まず下の1枚を見てほしい。ビットコインは10月に入って5回、取引時間中に8万ドルを割り込んだ。だが、1日の終値で8万ドルを下回った日は一度もない。最も近づいたのは26日の終値8万6.66ドルで、8万ドルまであと7ドルだった。日本時間28日7時46分の気配値は8万780ドルである(いずれもヤフーファイナンス、日足はUTC基準)。
この「割れそうで割れない8万ドル」をめぐって、強気と弱気の材料がそろって出てきた。米ギャラクシー・デジタルの調査部門は「弱気相場は6月に終わった」と主張し、分析会社グラスノードは分散型取引所ハイパーリキッドの大口が3月以来初めて売り越しに転じたとみる。本稿では、価格の地図、資金の流れ、先物の温度を3枚の図で並べ、29日未明のFOMCと11月3日の米国の選挙に向けたシナリオを示す。
図1:8万ドルの上下にある節目の地図
ビットコインの節目(万ドル)
読み方:現在値は最安終値と50日線のあいだの狭い帯にある。下は7万6,540ドル(ギャラクシーの撤退線)まで節目が薄い。出所:ヤフーファイナンスの日足から本誌計算、ディクリプト・コインデスクの報道。
図の中央が現在値の8万780ドルである。すぐ上に50日移動平均の8万1,798ドルがあり、現在値はまだその下にいる。10月の終値の高値は4日の8万6,480ドルで、9月30日の終値8万3,554ドルからの10月の騰落率は26日終値までで4.2%安だ。一方、200日移動平均は7万2,987ドルで、現在値はこれを約11%上回る。中期の上昇基調は崩れていないが、短期の勢いは失われている、というのが地図の読み方になる。
下側の節目は2つ。10月の取引時間中の安値7万9,146ドル(24日)と、ギャラクシーが自らの見方の「撤退の線」として示した週足終値7万6,540ドルである。9月に終値で8万ドルを下回ったのは13〜17日の5日間で、最安値は15日の7万5,613ドルだった。8万ドルを割れても、7万6,000ドル台までは真空地帯が続く。
図2:ETFの資金は「出て、戻った」
米国の現物ビットコインETFの資金の流れ(百万ドル)
読み方:AI関連株が急落した22日に大きく流出し、26日に小さく戻った。出所:21〜22日はソソバリュー(クリプトブリーフィング経由)、23日はファーサイド(コインデスク経由)、26日はビットボ。
米国の現物ビットコインETFの資金の流れは、先週の値動きをそのまま映している。暗号資産メディアのクリプトブリーフィングがソソバリューの集計として伝えたところでは、21日は約5億2,800万ドルの流入だったが、AI関連株が急落した22日は6億3,500万ドルの流出に転じ、うちブラックロックのIBITが2億5,400万ドルを占めた。コインデスクがファーサイドの集計として伝えた23日は1億3,800万ドルの流出である。
26日は流れが戻り、ビットボの集計で約1億1,000万ドルの流入、そのほぼすべてがIBITだった。2日で7億ドルを超えた流出の後の戻りとしては小さい。ただし、流出が3日続かなかったことは、8万ドルの終値が守られたことと整合する。
図3:先物の温度は「平熱」
OKXのBTC無期限先物の資金調達率(8時間ごと、%)
読み方:売りに傾いていた体温が、26日以降は平熱に戻った。過熱も、売り方の締め上げの兆しもない。出所:OKXの公開データ(日本時間28日朝に取得)。
先物の資金調達率(ファンディングレート)は、買い手と売り手のどちらが混み合っているかを示す体温計である。OKXのBTC無期限先物の8時間ごとの調達率は、26日以降ずっと基準値の0.0100%前後にある。18〜25日はおおむね0.002〜0.009%と基準を下回り、22日には一度マイナス(0.0047%)を付けた。売りに傾いた体温が、平熱に戻った形だ。ハイパーリキッドのBTC先物の調達率も基準値の1時間0.00125%にとどまる。
平熱ということは、買い方が過熱しているわけでも、売り方を締め上げる準備ができているわけでもない。グラスノードが指摘するハイパーリキッドの大口の売り越しは、この平熱の中での「方向の賭け」であって、市場全体の偏りにはまだなっていない。仮想通貨メディアのクリプト・ドット・ニュースによれば、グラスノードは8万5,000ドルと8万7,000ドルの近くに、売り方の損切りが集まりやすい水準があるとみている。
強気と弱気の論点を並べる
| 論点 | 強気側(ギャラクシーなど) | 弱気側(グラスノード・値動き) |
|---|---|---|
| 相場の局面 | 弱気相場は6月に終わり、いまは買い集めの局面 | 50日線の下で、10月は4.2%安 |
| 下落の深さ | 今回の下落率は53%で、過去の77〜93%より浅い | 6月30日の終値5万8,559ドルからの戻りは、なお途中 |
| 大口の動き | 6月の安値以降、現物ETFは8万7,000BTCを買い増した | ハイパーリキッドの大口は3月以来初の売り越し |
| 保有コスト | 市場全体の平均取得値(約7万7,600ドル)を上回って推移 | 6〜12カ月前の買い手の取得値は約8万6,700ドルで、戻り売りが出やすい |
ギャラクシーの調査責任者アレックス・ソーン氏の見方は、ビットコインが44週にわたって50週移動平均を下回った後、9月にこれを回復し、以来5週連続で週足の終値がその上にあるという点に立つ。同氏は12万5,000ドルへの回復もありうるとする一方、週足の終値で7万6,540ドルを割り込み1カ月以内に戻せなければ見方は誤りだと明記している。同社と同氏はビットコインを保有していることを開示している。
シナリオ:FOMCと選挙をまたぐ1週間
今週の材料は2つある。29日午前3時(日本時間)のFOMCの結果と、11月3日(火)の米国の選挙だ。コインデスクによると、デリバティブ取引所デライブで金曜日に期日を迎えるアット・ザ・マネーのストラドル(同じ行使価格のコールとプットの組み合わせ)は約2,400ドルで、市場が見込む値幅は上下約3%にとどまる。以下は本誌の見立てである。
| シナリオ | 確率 | 11月3日までの目安 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 8万〜8万3,000ドルのもみ合い | 45% | 50日線(8万1,798ドル)をはさむ往来 | FOMCが12月利上げを追認するが、驚きはない |
| 8万ドルを終値で割り、7万6,000ドル台へ | 30% | 9月の安値圏とギャラクシーの撤退線を試す | ドル高・金利高が進み、ETFの流出が再開 |
| 8万5,000ドル超へ踏み上げ | 25% | グラスノードが示す売り方の損切り水準 | ETFの流入が続き、大口の売り越しが巻き戻される |
本誌の基本線はもみ合いで、撤退の線は日足終値7万9,000ドル割れとする。10月の取引時間中の安値7万9,146ドルを終値で下回れば、「終値では割れない」という今月の性格そのものが変わるからだ。
個人投資家向けチェックリスト
- 日足の終値が8万ドルを下回ったか。取引時間中の割れ込みは今月5回あった。見るべきは終値である。
- 50日線8万1,798ドルを終値で回復したか。回復すれば、短期の下向きの流れが一服したサインになる。
- 現物ETFの流出が2日以上続くか。22〜23日のような流出の連続は、8万ドル割れの前触れだった。
- 資金調達率がマイナスに沈むか、0.03%を超えて過熱するか。いまは平熱。どちらかに振れたら逆方向の急変に備える。
- 円建ての値動きも確認する。ドル円が158円近辺にある今は、ドル建ての値動きに円相場の変動が上乗せされる。
8万ドルを2度目に試した26日の状況はこちらの記事、ビットコインを保有する企業の動きはビットコイン企業番付にまとめた。
主な参照
- ビットコインの日足・気配値/ヤフーファイナンス
- ギャラクシーの見解(弱気相場は終わった)/ディクリプト、コインデスク
- ハイパーリキッドの大口の売り越し(グラスノード)/クリプト・ドット・ニュース
- 現物ETFの資金流出(10月21〜22日)/クリプトブリーフィング
- 23日のETF流出とFOMCの織り込み/コインデスク
- オプションが示す値幅と選挙前後の値動き/コインデスク
- 26日のETFの資金流入/ビットボ
- 無期限先物の資金調達率の履歴/OKX
- FOMCの日程/FRB
データ基準日:2026年10月28日(日本時間7時46分)。現在値は取引時間中の気配値であり、終値ではない。日足の終値はヤフーファイナンスのUTC基準で、取引所や集計元によって数十ドルの差が出る。移動平均は26日までの日足終値から本誌が計算した。ETFの資金の流れは集計元によって数字が異なり、ビットボの22〜23日の集計は一部の銘柄が欠けているため、本稿ではソソバリューとファーサイドの数字を報道経由で使った。本誌はファーサイドの表を直接確認できていない。ギャラクシーとグラスノードの分析は報道によるもので、原文は確認できていない。資金調達率はOKXとハイパーリキッドの公開データを日本時間28日朝に取得した。確率は本誌の判断であり、将来の価格を保証しない。暗号資産は価格変動が大きく、元本を失うおそれがある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














