先週末、日銀会合とAI株安の二つの材料でドル円を156円台に売り込んだ向きは、週明けの東京で肩透かしを食っただろう。2日のドル円は朝方の157.41円を安値に買い戻され、日本時間11時51分には157.92円にいた。30日の安値156.96円からは、ほぼ1円戻した格好だ。正直、この相場は動いているようで動いていない。10月の高値と安値の差はわずか2.85円で、2022年2月以来の狭さだった。
今週は11月3日の米中間選挙、6日の米10月雇用統計と、値幅を広げる材料が並ぶ。しかも3日は文化の日で東京市場が休みになり、薄商いのなかで開票を迎える。本稿は、細った値幅の理由と、どちらに抜けやすいかの筆者の見立て、そして見立てが外れたときの撤退線を示す。
ドル円の月間値幅(高値−安値、円)
読み方:10月の値幅2.85円は、2021年11月以降で3番目に狭い。より狭かったのは2021年12月(2.49円)と2022年2月(2.13円)だけである。出所:Yahoo Financeの日足(ICE提供)の高値・安値から本誌計算。
テープ:10月は2.85円の箱の中
Yahoo Financeの日足(ICE提供)で数えると、10月のドル円の高値は14日の158.94円、安値は23日の156.10円だった。値幅は2.85円。月ごとの値幅を2021年11月までさかのぼると、これより狭かったのは2021年12月の2.49円と2022年2月の2.13円の2回しかない。9月は7.49円、7月は5.99円動いていた。報道でも、ドル円の予想変動率が約4年半ぶりの低さにあると伝えられている。
値幅が細ったのは、売り材料と買い材料がちょうど釣り合っているからだ。円を買う側には、日銀の12月利上げ観測がある。日銀は10月30日に政策金利を1.25%で据え置いたが、採決は8対1で、高田創委員が1.5%への利上げを提案した。短期金融市場では12月の利上げを約8割織り込んでいるとの見方がある(みんかぶ)。ドルを買う側には、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測がある。FRBは9月に利上げし、10月28日の会合では据え置いたが、2人が利上げを主張して反対した。両方の中央銀行が引き締めに傾いているので、金利差は大きく動かない。
需給:円買いは10万枚、ここが火種
筆者が一番気にしているのはポジションの偏りだ。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、10月27日時点で投機筋にあたる非商業部門の円先物は、買いが22万5,516枚、売りが12万3,925枚だった。差し引き10万1,591枚の円の買い越しで、1週間で3万1,713枚増えた。本誌は10月31日のドル円の記事でもこの数字を取り上げた。
円をこれだけ買い込んでいるのに、ドル円は158円近くから下がらない。ここが肝だ。買い手が円高に賭けて待っているのに、値段がついてこない。こういう形のとき、逆に振れた場面では投げが投げを呼ぶ。米国の雇用統計が強く出てドル高に振れれば、円の買い持ちの手じまいが重なり、上に踏み上げやすい。逆に、日銀の12月利上げ観測はすでに約8割織り込まれており、円買いの材料としての新しさは薄れている。
水準の地図
ドル円の水準の地図(円)
読み方:筆者は158.94円の試しを先に見込み、ニューヨーク終値で156.10円を割れば見立てを撤回する。出所:Yahoo Financeの日足と2日の取引時間中の値(ICE提供)。
上は158.94円が10月の天井で、ここを抜けると次の節目は160円になる。160円は報道で介入への警戒が意識される水準とされ、そこから上は当局の発言一つで値が飛ぶ領域だ。下は10月30日の安値156.96円、その下に10月の底156.10円がある。2日の安値157.41円は、週明けの最初の押し目として目先の支えになる。
筆者の見立て:上限158.9円の試しを先に見る
筆者は、今週のうちにレンジ上限の158.9円を試しにいくとみている。根拠は三つだ。一つ目は、上で見た円の買い越し10万枚という燃料である。二つ目は、日米の2年債利回りの差が10月29日時点で2.709%ポイントと、なお大きいことだ。円を持つより、ドルを持つ方が金利で有利な状態は変わっていない。三つ目は、日銀の12月利上げがかなり織り込まれた一方、FRBの追加利上げはまだ確定していない点である。雇用統計が強ければ、ドル側に新しい材料が乗る。
短期の目線は、雇用統計までの1週間で156.5円〜159.5円、日銀の12月17〜18日の会合までの約6週間で155円〜160円とみる。158.9円を抜けても、160円の手前では戻り売りと当局の口先介入が待っている。上値を追うなら159円台は利食いの場所であり、買い増しの場所ではない。
逆になったら:156.10円が撤退線
この見立ては、ニューヨーク終値で156.10円を割り込んだら撤回する。10月の底を割るということは、2.85円の箱が下に壊れたということだ。そのときは円の買い越し10万枚が、今度は円高の勢いを強める側に回る。中間選挙の結果が予想外で米国株が大きく崩れる、あるいは雇用統計が大きく下振れる、といった場面が考えられる。週明け2日の米国株先物は小幅高で始まっているが、10月30日に米国株は6月以来の大幅安を演じたばかりで、地合いはまだ脆い。
今週の監視リスト
米国は11月1日に夏時間が終わり、米国の指標の発表は日本時間で10月より1時間遅くなった。米東部時間の発表予定を手元の時刻に直すなら、タイムゾーン変換ツールに入れるのが手っ取り早い。下の表は換算済みの日本時間である。
| 日本時間 | 予定 | ドル円で見る点 |
|---|---|---|
| 11月2日(月)14時 | 日銀「経済・物価情勢の展望」全文 | 物価の上振れリスクの書きぶり |
| 11月3日(火)0時 | 米10月ISM製造業景況指数 | 158円台を回復して引けるか |
| 11月3日(火)終日 | 米中間選挙の投票、東京は休場 | 薄商いでの急な振れ |
| 11月4日(水)朝から | 中間選挙の開票 | 米国株先物と米長期金利の反応 |
| 11月5日(木)8時50分 | 日銀9月会合の議事要旨 | 12月利上げの手がかり |
| 11月6日(金)22時30分 | 米10月雇用統計 | 158.94円の上抜け、156.10円の下抜け |
主な参照
- ドル円の日足と2日の値(月ごとの値幅は本誌計算)/Yahoo Finance(ICEのデータ)
- 円先物の建玉(10月27日時点)/米商品先物取引委員会
- 日銀の政策決定(10月30日)と公表予定/日本銀行
- FRBの政策決定(10月28日)/米連邦準備制度理事会
- 日米2年債利回りの差、12月利上げの織り込み/本誌10月31日の記事(米財務省、財務省、みんかぶのデータ)
データ基準日:2026年11月2日 日本時間11時51分。2日のドル円は取引時間中の値であり、終値ではない。月ごとの高値・安値はYahoo Financeの日足(ICE提供)から本誌が計算したもので、ほかの情報ベンダーやニューヨーク市場の終値とは差が出ることがある。円先物の建玉はCFTCの先物のみの集計である。予想変動率と利上げの織り込みは報道による。水準と見通しは筆者の見方であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














