ユーロ円はこれから24時間で2度揺さぶられる。今夜22時15分(日本時間)に欧州中央銀行(ECB)が、30日には日銀が政策金利を決める。29日15時43分のユーロ円は175円77〜78銭で、ECB参照レートでは1年ぶりの安値圏にいる。答えを先に書く。本線は175円〜177円50銭のレンジで、確率は50%とみる。175円50銭を終値で割り込む下抜けが35%、178円に向かう上抜けは15%にとどまる。
なぜ下方向に厚く見るのか。それを説明するために、この記事ではユーロ円をシーソーにたとえて考えてみたい。片側にユーロ、反対側に円が座っている。今夜はユーロの側に、明日は円の側に、それぞれ重りが載るかどうかが決まる。
ユーロ円、1〜2週間のシナリオ確率(本誌の見立て)
読み方:本線はレンジだが、下抜けの確率を上抜けの2倍超に置いた。ユーロ側にはフランスとエネルギー高、円側には日銀の地ならしと、下げの材料が両側にあるためだ。29日15時43分のユーロ円は175円77〜78銭(日本経済新聞)。
シーソーの原理——ユーロ円は2つの為替の掛け算
まず原理から順に見ていく。ユーロ円という為替レートは、市場で単独に決まっているわけではない。ユーロドルとドル円を掛け合わせた値に、ほぼ一致する。1ユーロが1.11ドルで、1ドルが158円なら、1ユーロはおよそ175円になる、という計算だ。
つまりユーロ円が下がる道は2本ある。ユーロがドルに対して弱くなる道と、円がドルに対して強くなる道だ。シーソーで言えば、ユーロ側が軽くなるか、円側が重くなるか。どちらでも、ユーロの座る端は下がる。ここが肝心だ。ユーロ円の値動きを見たら、まずどちら側が動いたのかを確かめる必要がある。
用語の確認。①ECB参照レート:ECBが毎営業日、中欧時間14時15分ごろに公表する対ユーロの為替レート。日中の高値・安値ではなく、1日1本の定点観測値である。②預金ファシリティ金利:ユーロ圏の銀行がECBに資金を預けるときの金利で、ECBの政策金利の中心。現在は2.50%。③政策金利(日銀):無担保コール翌日物の誘導目標で、現在は1.25%。
現実の数字に当てはめる——10月の下げはすべてユーロ側
では、実際のシーソーはどう傾いてきたのか。ECB参照レートで二つの区間を測ってみる。
ユーロ円の下げを分解する(ECB参照レート、変化率)
読み方:夏からの下げはユーロ安と円高が半分ずつだったが、10月の下げはユーロ安だけで起きた。ドル円は10月にむしろ0.61%上がっている。出所:欧州中央銀行の参照レート(Frankfurter API経由)。ドル円はユーロ円÷ユーロドルで本誌が換算。
7月30日の186円99銭から10月28日の175円86銭まで、ユーロ円は5.95%下げた。内訳はユーロドルが1.1476ドルから1.1133ドルへ2.99%の下落、ドル円が162円94銭から157円96銭へ3.06%の下落で、ちょうど半分ずつだ。夏から秋にかけては、ユーロ側が軽くなり、同時に円側も重くなった。
ところが10月に入ると様子が変わる。9月30日の178円27銭から10月28日まで、ユーロ円は1.35%下げた。この間ユーロドルは1.96%下げたが、ドル円は逆に0.61%上がっている。円側はむしろ軽くなっていたのに、ユーロ側がそれ以上に軽くなった。10月の下げは、すべてユーロ側の事情である。
ユーロ側を軽くしたのはフランスだ。Newsquawkによれば、仏10年国債の利回りは10月21日以降の動きで一時5.14%に達した。ユーロ圏の9月の消費者物価は前年同月比3.8%と市場予想の3.6%を上回ったが、その中身はエネルギーが18.9%上がった影響が大きい。物価が上がってもユーロが買われないのは、それが景気を冷やす種類のインフレだからである。
今夜のECB——ユーロ側に重りは載るか
ECBは9月に預金ファシリティ金利を25ベーシスポイント引き上げて2.50%にした。全会一致だった。今夜は据え置きが大方の予想で、Newsquawkによると、市場が10月の追加利上げに織り込んでいるのは1〜2bpにすぎない。年末までに約20bpの引き締めが織り込まれており、焦点は12月だ。
シーソーで考えると、今夜の据え置きそのものは重りにならない。織り込み済みだからだ。重りになるのは、22時45分からのラガルド総裁の記者会見で、12月の利上げにどこまで含みを残すかである。12月を強くにおわせればユーロ側に重りが載り、エネルギー高による景気の下振れを強調すればユーロ側はさらに軽くなる。会見ではフランス国債についての質問が集中するとみられ、ここで市場を落ち着かせる言葉が出るかどうかも見どころになる。
明日の日銀——円側に重りは載るか
日銀も9月に利上げし、政策金利を1.25%にした。日本経済新聞は10月22日、日銀が今回は連続利上げを見送る方向で、基調的な物価上昇率が2%に事実上到達したとの認識を示す公算が大きいと報じている。こちらも据え置きは重りにならない。重りになるのは、次の利上げに向けた地ならしがどこまで進むかだ。
「2%に事実上到達」と明言すれば、次の一手が近いと受け止められ、円側に重りが載る。ドル円が157円台にあるいま、円高方向の材料はユーロ円にも直接響く。逆に慎重な表現にとどまれば、円側は軽いままで、ユーロ円の下支えになる。29日の長期金利は2.835%(日経電子版、15時時点)まで上昇した。会合を前に国債が売られている。
よくある誤解:「両方が利上げすれば、差し引きゼロ」。ECBが12月に2.75%へ、日銀も12月に1.50%へ上げれば、政策金利の差は1.25ポイントで変わらない。だから影響はない、と考えがちだ。だが為替を動かすのは金利差の水準より、驚きの大きさである。織り込みが進んでいない側が動けば、差が同じでもシーソーは傾く。今回の2会合で問われているのは、どちらの中央銀行が市場の予想を上回る言葉を出すか、である。
見通し——1〜2週間のシナリオと確率
以上を踏まえた本誌の見通しは次のとおりだ。水準はECB参照レートで確認できる値を基準にしている。
| シナリオ | 確率 | きっかけ | 水準のめど |
|---|---|---|---|
| 本線:レンジ | 50% | ECBは12月に含みを残し、日銀は「2%到達」を示しつつ時期は明言しない | 175円〜177円50銭 |
| 下抜け | 35% | ECBが景気の下振れを強調する、または日銀が12月利上げを強くにおわせる | 終値で175円50銭割れ、次は175円22銭、その下は172円台 |
| 上抜け | 15% | ECBが12月利上げをほぼ予告し、日銀が慎重姿勢にとどまる | 177円80銭超え、次は178円台 |
下方向に厚く見るのは、シーソーの両側に下げの材料があるからだ。ユーロ側にはフランスとエネルギー高が、円側には日銀の地ならしがある。上抜けには、二つの会合がそろってユーロ高・円安の方向に転ぶ必要がある。ECB参照レートで175円51銭(10月23日)を割り込むと、2025年10月以来の安値になる。その下には2025年10月6日の175円22銭、さらに10月1日の172円47銭がある。
上値の目安は、20日平均の177円02銭と、10月16日の177円82銭だ。50日平均は179円72銭で、ここまで戻すには円安とユーロ高の両方が要る。
まとめ——シーソーのどちら側を見るか
最初の比喩に戻る。ユーロ円はユーロと円が座るシーソーで、10月はユーロ側だけが軽くなってきた。今夜はそのユーロ側に、明日は円側に、重りが載るかどうかが決まる。覚えて帰ってほしいのは次の3点だ。
- ユーロ円が動いたら、ユーロドルとドル円のどちらが動いたかを先に確かめる。10月の下げはすべてユーロドル側だった。
- 据え置きは2会合とも織り込み済みで、重りになるのは12月への言葉である。今夜22時45分のラガルド会見と、30日の植田総裁の会見を見る。
- 175円50銭を終値で割れば下抜けのシナリオに切り替える。上は177円80銭を超えるまでレンジとみる。
ユーロドル側の論点は今朝のユーロドルの記事、ドル円側はドル円の記事に、日銀会合の論点はこちらにまとめた。ユーロ円が1年ぶり安値を付けた経緯は10月26日の記事で扱っている。取引口座の選び方はFX解説ページを参照してほしい。
主な参照
- ECB参照レート(ユーロ円・ユーロドル、2025年10月1日〜2026年10月28日)/欧州中央銀行(取得はFrankfurter API経由)
- ユーロ円・ドル円の気配値と長期金利(10月29日)/日本経済新聞
- ECB会合の予想、10月と年末までの織り込み、9月の利上げ、ユーロ圏9月消費者物価、仏10年債利回り/Newsquawk
- ECBの政策決定と記者会見の日程/欧州中央銀行
- 日銀10月会合の見通し(据え置き、物価2%に事実上到達との認識)/日本経済新聞(10月22日)
- 日銀の決定会合日程/日本銀行
データ基準日:2026年10月29日15時43分(日本時間)。ユーロ円の175円77〜78銭とドル円は同時刻の取引時間中の気配値で、終値ではない。過去の水準と平均値はECB参照レート(毎営業日の定点観測値)にもとづき、日中の高値・安値とは異なる。20日・50日平均は本誌がECB参照レートから計算した。ドル円の過去値は、ECB参照レートのユーロ円をユーロドルで割った本誌の換算値である。ECBの決定は本稿公開時点で未発表であり、その内容は反映していない。シナリオの確率と水準は本誌の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















