10月28日夜の決算番付を発表する。東の横綱はマイクロソフト、時間外取引で2.80%高の545.88ドル。西の序二段に落ちたのはアルファベット(A株)、時間外で9.60%安の293.70ドルだ。同じ夜、同じAIクラウドの決算で、勝ち負けがここまで割れた。分けたのは売上高の伸びではない。現金の出入りと、市場予想との距離である。
アルファベットのクラウド部門は売上高が前年同期比103%増と倍増した。それでも株価は1割近く沈んだ。マイクロソフトのクラウド「Azure(アジュール)」は48%増で、伸び率では半分以下だが、株価は上げた。以下、番付表と取組解説、そして29日の東京市場で注目すべき銘柄を順に見ていく。
10月28日夜の時間外騰落率(通常取引の終値比)
決算を出した2社が両端に並んだ。出所:ナスダックの気配値(米東部時間18時59分、日本時間29日7時59分)。時間外取引は取引が薄く、翌日の始値とは異なることがある。
番付表:28日夜の時間外取引
| 番付 | 銘柄 | 通常取引の終値 | 時間外(18:59) | 時間外の騰落率 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | マイクロソフト(MSFT) | 531.01ドル | 545.88ドル | +2.80% | ◎ |
| 西の小結 | メタ・プラットフォームズ(META) | 612.49ドル | 618.41ドル | +0.97% | △ |
| 東の前頭 | エヌビディア(NVDA) | 215.38ドル | 213.99ドル | −0.65% | △ |
| 西の前頭 | アマゾン・ドット・コム(AMZN) | 254.60ドル | 252.75ドル | −0.73% | △ |
| 東の幕下 | ブロードコム(AVGO) | 351.81ドル | 343.65ドル | −2.32% | × |
| 西の序二段 | アルファベット(GOOGL) | 324.89ドル | 293.70ドル | −9.60% | × |
東の横綱・マイクロソフト:◎
7〜9月期(2027年6月期の第1四半期)の売上高は922億7,900万ドルで前年同期比19%増。ロイターが伝えたファクトセットの市場予想906億2,000万ドルを上回った。調整後の1株利益は4.89ドルで、予想の4.71ドルを上回る。純利益は366億2,900万ドル、32%増だった。
主役のAzureは331億6,500万ドル、48%増。同社がAzureの売上高をドル建てで開示したのは今回が初めてで、集計の定義も変わっている。ロイターが伝えたビジブル・アルファの予想328億4,000万ドルを上回った。受注残にあたる商業向けの残存履行義務は6,770億ドル、73%増である。
勝因はもう一つある。リースを含む設備投資は452億ドルで、会社自身が示していた約500億ドルを下回った。同社は外部のデータセンター容量の引き渡しが遅れたためで、計画の変更ではないと説明している。10〜12月期の見通しはAzureが49〜50%増、売上高は960億〜971億ドルで、いずれも市場予想を上回った。伸びて、しかも想定ほど現金を使わなかった。判定は◎。前週に報じられた6万人規模の希望退職の話はマイクロソフト、6万人に希望退職|決算は29日朝で扱った。
西の序二段・アルファベット:×
売上高は1,275億7,700万ドルで25%増。ロイターによれば、LSEGがまとめた市場予想1,282億ドルに届かなかった。調整後の1株利益は2.67ドルで、予想の3.02ドルを下回ったと報じられている。会計上の1株利益は2.12ドルで、前年同期の2.87ドルから減った。営業外損益が前年の127億5,900万ドルの黒字から、82億2,100万ドルの赤字に転じたことが響いた。
本業は弱くない。グーグル・クラウドは307億900万ドルで103%増、営業利益は111億2,100万ドルと前年の約3倍だ。会社はTPU(独自のAI半導体)システムの販売も売上高の伸びに「大きく寄与した」と書いた。検索は633億5,000万ドルで12%増。YouTube広告は112億700万ドル、9.2%増にとどまった。
負けを決めたのは現金の流れである。7〜9月期の設備投資は513億5,500万ドルで、前年同期の239億5,300万ドルの2倍を超えた。フリーキャッシュフロー(本業で稼いだ現金から設備投資を引いた額)はマイナス90億6,500万ドルで、4〜6月期のマイナス58億5,500万ドルから赤字幅が広がった。ロイターは、市場は収支トントン近くを見込んでいたと伝えている。会社は四半期中に287億ドルの社債を発行し、市場で株式を少しずつ売り出す「アット・ザ・マーケット」方式でA株1,200万株を発行して43億ドルを調達した。C株2,400万株も同じ方式で発行している。
そのうえで、アシュケナージ最高財務責任者(CFO)は2027年の設備投資が「大幅に増える」と述べた。2026年の計画は1,950億〜2,050億ドルで据え置きと報じられている。伸びる事業を持ちながら、そのための現金を借金と株の売り出しで賄い、来年はさらに使うと宣言した。判定は×。事前の見立てはアルファベット決算、想定変動5.1%|過去12回で6回超えで示した。時間外の9.60%安は、オプション市場が織り込んでいた5.1%の変動のほぼ2倍にあたる。
殊勲賞はなし、要注意の幕下・ブロードコム:×
ブロードコムは28日の通常取引で2.77%高だったが、時間外では2.32%安に転じた。同社はアルファベットのTPUの開発で協業してきた。アルファベットの7〜9月期の設備投資は、CNBCが伝えた市場予想550億9,000万ドルを下回り、2026年の計画も据え置かれた。AI半導体の買い手の財布が、思ったほど開かなかったと読まれた可能性がある。下落の理由について会社側からの説明はなく、この見方は本誌の推測である。判定は×。
この夜の教訓。伸び率の番付と株価の番付は別物である。アルファベットのクラウドはマイクロソフトのAzureの2倍以上の伸び率だった。それでも株価の勝敗を決めたのは、市場予想との差と、現金の出入りだった。AI投資の局面では「どれだけ伸びたか」より「その伸びのためにいくら使い、それをどう賄ったか」が問われる段階に入っている。
29日の東京:注目の取組
東京市場では、米国の決算より自国の材料が先に効きそうだ。株探によれば、私設取引システム(PTS)の夜間取引では次のような値がついた。日経平均の28日の終値は6万3,954円19銭。大阪取引所の日経平均先物の夜間取引は6万4,360円で終えた。
| 銘柄 | 28日終値 | PTS(時刻) | 差 | 注目点 |
|---|---|---|---|---|
| アドバンテスト(6857) | 34,930円 | 37,710円(29日1時55分) | +8.0% | 28日の決算で今期の純利益予想を引き上げ、自社株買いも発表 |
| ソフトバンクグループ(9984) | 4,682円 | 4,870円(29日3時42分) | +4.0% | 28日に4.65%高、AI投資の象徴銘柄 |
| キオクシアHD(285A) | 14,340円 | 14,680円(29日0時23分) | +2.4% | 28日に13.76%高、30日に決算発表予定 |
| 東京エレクトロン(8035) | 9,805円 | 9,980円(29日1時33分) | +1.8% | 30日に決算発表予定 |
最も注目すべきはアドバンテストだ。PTSで8.0%高と、米国の決算とは別の材料で動いている。上方修正の中身はアドバンテスト上方修正、営業益は予想を9%上回るにまとめた。値がさ株のため、寄り付きで日経平均を大きく押し上げる可能性がある。一方、キオクシアは28日に13.76%高と急伸した後で、30日の決算を前に利益確定の売りとの綱引きになりやすい。
来場所の注目取組
- 29日 21時30分 米7〜9月期GDP速報値と9月の個人消費支出(PCE)。
- 29日 22時30分 米国の通常取引でアルファベットが時間外の9.60%安をどこまで残すか。マイクロソフトの2.80%高が定着するか。
- 29日 米国の引け後 コインベース・グローバルの決算。
- 30日 キオクシアHDと東京エレクトロンの決算発表予定(株探の決算発表予定日)。日銀が金融政策決定会合の結果を公表。
主な参照
- アルファベットの7〜9月期決算(売上高、部門別、設備投資、フリーキャッシュフロー、株式発行)/米証券取引委員会(SEC)提出資料
- マイクロソフトの2027年6月期第1四半期決算/マイクロソフト
- マイクロソフトの市場予想との比較、設備投資と見通し/ロイター(MarketScreener)
- アルファベットの市場予想との比較、2027年の設備投資の発言/ロイター(The Standard)
- アルファベットの調整後1株利益の予想、設備投資の予想と2026年計画/CNBC
- 時間外取引の気配値/ナスダック
- PTS、日経平均、日経平均先物、決算発表予定日/株探
データ基準日:米国株は2026年10月28日の通常取引の終値と、米東部時間18時59分時点の時間外取引の気配値(取引時間中の値であり終値ではない)。日本株は28日の東京市場の終値と、29日未明のPTSの約定値。アルファベットの調整後1株利益の市場予想と2026年の設備投資計画は報道にもとづく。ブロードコムの下落理由は本誌の推測で、会社の説明ではない。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












