10月29日の大引け後の決算で、夜間取引(PTS)の番付を発表する。東の横綱はコナミグループで、通期の最終利益予想を34%引き上げ、PTSで終値比11.2%高の2万5,499円50銭をつけた。西の横綱、つまり最も負けたのは富士通で、PTSは10.9%安の3,849円。中部電力も浜岡原子力発電所をめぐる3,703億円の特別損失で9.4%安と、富士通に迫る負け方だった。
この日は日経平均が705円高と3日続伸した日でもある。だが大引け後の主役は指数ではなく個別の決算だった。上方修正が素直に買われた銘柄と、上方修正でも売られた銘柄がはっきり分かれた。PTSの値は30日の東京市場の寄り付きを保証するものではないが、明日の朝に最初に見るべき銘柄の順番は、ここでほぼ決まる。
29日の決算銘柄、PTSの終値比(%)
読み方:29日の大引け後に決算や業績修正を発表した主な銘柄の、夜間取引(PTS)の値を東証終値と比べた。PTSは19時01分〜19時36分(日本時間)時点の取引時間中の値で、終値ではない。出所:株探の表示から本誌が計算。
番付表——PTSの騰落で見た勝敗
| 番付 | 銘柄 | 29日終値 | PTS(時刻) | 終値比 | 決算の中身 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | コナミグループ(9766) | 22,940円 | 25,499.5円(19:32) | +11.2% | 通期最終利益予想を1,010億円→1,350億円、配当224円→299円 | ◎ |
| 東の大関 | タカラトミー(7867) | 4,408円 | 4,750円(19:34) | +7.8% | 通期経常利益予想を260億円→300億円 | ◎ |
| 東の関脇 | キーエンス(6861) | 76,360円 | 79,888円(19:01) | +4.6% | 7〜9月期の経常利益48.3%増、1株を5株に分割 | ○ |
| — | (以下、負け側) | |||||
| 西の関脇 | アンリツ(6754) | 3,120円 | 2,899円(19:34) | −7.1% | 通期最終利益予想を7%上方修正したが、7〜9月期は1.3%増 | × |
| 西の大関 | 中部電力(9502) | 2,681.5円 | 2,429.9円(19:32) | −9.4% | 浜岡原発で特別損失3,703億円、通期は2,150億円の最終赤字へ | × |
| 西の横綱 | 富士通(6702) | 4,322円 | 3,849円(19:36) | −10.9% | 上期の調整後営業利益6.1%減、通期予想は据え置き | × |
東の横綱・コナミグループ——◎
文句なしの一番である。コナミは15時30分に、2027年3月期の通期予想を一斉に引き上げた。売上高は5,050億円から5,830億円へ、事業利益は1,500億円から2,000億円へ、最終利益は1,010億円から1,350億円へ。従来予想では前期比1%増にとどまっていた最終利益が、35%増に化けた。会社側は理由として、デジタルエンタテインメント事業の「eFootball」と「遊戯王」などの主力タイトルが好調だったことを挙げている。
上期(4〜9月)の最終利益は前年同期比70.5%増の792億円、7〜9月期だけでも75.1%増の466億円だった。株探の試算では、修正後の通期計画から上期を引いた下期の最終利益は557億円で、前年同期比4.2%増にとどまる。つまり会社の計画は下期をかなり控えめに置いている。期初の計画が保守的だったことは株探も指摘しており、今回も同じ構図が続く可能性がある。年間配当も224円から299円へ75円の増額で、株主還元まで一気に上方修正した。
注意点もある。株価は28日に6.4%下げて2万2,940円となり、29日は前日比変わらずで引けていた。PTSの11%高は、この2日間の下げを取り戻して余りある水準だ。寄り付きでいったん買いが集中したあと、短期の利益確定売りが出やすい位置でもある。
東の大関・タカラトミー——◎
上期の経常利益予想を115億円から161億円へ40%引き上げ、前年同期比で一転36%増益、2期ぶりの上期最高益の見通しとなった。通期も260億円から300億円へ15%の上方修正である。会社側の説明では、大人のファン層(キダルト)向けの売上が伸び、キデイランドでのキャラクター商品、「ガチャ」「BEYBLADE X」「デュエル・マスターズ」「トミカ」が好調だった。アジアでもBEYBLADE Xとトミカが伸びた。ただし第1四半期に計上した関税還付も利益を押し上げており、一度きりの要因が含まれる点は割り引いて見る必要がある。それでもPTSで7.8%高。判定は◎とする。
東の関脇・キーエンス——○
中身だけなら横綱級である。上期(3月21日〜9月20日)の売上高は前年同期比34.9%増の7,353億円、営業利益は50.0%増の4,082億円だった。株探の計算では、7〜9月期の経常利益は48.3%増の2,275億円で、売上高営業利益率は前年同期の50.3%から56.9%へ上がった。売上の半分以上が営業利益として残る計算で、製造業としては異例の水準である。
同時に、11月20日を基準日に1株を5株に分割すると発表した。分割前の株価は7万円台で、最低購入額は700万円を超える。分割後は単純計算で150万円台まで下がり、個人投資家が手を出しやすくなる。配当も分割前換算で年650円と、前期の550円から実質18%の増額だ。それでもPTSの上げは4.6%にとどまった。時価総額は約18兆5,700億円と今回の顔ぶれで最大で、29日の取引時間中に3.6%下げていた分を戻した程度とも言える。判定は○。勝ち越しだが、土俵際から押し戻しただけで、まだ上位進出とは言えない。
西の横綱・富士通——×
この夜いちばん大きく負けた。上期の売上収益は3.8%増の1兆6,263億円だったが、本業のもうけを示す調整後営業利益は6.1%減の1,139億円。最終利益は68.5%減の825億円に落ちた。最終利益の大幅減は、前年同期に新光電気工業と富士通ゼネラルの売却益を計上していた反動が大きい。それ自体は想定内のはずだ。
売られた理由として筆者が重く見るのは、事業ごとの濃淡である。主力のサービスソリューションは調整後営業利益が11.8%増の1,337億円と好調だった。一方でハードウェアソリューションは64%減の45億円、ユビキタスソリューション(パソコンなど)は38%減の134億円と崩れた。報道では、部材コストの上昇、パソコン更新需要の反動、先端技術への開発投資の増加が減益の理由とされる。通期予想は据え置いたが、株探によると最終利益の進捗率は26.6%で、過去5年平均の30.3%を下回る。下期に2,274億円を稼がないと計画に届かない。PTSの10.9%安は、この「下期頼み」に市場が待ったをかけた形だ。
西の大関・中部電力——×
負けの理由が最もはっきりしている。浜岡原発の新規制基準の審査で基準地震動の策定をめぐる不適切な事案があり、同社は9月25日に3・4号機の設置変更許可申請を取り下げた。再稼働の時期が見通せなくなったとして、原子力発電事業の固定資産の全額3,049億円を減損し、核燃料評価損653億円と合わせて3,703億円の特別損失を計上した。通期では3,800億円程度に膨らむ見込みだ。
この結果、通期の最終損益予想は1,600億円の黒字から2,150億円の赤字へ一転した。経常利益の予想も1,850億円から1,100億円へ下げている。会社側は理由に、中東情勢の長期化で販売子会社ミライズの期ずれ差損(燃料価格の変動が電気料金に反映されるまでの時間差による損失)が拡大することを挙げる。原油の想定価格は1バレル90ドル程度から105ドル程度へ引き上げられた。日本経済新聞によると、経済産業省は浜岡の不正をめぐり同社に業務改善命令を出す方針で、悪材料はまだ出尽くしていない。
西の関脇・アンリツ——×(上方修正でも売り)
番付の中で最も説明を要する一番だ。通信計測器のアンリツは、通期の最終利益予想を150億円から160億円へ6.7%引き上げ、配当も50円から63円へ増やした。上期の最終利益は72.0%増の65.5億円である。それでもPTSは7.1%安。手掛かりは直近の勢いにある。7〜9月期の最終利益は1.3%増の32.6億円で、上期の伸びの大半は4〜6月期に稼いだものだった。株価は29日に3.0%高の3,120円で引けており、決算を前に期待が先に乗っていたとみられる。上方修正の幅が期待に届かなかった形で、判定は×とする。
殊勲賞・オリエンタルランド
番付の外にも、見逃せない取組があった。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、上期の経常利益が29.9%増の900億円と、3.1%減益の予想から一転して増益で着地した。通期の経常利益予想も1,680億円から1,957億円へ16.5%引き上げ、2期ぶりの最高益の見通しとなった。PTSは3,303円と終値比4.2%高。ただし7〜9月期に限ると売上高営業利益率は19.3%から18.3%へ下がっており、勢いは上期の前半に偏る。殊勲賞とするが、横綱昇進は下期の数字を見てからだ。
来場所の注目取組——30日の東京市場
30日の東京は、決算の個別戦と日銀の結果が重なる。日銀の金融政策決定会合は29〜30日に開かれ、30日に結果と「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が公表される。個別では、寄り付きでコナミとタカラトミーに買い気配が並び、富士通と中部電力に売り気配が並ぶかがまず焦点だ。PTSの値幅がそのまま寄り付きに持ち越されるとは限らない。夜間の米国市場では、今夜の米7〜9月期国内総生産(GDP)速報とアマゾンなどの決算が控えており、ここで地合いが変われば、勝ち組の上げ幅も削られうる。
29日の東京市場の振り返りは 日経平均705円高、アドテスト1銘柄で453円 にまとめた。キーエンスの決算前の論点は 日立・キーエンス・カプコンの決算プレビュー で、今夜のアマゾン決算の見どころは アマゾン決算、想定変動7.4%|過去12回で5回超え で扱っている。
主な参照
- コナミグループの業績予想及び配当予想の修正/TDnet(2026年10月29日)、上期実績と下期の試算/株探
- キーエンスの決算短信/TDnet、株式分割/TDnet、7〜9月期の経常利益と利益率/株探
- 富士通の2026年度第2四半期決算概要/TDnet、進捗率/株探、減益の理由/電波新聞
- 中部電力の特別損失の計上と業績予想の修正/TDnet、上期実績/株探、業務改善命令の方針/日本経済新聞(10月29日)
- タカラトミーの業績修正と理由/株探(会社開示を掲載)
- アンリツの決算/株探、オリエンタルランドの決算/株探
- 終値とPTSの値、時価総額/株探の個別銘柄ページ(各銘柄)、前日までの終値/Yahoo Finance
- 日銀の金融政策決定会合の日程/日本銀行
データ基準日:2026年10月29日の東京市場の終値と、同日19時01分〜19時36分(日本時間)のPTSの値。PTSの値は私設取引システムでの取引時間中の値で、終値ではなく、30日の東京市場の寄り付き値を示すものではない。PTSは東証より売買が少なく、値が大きく振れやすい。下期の試算と進捗率は株探の計算、終値比と分割後の最低購入額は本誌の単純計算である。富士通の減益理由とアンリツが売られた背景は報道と本誌の分析にもとづくもので、会社が株価の動きについて説明したものではない。中部電力への業務改善命令は報道ベースで、本稿執筆時点で正式な発表は確認していない。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















