2024年11月4日、米大統領選の投票日を翌日に控えたニューヨークで、パランティア・テクノロジーズが決算を発表した。翌日の株価は23.47%高。同じ週、東京では任天堂が翌日に5.80%上げ、トヨタ自動車も決算当日に1.72%上げた。選挙と決算が同じ週に重なり、市場の視線が分散するなかで、個別の決算が大きな値幅を生んだ。それから2年、奇しくも同じ並びが戻ってくる。11月2日から始まる週は、米中間選挙(11月3日)と主要企業の決算、そして米雇用統計(11月6日)が重なる。
本記事では、来週決算を発表する日米の主要5社について、過去8回の決算での株価の動きを並べ、今回どちらに動きやすいかを確率で示す。歴史は繰り返さないが、韻は踏む。どこが同じで、どこが違うかを先に確かめておきたい。
来週の決算と主な日程(日本時間)
読み方:東京が休場の3日に選挙と米国の決算が重なり、4日の東京市場がまとめて反応する。米国は11月1日に夏時間が終わるため、米東部時間17時は日本時間の翌朝7時になる。出所:株探、各社の発表、米労働統計局。
2024年11月と2026年11月、同じ点と違う点
| 項目 | 2024年11月の第1週 | 2026年11月の第1週 |
|---|---|---|
| 米国の選挙 | 大統領選(11月5日) | 中間選挙(11月3日) |
| 東京市場 | 11月4日が振替休日 | 11月3日が文化の日で休場 |
| ドル円(欧州中央銀行の参照レート) | 11月5日:152.27円 | 10月29日:158.06円 |
| 決算が重なる主な企業 | パランティア、任天堂、トヨタ | パランティア、AMD、アップル、任天堂、トヨタ、三菱重工 |
| 同じ週の米雇用統計 | 11月1日(選挙前の金曜日) | 11月6日(選挙後の金曜日) |
最大の違いは為替である。2024年11月のドル円は152円台だったが、いまは158円前後と円安が一段進んでいる。日本の輸出企業にとって追い風は大きいはずだが、問題は各社がどの水準を前提に計画を立てているかだ。もう一つの違いは、選挙が大統領選ではなく中間選挙であること。株探は、選挙結果の大勢が判明するのは日本時間4日の午後ごろとみている。東京市場は3日が休場のため、選挙と米国の決算の反応をまとめて4日に受けることになる。
過去8回、決算で株価はどれだけ動いたか
過去8回の決算での平均値幅(上げ下げを問わない、%)
読み方:米国の2社は日本の3社より値幅が大きい。パランティアは平均で15%近く動いてきた。米2社と任天堂は発表日終値→翌営業日終値、三菱重工とトヨタは前日終値→発表日終値で本誌計算。出所:日足終値。
数字の取り方を記しておく。米国の2社と任天堂は取引終了後に決算を出すため、決算発表日の終値から翌営業日の終値までの騰落率を使った。三菱重工は取引時間中の13時30分に発表するため、発表日の前日終値から発表日終値までを使った。トヨタは発表時刻が公表されていないため、三菱重工と同じ方法で計算している。いずれも日足終値から本誌が計算した。値動きの幅を自分で確かめたいときは、パーセント計算ツールに前後の終値を入れれば同じ騰落率が出る。
平均の値幅(上げ下げの方向を問わない動きの大きさ)で見ると、パランティアが14.8%、AMDが8.8%、任天堂が5.8%、三菱重工が3.7%、トヨタが2.1%だった。パランティアとAMDは市場の期待も値幅に表れている。オプション市場から逆算した決算後の想定変動は、10月下旬時点でパランティアが10〜12%程度、AMDが8〜9%程度と伝えられている。
日本の3社:焦点は為替の前提と販売台数
トヨタ自動車(7203):11月5日
トヨタは8月4日、2027年3月期の営業利益見通しを3兆円から3兆4,000億円に引き上げた。前提のドル円は1ドル=160円である。日本銀行が公表した10月30日17時時点のドル円は157円55〜56銭で、前提よりやや円高にある。8月に上方修正の理由となった円安の追い風は、足元では小さくなっている。中東情勢による費用の増加も計画に織り込んでおり、前回計画比で1,650億円の減益要因とした。10月30日の終値は3,070円で、年初来では8.5%安。過去8回の決算日の騰落は上昇3回、下落5回だった。
任天堂(7974):11月5日
任天堂の今期のニンテンドースイッチ2の販売計画は1,650万台。4〜6月期の販売は382万台だった。米国では9月1日から本体価格を449.99ドルから499.99ドルに引き上げており、値上げ後の販売の勢いが今回最初に数字で確認される。4〜6月期の営業利益は1,426億円と前年同期の2.5倍だったが、米国の関税の還付という一時的な要因も含まれていた。株価は10月30日終値8,289円で、52週の終値高値1万4,105円から41.2%低い。過去8回では上昇5回、下落3回だが、直近3回は−10.98%、−8.44%、+5.26%と振れが大きくなっている。
三菱重工業(7011):11月6日13時30分
三菱重工は8月、今期の受注見通しを6兆8,000億円から7兆円に引き上げ、受注残高は過去最大の14兆1,030億円に達した。一方で4〜6月期の防衛・宇宙の受注は516億円と、前年同期の2,918億円から大きく減った。前年の大型受注の反動だが、通期で防衛の受注が再び加速するかが焦点になる。株価は10月30日終値3,413円で、52週の終値高値から34.3%安い。取引時間中の発表のため、反応は発表後の約2時間と翌営業日に分かれる。
米国の2社:期待の高さが値幅を決める
パランティア(PLTR)は11月2日の米国市場の取引終了後に発表する(電話会見は米東部時間17時、日本時間3日7時)。会社の7〜9月期の売上高見通しは21億6,000万〜21億6,400万ドルで、通期の米国の民間部門の売上高は34億2,400万ドル超(前年比134%以上)を見込む。10月29日の終値196.42ドルは52週高値から6.0%下にとどまり、期待はすでに株価に入っている。2024年11月の23.47%高は、選挙の週に決算が重なった代表例だが、当時と比べて株価の水準は大きく上がっている。
AMDは11月3日の取引終了後に発表する(日本時間4日7時に電話会見)。7〜9月期の売上高見通しは130億ドル前後(上下3億ドル)、非GAAPの売上総利益率は約56%。株価は10月29日の終値566.42ドルで年初来164.5%高と、5社の中で最も上げてきた。過去8回では上昇3回、下落5回で、2026年2月には17.31%安、5月には18.61%高と、方向が読みにくい。決算発表の時刻を日本時間に直すときは、11月1日に米国の夏時間が終わる点に注意したい。米東部時間17時は、2日以降は日本時間の翌朝7時になる。
アップルも11月2日の取引終了後に決算を発表する。想定変動と過去の値動きは10月29日のアップル決算の展望記事で詳しく取り上げた。
本誌の見立て:上昇確率と大きく動く確率
決算翌日に上昇する確率(本誌の見立て、%)
読み方:50%を超えるのは任天堂だけで、残る4社は五分か下落寄りとみる。確率は過去8回の騰落の回数に、株価の水準と決算の論点を加味した本誌の見立て。
| 銘柄 | 決算翌日に上昇する確率 | 過去平均を超えて動く確率 | 判断の根拠 |
|---|---|---|---|
| パランティア | 50% | 40% | 過去は上昇5回だが、株価は高値圏で期待の水準が高い |
| AMD | 45% | 45% | 年初来164.5%高。量産立ち上げ期の利益率が試される |
| 任天堂 | 55% | 40% | 高値から41%安く期待は低い。値上げ後の販売が鍵 |
| トヨタ | 40% | 35% | 為替前提160円に対し足元は157円台。追い風が細る |
| 三菱重工 | 45% | 40% | 受注残は過去最大だが、防衛受注の回復待ち |
歴史が示す3つの教訓
- 選挙の週でも、決算の値幅は消えない。2024年11月はパランティアが23%超上げ、任天堂も6%近く上げた。選挙を理由に個別株の決算を軽く見るのは危うい。
- 期待が株価に入っている銘柄ほど、反応は非対称になる。パランティアは2024年11月の23%高のあと、2025年5月に12%安、2025年11月に8%安と、決算後に売られる回が続いた。高値から6%下にある今回は、上振れの幅が問われる。
- 為替の追い風は「前提との差」で効く。当時より円安でも、会社の前提がそれ以上に円安なら上振れの余地は小さい。トヨタの160円前提はその典型である。
今回固有の監視点
今回の週には2024年にはなかった並びがある。東京が休場の3日に中間選挙とAMDの決算が重なり、4日の東京市場は選挙と米ハイテク決算の両方を一度に織り込む。週末の6日には三菱重工の決算が取引時間中に出て、同じ日の夜、日本時間22時30分に米国の10月雇用統計が発表される。この週の値動きは、決算ごとの反応と選挙・雇用の大きな流れが重なるため、個々の決算の評価を株価だけで判断しにくい。
株探は来週の日経平均の予想レンジを6万1,800円〜6万4,800円としている。10月30日の終値は6万3,290円11銭で、前日比1,369円36銭安だった。この日の東京市場の動きは大引けの記事で整理している。同じ日に決算を出したキオクシアの見通しについてはこちらの記事で取り上げた。
主な参照
- 来週の株式相場の見通しと決算・指標の日程(10月30日17時48分)/株探
- 決算発表日・2027年3月期第1四半期決算資料/トヨタ自動車
- IRスケジュール・第1四半期決算短信/任天堂
- 決算発表予定(11月6日13時30分)/三菱重工業
- 7〜9月期決算の発表日時/AMD
- 4〜6月期決算と7〜9月期見通し/パランティア(米証券取引委員会への提出書類)
- パランティアの想定変動(10月26日)/インベスティング・ドットコム
- 米雇用統計の発表日程/米労働統計局
- ドル円の参照レート/欧州中央銀行(Frankfurter API)
- 米国株の日足終値/stockanalysis.com
データ基準日:2026年10月30日。日本株は10月30日の東京市場の終値、米国株は10月29日の米国市場の終値を使った。ドル円157円55〜56銭は日本銀行が公表した10月30日17時時点の値。過去の決算での騰落率は日足終値から本誌が計算したもので、トヨタと任天堂の発表時刻は会社が公表していないため、過去の慣行に基づいて計算方法を選んだ。想定変動は10月下旬時点の報道による値で、発表直前には変わり得る。確率は本誌の見立てである。本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を勧めるものではない。投資判断はご自身の責任で行ってほしい。












