11月2日からの週は、米中間選挙と雇用統計の間に、AI関連の決算が詰め込まれている。パランティア(PLTR)、アーム(ARM)、クアルコム(QCOM)、ウーバー(UBER)、そしてソニーグループ。オプション市場は、アームの決算翌日に上下15%前後の値動きを織り込んでいる。しかも5社のうち3社は、10月30日の時点ですでに6〜11%売られた状態で決算を迎える。まず下の1枚を見てほしい。
任天堂、トヨタ自動車、AMDの3社は、10月30日の過去8回の値動きを並べた記事で扱った。本記事はそれ以外の5社を、「どれだけ動くと見込まれているか」と「過去にどちらへ動いたか」の2つの物差しで並べる。アップルも2日に発表するが、同社は10月29日の記事で取り上げたため、下の日程表に載せるにとどめる。
オプションが織り込む変動幅:アームが最大
オプションが織り込む決算翌日の変動幅(±%)
読み方:棒の長さは上下どちらかへの振れ幅の見込みで、方向は示さない。アームは決算翌日に上下15%前後動くことが織り込まれている。出所:イアニングス・ウォッチャー(10月30日更新)。
決算の直前には、オプションの価格に「発表翌日にどれだけ動くか」の見込みが入る。これを予想変動幅(インプライド・ムーブ)と呼ぶ。決算データを集計する米イアニングス・ウォッチャーが10月30日に更新した数値では、アームが±15.1%、パランティアが±12.4%、クアルコムが±10.6%、ウーバーが±7.7%、ソニーの米国預託証券(ADR)が±7.3%だった。上か下かは示さない。示すのは振れ幅だけである。
この数値は、同じ表に並ぶ過去の実際の平均変動と比べると意味が出てくる。パランティアは過去の決算日の平均が±17.0%(日中の最大値ベース)で、今回の織り込みはそれより小さい。クアルコムは逆で、過去平均の±7.5%に対して今回は±10.6%と大きく見込まれている。10月30日の急落で、オプションの価格が先に跳ね上がった形である。
過去の決算でどちらへ動いたか
過去の決算日に上げて引けた割合(%)
読み方:50%より上なら決算日に上げやすく、下なら下げやすかった銘柄である。クアルコムは17回中14回下げて引けた。出所:米国4社はイアニングス・ウォッチャー(10月30日時点)、ソニーは株探の日足から本誌集計(東京市場、発表翌営業日の終値)。
方向の手がかりは、過去の決算日の勝敗である。イアニングス・ウォッチャーの集計では、パランティアは直近17回のうち10回(59%)で決算日に上げて引けた。アームは12回中5回(42%)、ウーバーは17回中8回(47%)。目立つのはクアルコムで、17回中14回が下げて引け、上げは3回(18%)しかない。好決算でも見通しの一言で売られる、というのがこの銘柄の決算日の癖である。
ソニーは、本誌が株探の日足から東京市場の反応を数えた。発表は東京の取引終了後のため、翌営業日の終値で比べる。2025年8月から2026年7月までの5回で、翌日は+3.49%、+3.67%、+4.75%、+8.29%、−5.23%。上げが4回、下げは直近の1回だけだ。その直近、7月31日の第1四半期決算では営業利益が前年同期比40.2%増の4,764億円となり、通期の営業利益見通しを1兆7,200億円としたが、翌営業日の8月3日は3,589円まで5.23%下げた。良い数字が出ても、上げで終わるとは限らない例である。
日本時間で見る発表日程
日本時間で見る今週の決算と主な予定
読み方:米国の取引終了後の発表は、日本では翌朝6時以降になる。夏時間の終了で日米の時差は14時間。出所:アームの発表、株探の決算発表予定日、イアニングス・ウォッチャー。雇用統計の時刻は米東部時間8時30分を換算。
米国は11月1日に夏時間が終わり、米東部時間と日本時間の差は14時間になった。米国の取引終了後の発表は、日本では翌朝6時以降に出る。パランティアの発表は、日本の祝日(文化の日)にあたる3日の早朝になる。同じ3日には米中間選挙の投票があり、6日夜には10月の雇用統計が控える。決算の反応と、選挙や指標による相場全体の動きが重なりやすい週だ。
| 銘柄 | 発表(現地) | 日本で反応が出る時点 | 会社の前回見通し |
|---|---|---|---|
| アップル | 11月2日 取引終了後 | 3日早朝(時間外) | 10月29日の記事を参照 |
| パランティア | 11月2日 取引終了後 | 3日早朝(時間外) | 7〜9月期売上高 21億6,000万〜21億6,400万ドル |
| ウーバー | 11月4日 取引開始前 | 4日夜 | 総取扱高 582億5,000万〜602億5,000万ドル、調整後EPS 0.84〜0.88ドル |
| 三菱商事・三井物産 | 11月4日 | 4日以降 | (本記事では扱わない) |
| アーム | 11月4日 取引終了後 | 5日早朝(時間外) | 売上高 13億8,000万ドル±5,000万ドル、調整後EPS 0.47ドル±0.04ドル |
| クアルコム | 11月4日 取引終了後 | 5日早朝(時間外) | 売上高 97億〜105億ドル、調整後EPS 2.05〜2.25ドル |
| ソニーグループ | 11月5日 | 6日の東京市場 | 通期営業利益 1兆7,200億円 |
| 任天堂・トヨタ | 11月5日 | 6日の東京市場 | 10月30日の記事を参照 |
決算前に、すでにこれだけ売られた
10月30日の騰落率(終値、%)
読み方:インテルの警告を受けた半導体株安で、クアルコムとアームは決算前に1割前後下げた。出所:株探米国株(米東部時間16時の終値)、株探(東京市場の終値)。
10月30日、インテルがパソコン需要の鈍化を警告したことを受けて、半導体株が売られた。米国の終値で、クアルコムは前日比11.12%安の164.79ドル、アームは9.97%安の205.97ドル、パランティアは6.27%安の184.11ドルだった。ウーバーは0.75%安の65.25ドルと小幅だったが、取引時間中には64.67ドルまで下げる場面があった。28日には52週安値を更新したと報じられており、ロボタクシーとの競争への警戒が続いている。この日の米国株全体の下げはこちらの記事にまとめた。
先に売られた銘柄は、決算で「思ったほど悪くない」と示せれば戻りやすい。一方で、売りの理由がパソコンやスマートフォンの需要という業界全体の話である以上、1社の決算だけで流れが変わるとも限らない。クアルコムについては、スマートフォン向けが底を打ったという同社の説明が11月4日に試される、とする見方が出ている。アームの結果は、筆頭株主であるソフトバンクグループの株価にも響く。同社自身の決算発表は11月10日で、その前に東京市場がアームの数字を織り込むことになる。ソフトバンクGの最近の値動きはこの記事で扱った。
本誌の見立て:上昇確率と焦点
以下の確率は、過去の決算日に上げた割合を出発点に、今回の事情で本誌が補正した見立てである。予想変動幅は、オプション市場が見込む振れ幅をそのまま載せた。
| 銘柄 | 予想変動幅 | 過去の上昇割合 | 本誌の上昇確率 | 焦点と補正の理由 |
|---|---|---|---|---|
| パランティア | ±12.4% | 59%(17回中10回) | 55% | 米国の民間向け売上の伸び。前回は29.5%高と大きく上げたため、期待の水準が高い分を差し引いた |
| アーム | ±15.1% | 42%(12回中5回) | 45% | ライセンス収入とロイヤルティー収入の伸び。決算前に10%売られた分、下げ余地はやや小さい |
| クアルコム | ±10.6% | 18%(17回中3回) | 30% | スマートフォン向けの見通し。決算日に下げる癖は強いが、前日までに11%下げた分を上乗せした |
| ウーバー | ±7.7% | 47%(17回中8回) | 50% | 総取扱高の伸びと自動運転への対応策。安値圏で決算を迎え、期待は低い |
| ソニーグループ | ±7.3%(ADR) | 80%(直近5回中4回、本誌集計) | 55% | ゲームと半導体の通期見通し。直近は上方修正でも売られたため、上昇確率を低めに置いた |
この見立てが外れる条件:3日の中間選挙や6日の雇用統計で米国株全体が大きく動けば、個別の決算の良し悪しより相場全体の流れが勝つ。とくに半導体株は、10月30日のように業界全体の話で一斉に動きやすい。その場合、上の確率はあてにならない。
個人投資家向けチェックリスト
- 予想変動幅は「振れ幅」であって方向ではない。アームの±15.1%は、205.97ドルからおよそ175〜237ドルの範囲を見込む、という意味である。
- 日中の値動きは、その日の終値と同じではない。クアルコムは7月29日の決算の翌日、日中に6.2%下げたが、終値では2.6%安にとどまった。
- 決算前に買う場合は、外れたときの下げ幅を先に決める。予想変動幅の分だけ逆に動いても耐えられる量に抑える。
- 日本株への波及を確認する。アームはソフトバンクG、クアルコムとアームはスマートフォン向け部品株の材料になりうる。
- 相場全体の予定を重ねて見る。3日の中間選挙、6日夜の雇用統計の日程はドル円の週間見通しにまとめた。
主な参照
- 11月2〜6日の決算と予想変動幅(10月30日更新)/イアニングス・ウォッチャー
- 各社の決算日の過去の反応/イアニングス・ウォッチャー(PLTR、ARM、QCOM、UBER)
- 決算発表日(11月4日 取引終了後)/アーム
- 7〜9月期の売上高見通し/パランティア(米証券取引委員会への提出書類)
- 7〜9月期の見通し/ウーバー(米証券取引委員会への提出書類)
- クアルコムの7〜9月期見通し(7月29日発表)/Pulse 2.0
- アームの7〜9月期見通し(7月29日発表)/Quartr
- ソニーグループの第1四半期決算と通期見通し/gamebiz
- ソニーグループの決算発表予定日と日足/株探
- 米国株の10月30日終値/株探米国株(PLTR、ARM、QCOM、UBER)
- ソフトバンクグループの決算発表日/ソフトバンクグループ IRカレンダー
データ基準日:2026年11月2日(日本時間午前3時)。米国株の株価は10月30日(米東部時間16時)の終値、ソニーグループの株価は東京市場の終値である。予想変動幅と過去の決算日の反応は、イアニングス・ウォッチャーが10月30日時点で集計した数値で、週明けの取引で変わりうる。パランティアとウーバーの過去の上昇割合は同社の追跡期間(直近17回)、アームは12回の集計である。ソニーの上昇割合は、本誌が株探の日足から2025年8月〜2026年7月の5回を数えたもので、標本は少ない。クアルコムとアームの前回見通しは、会社の発表資料ではなく報道機関の要約から引用した。ウーバーが28日に52週安値を更新したとの記述は報道によるもので、本誌は数値を確認していない。各社の発表時刻は、アームを除き会社の発表資料では確認できておらず、イアニングス・ウォッチャーと株探の予定による。上昇確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













