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コヒレント株11%高、バーンスタインの目標350ドルを反対尋問する|土台の2028年EPS16ドルは実績の2.85倍

Takashi Suzuki Takashi Suzuki
2026年10月2日
株式
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市場はこう信じている——光通信部品のコヒレント(COHR)は、AIデータセンターの「構造的な勝者」であり、株価は350ドルに向かう。10月1日、この見立てを掲げた米バーンスタインの新規カバレッジを手がかりに、株価は米東部時間12時38分時点で319.19ドルと前日比10.9%上げた。今日はこの通説を証言台に立たせる。

先に結論の形だけ示しておく。通説の「方向」は会社の数字で裏付けられる。だが「350ドル」という値札は、まだ誰も見ていない2028年の利益に乗っている。そして今日の上げで、目標株価までの残りの距離は大きく縮んだ。

通説の陳述——バーンスタインは何を言ったのか

公平のために、通説を最も強い形で要約する。Investing.comによると、バーンスタインは9月30日付で米国のネットワーク・光通信関連株の調査を開始し、コヒレントを「アウトパフォーム」、目標株価350ドルとした。根拠は、データセンターのスイッチが高速化するにつれて光モジュールの需要が増える流れで、2028年の1株利益(EPS)を16ドルと見積もり、その22倍を目標株価とした。発表時点の株価からの上昇余地は24%だった。同じ日にルメンタム(LITE)、シエナ(CIEN)、アリスタ・ネットワークスもアウトパフォームで調査を開始し、同社はこれらを「AIインフラの構造的な勝者になりうる」と位置づけた。

もう一つの材料は会社自身の発表である。コヒレントは9月21日、AIデータセンター向けの統合光学プラットフォーム「PhotonLink」を発表した。CPO(光電融合パッケージ)で10件超、NPO(ニアパッケージ光学)で10件超、チップ間の光接続で5件超の顧客との案件を抱え、CPOとNPOではアンカー顧客と長期契約を確保したとしている。10月1日の上げについて、24/7ウォール・ストリートはこのPhotonLinkとバーンスタインの調査開始を理由に挙げた。

尋問1:需要は本物か——ここは通説の勝ち

証拠を見よう。8月12日に発表された2026年6月期第4四半期(4〜6月)の決算で、売上高は20億4,600万ドルと前年同期比33.8%増えた。非GAAPベースの売上総利益率は40.2%で前年から2.15ポイント改善し、非GAAPのEPSは1.74ドルと前年同期の1.00ドルから74%伸びた。通期の非GAAP EPSは5.61ドルで、前期の3.53ドルから59%増である。

会社の見通しも強い。7〜9月期の売上高は22億〜24億ドル、非GAAP EPSは1.85〜2.05ドルを見込む。中央値の23億ドルは、直前の四半期から12.4%の増収になる。ジム・アンダーソンCEOは決算発表で、AIデータセンターの構成が銅線から光接続へ移るほど、同社の幅広い光技術と生産規模が生きるという趣旨を述べている。需要の強さという一点では、この説明に穴は見当たらない。通説の第一の柱は立っている。

尋問2:EPS16ドルはどこから来るのか——ここに穴がある

非GAAPのEPS:実績・会社見通し・バーンスタインの見積もり(ドル)

2025年6月期 実績通期3.53ドル2026年6月期 実績通期、前期比59%増5.61ドル7〜9月期見通し×4中央値1.95ドルの年換算7.80ドル2028年 見積もりバーンスタイン(目標株価の土台)16.00ドル

読み方:350ドルの目標株価は16ドル×22倍で、16ドルは直近実績の2.85倍、会社見通しの年換算の2倍強にあたる。年換算は本誌の単純計算で、会社の通期見通しではない。出所:コヒレント決算発表(2026年8月12日)、Investing.com。

だが、本当か。目標株価350ドルの土台は「2028年のEPS16ドル」である。会社が示した数字と並べてみる。直近の通期実績は5.61ドル。7〜9月期の見通しの中央値1.95ドルを単純に4倍しても、年換算で7.80ドルにしかならない。16ドルはその2倍強であり、2026年6月期の実績の2.85倍にあたる。

この差を埋めるには、売上高が伸び続けるだけでは足りず、利益率も上がり続ける必要がある。ところが会社の7〜9月期の売上総利益率の見通しは39.5〜41.5%で、中央値の40.5%は4〜6月期の40.2%とほぼ同じだ。少なくとも次の四半期について、会社自身は利益率の大きな上振れを約束していない。PhotonLinkの売上高が立ち上がり始めるのは2026年10〜12月期からというのが会社の説明で、まだ1ドルも計上されていない。

通説側の再反論も書いておく。24/7ウォール・ストリートによれば、同業のルメンタムは直近の四半期で売上高が前年同期比109%増えた。コヒレント自身も4〜6月期のEPSが前年同期比74%伸びている。この伸びが2年続けば、5.61ドルの2.85倍は手の届かない数字ではない。だから「16ドルはありえない」とは言えない。言えるのは、16ドルは会社の見通しではなく、バーンスタインの見積もりだということだ。なお、報道からは「2028年」が暦年か会社の決算年度かは読み取れなかった。

尋問3:材料は新しいのか——2度目に買われたPhotonLink

コヒレントの株価(2026年6月1日〜10月1日、ドル)

47638228819306/0106/3007/2908/2609/246/2 終値 426.897/29 終値 222.0510/1 319.19(取引中)

読み方:10月1日の上げで株価はPhotonLinkを発表した9月21日の水準に戻ったが、6月2日の終値からはなお約25%低い。7月29日には222.05ドルまで下げていた。10月1日の値は米東部時間12時38分時点の取引時間中の値で、それ以外は日足終値。出所:Yahoo Finance。

株価の足取りを確かめる。PhotonLinkを発表した9月21日、終値は321.52ドルだった。そこから株価は下がり、9月28日には282.45ドルと12.2%安くなっている。発表そのものは、その時点で市場に知られていた。10月1日の上げは、PhotonLinkという同じ材料が、バーンスタインの調査開始をきっかけに2度目の評価を受けた形である。

さらに長い目で見ると、株価は6月2日の終値426.89ドルから、いまも約25%低い。この3か月で何が評価を下げたのか、今日の上げはその問題を解いたわけではない。公平のために言えば、光関連株は10月1日に業種ぐるみで買われた。ルメンタムは8.4%高、シエナは6.8%高、コーニングは3.3%高(いずれも同じ時刻の取引時間中の値)で、資金が個別の材料ではなくテーマ全体に戻った面もある。

生き残った主張と、死んだ主張

主張証拠判定
AI向け光部品の需要は強い4〜6月期の売上高33.8%増、EPS74%増、7〜9月期も前四半期比12%の増収見通し生存
PhotonLinkが次の成長源になるCPO・NPOで各10件超の案件と長期契約。売上高は10〜12月期から保留(売上高の実績待ち)
2028年のEPSは16ドルに届く実績5.61ドル、見通しの年換算7.80ドル。利益率の見通しは横ばい未立証
いま買えば24%上がる24%は発表時点の株価が起点。10月1日の株価からは約10%死亡(起点が変わった)
出所:コヒレントの決算発表(2026年8月12日)とPhotonLinkの発表(9月21日)、Investing.com、株価はYahoo Financeの日足終値と10月1日の取引時間中の値。判定は本誌による。

評決——方向は買い、値札はまだ疑わしい

評決を出す。12か月の方向については、通説側に60対40で傾く。需要の証拠は会社の数字そのものであり、反対尋問で崩れなかった。だが、今日の上げを追いかける理由としては弱い。350ドルまでの残りは約10%で、それを正当化する16ドルのEPSは、まだ見積もりの段階にある。株価は1日で11%動く銘柄であり、残り10%は1日分の値幅でしかない。

個人投資家にとっての実務的な読み方はこうなる。目標株価は「到達点」ではなく、ある前提の下での計算結果である。その前提(EPS16ドル×22倍)のどちらかが崩れれば、値札は簡単に書き換わる。6月2日の終値426.89ドルから7月29日の222.05ドルまで、2か月足らずで48%下げた銘柄であることも忘れないほうがいい。新NISAの成長投資枠などで長期に持つなら、1回で買い切らず、決算ごとに前提を確かめながら分けて買うほうが、この銘柄の値動きには合っている。

再審条件——どんなデータが出たら評決を覆すか

次に出るデータ通説側に傾く(強気)懐疑側に傾く(弱気)
7〜9月期の決算(日程は会社が今後発表)売上高が見通し上限の24億ドルを超え、EPSが2.05ドルを上回る売上高が中央値23億ドルに届かない
10〜12月期の見通し非GAAPの売上総利益率の見通しが41.5%を超える利益率の見通しが40%を割る
PhotonLinkの売上高10〜12月期に計上が始まり、会社が金額を示す立ち上がりの時期が2027年以降にずれる
株価終値で9月21日の321.52ドルを上回って定着するPhotonLink発表後の安値である9月28日の282.45ドルを終値で割る
しきい値は会社の見通しと直近の株価にもとづく本誌の設定で、売買の推奨ではない。

評決を覆す条件ははっきりしている。7〜9月期決算で売上高と利益率がそろって見通しの上限を超え、10〜12月期の利益率見通しが41.5%を上回れば、16ドルへの道筋が見えてくる。そのときは評決を70対30まで通説側に寄せる。逆に、利益率の見通しが40%を割れば、成長が利益に結びついていないことになり、350ドルの前提の半分が崩れる。

コヒレントの過去の分析はコヒレントのバリュエーションを扱った記事と8月12日の決算プレビューにある。光通信・半導体の関連銘柄の比較はCOHR・AVGO・MRVLを並べた記事を参照してほしい。

主な参照

  • コヒレント「2026年6月期第4四半期・通期決算」(2026年8月12日)/Coherent
  • コヒレント「PhotonLink統合光学プラットフォームを発表」(2026年9月21日)/Coherent
  • バーンスタインのネットワーク・光通信株の調査開始(目標株価、EPS見積もり、倍率)/Investing.com
  • 10月1日の光関連株の上昇と、その理由とされた材料/24/7 Wall St.
  • 株価の日足終値と10月1日の取引時間中の値/Yahoo Finance

データ基準日:2026年10月1日。10月1日の株価はすべて米東部時間12時38分時点の取引時間中の値で、終値ではない。それ以前の株価はYahoo Financeの日足終値である。年換算EPS7.80ドルは、会社の7〜9月期見通しの中央値を4倍した本誌の単純計算で、会社の通期見通しではない。バーンスタインのEPS見積もりと目標株価は報道にもとづくもので、本誌はレポートの原本を確認していない。評決の比率と再審条件のしきい値は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。

Tags: AI関連株COHR米国株
Takashi Suzuki

Takashi Suzuki

大手マーケットメイカーのFXトレーディングデスクで8年以上にわたりキャリアを積み、うち3年は為替フォワードデスク、その後2年は金利(レート)デスクを担当した。さらにシンガポールではアジア・トレーディングデスクのヘッドとして4年間チームを率い、地域全体のフローとリスク管理を統括してきた。 現在もFX・金利・株式など幅広い市場で実際にトレードを行っており、機関投資家の最前線で培った実取引経験は豊富。FX・株式・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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