10月8日の東京市場で、日経平均株価は2日続落した。終値は前日比993円60銭安の6万9,042円11銭で、この日の安値で引けた。下げ幅のうち約6割はソフトバンクグループ(SBG)など5銘柄が生んだ。ただし、今回は一部の銘柄だけが売られた日ではない。TOPIXは1.51%安と日経平均の1.42%安より大きく下げ、東証プライムでは1,180銘柄が値下がりした。まず下の1枚を見てほしい。
見出しの多くは「米株安」と「金利高への警戒」を理由に挙げた。だが、国内の長期金利はこの日むしろ低下している。本稿では、日中の値動き、寄与度、水準、金利の4枚の図で、この日の下げ方を分解する。
図1:高値は寄り付き、安値は大引け
日経平均の日中の推移(10月8日、5分ごと)
読み方:寄り付きがこの日の高値で、最後の5分(クロージング・オークション)で約179円下げて安値で引けた。前日終値は7万35円71銭。出所:Yahoo Financeの5分足(各5分間の最後の値)、寄り付きと終値は株探。
日経平均は前日比195円07銭安の6万9,840円64銭で寄り付いた。この9時の値がこの日の高値で、そこから戻ることはなかった。9時41分に6万9,195円47銭まで下げたあと、午前は下げ渋り、前引けは662円31銭安の6万9,373円40銭。午後も軟調に推移し、15時0分には729円38銭安の6万9,306円33銭だった。
目を引くのは最後の5分である。連続売買の最後の値は15時25分の6万9,221円06銭だった。そこから15時30分のクロージング・オークションで約179円下げ、安値引けとなった。15時以降の下げは264円22銭で、この日の下げ幅の約4分の1にあたる。引けにまとまった売りが出たことは確かだが、その理由を特定した報道は本稿の執筆時点で見当たらない。
図2:下げの6割は5銘柄、それでも裾野は広い
日経平均への寄与度(10月8日終値、円)
読み方:押し下げ上位5銘柄の合計は604.39円で、下げ幅993.60円の60.8%。押し上げ上位3銘柄の合計は40.70円にとどまる。出所:株探の集計(大引け)。
押し下げの首位はSBGで218.44円。株価は4.28%安の6,040円だった。2位は東京エレクトロンの156.75円、3位のTDKは5.01%安で安値引けとなった。上位5銘柄の合計は604.39円で、下げ幅の60.8%にあたる。押し上げ側はリクルートホールディングスの20.23円が最大で、上位3銘柄を足しても40.70円にとどまる。SBGの下げの理由について、会社からの発表はなく、報道も特定していない。
ここで、日経平均の上げを少数の銘柄が作った最近の日と比べておく。10月5日の上昇は、上げ幅の7割を5銘柄が作った。この日は逆に下げ幅の6割を5銘柄が作ったが、残る4割も小さくない。プライム市場の値上がりは325銘柄、値下がりは1,180銘柄で、値下がりが全体の76%を占めた。33業種で上げたのは7業種だけだ。下げの中心は値がさの半導体株だったが、売りはほぼ全面に広がっていた。寄与度の仕組みは日経平均の寄与度の解説にまとめてある。
図3:金利は「高い」が、この日の国内金利は下がった
「金利高」の中身:各国の長期金利(%)
読み方:米国の長期金利は高水準だが、10年債の終値は10月5日の5.31%を下回った。日本の10年債利回りはこの日むしろ低下した。出所:米財務省(米国債の終値)、時事通信・フィスコ(日本国債、情報ベンダーの気配)。
米国の長期金利は確かに高い。米財務省の公表値で、10年債利回りは10月7日に5.28%、30年債は5.67%で引けた。10年債は7日の取引時間中に一時5.36%台を付けたと伝えられたが、その後の10年債入札が順調で上げ幅を縮めている。終値ベースの年初来高値は10月5日の5.31%で、7日はそれを下回った。
一方、日本の新発10年国債の利回りは8日、3.07%前後に低下した。前日は3.10%程度だった。国内の金利はこの日、株安の理由になっていない。それでも三菱UFJフィナンシャル・グループは3.26%安、みずほフィナンシャルグループは3.40%安で、ともに安値引けだった。金利が上がれば利ざやが広がると見られている銀行株が、国内金利の低下と同時に売られた。「金利高で株安」という一言では、この日の下げは説明しきれない。
図4:いまの水準はどこか
日経平均の終値の節目(円)
読み方:きょうの終値は10月1日の終値のわずか85円上。ここを終値で割ると、10月に入ってからの上げを埋める方向が意識される。出所:株探の日足(終値)。
終値の6万9,042円11銭は、10月6日の終値7万683円98銭から2日で1,641円87銭(2.32%)下げた水準だ。最高値ではない点に注意したい。終値の最高値は6月25日の7万2,366円34銭で、きょうはそこから4.59%下にいる。10月6日の終値はこの秋の高値にすぎない。
図の中で最も近い節目は、10月1日の終値6万8,956円72銭である。この日、日経平均は1日で2,203円上げて9月30日の6万6,753円72銭からこの水準に乗せた。きょうの終値はそこからわずか85円上にある。10月に入ってからの上げを支えた水準を割るかどうかが、次の焦点になる。
新TOPIXの売りはどこまで効いたか
日本取引所グループは7日、TOPIXの初の定期入替を発表した。10月30日に35銘柄を新たに採用し、683銘柄を「移行措置銘柄」として2028年7月末までに段階的に外す。外される銘柄は2026年10月から四半期ごとに8回に分けて比率を下げる。日本経済新聞は8日、この情報が三菱商事の売りを誘ったと報じた。ただし三菱商事はTOPIXに残る銘柄で、移行措置銘柄のリストにも入っていない。売りの具体的な仕組みは、本稿では確認できていない。三菱商事は1.84%安の4,590円で引けた。
キオクシアホールディングスは、浮動株比率の引き上げが伝わって一時4.07%高の1万8,630円まで上げたが、終値は前日と同じ1万7,900円だった。上げを午後に失ったのは、この日の地合いを映している。入替そのものは10月30日で、指数に連動する資金の売買が集中するのはその日の大引けとなる。
シナリオ表:あすからの3つの道筋
| シナリオ | 本誌の見立て | 条件 | 日経平均の目安(終値) |
|---|---|---|---|
| A:もみ合い | 40% | 米10年債利回りが5.31%(10月5日の終値)を超えず、米株が落ち着く | 6万8,956円〜7万684円 |
| B:再び7万円台へ | 25% | 米金利の低下、ファーストリテイリングの決算を受けた値がさ株の買い戻し | 7万円を終値で回復 |
| C:10月の上げを埋める | 35% | 10月1日の終値6万8,956円を終値で割り込み、米長期金利が年初来高値を更新 | 6万6,754円(9月30日の終値)方向 |
シナリオCに35%を置いたのは、この日の下げが裾野の広い売りで、しかも安値引けだったからだ。大引けのオークションで179円下げており、売りが一巡したとは言いにくい。一方で、フィスコによれば日経平均先物は9月16日から10月7日まで7,040円上げており、利益確定の売りが一巡すれば下げ止まる余地もある。この見立てが外れたと判断する線は、7万円の終値回復とする。
個人投資家向けチェックリスト
- 6万8,956円を終値で守れるか。10月1日の終値で、10月の上げを支えた水準。
- 米10年債利回りの終値5.31%。10月5日に付けた年初来高値で、2002年5月以来の水準。ここを終値で超えるかどうか。
- ファーストリテイリングの決算。8日15時30分、大引けと同時に発表された。日経平均への影響が大きい値がさ株で、9日の寄り付きに表れる。
- 値上がり・値下がり銘柄数。値下がりが7割を超える日が続くかどうかで、売りの広がりを確かめる。
- 10月30日のTOPIX定期入替。指数に連動する資金の売買は、その日の大引けに集中しやすい。
米長期金利の水準そのものは、米30年債利回り5.67%の記事で詳しく扱った。
主な参照
- 10月8日の日経平均(始値・高値・安値・終値)、TOPIX、騰落銘柄数、寄与度、個別株の終値/株探、株探(大引け概況)、株探(15時時点)
- 前引けの値/日本経済新聞、新TOPIXと三菱商事の売り/日本経済新聞
- 引けにかけての下げとクロージング・オークション、プライム市場の売買代金/トレーダーズ・ウェブ(Yahoo!ファイナンス)
- 日経平均の日中の値動き(5分足)/Yahoo Finance
- TOPIXの定期入替(10月30日実施、移行措置銘柄683)/日本取引所グループ、同 補足資料
- キオクシアの浮動株比率の引き上げ/ブルームバーグ(TBS)
- 米国債利回り(10年・30年の終値)/米財務省
- 国債利回り(新発10年債)/時事通信、株探(フィスコ)
- 日経平均の過去の終値と最高値/株探(日足)
データ基準日:2026年10月8日の東京市場の終値(15時30分)。日中の値は取引時間中の値で、時刻を付けて示した。日中の推移図はYahoo Financeの5分足(各5分間の最後の値)に、寄り付きと公式の終値を加えたもので、15時25分から15時30分のクロージング・オークションの間は指数が更新されない。寄与度は株探の集計で、情報ベンダーにより差がある。騰落銘柄数は株探の集計による。米国債利回りは米財務省が公表する10月7日(米東部時間)の終値で、一時5.36%台は報道による取引時間中の値である。日本の10年国債利回りは情報ベンダーの気配で、日本相互証券の公表値とは差が出ることがある。三菱商事の売りと新TOPIXの関係は日本経済新聞の報道にもとづき、具体的な仕組みは確認できていない。キオクシアの浮動株比率の引き上げは報道にもとづく。SBGの下落と大引けにかけての売りについて、理由を特定できる一次情報は確認できていない。シナリオの確率は本誌の主観であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















