米労働省が10月2日に発表した9月の雇用統計は、市場予想を大きく下回った。非農業部門の雇用者数は前月比2万9,000人増で、予想の9万人前後に届かない。7月と8月は合わせて6万人下方修正され、7月はマイナスに転じた。問われているのは、10月28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを続ける根拠が残るかどうかである。
要点は次の5つ。
- 雇用者数:2万9,000人増。予想9万人前後の3分の1で、予想レンジの下限3万5,000人も下回った。
- 修正:7月はプラス2万1,000人からマイナス1万人へ。8月は16万2,000人から13万3,000人へ。
- 失業率:4.2%で、前月の4.1%から上昇。予想は4.1%だった。
- 賃金:平均時給は前月比0.1%増。予想の0.3%を下回り、前年比は3.0%に鈍った。
- 市場:ドル円は発表をはさむ数分で157円62銭前後から156円97銭前後へ円高に動いた。米国債と株価指数の先物は上昇した。
1. 雇用者数は予想レンジの下限を割った
結論:9月の雇用者数は2万9,000人増にとどまった。労働省は「ほとんど変化しなかった」と表現している。
根拠:市場予想はブルームバーグの調査で9万人、ファクトセットの集計で9万5,000人だった。インベスティングライブによれば予想の幅は3万5,000人から18万人で、結果はその下限より低い。民間部門は4万6,000人増で、予想の8万5,000人に届かなかった。
中身:増えたのは医療の1万7,000人、建設の1万1,000人、製造業の9,000人。金融は7,000人減った。労働省は、すべての主要産業で変化は小さかったとしている。
次:10月分の雇用統計は11月6日に発表される。FOMCの後になる。
米非農業部門雇用者数の前月比(千人)
読み方:9月は予想の3分の1にとどまり、7月はマイナスに転じた。7〜9月の3カ月平均は約5万1,000人(本誌計算)。出所:米労働省労働統計局(2026年10月2日発表、6月は9月4日発表の値)、ブルームバーグ。
2. 修正で、夏の雇用は6万人減った
結論:見出しの数字より重いのは修正である。7月と8月の合計は、前回の発表から6万人少なくなった。
根拠:7月は2万1,000人増から1万人減へ、3万1,000人の下方修正。8月は16万2,000人増から13万3,000人増へ、2万9,000人の下方修正である。8月の16万2,000人は、9月4日の発表時に予想を大きく上回ったとされた数字だった。
意味:7〜9月の3カ月平均は約5万1,000人になる。8月の強さに引っ張られていた印象が、修正で薄れた形だ。
次:9月分も11月6日に1回目の修正を受ける。
3. 失業率は4.2%に上がった
結論:失業率は4.2%で、8月の4.1%から0.1ポイント上がった。市場予想は4.1%の横ばいだった。
根拠:失業者数は710万人。労働参加率は61.8%で、8月の61.6%から上がった。就業者の人口比率は59.2%だった。働く意欲のある人が増え、その一部が職に就いていない形である。
意味:雇用者数の伸びが鈍っても、失業率が大きく跳ねていない点は見落とせない。次の発表で4.3%以上に上がるかが、減速の深さを測る目安になる。
4. 賃金の伸びは0.1%に鈍った
結論:利上げ派にとって最も痛いのは賃金である。民間の平均時給は5セント増の37.81ドルで、前月比0.1%増にとどまった。
根拠:予想は前月比0.3%増、前年比3.2%増だった。実績の前年比は3.0%で、8月の3.1%から鈍った。週平均労働時間は34.4時間で横ばい。予想の34.3時間はわずかに上回った。
意味:9月30日に発表された8月の個人消費支出(PCE)物価指数は、コアで前年比3.0%と予想の3.3%を下回っていた。物価と賃金の両方で、加速の証拠が出なかったことになる。PCEの読み方はこちらの記事で扱った。
5. 円は買われ、10月の利上げ観測は後退した
結論:発表直後、ドル円は円高に動いた。ヤフーファイナンスの1分足で、ドル円は21時28分の157円62銭前後から、21時32分に156円97銭前後まで下げた。21時45分は157円29銭前後で、下げ幅の半分ほどを戻している。
金利と株:米10年債先物は21時29分の104.80から21時35分に105.11へ上がった。債券価格の上昇は、利回りの低下を意味する。S&P500先物は同じ時間に7,765から7,792へ上昇した。金先物も4,216ドルから4,255ドルへ上がった。雇用の弱さは、利上げが遠のく材料として受け止められた。
根拠:発表前の時点で、10月28日の利上げの確率は3割前後とみられていた。インベスティングライブは10月1日、その確率が1週間で大きく下がったと伝えている。8月のPCEが予想を下回り、FRB幹部からも急がない姿勢の発言が出ていた。今回の結果は、その流れを補強する材料になる。
日本への接点:日米の金利差の縮小は円高の方向に働く。日銀は10月29〜30日に会合を開く。FRBの会合の翌日である。東京の物価については東京都区部CPIの記事を、FRBの利上げ停止論についてはこちらの記事を参照してほしい。
次:10月28日のFOMCの結果。同日の米国時間午後に公表される。
30秒まとめ:9月の雇用者数は2万9,000人増で、予想の3分の1にとどまった。7月と8月は合わせて6万人下方修正され、失業率は4.2%に上がった。賃金の伸びも0.1%に鈍り、10月の利上げの根拠は細った。
主な参照
- 2026年9月の雇用統計(雇用者数、修正、失業率、平均時給、産業別、次回発表日)/米労働省労働統計局(2026年10月2日8時30分=米東部時間)
- 市場予想(雇用者数9万人、失業率4.1%)/ブルームバーグ
- 市場予想(雇用者数9万5,000人、平均時給)/モーニングスター(ファクトセット集計)
- 予想の幅、民間部門、労働時間の予想、利上げ確率/インベスティングライブ(2026年10月1日)
- ドル円、米10年債先物、S&P500先物、金先物の1分足/Yahoo Finance
データ基準日:2026年10月2日(日本時間21時45分)。雇用統計は米労働省の速報値で、今後改定される。市場予想は報道各社の集計で、調査ごとに数値が異なる。7〜9月の3カ月平均は本誌の計算である。為替・先物は取引時間中の値で、終値ではない。先物の値は最大10分程度遅れて配信される。利上げ確率は発表前の報道にもとづく。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















