2026年10月1日、日経平均株価は2,203円00銭高、上昇率3.30%で引けた。ところが東証プライムで値上がりした銘柄は748、値下がりは744と、ほぼ半々だった。同じ日のTOPIXは0.57%高にとどまる。「日経平均が大きく上がったのに、自分の持ち株は上がっていない」という違和感の正体は、日経平均の計算方法そのものにある。本記事では、その仕組みを「寄与度」という一つの数字から解きほぐす。
先に結論を書いておく。日経平均は、株価の高い銘柄ほど指数を大きく動かす「価格平均型」の指数である。会社の大きさで重みが決まるTOPIXとは、設計思想からして違う。この違いを知っておけば、毎日のニュースの読み方も、日経平均に連動する投資信託やETFの持ち方も変わってくる。
上げ幅の7割を5銘柄が作った日
まず下の図を見てほしい。10月1日の上げ幅2,203円を、銘柄ごとの「寄与度」に分けたものだ。寄与度とは、ある銘柄の値動きが指数を何円動かしたかを示す数字である。
日経平均の上げ幅2,203円の内訳(2026年10月1日、寄与度・円)
読み方:5本の棒の合計は1,611.86円で上げ幅の73.2%。最下段は残る220銘柄の上げと下げを差し引いた正味で、アドバンテスト1銘柄に届かない。出所:株探(2026年10月1日大引けの寄与度集計)。残り220銘柄の値と割合は本誌計算。
アドバンテスト1銘柄で722円75銭、上げ幅の32.8%を占める。上位5銘柄を合わせると1,611円86銭で73.2%だ。残り220銘柄は、上げた銘柄と下げた銘柄を差し引きして591円14銭しか生んでいない。詳しい経緯は10月1日の日経平均とTOPIXの記事で分解した。
この偏りは特別な日だけの現象ではない。9月11日には逆向きに、アドバンテスト1銘柄が日経平均を530円99銭押し下げ、下げ幅の42.2%を占めた(9月11日の記事)。9月7日には上位4銘柄で上昇分の87.9%を作る一方、構成225銘柄のうち120銘柄が下げていた(9月7日の記事)。上げる日も下げる日も、同じ少数の銘柄が指数の大半を決めている。
日経平均は「株価×係数÷除数」で決まる
日経平均を算出する日本経済新聞社の「日経平均株価 算出要領」によれば、計算式は次のとおりだ。構成銘柄それぞれの株価に「株価換算係数」を掛けて「採用株価」とし、225銘柄の採用株価を合計して「除数」で割る。算出要領は日経平均を「価格平均指数」と位置づけている。時価総額は計算式のどこにも出てこない。
ここから寄与度の式がそのまま出てくる。寄与度=株価の値幅×株価換算係数÷除数である。除数は全銘柄に共通なので、指数を動かす力は「値幅×係数」の大きさで決まる。値幅は株価が高いほど大きくなるから、同じ5%の上昇でも、株価4万円の銘柄と400円の銘柄では指数への効き方がまるで違う。下の図は、10月1日のアドバンテストを実際の数字でたどったものだ。
寄与度の計算を実際の数字でたどる(アドバンテスト、2026年10月1日)
読み方:寄与度は「値幅×係数÷除数」で、株価が高く値幅が大きい銘柄ほど指数を動かす。株探が集計した寄与度722.75円と一致する。出所:終値はstockanalysis.com、係数6.4は日本経済新聞社のインデックス・ニュース(2026年7月31日)、除数は日経平均プロフィル。計算は本誌。
この検算は他の銘柄でも合う。東京エレクトロンは11,815円から12,580円へ765円上げ、係数15を掛けて除数で割ると386円83銭になる。イビデンは965円の値上がりに係数4を掛けて130円12銭だ。いずれも株探が集計した寄与度と一致する。除数29.66435840は日経の指数情報ページに掲載されている値で、構成銘柄の入れ替えや株式分割のたびに改定される。
仮の数値で比べる:値がさ株と低位株
仕組みを丸い数字で確かめておく。以下はすべて仮の数値で、除数を30と置いた。実在の銘柄や実際の除数とは関係がない。
| 銘柄(仮) | 株価 | 株価換算係数 | 5%上昇の値幅 | 指数への寄与(除数30) |
|---|---|---|---|---|
| A:値がさ株 | 40,000円 | 1 | +2,000円 | 約+66.7円 |
| B:低位株 | 400円 | 1 | +20円 | 約+0.7円 |
| C:値がさ株だが係数0.5 | 40,000円 | 0.5 | +2,000円 | 約+33.3円 |
| D:Aが1対10の株式分割をした後 | 4,000円 | 10 | +200円 | 約+66.7円 |
AとBは同じ5%上昇なのに、指数への寄与は100倍違う。Bの会社がAより大きくても、この結果は変わらない。Cのように係数が小さければ、同じ値動きでも影響は半分になる。Dは株式分割の扱いを示している。分割で株価が10分の1になっても、日経は係数を10倍にして採用株価の水準をそろえるため、指数への影響力は分割前と変わらない。2026年9月29日には東京エレクトロンの1対5の分割に合わせ、係数が3から15に変更された。表のDと同じ処理である。
2021年以降のルール変更:係数とキャップ
日経平均の骨格は1950年の算出開始から変わっていないが、重みの調整ルールは2021年以降に大きく見直された。算出要領の変更履歴から、個人投資家に関係する点を抜き出す。
| 時期 | 変更内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 2021年10月1日 | 「みなし額面」を廃止し「株価換算係数」に全面的に置き換え | 旧来の50円額面に合わせる調整をやめ、係数で採用株価の水準を決める方式に |
| 2022年9月29日版 | 定期見直しを年2回に | 4月と10月の第1営業日に入れ替え(基準日は1月末と7月末) |
| 2022年10月の定期見直し | 「キャップ調整比率」を新設。上限(キャップ水準)は12% | 1銘柄のウエートが高くなりすぎたとき、係数を割り引いて比重を下げる |
| 2023年10月の定期見直し | キャップ水準を11%に | 上限を段階的に引き下げ |
| 2024年10月以降 | キャップ水準を10%に | 現行の上限 |
| 2026年10月1日 | 構成銘柄を選ぶ際のセクターに「情報通信」を新設 | 銘柄選定のルール変更。指数の計算式は変わらない |
キャップの仕組みはこうだ。定期見直しの基準日にウエートがキャップ水準を超えた銘柄には、適用日からキャップ調整比率0.9を設定し、すでに設定済みなら0.1ずつ引き下げる。採用株価には「株価換算係数×キャップ調整比率」で求めた「キャップ調整済み株価換算係数」を使う。逆にウエートが5%を下回れば比率を0.1ずつ戻し、1に戻った時点で設定は解除される。新しく採用する銘柄の係数も、基準日に株価が採用株価合計の1%を超える場合は0.1〜0.9に抑える。
キャップは「見直しの日」にしか効かない
ここに誤解が多い。上限10%とは、常に10%以下に抑えるという意味ではない。判定は年2回の基準日だけで、その間に株価が上がれば比重は上限を超えたまま推移する。日経が公表したウエート一覧では、2026年9月30日時点のアドバンテストのウエートは12.39%だった。日経は7月末時点でキャップ水準を超えたとして、10月1日から同社のキャップ調整比率を0.9から0.8に下げ、キャップ調整済み株価換算係数は7.2から6.4になった。上の図の6.4は、この変更後の数字である。
TOPIXとの違いとNT倍率
TOPIXの算出方法を日本取引所グループ(JPX)は「浮動株時価総額加重型」と説明している。1968年1月4日の時価総額を100として指数化したもので、重みを決めるのは株価の高さではなく、市場で売買されうる株式の時価総額だ。下の図は、同じ6銘柄の比重を2つの指数で並べたものである。
同じ6銘柄の比重:日経平均とTOPIX(%)
読み方:青が日経平均、橙がTOPIXでの比重。値がさの4銘柄は日経平均で7〜12%台を占めるが、TOPIXでは2%前後以下。逆に三菱UFJ FGやトヨタはTOPIXで大きい。出所:日本経済新聞社「日経平均株価 ウエート一覧」(2026年9月30日)、JPX総研「TOPIX構成銘柄別ウエイト一覧」(2026年8月31日)。基準日が異なるため目安として見てほしい。
日経平均ではアドバンテスト、東京エレクトロン、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループの4銘柄で37.6%、上位10銘柄で49.8%を占める。TOPIXは2026年8月末で1,636銘柄から成り、上位10銘柄の合計は23.7%だ。三菱UFJフィナンシャル・グループはTOPIXで最大の3.95%を持つが、日経平均では0.19%しかない。同じ「日本株の指数」でも、映している市場の顔は別物である。
NT倍率は「どちらの重みが勝ったか」の物差し
日経平均をTOPIXで割った値をNT倍率と呼ぶ。値がさの半導体株などが強い局面では上がり、銀行や商社など時価総額の大きい銘柄が広く買われる局面では下がる。本誌の計算では、2026年3月末に14.60倍、6月末に17.54倍まで上がり、9月末は16.25倍だった。6月末の値は、株探の月足でさかのぼれる2019年4月以降の月末値で最も高い。10月1日の終値では16.69倍に戻している。推移は7〜9月期のNT倍率の記事にまとめた。
NT倍率は相場の良し悪しを示す数字ではない。上がっているときは、日経平均の上昇が一部の値がさ株に頼っている合図として読む。下がっているときは、日経平均が出遅れても市場全体はしっかりしている可能性がある。
個人投資家のための寄与度の使い方
寄与度はどこで確かめるか
日々の寄与度は、取引終了後に株探やフィスコなどの市況記事が上位・下位の銘柄を載せている。銘柄ごとの比重は、日経の指数サイト「日経平均プロフィル」のウエート一覧で確かめられる。係数の変更や銘柄入れ替えは、同サイトの「インデックス・ニュース」で事前に告知される。TOPIXの銘柄別ウエートはJPXが月末時点で公表している。
手元で概算したいときは、寄与度≒前日の日経平均×その銘柄のウエート×その銘柄の騰落率で足りる。寄与度の式を書き直しただけの関係だ。たとえばウエート10%の銘柄が5%上がれば、前日の日経平均が6万5,000円なら約325円の押し上げになる。ただしウエートは毎日の株価で変わり、見直し日には係数の変更でも変わる。正確な数字は公表値で確かめたい。
日経平均連動の投資信託・ETFを持つ人へ
日経平均に連動する投資信託やETFは、指数の値動きをなぞるように設計されている。つまり、上で見た比重の偏りをそのまま持つ商品だ。新NISAで日経平均連動の投資信託を積み立てている人は、資金の3分の1を超える部分が値がさの4銘柄の値動きに左右されていると考えたほうがいい。10月1日はその偏りが味方し、9月11日は逆に響いた。
これは日経平均連動が悪いという話ではない。分散の度合いが違う、という話である。日本株を広く持ちたいならTOPIX連動のほうが銘柄の偏りは小さい。両方を持つなら、合わせると何に賭けているのかを一度確かめておきたい。インデックス投資の基本はインデックス投資の解説、制度の基本は新NISAの解説にまとめている。
寄与度が示さないもの。寄与度は「指数を何円動かしたか」を示すだけで、その銘柄が割安か、買われる理由が強いかは何も語らない。寄与度の大きい銘柄が強い銘柄とは限らないし、寄与度の小さい銘柄が弱いわけでもない。株価の高さと係数で決まる、計算上の影響力である。
よくある誤解・失敗
| 失敗 | なぜ危険か | 対策 |
|---|---|---|
| 日経平均が上がった日は、自分の日本株も上がっていると思い込む | 10月1日のように、値上がりと値下がりの銘柄数がほぼ同じ日でも指数は3%上がる | 指数の騰落率と一緒に、値上がり・値下がりの銘柄数を見る |
| 寄与度ランキングの上位を「買われている銘柄」と読む | 寄与度は株価の高さと係数で膨らむ。上昇率では上位でないこともある | 上昇率のランキングと分けて確認する |
| 時価総額が大きい会社ほど日経平均を動かすと考える | 日経平均の重みは株価と係数で決まり、時価総額は使わない | 会社の大きさが効くのはTOPIX。2つの指数を区別する |
| キャップがあるから1銘柄は10%を超えないと考える | 判定は年2回の基準日だけで、その間は上限を超えうる | 日経のウエート一覧で現在の比重を確かめる |
| 日経平均連動の投資信託を「日本株全体への分散投資」と同一視する | 上位10銘柄で約5割を占め、半導体関連の値動きに強く左右される | TOPIX連動との違いを理解したうえで配分を決める |
具体的な場面で言えば、こうなる。朝のニュースで「日経平均が600円高」と聞いたら、まず上位数銘柄の寄与度を確かめる。それで上げ幅の大半が説明できるなら、その日は持ち株の評価額を指数と同じだけ期待しないほうがいい。逆に、日経平均が大きく下げた日でも、銀行株や内需株を中心に持つ口座はほとんど減っていないことがある。指数と自分の口座を切り分けて見るのが、寄与度を知るいちばんの効用である。
日経平均の寄与度はどうやって計算するのですか?
寄与度=株価の値幅×株価換算係数÷除数で求める。キャップ調整比率が設定された銘柄は、株価換算係数の代わりにキャップ調整済み株価換算係数を使う。概算なら、前日の日経平均×その銘柄のウエート×騰落率でもほぼ同じ値になる。
なぜ値がさ株は日経平均への影響が大きいのですか?
日経平均は構成銘柄の株価に係数を掛けて合計し、除数で割る価格平均型の指数だからである。同じ5%の上昇でも、株価が高いほど値幅が大きく、指数を動かす力も大きくなる。会社の時価総額は計算に使われない。
日経平均の1銘柄の比重には上限がありますか?
ある。2024年10月以降の定期見直しでは、基準日(1月末と7月末)のウエートが10%を超えた銘柄にキャップ調整比率を設定・引き下げ、比重を下げる。ただし判定は基準日だけなので、その間に株価が上がれば10%を超えることがある。
日経平均とTOPIXはどちらに連動する投資信託がよいのですか?
優劣ではなく分散の度合いが違う。日経平均連動は上位10銘柄で約5割を占め、値がさの半導体株などの影響を強く受ける。TOPIX連動は浮動株時価総額加重で1,600超の銘柄に分散される。自分が何に賭けたいかで選び、両方持つ場合は合計の偏りを確かめたい。
主な参照
- 計算式、株価換算係数、キャップ調整比率、除数の修正方法、変更履歴/日本経済新聞社「日経平均株価 算出要領」(2025年7月24日作成版)、同(2026年10月1日適用予定版)
- アドバンテストのキャップ調整比率の変更(0.9→0.8、係数7.2→6.4、10月1日適用)/日本経済新聞社 インデックス・ニュース(2026年7月31日)
- 2026年10月の定期入れ替えと株式分割に伴う株価換算係数の変更(東京エレクトロン3→15、イビデン2→4ほか)/日本経済新聞社 インデックス・ニュース(2026年9月4日)
- 構成銘柄のウエート(2026年9月30日)/日本経済新聞社「日経平均株価 ウエート一覧」、除数/日経平均プロフィル
- TOPIXの算出方法、起算日と基準値/日本取引所グループ、構成銘柄別ウエイト(2026年8月末)/JPX総研
- 10月1日の寄与度、日経平均とTOPIXの終値、騰落銘柄数/株探
- アドバンテスト、東京エレクトロン、イビデンの9月30日と10月1日の終値/stockanalysis.com
- NT倍率の月末値の元データ(日経平均・TOPIXの月足)/株探
データ基準日:寄与度と株価は2026年10月1日の東京市場の終値(15時30分)、日経平均のウエートは2026年9月30日、TOPIXのウエートは2026年8月末時点である。2つの指数のウエートは基準日が異なるため、厳密な比較ではない。NT倍率は本誌の計算で、日本経済新聞社やJPX総研の公表値ではない。寄与度の集計は情報ベンダーによって差が出ることがある。指数の算出ルールは改定されることがあるため、最新の内容は日本経済新聞社とJPXの一次情報で確かめてほしい。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














