てられていない証拠が残る。SK hynixが史上最高の決算の直後に11%売られた事実。TrendForceが示す7〜9月期の値上がりペース鈍化(DRAM +13〜18%へ減速)。CXMTという将来の供給。つまり争点は「今が良いか」ではなく、「2027年の需給を今日の株価がいくらで買うか」に移った。
東京の読者には、もうひとつ補助線がある。この物語の前半、木曜の東京市場はマイクロソフト効果で半導体だけが買われる「二速相場」だった。サムスンとアマゾンが加えた燃料は、週明けの東京でアドバンテストや半導体製造装置、そして素材まで届く公算が大きい。ただし為替が絡む。前夜の介入とみられる円買いでドル円は一時157円台まで急落し、きょうの日銀の据え置きを経て160円台へ戻した。円建てで米メモリー株を持つ投資家にとって、株の上昇と円高の綱引きが同時に走る、珍しい週末になる。
次の日付は決まっている。マイクロンの次回決算は9月下旬。それまでの間、月次のメモリー価格統計と、ハイパースケーラーの設備投資姿勢が物語の続きを書く。メモリー高はPCやスマホ、そしてサーバーメーカーの原価を圧迫する両刃の剣でもある。値上げの宴の請求書が、いつ、誰に届くのか。48時間で景色を変えたこの相場の、それが次章の主題になる。
主な参照(データ基準日:2026年7月31日 米東部時間08:08・プレマーケット)
CNBC(サムスン決算・2028年まで品不足)/Yahoo Finance(メモリー株全面高)/Seeking Alpha(アマゾン設備投資2,200億ドルへ増額)/MacRumors(アップル決算)/TrendForce(Q3メモリー価格見通し)。プレマーケット気配はCNBC実勢値で、寄り付き価格を保証しない。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。
















