この夏、セブン-イレブンの冷蔵ケースでペットボトル飲料とアイスが思うように売れなかった。セブン&アイ・ホールディングス(3382)が10月8日に公表した資料によると、6〜8月の国内既存店売上は前年比0.3%増にとどまり、飲料とアイスを除けば1.2%増だった。差は0.9ポイント。その夏を含む上期、国内コンビニの営業利益は会社自身の計画に1割近く届かなかった。
一方で、連結の営業利益は11.5%増の2,322億円と伸びた。稼いだのは海の向こうの7-Elevenで、その増益分のほとんどはガソリンから来ている。店頭の1本から、米国の給油機、そして円相場まで、今回の数字を川上へたどっていく。
冷蔵ケースの前で:飲料とアイスが削った0.9ポイント
決算説明資料の既存店売上の推移を見ると、国内のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は3〜5月が2.0%増、6〜8月が0.3%増と、夏の3カ月で伸びが急に鈍った。飲料とアイスを除いた系列では3〜5月が1.4%増、6〜8月が1.2%増で、ほとんど落ちていない。つまり失速のほぼすべてが、冷蔵ケースと冷凍ケースで起きている。会社は資料に「夏の天候影響を受けつつ」と書いている。
飲料は粗利の取れる商品でもある。決算短信によると、6〜8月の3カ月は「ソフトドリンク等の販売が伸び悩み、荒利率は前年同期と比べマイナス」だった。上期(3〜8月)通算の商品荒利率は31.8%で前年並みだが、夏だけを切り出すと下がっている。客単価は上がり、既存店売上は上期で1.1%増とプラスを保った。それでも、売れ筋の構成が崩れると利益は先に削れる。
値段の分解:国内の減益112億円の内訳
SEJの上期の営業利益は1,102億円で、前年の1,214億円から112億円減った(前年比90.7%)。会社が示した内訳は次のとおりだ。収入などの増加でプラス59億円、荒利率の変化でマイナス1億3,000万円、販管費の増加でマイナス170億円。販管費の主な増加要因はシステム費用の87億円と広告宣伝費の18億円で、システム費用は次世代の店舗システムの運用費などによるものだという。
セブン-イレブン・ジャパンの既存店売上伸び率(前年比、%)
読み方:夏の6〜8月に全体の伸びは0.3%まで鈍ったが、飲料とアイスを除くと1.2%で、春とほぼ変わらない。失速は冷蔵・冷凍ケースに集中していた。出所:セブン&アイの決算説明資料(2026年10月8日)。
注目すべきは、会社自身の計画との距離である。修正計画と比べたSEJの営業利益は90.8%で、111億円足りなかった。同じ表で、米国の7-Eleven, Inc.は計画を1.4%上回り、連結全体も計画比99.3%とほぼ計画どおりだった。国内の未達を海外が埋めた、というのが上期の姿だ。6〜8月の3カ月だけを取ると、SEJの営業利益は577億9,400万円で前年比86.3%まで落ちている。
先行投資の中身は店頭で見える。焼きたてパンの「セブンカフェ ベーカリー」は約1万2,000店に入り、今年度の計画は約1万8,000店。紅茶の「セブンカフェ ティー」は約4,600店で、計画は約1万店だ。出来立てのカウンター商品の1店1日あたり販売は15.6%増え、宅配の「7NOW」の総売上は35.5%増えた。設備は入っているが、費用が先に出て、売上の回収は後から来る。会社は資料で「上期の販管費は計画線」「増加影響は(今年度の)4Qで一巡」と説明している。
店の数も、まだ利益を押し上げる段階にはない。SEJの上期の新規出店は210店、閉店を差し引いた純増は26店にとどまった。今年度の計画は出店550店、純増200店で、上期を終えて純増は計画の13%しか進んでいない。直営店と加盟店を合わせたチェーン全店売上は2兆8,103億円で、前年同期比1.6%増えた。売上の総額は少しずつ増えているが、販管費の増加を吸収するほどの伸びではない。国内の利益を戻すには、出来立て商品のような単価の高い売り場が、飲料のような定番の落ち込みを上回って育つ必要がある。
川上へ:米国の給油機が稼いだ3億9,800万ドル
海を渡ると景色が変わる。北米の7-Eleven, Inc.の上期の営業利益は13億2,000万ドルで、前年の9億500万ドルから4億1,400万ドル増えた。会社の内訳では、そのうち3億9,800万ドルがガソリンである。店内の商品などの寄与は2,500万ドル、販管費はマイナス800万ドル。増益分の約96%を、給油機が稼いだ計算になる(本誌計算)。
7-Eleven, Inc.の上期営業利益の増減(百万ドル)
読み方:4億1,400万ドルの増益のうち3億9,800万ドルがガソリンだった。店内の商品などの寄与は2,500万ドルにとどまる。出所:セブン&アイの決算説明資料(2026年10月8日)。増益に占める割合は本誌計算。
ガソリンで儲かったのは、たくさん売れたからではない。卸売を含むガソリン事業全体の販売量は3〜5月が前年比8.8%減、6〜8月が1.6%減と、むしろ減っている。増えたのは1ガロンあたりの粗利(CPG)で、前年差は3〜5月がプラス16.2セント、6〜8月がプラス4.0セントだった。原油と燃料の値動きが大きいとき、仕入れと店頭価格の差が広がりやすい。会社も短信で「市況変動の影響により収益は前年同期を上回りました」と書いている。燃料の値段の高止まりについては、備蓄放出後の軽油先物の記事で扱った。
ただ、同じ高いガソリンが店の中の客を減らしている。短信によると、6〜8月の米国では「ガソリン価格が高い水準で推移したことを含め厳しい外部環境の継続等により客数は減少し」、米国内の既存店商品売上は前年同期をやや下回った。資料の数字では0.1%減である。低所得層を中心に、食品や日用品で節約する動きが続いているという。給油機の利益と店内の客足が、逆向きに動いている。
最後の川上:円安が上乗せした94億円
もう一段さかのぼると、為替がある。上期の換算レートは1ドル=158.29円で、前年同期の148.40円から約10円の円安だった。会社によると、この為替の影響で営業収益は3,110億円、営業利益は94億円押し上げられた。営業利益の増加額は約239億円だから、その約4割は円安の分である。為替の影響を除くと、営業利益の伸びは11.5%ではなく約7.0%になる(本誌計算)。通期の想定レートは1ドル=157円で、ここから円高に振れれば、同じ米国の稼ぎでも円建ての利益は目減りする。
家計への換算:100株を持つと
私たちの財布との接点に引き直しておく。8日の終値は1,987円50銭で、前日比1.02%高だった。ただし決算の公表は15時30分で、取引終了の後である。この終値は決算を織り込む前の値段であり、市場の評価が出るのは9日の取引からだ。
| 項目 | 金額・水準 | 計算の前提 |
|---|---|---|
| 100株の購入代金 | 19万8,750円 | 10月8日終値1,987.5円×100株(手数料除く) |
| 年間配当(予想) | 6,000円 | 中間30円+期末30円の予想×100株(税引き前) |
| 配当利回り | 約3.02% | 年60円÷1,987.5円 |
| 新NISAの成長投資枠に占める割合 | 約8.3% | 19万8,750円÷年間240万円 |
会社は株主還元も続けている。上期にネットで1,000億円の自己株式を取得し、これまでの累計は7,000億円。2030年度までに残り1兆3,000億円を取得する方針を資料で示した。発行済株式数は2月末の26億456万株から8月末の23億2,026万株へ減っている。1株あたりの利益は、利益が横ばいでも株数が減る分だけ増える。上期の1株あたり純利益は54円26銭で、前年同期の47円83銭から13.4%増えた。純利益そのものの伸び(2.2%)よりはるかに大きい。
生活防衛と投資の接点
今回の数字から、個人投資家が持てる見方は大きく3つに分かれる。どれを推奨するものでもない。
- 国内の立て直しに賭ける見方。飲料とアイスを除いた既存店は1%台の伸びを保ち、費用の増加は今年度の4Qで一巡すると会社は言う。夏の天候要因が消えれば、国内の利益は計画に近づくという読み方である。
- 米国のガソリン頼みを警戒する見方。北米の増益の約96%がガソリンだった。1ガロンあたりの粗利の上乗せは3〜5月の16.2セントから6〜8月の4.0セントへ縮んでおり、燃料市況が落ち着けばこの追い風は細る。
- 株数の減少と配当を重視する見方。通期の営業利益予想4,250億円は据え置かれ、上期で54.7%を稼いだ。自社株買いと累進配当の方針が続く限り、1株あたりの指標は利益の伸び以上に改善しやすい。
3つの見方に共通する弱点は為替である。上期の増益の約4割が円安の分だった以上、日銀の政策や米金利の動きでドル円が円高に振れれば、どの見方にとっても円建ての利益は目減りする。コンビニの店頭で起きている別の変化としては、ゆうちょ銀行がファミリーマートのATMから撤退する件も記事にした。
次に店頭と市場に届く変化の日付
- 10月9日(金):決算発表後、最初の取引日。1,987円50銭からの値動きが、市場の評価になる。
- 10月14日:半期報告書の提出予定日。短信より詳しい注記が出る。
- 11月13日:中間配当1株30円の支払開始予定日(8月末時点の株主が対象)。
- 今年度の4Q(12月〜2月):会社が「システム費用などの増加影響が一巡する」とした時期。国内の営業利益が前年を上回るかどうかが試される。
主な参照
- 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月8日)/セブン&アイ・ホールディングス
- 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算説明資料(2026年10月8日)/セブン&アイ・ホールディングス
- セブン&アイの株価の時系列(10月8日終値)/Yahoo!ファイナンス
- 新NISAの年間投資枠/金融庁
データ基準日:2026年10月8日。株価は同日の東京市場の終値で、決算公表(15時30分)より前に付いた値段である。業績の数値はすべて会社の決算短信と決算説明資料による。米国のガソリン関連指標(販売量、1ガロンあたり粗利)は説明資料の表記どおりで、販売量は卸売を含む全体の数値である。増益に占めるガソリンの割合(約96%)、為替影響を除いた営業利益の伸び(約7.0%)、配当利回り、1株あたり純利益の伸び率は本誌の計算である。家計換算は手数料と税金を含まない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
アイキャッチ画像:セブン-イレブン豊洲店(2014年撮影)、撮影 LERK/Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0。本誌がトリミングして使用。














