秋葉原の店頭で、パソコン用のDDR5メモリー16GB×2枚組の最安値は4万9,980円だった(AKIBA PC Hotline!の9月12〜19日の調査)。10月1日には、サムスン電子の公式オンラインショップで「Galaxy S26」256GBモデルの価格が13万6,400円から15万5,800円に上がった。1万9,400円の値上げで、理由はメモリー不足による部品高だと報じられている。私たちが払うこの上乗せ分の行き先が、10月8日朝、サムスンの決算速報という形で数字になった。
サムスン電子の7〜9月期の連結営業利益は約107.4兆ウォンで、前年同期の約8.8倍になった。日本円に直すと約12.7兆円である。売上高は約195兆ウォン。売上高に対する営業利益の割合(営業利益率)は55.1%に達した。100円売るごとに55円が利益として残る計算で、製造業としては異例の水準である。
決算速報を分解する——増えた売上の4分の3が利益になった
サムスンが10月8日に公表したのは、四半期の決算を確定する前に出す「業績見通し」だ。韓国の開示規則では幅を持たせた予想値を出せないため、会社は売上高194兆〜196兆ウォン、営業利益107.3兆〜107.5兆ウォンという範囲を示したうえで、その中央の値を公表した。部門別の内訳はまだ出ていない。
同じ資料には比較用の数字も載っている。4〜6月期は売上高171.5兆ウォン、営業利益89.49兆ウォン。前年の7〜9月期は売上高86.06兆ウォン、営業利益12.17兆ウォンだった。ここから計算すると、前の四半期と比べて売上高は13.7%増、営業利益は20.0%増になる。
サムスン電子の売上高と営業利益(兆ウォン)
読み方:前の四半期から売上高は23.5兆ウォン、営業利益は17.91兆ウォン増えた。増えた売上の76%が利益になった計算で、量より値段で稼いだ四半期だった。出所:サムスン電子の業績見通し(2026年10月8日)、利益率は本誌計算。
本誌が注目したのは増えた分の中身である。3か月で売上高は23.5兆ウォン増え、営業利益は17.91兆ウォン増えた。増えた売上の76%がそのまま利益になったことになる。売る量を増やすだけでは、ここまでの割合にはならない。工場や人件費などの費用がほぼ変わらないまま、同じ製品をより高い値段で売った。この数字はそう読むのが自然だ。秋葉原の4万9,980円も、Galaxyの1万9,400円も、この構図の川下にある。
利益は予想を上回り、売上高は下回った
市場の予想と比べると、結果は二つに分かれた。韓国の中央日報(英語版)によると、営業利益は金融情報会社FnGuideがまとめた市場予想の106兆ウォンを上回った。一方、売上高はアナリスト予想の200.3兆ウォンに届かなかった。本誌の計算では、利益は予想を約1.3%上回り、売上高は約2.6%下回った。韓国SBSは、聯合インフォマックスがまとめた予想の105.7533兆ウォンを1.6%上回ったと伝えている。予想の集計元によって差はあるが、「利益は上振れ、売上は下振れ」という構図は変わらない。
中央日報は、ウォン高が業績の重荷になると見られていたとも書いている。ウォン建ての売上高は、ドルで受け取った代金をウォンに換えた後の数字だ。ウォンが強くなると、同じドルの売上でもウォン建てでは小さくなる。売上高が予想を下回った理由のひとつは為替だった可能性がある。ただし、会社は部門別の数字も為替の影響額も出していない。本誌が確認できたのはここまでである。
川上をたどる——DRAMの値上がりは減速し、NANDは加速する
店頭の値札の上流には、メーカーとパソコン・スマートフォン会社の間で結ばれる「契約価格」がある。台湾の調査会社トレンドフォースは9月30日、10〜12月期の見通しを公表した。パソコンやスマートフォンに使う汎用のDRAM(作業用のメモリー)の契約価格は前期比10〜15%の上昇、データを保存するNANDフラッシュは15〜20%の上昇を見込む。
7月3日に出した7〜9月期の見通しと並べると、向きの違いがはっきりする。DRAMは13〜18%から10〜15%へと上昇幅が縮み、NANDは10〜15%から15〜20%へと広がった。トレンドフォースは、長期契約の価格の決め方のため、一部のメーカーの値上げは市場平均に遅れるとも指摘している。企業向けのSSD(NANDを使う記憶装置)は値上がりが加速する唯一の製品だという。
メモリー契約価格の前期比見通し(予想レンジの中央、%)
読み方:DRAMは上昇幅が縮み、NANDは広がる。値上がりの勢いの中心がDRAMからNANDに移りつつある。出所:トレンドフォース(2026年7月3日、9月30日)。レンジの中央値は本誌計算。
値上がりはまだ続く。ただ、勢いが強まっているのはDRAMではなくNANDの側だ。この違いは、8日朝の株式市場の値動きにも表れていた。
8日前場の値動き——サムスンは小幅安、キオクシアは3%高
過去最高益が出ても、サムスン株は買われなかった。ソウル市場では11時44分(韓国時間)時点で26万6,750ウォンと、前日比0.65%安だった。6月18日の終値36万2,500ウォンからは26.4%低い水準にある。韓国総合株価指数(KOSPI)も0.70%安と下げた(11時23分時点)。同じメモリー大手のSKハイニックスは1.28%高で推移した(11時45分時点)。
東京市場では、日経平均株価が前場を6万9,373円40銭で終えた。前日比0.95%安である。その中で、NANDを専業とするキオクシアホールディングスは前場終値が1万8,450円で、3.07%高だった。半導体製造装置株は高安まちまちで、SCREENホールディングスが1.70%高、レーザーテックが1.33%高、ディスコが0.98%高、アドバンテストが0.63%高。東京エレクトロンは0.80%安だった。
10月8日前場の値動き(前日比、%)
読み方:最高益のサムスンは小幅安。NAND専業のキオクシアが3%高で目立った。出所:東京市場は前場終値(11時30分)、Yahoo Finance。サムスン電子とSKハイニックスは11時44〜45分、KOSPIは11時23分(いずれも韓国時間)の取引時間中の値、NAVER証券とYahoo Finance。
キオクシアが上げた理由を会社や取引所が説明したわけではない。ただ、NANDの値上がりが加速するという見通しとは整合する動きだ。逆に、DRAMの比重が大きいサムスンは、利益の伸びが株価にどこまで織り込まれていたかが問われた形になった。本誌のこれまでの整理はキオクシア株(285A)はまだ買えるのか、伸び率の鈍化をめぐる議論はマイクロン決算の記事も参考になる。サムスン株が8月に株主還元策で売られた経緯はこちらの記事にまとめている。
家計への換算——スマートフォン1台で月800円強
メモリーの値上がりは、私たちの財布にはどのくらい届いているのか。サムスンの公式オンラインショップでのGalaxy S26シリーズの値上げを、24回の分割払いに直して並べた。分割手数料は考えていない。
| 機種(容量) | 旧価格 | 新価格 | 値上げ額 | 上昇率 | 24回払いの月額増 |
|---|---|---|---|---|---|
| Galaxy S26(256GB) | 136,400円 | 155,800円 | +19,400円 | +14.2% | 約808円 |
| Galaxy S26(512GB) | 163,900円 | 183,300円 | +19,400円 | +11.8% | 約808円 |
| Galaxy S26 Ultra(256GB) | 218,900円 | 239,900円 | +21,000円 | +9.6% | 875円 |
| Galaxy S26 Ultra(1TB) | 299,200円 | 334,200円 | +35,000円 | +11.7% | 約1,458円 |
最も売れ筋になりやすい256GBモデルで、月にすると約808円の上乗せだ。容量が大きいほど値上げ額も大きく、1TBモデルでは3万5,000円になる。保存容量はNANDの量そのものなので、NANDの値上がりが加速すれば、大容量モデルほど影響を受けやすい理屈になる。パソコンも事情は同じで、メモリーを増設したり、容量の大きいSSDを選んだりするほど、値上がりを強く感じることになる。
生活防衛と投資の接点——取れる選択肢
メモリーの値上がりは、買う側にとっては出費だが、作る側にとっては利益になる。家計としての対策と、投資としての向き合い方を分けて並べる。いずれも推奨ではなく、選択肢の整理である。
- 買い替え時期を考える。契約価格は10〜12月期も上昇が見込まれており、端末価格がすぐ下がる材料は見当たらない。一方で、トレンドフォースはスマートフォン各社が手元の在庫で10〜12月期の生産をまかなうと見ている。在庫が続く間は店頭価格が据え置かれる機種もありうる。
- 容量を見直す。値上げ幅は容量に比例して大きくなりやすい。クラウド保存で足りるなら、小さい容量を選ぶことが最も直接的な節約になる。
- 作る側の株を持つ。メモリー専業のキオクシア、検査装置のアドバンテスト、製造装置の東京エレクトロンなど、東京市場にも関連銘柄がある。ただし、サムスン株が最高益の日に下げたように、利益の伸びが予想の範囲内なら株価は上がらない。6月の高値から26%下がったサムスン株が示すとおり、値動きは大きい。
- 投資信託で間接的に持つ。半導体関連の投資信託やETFは、メモリーと装置の銘柄をまとめて持てる。個別株より値動きは穏やかになりやすいが、メモリー価格が下がる局面では一緒に下がる。
反対側のリスクも書いておく。トレンドフォースの見通しの題名は「消費者側の圧力は続く」だ。値上がりが端末の売れ行きを冷やせば、メモリーの需要そのものが細る。売上高が予想に届かなかった今回の速報を、その最初の兆しと読む見方もありうる。サムスンの利益率55%は、値上げが通っている間だけ続く数字である。
次に店頭へ届く変化
店頭価格までの流れと次の節目
読み方:契約価格の見通し→端末の値上げ→メーカーの決算という順に、値上がりが数字になって表れている。出所:トレンドフォース、ギズモード・ジャパン、サムスン電子、中央日報。
サムスンは今月中に、部門別の内訳を含む確定決算を発表する予定だと中央日報は伝えている。見るべき点は二つある。メモリー部門の利益が全体のどれだけを占めたか。そして、スマートフォンなどの完成品部門がメモリー高でどれだけ利益を削られたかだ。後者は、私たちが店頭で払う値段が今後も上がるかどうかを占う材料になる。
主な参照
- 7〜9月期の業績見通し(売上高・営業利益の中央値と範囲、4〜6月期と前年同期の数字)/サムスン電子ニュースルーム
- FnGuideの市場予想(営業利益106兆ウォン)と売上高の予想(200.3兆ウォン)、ウォン高の影響、確定決算の時期/中央日報(Korea JoongAng Daily)
- 聯合インフォマックスの市場予想(105.7533兆ウォン)と営業利益率55.1%/SBS
- 10〜12月期のメモリー契約価格の見通し(2026年9月30日)/トレンドフォース
- 7〜9月期のメモリー契約価格の見通し(2026年7月3日)/トレンドフォース
- Galaxy S26シリーズの値上げ(2026年10月2日)/ギズモード・ジャパン
- 秋葉原のメモリー価格(9月12〜19日調査)/AKIBA PC Hotline!
- サムスン電子とSKハイニックスの株価/NAVER証券、東京市場の株価・KOSPI・ウォン円相場/Yahoo Finance
データ基準日:2026年10月8日。東京市場の株価と日経平均は同日の前場終値(11時30分)で、取引時間中の数値であり終値ではない。サムスン電子とSKハイニックスの株価はNAVER証券の11時44〜45分(韓国時間)時点、KOSPIは11時23分(同)時点の取引時間中の数値である。円換算は1ウォン=0.1181円(日本時間11時44分時点の気配値)で計算した。サムスンの数字は韓国の会計基準(K-IFRS)にもとづく速報値であり、確定決算で変わることがある。市場予想は集計元によって異なる。キオクシア株の上昇とNAND価格の見通しの関係は本誌の見方であり、会社や取引所の説明ではない。Galaxyの価格は報道時点のもので、販売店や時期によって異なる。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















