豪ドル米ドルは11月2日、日本時間23時15分の時点で0.7007ドル前後と、0.70ドルの節目の上に何とか踏みとどまっている。オーストラリア準備銀行(RBA)の政策決定は3日の日本時間12時30分だ。先物市場が織り込む利上げ確率は81%で、ほぼ全員が同じ方向に賭けている。筆者の見立ては「利上げそのものでは上がらない、上がるかどうかは声明の次の一言で決まる」である。
月曜のテープ:原油安の日に、豪ドルは静かだった
週明けのテープは拍子抜けするほど静かだった。この日の値幅は0.7003〜0.7036ドルで、わずか33ポイントしかない。米国とイランの協議への期待でWTI原油の先物は一時97ドル台まで売られ、前週末比で6%を超える下げになった。資源国通貨の豪ドルにとっては逆風のはずだが、下げは0.3%足らずにとどまった。原油で投げる向きは少なく、皆がRBAの結果を待っているテープだ。
先週の高値は0.7068ドル近辺で、10月28日に発表された7〜9月期の消費者物価が上振れした後の買いで付けた水準だ。そこから2営業日で60ポイントあまり押した。上値で買った短期筋の一部は、決定前に手じまいを済ませたとみている。逆に言えば、利上げを確信して積み上がっていた買い持ちは、先週ほど重くない。
需給:利上げ8割織り込みの重さ
RBAの政策金利は現在4.60%だ。2026年は2月、3月、5月、9月と4回引き上げており、3日に0.25%上げれば年5回目、水準は4.85%になる。ASXの30日物銀行間金利先物から計算した利上げ確率は81%、据え置きは19%で、利下げは0%だ(シドニー時間3日0時50分の更新)。先物が示す会合後の金利は4.80%で、4.85%までは届いていない。この「残り5ベーシスポイント」が、利上げで豪ドルを買える余地のほぼすべてになる。
相場格言に「噂で買って事実で売れ」がある。今回はまさにその形だ。オーストラリア連邦銀行(CBA)、ANZ、ウエストパックの大手3行はそろって11月の利上げを予想している。織り込みが8割を超えると、利上げは「上がる材料」ではなく「据え置きなら下がる材料」に性格を変える。つまり上下の値幅は非対称で、据え置きのほうが動きは大きい。
| 材料 | 数字 | 豪ドルへの向き | 出所・時点 |
|---|---|---|---|
| 政策金利 | 4.60%(9月30日に0.25%引き上げ) | — | RBA |
| 11月の利上げ確率 | 81%(据え置き19%) | 織り込み済み | ASX金利先物(シドニー時間3日0時50分) |
| 消費者物価(9月までの1年) | 4.3% | 上 | 豪統計局(10月28日) |
| トリム平均(基調インフレ) | 3.6% | 上 | 豪統計局(10月28日) |
| 失業率(9月) | 4.7%(前月比+0.1ポイント) | 下 | 豪統計局(10月15日) |
| 就業者数(9月) | 3万9,300人減 | 下 | 豪統計局(10月15日) |
表を見れば、RBAが置かれた立場がわかる。物価は前年比4.3%、基調を示すトリム平均でも3.6%と、目標の2〜3%を上回っている。一方で失業率は4.7%に上がり、9月の就業者は3万9,300人減った。物価は利上げを、雇用は様子見を求めている。だから声明の重みは「上げるか」より「次も上げるか」にかかる。ANZは、12月か2月に政策金利が5.10%まで上がる「無視できないリスク」があるとみている。一方でCBAは、11月の利上げを「保険」と位置づけ、12月と2月は据え置きを予想する。
水準の地図:0.6994ドルと0.7068ドルの間
豪ドル米ドルの水準の地図(11月2日時点)
読み方:現在値は20日線と100日線の間にある。上は先週の高値0.7068ドルと50日線0.7066ドルが重なる壁、下は0.6950ドルを終値で割ると10月中旬の安値0.6895ドルまで支えが薄い。出所:ヤフー・ファイナンスの日足から本誌計算。現在値は取引時間中の気配値。
チャートで見ると、いまの値段は二つの移動平均に挟まれている。下の20日線が0.6994ドル、上の100日線が0.7033ドルだ。その上には50日線の0.7066ドルと先週の高値0.7068ドルがほぼ重なって控える。ここが最初の本格的な上値の壁になる。下は10月中旬の安値0.6895ドルまで目立った支えがない。途中の0.6950ドルは、10月前半に何度か下げ止まった水準だ。
9月30日の利上げのときを思い出したい。利上げの発表後も豪ドルは上がらず、10月半ばの0.6895ドルまで押した。前回の利上げは、豪ドルの下げを止められなかったのである。値動きが「利上げ=豪ドル高」の教科書どおりにならないことは、すでに一度示されている。
筆者の見立て:利上げでも上値は0.7070ドルまで、押し目は買い
結論から言う。筆者は短期でやや強気だ。0.70ドル割れの押し目は買い、利食いの目標は0.7065〜0.7070ドルとみる。根拠は三つある。
- 物価の数字が強すぎる。前年比4.3%の物価を前に、RBAが「利上げはこれで最後」と明言するのは難しい。12月の追加利上げの可能性を残す言い回しになりやすい。
- 買い持ちが軽くなっている。先週の高値から60ポイントあまり押したことで、決定前の手じまいはかなり進んだ。事実で売られる量は、先週末よりは少ない。
- 米ドル側にも重しがある。米10年債利回りは2日に4.90%台へ下がり、前週の5%台から水準を切り下げている。原油安が米国の物価懸念を和らげれば、米ドル買いは鈍る。
シナリオごとの確率と値幅は次のとおりだ。確率の土台には先物の81%を使い、利上げの中身を筆者が二つに分けた。
| シナリオ | 確率(筆者) | 声明の中身 | 1〜2日の値幅の目安 |
|---|---|---|---|
| 利上げ+追加に含み | 35% | 物価の見通しを引き上げ、12月の追加を排除しない | 0.7065〜0.7100ドル |
| 利上げ+様子見を示唆 | 45% | 雇用の弱さに触れ、当面は効果を見極めると表明 | 上ヒゲの後、0.6980〜0.7040ドル |
| 据え置き | 20% | 雇用悪化を理由に見送り | 0.6950ドル、さらに0.6895ドル |
2〜4週間の中期で見ると、0.6950ドルを守るかぎり、12月8日の次回会合に向けて0.7120ドルを試す流れを本線に置く。0.7120ドルは9月下旬に崩れた起点で、戻り売りが待ち構える水準だ。そこを抜けるには、12月会合での追加利上げの観測が必要になる。
逆になったら:損切りは0.6950ドルの終値割れ
見立てが外れる形ははっきりしている。据え置き、または利上げでも「今回で打ち止め」と読める声明が出て、日足の終値で0.6950ドルを割り込んだときだ。その場合、筆者は強気を撤回する。下は10月中旬の安値0.6895ドルが次の目安で、ここを割れば6月の安値圏0.6866ドルまで支えらしい支えがない。0.6950ドルを割って買い向かうのは、落ちてくるナイフをつかむ行為だ。
もう一つの外れ方は、米国側から来る。3日の米中間選挙の投票、6日の10月雇用統計で米金利が急上昇すれば、RBAの結果がどうであれ豪ドルは押される。米国の発表はニューヨーク時間で出るため、日本時間への置き換えを間違えやすい。米国の夏時間は11月1日に終わり、日本との時差は14時間に広がった。発表時刻を自分の住む地域の時間に直すときは、タイムゾーン変換ツールで確かめておくと取り違えがない。
明日の監視リスト
| 日本時間 | イベント | 見るところ |
|---|---|---|
| 3日 0時 | 米10月ISM製造業景気指数 | 価格指数が強ければ米ドル買い |
| 3日 12時30分 | RBA政策決定・金融政策報告 | 政策金利と、物価見通しの引き上げ幅 |
| 3日 午後 | ブロック総裁の会見 | 12月の追加利上げを否定するかどうか |
| 3日(米国時間) | 米中間選挙の投票 | 開票の流れと米金利の反応 |
| 6日 22時30分 | 米10月雇用統計 | 米金利と米ドルの方向 |
先物が8割で利上げを織り込む局面で、利上げを当てても値幅は取れない。勝負は声明の一言と、0.6950ドルを守れるかどうかだ。筆者は0.70ドル割れを拾い、0.7065ドル近辺で降りる。前回の豪ドルの見立ては10月31日の記事に、物価統計の読み方は10月28日の記事にまとめた。為替の基本はFX解説ページで確認できる。
主な参照
- 政策金利の推移(2026年9月30日に4.60%)/オーストラリア準備銀行
- 11月3日の公表予定(14時30分、金融政策報告)/オーストラリア準備銀行
- 消費者物価(9月までの1年で4.3%、トリム平均3.6%、10月28日公表)/オーストラリア統計局
- 労働力調査(9月の失業率4.7%、就業者3万9,300人減、10月15日公表)/オーストラリア統計局
- ASX金利先物にもとづく利上げ確率(81%)/RBAウォッチ
- 大手3行の予想、ANZの5.10%リスク/インベスティング・ドットコム(ヤフー・ファイナンス豪州版)、インベスティングライブ
- 豪ドル米ドル、原油、米10年債利回りの気配値と日足/ヤフー・ファイナンス
データ基準日:2026年11月2日。豪ドル米ドル、WTI原油、米10年債利回りは同日の日本時間23時前後の取引時間中の気配値で、終値ではない。移動平均と過去の高値・安値は、ヤフー・ファイナンスの日足終値・高値・安値から本誌が計算した。利上げ確率はシドニー時間3日0時50分時点の集計で、その後変わりうる。シナリオの確率と値幅、損切りの水準は筆者の見立てである。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。外国為替証拠金取引は元本を上回る損失が出る可能性がある。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












