米国の9月雇用統計は、日本時間10月2日21時30分に出る。FRBが9月に利上げしてから初めての雇用統計である。ロイターの調査では、非農業部門の雇用者数は9万人増の予想だ。この1本が、10月27〜28日の会合で2回目の利上げがあるか、そしてドル円が160円に近づくかを左右する。
市場の見方は、この1週間で大きく変わった。CMEのフェドウオッチでは、10月利上げの確率は約69%から約28%に下がった。今夜の数字で、確率はまた動く。読むべき点を5つに絞った。
- 予想:雇用者数は9万人増、失業率は3カ月続けて4.1%の見通し。予想の幅は3万5,000人〜18万人である。
- 前月:8月の16万2,000人増は、2〜8月では3月に次ぐ大きさ。改定で下に直されるかが焦点だ。
- 賃金:平均時給は前年比3.2%増の予想。0.4%以上の前月比なら、利上げ観測が戻りやすい。
- FRB:政策金利は3.75〜4.00%。10月利上げの確率は約28%まで下がっている。
- ドル円:2日15時時点で157円台後半。強い数字なら、9月1日に付けた160円台が視野に入る。
要点1:予想は9万人増、幅は3万5,000人から18万人
結論:予想の中心は9万人増だが、幅が広い。ロイターが集計したエコノミスト予想は、低いもので3万5,000人、高いもので18万人だった。失業率は4.1%で、3カ月続けて同じ水準の見通しである。
根拠:民間の先行指標は悪くない。ADPが9月30日に出した9月の民間雇用は9万人増だった。8月分は3万8,000人から3万6,000人に下方修正されている。ADPと政府統計は対象も手法も違うため、そのまま当てにはできない。
次:予想の幅の外に出るかどうかを見る。18万人を超えれば、市場は「強い」と受け取る。3万5,000人を下回れば「弱い」になる。幅の中に収まれば、焦点は賃金と失業率に移る。
要点2:8月の16万2,000人増は改定されるか
結論:今夜は9月分と同じくらい、8月分の改定が大事だ。8月の16万2,000人増は、2026年2〜8月では3月の21万4,000人増に次ぐ大きさだった。6月は3万1,000人増、7月は2万1,000人増にとどまっていた。
米非農業部門雇用者数の前月比増減(2026年、千人)
読み方:6月と7月は2万〜3万人台の増加にとどまり、8月に16万2,000人増へ跳ねた。9月の予想は9万人増で、8月の半分強である。出所:米労働統計局(BLS)の月次系列から本誌計算、予想はロイターの調査。
根拠:ロイターによれば、エコノミストは8月の急増の一部を季節調整の振れと見ている。8月分が下に直されると、9月が予想通りでも、2カ月合計の印象は弱くなる。逆に8月がそのまま残れば、夏場の減速は一時的だったという読みが強まる。
次:9月の数字と、7月・8月の改定幅を足して見る。米労働統計局(BLS)は、毎回の発表で前の2カ月を改定する。見出しの1つの数字だけで判断しないことだ。
要点3:利上げ観測を左右するのは平均時給
結論:FRBにとって大事なのは、雇用の数より賃金の伸びである。8月の平均時給は前月比0.3%増の37.75ドルで、前年比では3.1%増だった。ロイターの調査では、9月は前年比3.2%増の予想である。
根拠:ADPの9月の調査では、同じ職場にとどまる人の基本給は前年比3.0%増だった。転職した人は4.8%増である。賃金の伸びは、インフレを押し上げるほど強くないという見方が多い。
次:本誌は前月比0.4%を目安に見る。これを上回れば、賃金からのインフレ圧力が意識される。0.2%以下なら、FRBが急ぐ理由は1つ減る。前年比は3.2%との差を見ればよい。
要点4:10月利上げの確率は約28%
結論:市場は10月の追加利上げを、ほぼ見送りの方向で見ている。FRBは9月16日、政策金利を0.25%幅上げて3.75〜4.00%にした。決定は12対0の全員一致だった。次の会合は10月27〜28日である。
根拠:ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は9月29日、追加の利上げに「急ぐ必要はない」と述べたと報じられた。ロイターによると、フェドウオッチの10月利上げ確率は1週間前の約69%から約28%に下がった。米2年債利回りは、米財務省の公表値で9月30日の4.88%から10月1日に4.78%まで下がった。
次:強い数字が出れば、28%は簡単に戻る。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、年内にもう1回の利上げを想定していると報じられている。2年債が再び4.85%を超えるかを見る。9月の利上げの背景は「FRBは利上げを止める」説の検証にまとめた。
要点5:ドル円は157円台後半、上は160円
結論:日本の投資家に一番近い出口はドル円だ。時事通信によると、2日正午の円相場は1ドル157円96〜97銭だった。15時時点でも157円台後半で、発表を前に動きは小さい。
根拠:欧州中央銀行(ECB)の参照レートから計算すると、ドル円は9月1日に160.16円だった。その後、9月9日の153.27円まで下げ、10月1日は157.98円に戻している。強い数字でドル金利が上がれば、160円が再び視野に入る。
次:160円に近づくと、為替介入への警戒が強まる。財務省は7〜9月の日ごとの介入実績を11月2〜9日に公表する予定だ。9月の動きは9月の為替介入の記事で整理した。
今夜の3つのシナリオ
以下は本誌の判断による目安で、確率は主観である。数字そのものより、予想との差で市場は動く。
| シナリオ | 条件の目安 | 本誌の確率 | 想定される反応 |
|---|---|---|---|
| 強い | 18万人超、または時給0.4%以上 | 25% | 10月利上げ観測が戻り、ドル円は158円台後半へ |
| 予想並み | 予想の幅の中、失業率4.1% | 50% | 2年債も円も小動き、焦点は改定幅へ |
| 弱い | 3万5,000人未満、または失業率4.2%以上 | 25% | 利上げ観測がさらに後退、円買いで157円割れ |
見方が外れる条件:雇用者数が予想並みでも、8月分が大きく下方修正されれば「弱い」側の反応になりうる。中東情勢による原油高で長期金利が上がれば、雇用統計と関係なくドル高・円安が進む可能性もある。長期金利の位置は米10年債の記事を参照してほしい。
30秒まとめ。今夜の予想は9万人増、失業率4.1%である。見るのは予想の幅の外に出るか、8月分の改定、そして時給の前月比0.4%だ。10月利上げの確率は約28%で、強い数字ならドル円の160円が再び意識される。
為替の基本やFX口座の選び方はFX解説ページにまとめている。8月の物価の流れは米PCEの記事も合わせて読んでほしい。
主な参照
- 8月の雇用統計と9月分の公表日時(10月2日8時30分=米東部時間)/米労働統計局(BLS)
- 非農業部門雇用者数の月次系列(CES0000000001)/米労働統計局(BLS)
- 9月のFOMC声明(9月16日)/米連邦準備制度理事会(FRB)
- FOMCの日程/米連邦準備制度理事会(FRB)
- 米国債利回り(日次、終値ベース)/米財務省
- 9月のADP全米雇用報告(9月30日)/ADP
- 市場予想とフェドウオッチの確率(10月2日配信)/ロイター(インベスティング・ドットコム転載)
- ウィリアムズ総裁の発言(9月29日)/ヤフー・ファイナンス
- カシュカリ総裁の発言(10月1日)/FXStreet
- ドル円の参照レート(ECB基準)/Frankfurter(ECB参照レート)
- 外国為替平衡操作の公表予定/財務省
データ基準日:2026年10月2日15時(日本時間)。ドル円の正午値と15時の水準は時事通信の報道による気配値で、終値ではない。ECB参照レートと米国債利回りは各日の確定値である。9月の雇用統計の発表は同日21時30分で、本記事はその結果を含まない。市場予想はロイターの調査による数値で、BLSの資料には含まれない。両総裁の発言は報道によるもので、原文の講演録は確認できていない。シナリオの確率は本誌の主観である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















